
新たな秘密を見つけたとして、今の名探偵さんたちの力じゃあの謎は解けない。

「森亜るるかの秘密」
大きな出来事
メインキャラクター:あんな
目標
キュアアルカナ・シャドウが悪事のために怪盗団ファントムにいるとはどうしても思えない。彼女が何をしたいのか知りたい。
課題
本人に真実を語る意志はないらしい。ロンドンからの情報も具体的に彼女の目的を明らかにするものではなかった。
結末
【失敗】
ダム湖の調査で新たな手がかりとして青い蝶の写ったポラロイド写真を見つけたが、それが何を意味するのかはわからないままだ。
心の変化
【ポジティブ】
キュアアルカナ・シャドウの行動原理は依然わからないままだが、何か強い決意があってファントムにいることは察せられた。
バトル
カメラを素体としたハンニンダー。
苦戦
フラッシュを使って目くらまししてきた。
キュアアルカナ・シャドウの乱入もあった。
勝利
ハンニンダーは特に危なげなく倒すことができた。
キュアアルカナ・シャドウは聞きたいことを聞けた時点で撤退した。
ピックアップ
「るるか、るるか!」

おそらくるるかと親しい関係なのであろう反応。赤ちゃんだから自分で証言するという発想はまだ出てこない様子。
るるかの花

写真に写っているのはシラユリ。花言葉は「純粋」「無垢」「威厳」など。
ここでは花言葉がどうこうより、“柱頭がハート型になっていることまで含めて”OPに写っている花と同じだということに注目するべきだろう。関係性オタク大歓喜。

取水塔

多摩湖の村山下貯水池第一・第二取水塔がモデルだと思われる。それぞれ1925年と1973年に完成。(ただし劇中では1基しか存在しない)
ここで採取した水が橋を通って浄水場へ送られ、東京都の水道水になる。
ネオルネッサンス様式の銅板製ドーム屋根が特徴。屋根が緑色なのはペンキの色ではなく、自然な銅の錆び(緑青)によるもの。鉄と違って銅は錆びても強度が衰えず、むしろ錆が劣化から守る保護材として機能するため、葺き替えなしで長期間品質を保持できる。
あんなが「取水塔の色、私の時代と違う!」と言っているのは、おそらくこの屋根の錆び具合の話だと思われる。
ただし、村山下貯水池第一・第二取水塔は1999年時点でもう充分に錆びているから、本来なら見てもわからないはず。よく似た架空の(完成したての)取水塔なら色の違いが表れてもおかしくないが、劇中描写ですでにきれいな緑色をしているからこれも違う。(よっぽど捻った伏線でもない限り)たぶん作画ミスだろう。
余談だが、『わんだふるぷりきゅあ!』第23話ではすぐご近所である、村山上貯水池の赤い取水塔がバトルの舞台になっている。
何しに出てきた、森亜。
答え:聞き耳を立てるため潜伏していた取水塔からの出口が、あんなたちのいる連絡橋しかなかったため。


ミスティックリフレクション(簡易版)

防御技としてとっさに使うにはやっぱりモーション長すぎだよね、バンクのほう。
珍しい蝶

実はOPや第12話に登場した青い蝶とは別の種。よく見ると羽の下にあった突起が無かったり、模様や後翅の色が少し違っていたりする。
アサギマダラといって、渡り鳥のように季節ごとに日本と東南アジアの間を移動する、変わった生態を持つ。
第12話の感想文でも書いたが、あちらで登場したオオルリアゲハのほうは珍しい以前にそもそも日本に生息していない。
ダム湖に咲いている花

小学生が蜜を吸うことでおなじみのツツジ。花言葉は「節制」「つつしみ」「愛の喜び」など。
丈夫で手間がかからないうえ、根がしっかりと土を掴んで土壌流出を防いでくれるため、こういったダム湖の法面によく植えられている。
チェキ

1998年11月に発売された富士フイルム製の大ヒットカメラ。撮ったその場で現像できる、いわゆるポラロイド写真を撮影できる。女子高生を中心に、プリクラのように撮ってデコってその場で交換しあう文化が形成された。
デジカメや写メが登場し、フィルム残量を気にせず気軽に写真を撮ることが当たり前になった現代において、本家ポラロイド社が倒産した今なおシリーズを重ねつづけている。遊びに食い込むことができたガジェットは強い。
名探偵とは
「力になりたいの。写真のるるかさん、笑ってた! 何があったのかわからないけど、力になりたい。それが探偵でしょ!」
「いいえ。探偵は依頼があって動くもの。私、依頼してないけど?」
あんなの心からの叫びに対し、るるかが目をそらします。

