
きらめき――。それが正しい判断だとは限らない。

「くれあと推理とアイスクリーム」
大きな出来事
メインキャラクター:るるか
目標
できるだけ穏便にファントムの仕事をこなし、ウソノワールにマコトジュエルを渡さない。
課題
マコトジュエルのありかはミラージュの書によって判明してしまうし、今回はゴウエモンに見張られてもいる。そもそも盗まない、という手段は使えない。
結末
【成功】
くれあに公然と予告状を渡し、自身が怪盗だということも明かして危機感を煽ることで、あんなたちの介入を促した。おかげでマコトジュエルは無事に彼女たちが持ち帰る結果となった。
ただし、ウソノワールに意図がバレてしまった。
彼の手中にあったキュアエクレールのマコトジュエルを材料に脅されてしまい、今後はもうわざと仕事を失敗することができなくなった。
心の変化
【ネガティブ】
キュアエクレールの記憶は依然として戻らない。
彼女のマコトジュエルを回収するというか細い希望への道筋も絶たれ、身動きが取れなくなってしまった。
バトル
想い出の写真を素体としたパティシエ型ハンニンダー。
苦戦
今回もキュアアルカナ・シャドウとの三つ巴。
勝利
くれあが異空間に迷いこんでしまったことに気づいたるるかが一時戦線離脱。その間にハンニンダーを浄化した。
ピックアップ
ムー 1999年8月号

まさかのホンモノ。(細かいところは違うけど)

しかも「プロップ(=小道具)協力」としてちゃんとクレジットされてるし。
ブルーベリータルト

「そのブルーベリータルト、決まって頼む常連さんがいるんです。お客様に雰囲気が似てて、気に入ってくれるかなって」
その後の話の流れと総合すると、どうやら(ジェット先輩ではなく)あんなのことらしい。言われて確認してみれば第10話でも食べていた。

たしかに。ウソが極端に嫌いなところとか、ひとりで思い詰めがちなところとか、それでいて自分のことは後回しにしがちなところとか、よく似ている。
ちなみにもう1個添えられている苺のミルフィーユはみくるの好物。
ずいぶんな大盤振る舞いだが、販売品の1ピースと比べるとかなり小さくカットしているので、もともと試食用か何かとして用意してあったものなのかもしれない。
「俳優の金城タクヤみたいでイケメンでしょう」

元ネタはおそらく金城武。1999年ごろ人気を博していた俳優で、日本人と台湾人のハーフという出自も相まって、どこか日本人離れした雰囲気を持つイケメンだった。当時26歳。
修業時代の店長に似ているかというと・・・、現在の顔のほうがまだ似てると思うよ。
なお、「イケメン」という言葉自体も1999年に生まれたばかりの新語。女性向けファッション誌『egg』内のコーナー「クリクリ矢野のイケてるメンズ」から急速に広まったとされる。
厳密にはもう少し前、ゲイ界隈で使われだした用語(「イケる」ってつまりそういうこと)だという説もあるが、まあ、見なかったことにしていいんじゃないかな。
香りと記憶の結びつき

「プルースト効果」という。
マルセル・プルースト作『失われた時を求めて』にて、主人公が紅茶に浸したマドレーヌを食べて幼少期の記憶を思いだしたシーンが名前の由来。
アメリカの嗅覚心理学者レイチェル・ハーツ博士の研究によると、過去の記憶に関連する嗅覚情報は、同様の視覚情報や聴覚情報と比較して、同時に呼び起こされる情動が有意に鮮明で感情的だとされる。(記憶情報の呼び出し能力自体は他の五感との違いはない)
これは、五感のうち嗅覚以外の刺激が視床で一次処理されてから大脳新皮質(理性を司る)へ伝達されるのに対し、嗅覚刺激だけはダイレクトに大脳辺縁系(感情を司る)へ送られるためだと推測されている。
人間にとって最も情報量の多い感覚刺激といえば視覚なのだが、その一方で生まれた瞬間はまだ目がぼんやりとしか見えておらず、嗅覚だけを頼りにして母親の乳房へ辿りつかなければならない。嗅覚情報は生物としてのプリミティブな行動原理に密接に結びついている、というわけだ。
ボブスレー

