
どうして怪盗なんかに!? 困った人を助けるのが名探偵プリキュアでしょ!

「キュアアルカナ・シャドウの秘密」
大きな出来事
メインキャラクター:あんな
目標
どうしてプリキュアが怪盗団ファントムに与しているのか気になる。キュアアルカナ・シャドウの正体が知りたい。
課題
キュアット探偵事務所ロンドン支部からの情報を待っていたら数日かかる。手がかりも一切無い。ただ、怪盗団ファントムはまことみらい市で活動しているのだから、地道に聞き込みをしたら見つけられるかもしれない。
結末
【達成】
偶然、盗みの一環となる活動をしていたるるかに遭遇した。
るるかはミサンガに宿ったマコトジュエルを盗めるようにするため、ミサンガがすり切れても持ち主がそれを大切にしつづけるよう、語りかけて誘導していた。
なお、るるかの正体はキュアット探偵事務所の元の持ち主、つまり行方不明となっていた名探偵プリキュアの先輩だった。
心の変化
【ネガティブ】
るるかの目的はわからないままだ。
どうやら敵対はしているらしい。ただし、前話に引き続き、彼女の暗躍によって物事はむしろ良い方向に正されているように見える。ジェット先輩も彼女に助けられたことがあるのだという。
彼女の謎はまだほとんど明らかになっていない。
バトル
キュアアルカナ・シャドウとの再戦。さらにミサンガを素体としたハンニンダーとも戦った。
苦戦
キュアアルカナ・シャドウとの力量差は依然として明白。
勝利
キュアアルカナ・シャドウはプリキュアに攻撃しようとせず、アルカナスターレインも直撃させようとはしなかった。
ハンニンダーの浄化は問題なく完了し、それを見届けたキュアアルカナ・シャドウもあっさり撤退したため、マコトジュエルや盗まれたミサンガは取り戻すことができた。
ピックアップ
8センチCD

いわゆるシングルCD。記録容量155MB程度。表題曲ともう1曲、それぞれのインスト版の計4トラックが収録されていることが多かっただろうか。紙装丁の簡素なパッケージで、500~1000円くらいのお手頃価格で販売されていた。
店頭販売時は見映えのために縦長パッケージで販売されており、購入後はパッケージを半分に折ってコンパクトに保管できる仕組みになっていた。が、ただでさえ折り目が目立つ紙装丁なのにそんな暴挙をする購入者はまず存在しなかった。というか、折るためにああいうパッケージ構造になっていること自体知らない人も多かった。
カセットテープなりMDなりにダビングして、CD本体は押し入れにポイよ。
ミサンガ

1993年の流行。Jリーグの創設をきっかけに、ラモス瑠偉などの海外出身選手から広まったおまじない文化。
ブラジルのボン・フィン教会発祥とされる。ブラジルの公用語であるポルトガル語において、「Bom Fim」とは“良い終わり”“大団円”の意。
安価で、当時はガシャポンなどで容易に手に入ったほか、自作することも流行した。
本来はすり切れるまで24時間つけっぱなしにするものだが、組紐ゆえに案外丈夫で、普通にしていたら自然に切れるのは1年以上先のこと。(日本においては)実際にはただのファッションアイテムとして身につけられ、願かけとして使っていた人はそう多くなかったのではないかといわれる。
本当にすり切れるまで身につけつづけたまさみさんの片想いは、1年以上続いたものだということになる。
オオルリアゲハ

青い蝶といえば日本にもカラスアゲハやミヤマカラスアゲハがいるが、それらはこのように黒い部分と青い部分がくっきり分かれていない。ステンドグラスにも似たこの美しい羽の模様はオオルリアゲハ特有のもの。
ただし、オオルリアゲハは日本に生息していない。わざわざ日本に生息しない蝶を登場させたのだから、そこには何か意図があると推測できる。
オオルリアゲハは「見ると幸せになれる蝶」「肩に止まるともっと運気アップ」「一日3回見つけたらお金持ちになれる」などいくつかの伝説を持つ、幸福を運ぶ蝶なのだとされている。
ちなみに本物は羽の裏側が地味な茶色なのだが、こちらは両面鮮やかな青色になっている。窓ガラスに留まるシーンを描く必要上、そこは柔軟に改変したのだろう。
ウソつかない
「その歌、いいですよね。私も好きなんです。特に歌詞が」
前話に引き続き、あくまでウソはつかずに目的を達成するるるか。
いやまあ、変装はしてますけどね。
それでも自分から店員として名乗るようなことは巧妙に避けているっていう。
「君のせいじゃないって。ミサンガが切れたら願いが叶うなんてウソ、私が信じちゃってたから・・・」
「そんな。ウソだなんて」
「ウソかもしれません。でもそのミサンガ、捨てるつもりですか?」
「だって、ウソだったからもう要らないもん」
「ミサンガは、ずっとあなたを見守ってた。そう。彼のことが好きだった気持ち。その気持ちを、ミサンガはずっとあなたの側で見てくれていた。ミサンガが見守ってくれたことも、マサミさんが彼のことを思う気持ちも、どちらもウソじゃない」
今話(今話も)、るるかはむしろウソに対峙する側に立ちます。