あんなの言っているこの言葉はみくるからの受け売り。
そのみくるは過去に助けてもらった名探偵に強く憧れてプリキュアを目指していたんですから、これはるるか自身かもうひとりのプリキュアが教えた言葉ということになります。(マコトジュエル破壊シーンでるるかは変身していませんが、ボロボロに傷ついていることから変身解除後だった可能性が残ります)
いずれにせよ、るるかもよく知っているはずの言葉。
最初の事件。まりさんの結婚式でのティアラ盗難事件では、依頼されるまでもなく、みくるのほうから解決に名乗りを上げました。だって、名探偵は事件の解決を通してみんなを笑顔にするものだから。
あんなはそのときのみくるの優しさ、気高さを尊敬しています。的外れな推理をして、自分の不甲斐なさに苦しんでも、それでも誰かを助けたいと思う気持ちは揺らがない。脅されて、全身が不安に震えても、諦めたくないと思う。
元の世界に戻りたい気持ちを一旦脇に置いて、みくると一緒に名探偵をやりきりたいと思うようになった大切なきっかけです。
「名探偵はいろいろな事件を調べて解決し人々を助ける、みんなの憧れ、希望! 私はそんな名探偵になるために探偵テストを受けに来たんです!」
「やっぱりすごいんだね。名探偵なら、ティアラを見つけてまりさんを笑顔にできるんでしょ? だったらなろうよ、名探偵に!」(第1話)
ならば、「探偵は依頼があって動くもの」なんて言うるるかの言葉は欺瞞。
「依頼していないんだから勝手に助けようとするな」と言いたいがための口からでまかせです。
迷惑なら迷惑ではっきりそう言えばいいだけなのに。どうしてるるかはあんなの名探偵観を否定しようとするのでしょう?
「ええっ、カメラが!?」
「ああ。取られるとこだったんだぞ」
「いやあ。珍しい蝶が飛んできたから、バッグを置いたままもう1台のカメラを持って追いかけて行っちゃって・・・」
今話あんなたちが解決した事件は置き引き。
本来なら、アゲセーヌがカメラを持ってサッとその場を立ち去るだけで成功するはずの犯行でした。

持ち主のカメラマンにはどうすることもできません。仮に盗まれたことに気づき、探偵に依頼を出したとして、その時点で全て手遅れなのです。
今回解決できたのは、たまたまあんなたちがその場に居合わせていたから。被害者不明のまま、純粋な善意で即座に捜査に乗り出すことができたから。依頼を待たずに動くことができたからこそ、今回の事件は解決できたのです。
「探偵は依頼があって動くもの」というるるかの欺瞞は、今話の物語全体の文脈でもって、すでに否定されています。
むしろ、依頼されずとも積極的にるるかを助けようと思う、あんなの姿勢こそが肯定されています。

あんなが絶対に正しいからこそ、るるかは目をそらすのです。
どうして?
「元名探偵からかわいい後輩たちへアドバイス。探偵では解決できない事件もあるの」
本当は助けを必要としているから。
「新たな秘密を見つけたとして、今の名探偵さんたちの力じゃあの謎は解けない。仮にあの謎が解けるとしても、たぶんずっと先の話。放っておきましょう」
本当は助けてほしいけれど、今のあんなたちの力ではどうせ何もできないとわかっているから。
気持ちだけなら、あんなたちはすでに立派な名探偵なのかもしれません。
けれどそれは、気持ちだけなのです。
事実、あんなたちは写真の秘密を解き明かすことができませんでした。
迷宮へのいざない
「何を見つけたの?」
「わからない。でも、あなたのことがきっとわかる、何か!」
信頼するマシュタンの占いに「名探偵が新たな秘密を見つける」と出たため、本日2回目の接触を図るるるか。
なのに、変身までしておいて、あんなから聞き出せた情報といえばこのくらいです。
それだけ聞くと、るるかはそれ以上手がかりを奪うことに拘泥せず、存外あっさり帰還します。
つまり、これが重要だったのでしょう。
あんなたちはまだ気づいていませんでした。
存在すら、可能性すら認識していませんでした。
るるかが知られたくないと思っていた本当の核心、それは「あなたのこと」ではなかったのです。
すなわちそれは、もうひとりのプリキュアのこと。
「ん? この世界にはもう名探偵プリキュアはいないぞ。数ヶ月前まではここにいたらしいけど、突然姿を消したんだ。理由は不明。この事務所を閉めるために、僕はロンドンのキュアット探偵事務所から来たんだ」(第2話)
以前、ジェット先輩がこういう言いまわしをしていました。
るるかは日本のキュアット探偵事務所を拠点に、ロンドンでも名探偵として活躍していました。そのことはロンドン支部のほうでも認識していたようです。だからこそ今回手紙で情報照会がなされます。
また、ロンドン支部は日本のこのダム湖でプリキュアとウソノワールの一大決戦が行われたことも認知し、後に大規模な調査団を現地へ派遣しています。
なのに、彼らは現在「この世界にはもう名探偵プリキュアはいない」と認識しているわけです。