2人もしくは4人で1つのそりに乗り、コースを滑走する競技。最大時速は140km/hにも達し、「氷上のF1」とも呼ばれる。
(考えてみれば当たり前のことではあるが)そりには実はちゃんとブレーキ装置が取りつけられている。
ただし、コースが氷でできている都合、ブレーキをかけるとガリガリとコースを削ってしまい、後続が走行できなくなってしまう。このため、ゴール前にブレーキをかけたチームには審査員の裁量で即座に失格、もしくは罰金、将来に渡って競技参加禁止など、やたらと重い罰則が科されることになっている。
ブレーキをかけていいのはゴールしたあとだけ。競技中はひたすらノーブレーキで、事故を起こさないようバランスを取りながら直滑降しなければならない。
今回初めてルールを調べたけど、・・・そんなに狂気じみたルールだったの、これ。
キュアエクレールの百合

前話のしるくの楽屋にあったユリやパティスリーチュチュで咲いていた百合は実在するユリだが、これだけ架空の品種。オープニングに登場するのもこっちの百合。
それにしてもデカいな、このユリ。
これまで蝶がエクレールで百合はるるかの象徴だと思われていたが、案外どっちもエクレールなのかもしれない。蝶はプリキュアとしての力、百合は変身者の身体、みたいな使い分けで。
じゃあ第15話でロンドン時代のるるかの写真にこの花が写っていたのは何なのさ?という話にもなるが。
物理的にはるるかがロンドンから持って来て植えたものだ、というだけ?
意外な暗躍
「青き蝶が舞い戻る。そして4つの花から羽を止める一輪を探す」(第21話)
怪盗団ファントム向けにキュアエクレールの復活を予告するにしては妙な言いまわしだから引っかかってはいたのですが(「青き蝶」は間違いなくキュアエクレールの象徴。「4つの花」は4人のキュアエクレール候補のことのはずだから、これだと4人のうち誰かが“これから”キュアエクレールになるって話になっちゃう)、単純な話、これ視聴者向けに与えられた(メタ的な)情報だったんですね。
もう何度も触れていますが、青い蝶が百合に留まっている姿はオープニング映像中に出てきます。
そのうえで、第21話ではエリザの人となりについて語られるシーンで象徴的に百合のつぼみが登場しています。
第22話ではしるくが大切なイヤリングを取り戻して喜んでいるシーンで百合の花束。ただし品種が違います。
今回第23話、くれあがるるかと邂逅したあとのラストシーンにおいて、開花した(オープニングと同じ)百合が描かれます。

要は「オープニングで蝶が留まっているのと同じ花を探せ」という謎かけだったわけです。
これならメイン視聴者層である未就学児にとっても程よい難易度。
謎を解く鍵が最初に示されているから視聴者参加型企画として公平でもある。
次話のどこかで、れいを象徴するように何かの花が登場したら確定ですね。(たぶん百合以外の花か、踏みにじられるなどして散った百合が登場するんじゃなかろうか)
個人的にはしるくがキュアエクレールであったほうが物語としてキレイだしドラマチックでもあって仮説として好きなんですよね。
今回るるかを一番動揺させていた、“名前を教えていないはずのくれあがるるかを名前呼びした”というドラマも、“実は事前にみくるから教わっていたから可能なことだった。別に記憶が蘇ったわけではない”というミソが付いちゃっていますし。あれなら前話でるるかがしるくを呼び捨てにしていたことのほうが、記憶喪失者を当てるロジックとして素性がいいです。
ストーリーだけ見たら今でもしるくが最有力の候補だと思います。
・・・ただ、こう大々的にキャンペーンをやってるときって、だいたいメタ要素のほうが強いんですよねー。
次話で予想を覆す花描写(たとえばれいにもあの百合の花が与えられるとか)でも出てこない限りは、さすがにくれあかーって感じです。
さて。

「アルカナ・シャドウ。マコトジュエルを逃すとは。――これが必要なのだろう? ならばマコトジュエルを手に入れろ。約束の日は近い」
ウソノワールからるるかへ向けた最後通牒。
写真の青い蝶はキュアエクレールそのものの姿ではなく、何かの技を使っているときのオーラが写っているものだったので、第21話の予言で語られた「青い蝶」とは、おそらくキュアエクレールの力(あるいは変身能力)を象徴するものなのでしょう。
ならば、現在ウソノワールの手中にあるマコトジュエルが(記憶喪失中の)キュアエクレール候補の手に渡ったとき、奇跡が起こる展開になるはず。
いったいるるかはどうやってマコトジュエルを取り戻すんでしょうね。楽しみですね。
・・・というのはともかく。