願いを叶えてくれるはずのミサンガ。だけど願いは叶いませんでした。迷信、オカルト、ウソっぱち。こんなものに縋っていたほうがバカだった――。
そうは言わせません。
それは本気の恋でした。ミサンガがすり切れるほど長い間、こんなおまじないにも頼りたくなるくらい、あらゆる手を尽くして、全身全霊、自分にできること全てを賭けて、本気で恋をしていた証でした。
それを、ウソにはさせません。
「カノジョ、いたんだ。ドキドキしても意味なかったな――」
「そんなことない! すごく好きな人ができて、そのためにがんばったんだよ!? それを『意味がなかった』なんて言わないで!」(『魔法つかいプリキュア!』第34話)
ウソって何でしょうか? 本当のものって何でしょうか?
客観的な事実なんて、主観的に見えるもの、考えたことに比べたら、果たしていかほどの価値があるでしょうか?
思いは確かにここにありました。それは誰にも否定させません。させたくありません。
これが本気の思いだったことを証明するものは何もありません。ミサンガだってただの迷信。これまでしてきたことといえば、彼が足繁く通うCDショップで、気づかれないようにそっと垣間見ていただけ。片想いでした。
この恋はずっと、自分の心の中に隠したままの、自分だけしか知らない密かな思いでした。
まさみさんが恋していたことを、他の誰も知りません。
恋していた証拠なんてありません。
恋に破れ、彼の隣に立てる未来の可能性は消滅し、後に残るものは無。
ドキドキしていたことに意味はない。
後には何も残らない。
恋はウソに変わってしまった。
そんなこと、言わせるものか。
ずっと今まであなたが恋をしていたという真実。それを、たった今生まれたウソなんかで塗りつぶされてたまるもんか。

「ミサンガが見守ってくれたことも、マサミさんが彼のことを思う気持ちも、どちらもウソじゃない。本当のことでしょう? だったらその気持ちは大事にして。忘れちゃダメ」
推理と呼ぶには証拠が足りない。根拠薄弱な、これは、ならば祈り。
主観は客観では証明することができません。
まさみさんの恋はまさみさんだけのもの。
だから、せめてまさみさんだけは、その恋がウソだったなんて言わないで。
証拠とは呼べない物証がここにある。根拠薄弱な、だけど、これこそが実存。
前話でもそうでしたが、ウソとの戦いにウソは要りません。
「ウソもまんざら悪いものじゃない。そう思わない? 名探偵さん」
「違う! ウソをついて人のものを盗るなんて、許されることじゃない!」(第11話)
なにせ、ウソも真実も当人にしかわからない領域での戦いです。
その人がウソだと思えばウソ、本当だと信じるなら本当。
贋作のジュエリーにマコトが宿り、迷信でしかないミサンガにマコトが宿り。その一方で、確かな母の愛が込められていたはずの自画像には、娘にその真意が伝わるまでマコトジュエルが宿ることはありませんでした。
いったい何が本当? 何がウソ?
真実とは曖昧模糊なもの?
いいえ。そんなわけはありません。
他の誰が否定しようとも、少なくともまさみさんにとって、あの恋は疑いようもなく真実でした。
証拠なんてなくたって、すでに失われていたって、恋していたことそのものがウソになることはありません。
そこにあるのはウソじゃないのです。本当は。最初から。
だから、ウソに対抗できる唯一の武器は、やはり真実なのです。
「見てたでしょ。私は切れたミサンガに思いがあると教えただけ。ミサンガの価値を彼女に教えなければ、捨てられていたはず。要らなくなったものに価値を与えて、それをもらっただけでしょう」
だから、どうか名探偵。
「でも、あなたの言葉でマサミさんは大切だと思ったんだから!」
「それを奪うなんて許せない!」
こんな詭弁なんかに負けず、真実を貫ける強さを示してみせて。
誰のふりかざすウソにも負けない、たとえひとりになっても本当のことを信じていられる諦めの悪さを、身につけてみせて。
「だったら止めてみなさい」
真実は、ウソに負けないからこそ、真実。