るるかのことだけならまだわかります。
単純に当時まだプリキュアじゃなかっただけかもしれませんし、怪盗団ファントムへの潜入を彼らが支援し意図的に秘匿しているのかもしれませんし、あるいはるるかが名探偵を辞めたことを指して「名探偵プリキュアはいない」と言っているのかもしれません。
もうひとりはどうした?
「戦えなくなった」とか「行方不明になった」とかではなく、「この世界にはもういない」とは?
ジェット先輩自身は普通に「行方不明になった」という意味で「この世界にはもういない」と言っています。(そしてプリキュアシリーズもこういう大仰な表現をよく使いがち) だから私も第2話時点ではあまり気にせず、言葉どおり受け取ることにしていました。
けれど、それならるるかについて照会があった時点で一言くらい言及があるものでしょう。なにせ名探偵プリキュアなんだから。るるかはその関係者だったんだから。
今回るるかは給水塔の影に隠れてロンドンから届いた情報を聞きだし、そして怖れていた情報が含まれていなかったことに安堵して、一度帰還しています。もう一度あんなたちの前に現れたのは、ロンドンからの手紙以外で彼女たちが情報を得る可能性が示唆されたためです。
つまり、ロンドン支部は(るるかから見ても)もうひとりのプリキュアについて当然知りえる立場でありながら、今回彼女についての情報提供を行わなかったことになります。
意図的に隠したのか、あるいは伝えられない理由があったのか。
プリキュアシリーズの場合、こういうときお偉方はクレバーで腹黒な立ち回りをまずやりません。うっかり話し忘れたパターンならメチャクチャよくありますが。
隠したんじゃなくて、単純に忘れてしまっているんじゃないでしょうか。

具体的に何があったのかは不明ですが、マコトジュエルを破壊したとき、彼女の存在自体がウソになってしまうような事象でも起きたんじゃないでしょうか。
たとえばウソノワールにとっさの反撃として一度だけマコトジュエルを使った現実改変能力を行使されたとか、あるいは単純にマコトジュエルを破壊する禁忌の代償として世界にその存在を否定されてしまったとか。
「ファントムにいる理由が何かあるんだよ。私、その理由を知りたい」
「そうだよね。ウソで覆われた世界を、天才探偵が望むはずないもんね」
真実はウソより弱い
・・・ま、根拠不足の段階でそんなあれこれ妄想をひけらかしてもしゃーないんですけどね。
なんにせよ、るるかは名探偵プリキュアであるあんなたちを力不足と見なしており、だからこそ孤独に戦っている現在も彼女たちに助けを求めません。
それは相手があんなたちだからというだけではなく、あるいはもっと単純に、名探偵だったころの自分の弱さに失望した苦い経験があるからでもあるのでしょう。
ひとつ示唆するセリフがあります。
「私はウソノワールのウソで覆われたわけでもない。自分の意思でファントムにいる。全て私が決めたこと。あなたと同じ。自分の一歩は、自分で決める」

これはもっと以前にるるかが見聞きした出来事を受けて出てきた言葉です。
「ウソよ、覆え! 『お前は私にひざまずく』。――跪け、プリキュア。お前の行く末は私が決める」 「・・・あなたの言うことなんか聞かない! イヤだ! 私は自分の足で進むんだ! 私の答えは、私が書くんだ!!」(第13話)
あんなの強い意志が、ウソノワールのウソに打ち勝った瞬間。
今回のるるかの言葉には、あのときのあんなに対する深いリスペクトが込められています。
名探偵から怪盗団へと転身しておきながら、なぜだか全然ウソをつこうとしないるるか。
真実を武器に戦う立場に失望しつつ、それでも彼女はウソを武器に戦うことを良しとしません。
あんなの力不足を痛烈に批判し、けっして頼りにしようとせず、それでも何かに期待している様子が窺えます。
まあ、要はあんなに力さえ伴えば全部解決する構図なんですよね。『名探偵プリキュア!』って。
第2話で掘り下げられていましたが、この世界って真実よりウソが強いんです。
ちょっとしたウソひとつで、誰かが心から大切にしているものでも簡単に盗めてしまう。
怪盗団ファントムは真実よりウソのほうが尊いからウソを信奉しているのではなく、単純にウソのほうが真実より強いからウソを利用している集団です。
もともと真実サイドが劣勢な構図でありながら、それでも真実を武器にウソを打ち破る物語。
名探偵プリキュアの戦いはだいぶパワー押しです。一応ミステリではありますが、力こそパワーです。
ウソつかない子は、弱いからこそ誰より強くなる必要がある。