なんでこの場にゴウエモンがいるんでしょうね?
他の2人も同席しているならまだしも、ゴウエモンだけ。
私としてはそこに一番びっくりしました。
私、この人のことを見誤っていたかもしれません。
「知ったことか。こちとら何より忠義の男だ!」(第22話)
ひょっとしてアレ、本当だった?
勤務態度最悪、組織の目的より自分の矜持優先、背信行為の常習犯な普段の仕事っぷり。組織人としてあまりにもあんまりな人間性から、私てっきり「そう思ってるのは本人だけ」みたいなタワゴトかと思っていたんですが、この人もしかしたら、本当に忠義の人だったのかもしれません。
たしかに、前話でるるかが過去にキュアエクレールと繋がっていたという重要情報をキャッチしてはいました。
もし、得た情報をゴウエモンがウソノワールにマジメに報告していたなら、今回ウソノワールが急に確信を持ってるるかを脅しにかかったことにも納得がいきます。
逆言うと、そういう貢献でもなければ、この場に1人だけ同席している理由がわからなくなります。
視線の動きに注目してください。
「お。いい根性してるじゃねえか!」

「おう! 任しとけ!」

「ハンニンダー!」

「おう! 任しとけ!」は、一時戦線離脱を宣言したるるかに対する発言です。
「ハンニンダー!」は、もちろんハンニンダーに対する発言。なお、このときあんなとみくるは、るるかとハンニンダーの中間の位置にいました。
じゃあ、「お。いい根性してるじゃねえか!」これは誰に対する発言?
この場に他にいるのはくれあだけです。
本来、怪盗団ファントムとプリキュアがバトルするこの異空間に部外者は入って来れません。原理や条件は明かされていませんが、とりあえずこれまでは怪盗団ファントムとプリキュア、妖精以外は誰も入ることができませんでした。
くれあが侵入できた理由は謎ですが、少なくともこれでゴウエモンが「いい根性してる」と評する理由が生じることになります。くれあに向けて言った言葉として確定していいでしょう。
どうしてこの人、くれあが入ってきたことに驚かなかったんでしょうね?
どうしてこの人、るるかがプリキュアとのバトルと何の関係もない理由で戦線離脱することを承知のうえで、気持ちよく送り出したんでしょうね?
・・・もしかして、泳がせました?
「探偵さんにお願いしたの。それがあなたの望みでしょう? だって、写真を奪う隙はいくらでもあったはず。でもあなたはわざわざ予告状を渡してきた。私がキュアット探偵事務所に依頼を出すように」
「安心しろい! このゴウエモンが、ア、いただいた!」
「ええ!?」「るるかさんはおとりだったの!?」
「頼まれたわけじゃねえ。後輩思いな先輩の優しさよ!」
今回、るるかはわざとあんなたちの介入を促すように立ち回りました。
くれあが推理したとおり、今回予告状を出さなければならなかった理由はあんなたちを呼ばせる以外にありません。
前話ではしるくと会話する機会をつくる、なるべく舞台上演の邪魔にならないようにする、といった目的を読み取ることができましたが、今回は何もありません。くれあと話をしたかったにしても店内飲食すれば向こうから話しかけてきますし、写真は隙だらけでいつでも盗みだすことが可能。だから今回に関しては、本当にあんなたちに事件を解決させる以外の目的で予告状を出す理由がありません。
もしるるかの計画通りに事が進んでいたら、お店の前でちょっと戦ってすぐ撤退するだけで済んでいたんです。
その既定路線をひっくり返し、くれあが後を追いかけて異空間に迷いこんでしまうような渾沌とした状況をつくりだしたのが、ゴウエモン。

正しい心のきらめき、誤った心のきらめき
くれあの言う「きらめき」は結構特殊なニュアンスで使われているので、先にその意味を確認しておきましょう。
「心にあるまっすぐな気持ち。“楽しい”や“うれしい”だけじゃない、“悲しかっ”たり“さびしい”って気持ちだってあるの。ムリして抑えることはないわ。心のきらめきは真実だから。私はその人のきらめきを知ってケーキをつくってるのよ。楽しい気持ちはもっと楽しくしてあげて、さびしければそのさびしさを癒してあげたいの」(第17話)