認められないこと、認めること
感傷といえば感傷です。
「僕らファントムはウソで溢れ、覆われた、素晴らしい世界をつくる! そのためにはマコトジュエルが必要なのさ!」
「ウソの世界なんて全然素晴らしくない!」
「そうかな? 君たち名探偵を倒すこんな力があるのに?」(第2話)
怪盗団ファントムの目的は、世界をウソで覆い包むこと。
なぜならウソは強いから。ウソをつけばどんなものでも手に入る。誰がどんなに大切にしているものでもたやすく手に入る。
つまりウソの前では真実なんて何の役にも立たない。
彼らはそう思っています。
けれど、違うのです。少なくともるるかにとっては。
「・・・るるか?」

奪われた人は覚えています。かつて目の前にあった真実がウソに変えられてしまった日のことを。
何より大切にしていたものが奪われてしまったことを。失われてしまったことを。
忘れられてしまったことを。
客観的な事実と主観的な真実は必ずしも一致しません。
何かを奪われてしまったとき、モノはその場から失われます。
けれど、その場にあったという真実だけは、その場に残るのです。
だからこそ余計に悲しいのですが。
「どうして怪盗なんかに!? 困った人を助けるのが名探偵プリキュアでしょ!」
「へえ、そうなの」
るるかはキュアット探偵事務所の元の持ち主。
それはつまり名探偵プリキュアの先輩であるということ。
名探偵プリキュアは歴史上数人しか現れておらず、2人同時に存在しているのはあんなたちが初めての例。
かつてみくるが助けてもらったという名探偵とは、るるかのことです。
プリキュアの存在は世間に秘匿されています。
「困った人を助けるのが名探偵プリキュア」という理念を、みくるは自分がプリキュアになる前から持っていました。
ならばこの言葉を知ることができたのは名探偵プリキュアに助けてもらったときだけ。
るるか自身が、かつてみくるに言った言葉であるはずです。
あからさまにしらばっくれているわけですが、その一方でるるかはウソをつかない人物でもあります。
つまり、この「へえ、そうなの」の真意はこうです。
「自分の身も守れない人が、人を助けるだなんて」

力不足だと。
ウソとの戦いは真実でもって挑まなければなりません。
なぜなら主観的な問題だから。自分にウソはつけないから。
しかし、往々にしてウソとは真実を覆す力を持つもの。
だからこそ怪盗団ファントムは真実ではなくウソを支持しています。
本質的にウソは真実より強く、だからこそ、ウソから真実を守る立場に立つなら誰にも負けない強さが必要だ、というわけですね。
実力不足のせいで困った人を助けられないなら、それは名探偵プリキュアではないのです。
なんか、目の前にいる半人前2人は「名探偵」を勝手に名乗っているわけですが。
とはいえ。
今話、あんなたちは変装していたるるかの正体を見破ってみせました。
キュアアルカナ・シャドウには敵わなかったとはいえ、ハンニンダーを下し、奪われたミサンガとマコトジュエルを取り戻してみせました。
戦いの技術はまだまだ拙く、ウソに対抗する考えかたや心構えにもまだまだ未熟なところはあるけれど、だからといって丸きり見放してしまうべき2人でもありません。
「用済みの探偵事務所にあなたたちは価値を与えた。そのミサンガみたいに。――事務所、私が使ってたの」
今の彼女たちにも一定の価値があるという点は、るるかも認めるところです。
今話、るるかはまさみさんに新たな視点を提示することで、“恋のお願いを叶えてくれなかったミサンガ”を“真剣に恋をしていた証拠となる想い出の品”へと変容させました。
少し前まで持ち主が気づいていなかったミサンガの価値を、るるかが代わりに見つけてあげました。
かつてキュアット探偵事務所がるるかにとって不要なものだったならば。
そこに新しく住み、いくつかの事件を解決し、マコトジュエルを守り、それだけではなくさらにはプリティホリックを開いて知名度を上げ、たくさんの人に親しまれる場所へと変えたあんなたち。
名探偵としてはまだまだ未熟なのかもしれませんが、それでも、るるかにはない強みを持っているのもまた事実。
こうして見ると、るるかにとってプリティホリックの開店が存外大きな出来事だったことに気がつきます。
「騒動になる前から首飾りが好きな人はたくさんいた。何がそう惹きつけるのかしら」
「うーん。よくわからないけど、みんなの思いが集まってキラキラ輝いているから、ですかね」(第11話)
前話の贋作ジュエリーに対する見解としては落第点もいいところだった、あんなのこの回答。
けれど、この視点はるるかには無いものです。