さて。そこまでする価値が果たして真実にはあるのか?
あんなの、そしてるるかの視点から、真実が持つ本当の価値を見定めましょう。



コメント
るるかは、ウソノワールに力及ばなかったことを隠そうとしてる?
と最初思ったんですけど、ウソノワールが格上なのは周知の事実すぎる(元・キュアット探偵事務所の住人という情報を合わせたら、およそ長期間隠し通せる内容ではない)ので、もう一捻りでしょうか。
青い蝶(仮)に申し訳ないと思って、謝るために探してるとか……これならあんなたちに関わってほしくない理由づけになりますかね。
ファンタジー寄りの妄想をするなら、ウソノワールをうまく誘導してウソの力でキュアエクレール(仮)を蘇生させようとしている・・・とか。それでいて、あんなにはウソが通用しないから、あんなにだけはこの計画をなんとしてでも隠し通したい、みたいな。
感想文を書いているときそんなアイディアが思い浮かんでいたんですが、さすがに書くのはやめました。まあ、普通に考えてやらないですよね。そういうかたちのウソを肯定しちゃうと作品テーマが大きくブレますし。
とはいえ、順当に考えたら何らかの罪悪感がお決まりのパターンですよね、こういうのって。
どうも「“元”名探偵」森亜るるか先輩の「可愛い後輩」明智あんな&小林みくるに対する物言いや態度には、「しくじり先輩・私みたいになるな」というニュアンスを感じるんですよね。
探偵時代に取り返しのつかない失態を犯し、その埋め合わせのために探偵の誇りも責任も捨て、あろうことか“犯罪組織”怪盗団ファントムの一員となった「探偵界の面汚し」。
(だからキュアット探偵事務所にとっても“触れたくない存在”となっている)
将来ある若き名探偵達には“模範的な名探偵”を全うしてもらいたい、自分のような“出来損ないの探偵崩れ”にはなって欲しくない。だから「今回の事件から手を引いて、全て忘れて頂戴」―――てな思いを抱えているように見えたんですよ。
で、もしあんなとみくるが事件の全容を知ってしまった場合、彼女達は「事件解決のために森亜先輩と同じく探偵にあるまじき対応に出る」か、「探偵としてあるべき姿勢を貫くために今回の事件に関して“見て見ぬふり”を決め込む」か、厳しい決断を迫られることになる…(そして特に明智あんなはその一本気な性格からして“前者”を選んでしまう可能性が高い)…ので、二人の後輩にはそもそも事件の全容を知ってしまう前に手を引いてもらいたいのではないか、と。
……ええと、この「名探偵プリキュア!」という作品、結構オーソドックスな探偵モノ刑事モノの定石に準拠したお話作りをしている感じながら、「時間移動」だの「予言」だのといったオカルティックな要素もお話の中核に入れているために(いくらでも“超展開”をぶちこめてしまうので)どうにも展開予想がやりにくいんですよね……いやはや。
超展開ありの本格推理といえば城平京(『虚構推理』の人)がオススメ。論理にさえ筋道が通っていれば、奇跡だろうが吸血鬼だろうが魔法だろうがミステリに組み込めることを教えてくれます。
るるかはあんなたちを遠ざけたがっている一方で、あんなたちがウソノワールを倒せるほど成長してくれることを期待しているようにも感じられるんですよね。美術館でわざわざ挑発してまで交戦した件とか。
なので、私としては今のところ彼女が「困っているのに自分から助けを求めない人」枠だと予想しています。ここ10年くらいのプリキュアシリーズに毎年必ずいるやつ。
るるかにとっての実質的な最適解は「あんなたちがあくまで名探偵として事件解決の可能性を示すこと」になるんじゃないかなと。