
でも、信じられないことってときどき起きるの。

「姫と王子」
大きな出来事
メインキャラクター:ひめか
目標
幼馴染みの央士とずっと仲よくしていたい。
課題
どうやら央士にはカノジョができたらしい。変わらないものは無いのだと実感する。
ひめか自身、いつの間にか、央士に恋していたようだ。幼馴染みの関係が壊れてしまう気がして気づかないふりをしていた。なるほど、たしかにララの言うとおり、何事にもいつか終わりは来てしまうもののようだ。
結末
【失敗】
今さらこの恋が成就する見込みはなかったが、ララに背中を押されて、それでも央士に告白した。
もちろんフられた。
心の変化
【ポジティブ】
これまでの幼馴染みの関係は壊れた。けれど、不思議と後悔はない。
今は新しい恋がしたい。今回の件が起こるまで自分のなかにあることすら気づいていなかった恋心。それが、存外自分にとって切実で、大切で、愛おしいものだってわかったから。
キーワード
“王子様”
「王子様のことが知りたいのよ」
「王子様? 王子様って何?」
「たとえば、透き通るような目? 風になびくサラサラの髪? ・・・王子様って何なのかしら」
「この世界のどこかに私を愛してくれる王子様なんているのかしら。探さなきゃ、本当の愛を。そもそも本当の愛って何なのかしら。茉里にはわかる?」
「それ以上喋ったら置いてく」
「教えて。どうやって王子様と出会ったの?」
「オウジって、名前が央士やねん。守山央士。それで私が米原ひめか。央士とは同じ日に同じ産婦人科で生まれてん。だから家族ぐるみでずっと仲ええ感じ」
「すごいわ! そんなふたりが出会うなんて! それ知ってるわ! 運命というものよ! 他にも何か共通点はあるの?」
「んー。あ。同じところにほくろあるな。ここ」
「私にはないわ! やっぱり運命に違いない!」
「ララちゃん、おもろいなー」
「私、王子様を探してるの。央士さんのことじゃないわよ。本当の愛を感じられる、運命の相手を探しているの。・・・でも難しいわ。ひめかちゃんと央士さんはそれこそ運命の2人に見えるのに」
「『あいつだけが王子様ちゃう』――いい言葉よね。私も見つけられるかな、自分だけの王子様」
「影響されやすいな・・・。今は新鮮な牡蠣探して」
ピックアップ
「は? 王子様っていえば獣のような目やろ。ムキムキの体」

あんまり確信を持てる情報ではないが、1990年代イギリスで活躍したボクシングのスター選手、”The Devil Prince” ナジーム・ハメドのことを言っているのかもしれない。
傲慢とすら感じさせる派手なパフォーマンスと派手なローブ、短く刈り揃えられた髪に精悍な顔立ち、フェザー級の小柄な体躯ながら引き締まった筋肉、変幻自在なフットワークから繰り出される、獣のように獰猛な一撃必殺のカウンターパンチ。単純に強いだけでなく、強烈なキャラクター性と自覚的なエンターティナー志向でボクシングファンを魅了したそうな。
テスト勉強中の机

やべえ。高校数学ともなるともう公式とか全然覚えてない・・・。このあたりって数学Ⅱの単元だから文系コースでも習っているはずなのに・・・。
あ。ポモドーロタイマー使ってる。茉里もそのあたりは流行りものを活用しているのか。
私もAntigravityにタイマーアプリを作ってもらって、このブログに上げる記事を書くとき使っています。
制服

茉里がジャージ登校しているということは、ララが着ているのは彼女の制服か。スカーフの結びかたまでは教えてもらえなかったようだ。
というか、これ中間テスト当日なのよね。(わかっていたけど)剛のものすぎない?
顎マスク