心のきらめきとは、素直な情動のことです。
楽しい思いやうれしい思いだけじゃありません。
悲しい思い、さびしい思いだって、多様な心のきらめきのひとつです。
よくないとされることは唯一、ムリに気持ちを抑えこもうとすることだけ。
なぜなら、気持ちを表に出してくれさえすれば、誰かがその寂しさを癒やしてあげることができるから。
うれしいことをみんなと共有すればもっとうれしくなれるように、辛い気持ちだってみんなと共有できれば楽になれる。くれあはケーキづくりを通じて、みんなの心のきらめきを共有できる“誰か”になろうとがんばっています。
「あなたが怪盗? 信じられません」
「私の――、私の名前すら知らないのにどうしてそう思うの?」
「じゃあ、名前を教えてくれますか? ・・・ひとつだけ、あなたのこと知っているわ。いつもアイスを幸せそうに食べてくれる。それだけは知っています」
知ろうと思います。受け止めたいと願っています。
たとえ教えてもらえることが僅かだったとしても、そのなかで理解に努めます。
私はあなたが怪盗だとは思わない。だって、本当に怪盗だって思う言動をまだ共有していないから。
私はあなたがアイスクリーム好きなんだと思う。だって、いつも本当に幸せそうに食べてくれるんだから。

るるかが教えてくれたことはほんの僅か。
だけどくれあは知っています。
るるかは、自分が怪盗として大切な写真を盗みに行くことを、くれあに知ってもらいたがっている。
それだけは共有させてもらえたから。
おそらく、るるかにとってくれあという人物はものすごくやりにくい相手でしょうね。
るるかの話術はそもそも、自分からはウソをつかずに相手に誤解されることを目的としています。
勝手な想像をせず、とにかく相手をありのままに理解しようと努める、くれあのような子には通用しません。
そんなくれあが、るるかを評してこう言います。
「純粋――。ユリの花言葉よ。急に思い出して。・・・純粋だからこそ、誤ったほうに突き進んでしまうのかもしれない。あの人、あなたたちふたりのきらめきを信じているのね」
心のきらめきに正も邪もありません。
素直な情動である限り、それらは全て等しく尊いもの。
裏を返せば、くれあはすでにるるかが本当の思いを語っていないことを見透かしています。
よくないとされることは唯一、ムリに気持ちを抑えこもうとすることだけ。
以前、くれあは道ばたで黄昏れているあんなに声をかけ、ケーキづくりに誘いました。
彼女が胸に抱えていた寂しさ。お母さんに会いたいという、誰に相談してもどうしようもないからひとりで抱えこんでいた、辛い気持ちを吐き出せるようになってほしい、と。
くれあから見て、るるかはそのあんなに似ていました。
すごく辛そうなのに、何も教えてくれない。ずっと辛そうにしているってことは、どこにも気持ちを打ち明けられる人がいないということ。できれば自分に打ち明けてほしいのだけれど、残念ながらそれは叶わない。自分はまだあの子に受け入れられていない。

ただ、希望がひとつありました。
るるかはくれあがあんなたちを呼ぶことを前提に立ち回っていました。あんなたちなら、自分がこういう悪事をはたらこうとすれば、きっとこういうふうに動いてくれるって信じていました。彼女たちの素直さを信じていました。
誰にも何も打ち明けられない子だということには変わりありません。ただ、それでも彼女には頼れる人がいる。素直に打ち明けることはできなくても、誤解されるようなことばかりしていても、彼女の行動原理は本当は素直でした。
あんなによく似ていて、あんなの素直さをよく理解しているあの子は、きっとあんなと同じで本当は素直な子なんでしょう。
あんなと同じで、誰にも打ち明けられない問題を抱えているから、ひとり苦しんでしまっているだけで。
「待って! どうして怪盗団にいるの?」
「私のきらめきに従った。そんなところかな。――さようなら」
「アイス、いつでもお店に食べに来てください。待っているわ、るるかさん」
いつかその悲しい心のきらめきを、自分にも見せてほしいと願います。
そうじゃなかったら、せめて、アイスクリームを食べたときの幸せな思いだけでも、共有させてほしいと願います。
さびしいときはそのさびしさを癒してあげられる。
楽しい気持ちはもっと楽しくしてあげられる。
心のきらめきそのものに良いも悪いもありません。
誤った心のきらめきというものがあるとしたら、それはちょうどるるかのように、誰とも共有する気がない思いのこと。
心のきらめきは、どんな色であれ、誰かと共有されてはじめてその人の心を彩ってくれるのです。
共有してあげたいと願います。
だって見るからに、ひとりぼっちで辛そうにしている子だったから。