キュアット事務所に帰ると、おそらく出かけるとき閉めた窓に閉じこめられてしまったのでしょう、窓際でオオルリアゲハが困っていました。
そこで、るるかに教わったとおり押し上げるようにしてみると、窓はすんなり開いて、オオルリアゲハを助けてあげることができました。
今日、るるかが解決した事件のミサンガは幸運を呼ぶおまじない。
オオルリアゲハもまた、幸運を呼ぶといわれる珍しい蝶。
今回ずっとるるか視点で語ってきましたが、最後にあんな視点に戻します。
あんなからすると、るるかは一緒に力を合わせて誰かを助けることができる、名探偵仲間としての兆しがありました。
「言葉や仕草さえ罠」
「鵜呑みにしてはダメ」
「よく見て、考えて、それから踏み出すのよ一歩」

「困ってる人見たらすぐに助けたい」
「だって、なんとか、なんとか、なんとかしたくて駆け出している」

そもそもどうして困っている人を助けたいのか?
なぜなら、みんなと一緒に集まっていたいからだ。
それが、今のあんなのアンサー。


コメント
ポチタンの観察、キュアアンサーとミスティックの特訓、マコトジュエル死守、どれもそれこそキュアット探偵事務所に帰ってくれば堂々とできるでしょうに……
よっぽど怪盗団ファントムに居なきゃならない事情があるみたいですね。
あちらに在籍して得られるものといえばミラージュの書が示す情報ですけど、それが目的なんでしょうか?
ポチタンのマコトジュエル探知能力に興味を持っていたあたり、怪盗団ファントムにいるのもミラージュの書の予言に脅威を感じてのことでしょうか。マコトジュエルをあるべき場所に戻せることが重要らしいので、ファントムに奪われる前に先回りしたいのかもしれません。
刑事ドラマだと「本庁のお偉いさん」とか「県警本部のお偉いさん」って“無能”か“黒幕”ってのが通り相場なんですけど……キュアット探偵事務所ロンドン本部よ、お前もか。
これで、この先全ての真祖を知った“明智”あんなが「敵は本能寺……いやロンドン本部にあり!」とか下克上かます展開もありそうだし、とりあえず森亜るるか/キュアアルカナ・シャドウがキュアット探偵事務所まことみらい支部を辞めた理由は「ロンドン本部に巣くう本当の敵と徹底抗戦する為」という可能性が出てきたかなぁ、と。
そうなると、アルカナ・シャドウが怪盗団ファントムに参加している理由も「共通の敵「キュアット探偵事務所ロンドン本部」を倒すため、一時休戦して手を組んだ」可能性がありそう。そうであれば怪盗団ファントムに於けるアルカナ・シャドウの扱いが“超VIP待遇の客分”という雰囲気で「怪盗本来の仕事には非協力的」なのに「そんなアルカナ・シャドウの態度にニジーやアゲセーヌが不満を持っていても正面切って批判・糾弾しない(出来ない)」ことにも説明がつく……ような。
そして―――「“本当の敵”を倒すためなら別の敵と「敵の敵は味方」式に手を組むことも辞さない」キュアアルカナ・シャドウの態度・価値観に正面切って反発して彼女と袂を分かち、探偵業そのものからも足を洗ったのが、キュアエクレールだった―――と考えると、アルカナ・シャドウが「いささか愚直なウソ嫌い」キュアアンサーに対して当たりが強いのも、「かつて苦楽を共にした盟友でありながら、主義主張の違いから決裂し袂を分かつ羽目になったキュアエクレールのことを思い出させる人間だから」という可能性が見えてくるんですが……。
るるかがあんなに対して当たりが強く見えるのは、るるかの仕掛けるトリックがロジカルすぎて謎解きでみくるばかり活躍する点も大きいかなと。まあ、それに加えて美術館での問答が及第点に至っていなかったというのもやっぱりありそうですが。