2020年前後のコロナ禍でマスク着用が数年間半ば強制された結果、マスクは身近なファッションアイテムのひとつとしてその後の社会にも残ることになった。厳密にはコロナ禍以前から普段使いする人々はそれなりにいたが、明らかに増えた。色柄ものなど個性を演出できるアイテムも簡単に手に入るようになった。
顎マスクなんてもはやマスクとしての機能をまったく果たしていないわけだが、小顔っぽく見せたり、大げさすぎない口元のオシャレとして演出できたりと、ファッションアイテムとしては便利なんだとか。
パルム

棒に刺したバニラアイスにチョコレートをコーティングした、森永乳業製の食品。日本の棒アイスとしては珍しく(ラクトアイスやアイスミルクではなく)アイスクリームを使用しており、濃厚な味わい。(※ 最近はアイス全般の高級指向が進んでいるため、昔ほどは珍しくなくなったが)
ララはアイスそのものを初めて食べたから感動しているのだろうが、アイスを食べ慣れた普通の人間にとっても、地味な見た目に反してリッチな味わいのこのアイスは驚きに満ちている。視聴者がララの感動に共感しやすくするための小道具。
「本当にお久しぶりです。ララ様」

やっぱりチョウチンアンコウじゃねーか!!
idealistic ideals
「祥弥さんはテストとやらはいいの?」
「ええねんええねん、テストとか。一生滋賀から出えへんし」
「固い決意なのね」
「せやで」
「ステキね!」
「――ステキ?」
「信念があるってことでしょ? とってもステキ!」
「・・・おー」

こうして見ると、ララの瞳ってやっぱりキレイですね。
茉里の場合は性格的にぼんやりした感じの瞳でも違和感ないので、一緒に並んでいても気にならなかったんですけどね。ひめかのようにキラキラしたキャラが、茉里と似た感じの瞳のハイライトで描かれているのを見ると、改めてララが特別なんだなあと実感します。
あまりにもまっすぐすぎて、祥弥も思わず姿勢を正してしまうほど。

普通の感性と違うから、というだけではありません。浮世離れしているからではありません。
変わった考えかただとは思いますが、それでもララの考えかたのほうが正しいと、祥弥にも思えるからです。
ララの瞳に映る祥弥はカッコいい人物でした。
早くから自分の人生を見定め、社会の常識から逸脱しようが気にすることなく、信念を持って己の進むべき道を切り拓いていく――。
んなもん、ただの堕落したサボり魔なんかより100倍カッコいいに決まっていました。
祥弥もカッコいいものは好きでした。カッコよくなるために何か努力しているかってーと全然何もやっていないんですが、それでも女子にはモテたいし、チヤホヤされたいと思います。
だったらカッコよくなればいいじゃん、というのが当然の正論。
ララの言っているのがまさにそれでした。まっとうにカッコいい、実のところ祥弥にとっても理想的な祥弥のイメージ。
そりゃあ、そうなれるもんならそれが一番さ。きっと努力も苦労もものともしない、現実離れした強靱な精神力が求められるだろうけど。
現実的ではない。
でも、たしかにカッコいい。
キラキラしている。
今話のララは、そういう、理想化された圧倒的正しさを語る役割を演じます。
そりゃあまあ、人魚だから、現代の滋賀県では浮いてしまうようなことばかり口にしますよ。でも、正しいんです。人間からしても。
そうなれたら苦労しないわ!ってツッコみたくなるけれど、それでも、できることならそうありたいものだと、誰もが心の底では思っています。
「それで、婚約の誓いはもう交わしているの?」
「ん・・・。うへぇ、何言うてるの。だから、付きあうも何も、ただの幼馴染やから!」
「じゃあ愛しあっていないということ!?」

舌禍。
あまりにも舌禍。
ララ本人が、というより周りの人たちがゴリゴリに振りまわされ疲弊するタイプの禍い。
なにせ、正しいのは絶対的にララのほうだから。
「本当の愛を感じられる、運命の相手を探しているの。・・・でも難しいわ。ひめかちゃんと央士さんはそれこそ運命の2人に見えるのに。ねえ、ひめかちゃん――」
「ララちゃん。私、さっきウソついた。やっぱり央士のこと、好きやわ」