・・・ねえ! やっぱ掘り下げれば掘り下げただけキュアエクレールっぽくなくなっていくんですけど!?
この人だいぶ博愛の人だから、るるかから向く強烈な執着の矢印と釣りあう未来が見えないんですけど!!



コメント
>釣りあう未来が見えない
プリキュア的にはただの通常運転なので多分大丈夫でしょうw
しかしこうなると、るるか大好きなマシュタンはどう思ってるのやら。
まあ本人気にしてなさそう(むしろキュアエクレール絡みに協力的ですらある様子)なので、彼女たちなりにいい感じの距離感ってのがあったんですかね。るるかもまたマシュタンが好きなのは事実ですし。
果たして、キュアアルカナ・シャドウ/森亜るるかは本当に、キュアエクレール/帆羽くれあの記憶を「取り戻したい」と望んでいるんでしょうか……?
いやむしろ、るるかはくれあにキュアエクレール時代の記憶を取り戻して「欲しくない」んじゃないかと思えるんですよ。もし本当にくれあの記憶を取り戻させたいのならば、むしろ積極的に明智あんな/キュアアンサーと小林みくる/キュアミスティックを介入させようとするんじゃないかと。
るるかのかつての盟友キュアエクレールは、その優しさ故に名探偵プリキュアとして数多の戦いに臨み、自身の心身をすり減らしていった。そしてウソノワールのマコトジュエル奪取を阻止しようと突入を敢行したとき―――エクレールはその突入が変身能力と記憶を失うリスクを伴うことを知らなかったわけでも、ウソノワールの野望阻止のため自己犠牲を払ったわけでもなく―――名探偵プリキュアとしての自分を捨ててしまいたいという欲求(衝動)に取りつかれていたのかもしれない。
そういう盟友キュアエクレールの悲痛な心境を、彼女の突入の瞬間に初めて気付いたるるかは、エクレールに「過酷な戦いの日々のことなど忘れ、(パティシエとして)戦いとは無縁の平穏な人生を送ってもらいたい」と願い、自分一人でプリキュアの戦いを背負い込んでエクレールを戦い(の記憶)から遠ざけるよう腐心してきた、のではないか……と。
そうだとすると、ウソノワールがアルカナ・シャドウに、エクレールのマコトジュエルをちらつかせて服従を強要したあの恫喝の意味は「キュアエクレールの記憶を取り戻したかったら――」ではなく、「キュアエクレールの記憶を取り戻させて過酷な戦いの世界に再び舞い戻らせたくなかったら――」であったのかもしれません。
……とはいえ、
そりゃ森亜るるかにとっては「苦楽を共にした盟友がその思い出の日々をるるかの名前ごと忘れて、自分と決別した」ことを受け入れることは相当な苦痛の筈で、今の彼女は「エクレールに辛い戦いの日々のことなど忘れたままでいて欲しい」という思いと「あの思い出の日々を(エクレールの記憶を復活させることで)取り戻したい」という欲求の間で、心を引き裂かれた状態になっているのかも……。
名前の呼び方とその反応に関して、
「しるく(呼び捨て)」―――森亜るるかの明智あんなに対する考察が不十分で、あんなの“呼び捨てにする相手のボーダーライン”を読み違えた。(そもそも森亜るるかは元から割と粗忽な上、当時はキュアエクレールのことでかなり焦っていたため、初歩的なミスを犯しても不自然ではない)
「るるか……さん」―――かつてキュアエクレールとして活動していた頃には親しげに「るるか」と呼び捨てにしていた(であろう)帆羽くれあが、今は他人行儀に「さん」付けしてきたことに、るるかは(記憶喪失の故だとわかってはいても心情的に受け入れきれず)衝撃を受けた。
……ということで、一応説明はつくと思います。
ま、キュアエクレール=帆羽くれあであって、家入しるくではない―――という結論ありきの考察ではありますが。