ララが幼馴染みの掠れた恋心に切り込みます。
すでに終わってしまった恋。今さらどうしようもない恋。
だけど、だから何だ。
「私、お節介だと思うけど――、あなたに、央士さんに気持ちを伝えてほしいって思う。後悔してほしくないの」
そこにあるべき絶対に正しいものを、ララのキラキラした瞳が見つけだします。
たとえ、現実には叶いっこない恋だとわかっていても。

friends end
「央士とは同じ日に同じ産婦人科で生まれてん。だから家族ぐるみでずっと仲ええ感じ」
「それ知ってるわ! 運命というものよ! 他にも何か共通点はあるの?」
「んー。あ。同じところにほくろあるな。ここ」
普通の友達よりちょっぴり長い付きあいで、普通の友達よりちょっとだけお互いの深いところまで知っている。それだけの関係。

恋しているつもりなんてありませんでした。
一緒にいるのが当たり前でした。
いつまでも一緒にいられないんだって思い知らされたとき、・・・一緒にいたかったんだって、本当の気持ちに気づきました。
「それで、好きになったのね」
「ないない! みんなすぐそうやって恋愛に結びつける。私はずっと今みたいに仲いい関係でおれたらいいねん」
「ずっと今みたいに?」
「そう。央士とはずっと今のままでいいねん」
「そんなの無理よ。いつか必ず終わりが来るの。絶対」
それって恋なのでしょうか?
恋って何なんでしょうか?
ララは、王子様に優しくされたとき彼のことを好きになったのだといいます。
覚えていないはずの記憶が心の片隅に残っていたことに、運命を感じたんだといいます。
つまり恋って、役に立つ相手だから一緒にいたいと思う気持ちのこと?
たまさか得られた偶然の縁に人生を預けたいと思うことが、恋?

央士の隣に自分以外の女の子がいるのを見たとき、ひどく心かき乱されました。
央士が普段自分に向ける笑顔とは違う、甘くとろけた瞳を見たとき、頭が真っ白になりました。
それは世界の終わりでした。
これまでひめかを守ってくれていたものが永久に失われる危機でした。
それが、ひめかにとっての恋。
自覚したときには全てが遅すぎて、叶うはずがなく、たとえ叶ったとて、叶わなかったとて、どう足掻いても居心地のよかったこれまでの関係のままではいられない。それが恋でした。

恋とは苦しいもの。切ないもの。むなしいもの。
「でも、信じられないことってときどき起きるの」
だけどララは、ひめかに告白してほしいと言います。
いつか遠い日に王子様と一緒に過ごせた幸せな記憶。
ララの恋は叶ったのでしょう。言葉を交わせずとも思いは通じあえた幸福な奇跡を、彼女は語ります。
だからまだ諦めるなって?
「それからあの人は大切な存在になった。言葉がなくても私たちは通じあえてる。そう思ってた」
「・・・思ってた?」
けれど、ララの語る恋物語は意外な展開に。
そういえばこの子は王子様を探しているんでした。つまり、お話しに登場する王子様とはもう――。
でも、だったらどうして今そんな話をするのでしょう?
悲恋に終わった物語。奇跡が続かなかった物語。
そんなものが、叶わない恋に苦しんでいるひめかをどう救ってくれる?

「後悔してほしくないの。私もあの人に本当に言いたいことだけは言えなかった。私はもうあの人に会えないけど、あなたはまだ、それが、できるんだから」
ダメ元の告白に奇跡を祈る姿勢ではありませんでした。
「告白してほしい」と言いつつ、ララの視線は次第に下に落ちていきます。
まるで、告白することでひめかがまた傷つくことを予見しているように。



それでいて、彼女の自己満足のために身勝手なことを言っている様子ではなく。
何か、これから訪れる失恋がひめかにとって大切なものとなることを確信しているかのように、
ひとしきり語り終えたララの瞳は、キラキラと、まっすぐひめかを見つめていました。

まったく不思議な物言い。
恋して、裏切られて、傷ついたはずの彼女は、それでも今再び王子様を探しています。
辛い思いをすることがわかりきっているひめかの告白を、それでも誠心誠意後押ししようとしています。
それが、恋?
知りあったときからずっと、延々、変なことしか言わなかったこの不思議な少女は、どうやらひめかの知らない恋の秘密を知っているようでした。
lovely ramble

「うううー! 大丈夫。思い切り、泣いていいのよ・・・!」
結果がわかりきっていた一世一代の愛の告白は、もちろん奇跡など起きようはずもなく、あっけなく砕け散りました。
そしてぼろ泣きする赤髪の少女。
まるで賢者のように静かな確信を持ってこの結末を推していた、当の本人が、恋に破れたひめか以上に激しく情緒を揺さぶられていました。

もちろんひめかも深く傷つきはしました。涙が止まりません。
けれど気分は晴れやかでした。
なるほど。これが恋。
現実に奇跡は起こりませんでしたが、けれど確かに、信じられないことを体験することができました。
告白したことに後悔はありません。
「泣いてんのはあんたやん」
泣きじゃくるララの隣では、もうひとりの少女が呆れたようにぼやいています。
一連の経緯をあまり理解しておらず、おそらくはそもそも踏み入ろうとすら思っていない、ララとはまた違った意味でマイペースすぎる少女。
どうやらララのこともひめかのことも慰める気はゼロらしく、手持ち無沙汰そうにペットボトルでダンベルトレーニングをしています。
ひめかが体験した恋の秘跡にまだ触れていない様子の彼女は、けれどなんだか、ララと息ぴったりのように見えました。

いったいどういう関係なのでしょう。
ララが学校でしていること全部に迷惑そうな顔をしているのに、そのくせ彼女に制服を貸しているのはこの子。それも、2回も。
2人のとぼけたやりとりが、密かにひめかは気に入っていました。
まったく。つくづくララの周りには面白そうなことがあふれています。
ララのおかげで救われました。
それはララが純粋で、まっすぐで、キラキラしている子だったから。
それでいて、この世の苦いものを全く知らないわけでもない。
失恋を経験しているようです。大切な人に裏切られたことがあるようです。
言えないことがあったようです。伝えられなかったことがずっと心残りだそうで。
・・・でも、恋したことに後悔はしていない。
言えなかったことに心残りはあるけれど、恋なんてしなきゃよかったとは思っていない。
裏切られても、その人のことを今でも大切に思っていて。
悲しい結末で閉じたその恋物語を、今でも愛しく思っている。
恋は幸せな想い出でした。
かつてのララの恋は。
そして、これからはひめかの恋も。
「あいつだけが王子様ちゃうしな! 新しい王子に出会えるのが今から楽しみや!」

だから、いつかまた、同じ恋がしたい。
ころころ目まぐるしく表情が変わるララと違って、隣の友達は何を考えているのかよくわからないぼんやり顔。
言動から伺う限りは、なにかとお騒がせなララの面倒をよく見ている、優しい子なんだと思いますが・・・。さすがにこの反応の薄さだと不安になってきます。
友達、でしょ? たまらず聞いてみると、ずいぶんたっぷり間を空けてから、小さく頷きます。
それを見て大喜びするララ。


なるほど。
2人の関係を見ていて、ひめかまで嬉しくなります。
ひめかはララに救われました。
失恋を経て、それでも誰かを好きになりたい気持ちが変わらなかったその強さ。
ひめかはララの強さがあったからこそ、失恋を乗り越えてなお、恋する気持ちを失わずに済みました。
だけど、そのララも実は友達に支えられていて。
ずっと、央士に守られていました。
だから央士の隣にいられなくなってしまうのが恐ろしくて、今までの関係が変わってしまうのが怖くて。
でも、ララがいてくれて、その友達の茉里がいてくれたから、前へ進むことができたんです。
「ララちゃん! またいつでも会いに来てね!」
友達との出会いも、恋に負けないくらいステキなものでした。



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