ふらいんぐうぃっち第2話 ばっけはマスト東北訛り

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(津軽人に対して)とてもあざといアニメ

とりとめのないこと

 残雪とトタン屋根とリンゴ畑と岩木山。のっけから津軽人の郷愁狙い撃ち。青森県の左半分ならだいたいどこでも見られる景色だけれど、それ以外のどこにも見られない景色。芽も葉もついてない茶色一辺倒のリンゴ畑となだらかで女性っぽい岩木山がなによりのポイント。
 勘違いされがちですが津軽人の郷愁に緑色はありません。土と枯れ草の茶色、曇り空とアスファルトの灰色、雪の白、山の青、林の黒。ええ、林は黒です。嘘だと思うなら冬の青森を観光してご覧なさい。つまらないですが。草が見たけりゃ南に行け。

 玄関先に灯油のポリタンク。だいたいどこの家でも納屋に灯油を備蓄しているものですが、まあ毎日外に汲みに行くのもしんどいですからね。ストーブの灯油が切れたときは玄関先のポリタンクから汲んで、それが切れたときだけいよいよ覚悟を決めて納屋に向かうのです。
 最近は全室暖房が普及して、納屋にでっかいドラム缶が鎮座する家も減ってきましたが、かわりにホームタンクの灯油をガンガン消耗します。490リットルタンクとかだと下手したら毎週給油。
 ちなみに青森では5月くらいまでは普通にストーブを焚きます。お年寄りの居る家だと6月でもまだ焚いてたり。

 風除室。千夏さん戸を1枚しかくぐっていないように見えますが、実際は2枚ついています。この構造がないと寒いし、家の中に雪が入ってきちゃいますからね。民家だけでなくコンビニやデパートなんかにも風除室は大抵あるので、雪の少ない地域に行くとなんともいえない違和感を覚えます。
 ちなみに先ほどポリタンクが置いてあったのもここ。雪かきの道具の保管場所になるのもここ。日当たりよく風も当たらないので、花が好きな人はよくプランターも置いてますね。

 たか丸くん。たぶん県内で一番人気のあるキャラクターです。でもゆるキャラ押しはほどほどに諦めた方がいいと思うんだ。いえまあまともな地域振興策に比べたらずっとコストが安いでしょうから、やらないよりやった方がマシって都合も想像できますが。

 家の中で迷子。私も6歳くらいまで祖母の家でよく迷子になっていました。普段開いてないふすまが開いてあるだけでもうダメ。どうして仏壇や勝手口はああも人を呼び寄せるのでしょう。おかげでトイレを我慢せずこまめに行くことを覚えました。

 ひゃくとおばん。これも6歳くらいまで100当番だと思っていました。特に事件に巻きこまれることがなかったのは幸運でしたね。

 春の運び屋。おそらくモチーフになっているのは山神。関東の一部地域では春分に天狗祭りとして山神を迎え入れる風習があるようですね。弘前ではちょうど今ごろ桜が咲き始めたところでしょうから、まさにお勤めを終えた感がありますね。

 ペチュニア。鉢植えに向く草丈の、朝顔によく似た花。花言葉は「あなたと一緒なら心がやわらぐ」。「嫌いにならないでね」と伝えるのに相応しい優しい花言葉ですね。

 シャッターのある家。まあ大抵は車庫ですね。最近は車庫を設えず屋根だけのカーポートや野ざらしの駐車場にする家が増えたので、こういうシャッターの多い風景は古い住宅地ならではです。豪雪地域でも案外野ざらしの家って多いんですよ。どうせ雪かきはしないといけませんから野ざらしといえど雪に埋まることはありませんしね。

 ホームタンク。北日本では一般的な490リットルサイズ。屋根がついてあるのは上部の残量ゲージや給油口を雪から守るため。家の屋根から雪が落ちでもするとひとたまりもありませんから。ところで近年は灯油泥棒が増えたのでなにげに設置場所に困る代物。鍵をかけるというのもなかなか難しい代物ですしね。一時期はブロック塀で囲む家もありましたが、人目を遮るとかえって泥棒しやすくなるとかなんとか。基本的な考え方は空き巣対策と同じですね。

 トラキアヨーグルト。トラキアはブルガリアの前身になった国(?)ですね。
 向日葵薄力粉。なぜに向日葵?と思いきやその下に「SUNFLOWER」。なるほど。・・・というか日清製粉のパッケージデザインからして向日葵なことに今さら気付きました。

 てんぷら。野菜、山菜のてんぷらは薄衣に限りますね。氷を入れてグルテンは最小限に。穂先のような入り組んだ部分に衣をつけると、思うように水分が飛ばずにべちゃっとした食感になってしまいます。ほろりと砕ける食感の衣と、その内側で蒸されたほくほくの滋味を味わいましょう。・・・お腹空いてきた。

 大福帳。原作ではこの文字は書きこまれていませんでしたね。売掛簿のことです(google知識)。古い売り酒屋のようですから、取引先はもっぱら居酒屋や花見の宴会などの大口が主なのでしょう。それにしても紙の売掛簿とは情緒のあることですね。良いオチです。

ばっけ

 津軽のみならず、どうやら東北全体で通じる言葉な様子。仙台ほどの遙けき大都会でもばっけ味噌が売っているとは思わなんだ。
 県外から来た学生さんがひときわ喜んで覚える津軽弁がこの「ばっけ」。他に「しばれる(寒い的ななにか)」「たまな(キャベツ)」「じゃんぼ(頭、頭髪)」あたりが続きます。なんとなく響きが面白いですよね。
 地元の人にも愛されていて、ばっけというお店や劇団が東北中そこかしこに点在します。青森県のお隣、秋田県なんか県花に指定しているほどです。

 ところで私、青森県出身でありながらばっけを食べたことがほとんどないんですよね。母が少し潔癖気味で、電柱のところだけでなく里に生えるもの全般が汚いと教わったものでして。気にせず食べてみればいいだろうに、なんとなく道ばたでなく今度もっときれいな場所で摘もうと考えてしまったまま、結局毎年時期を逃しちゃうんですよ。今年ももう時期に遅れてしまいました。
 そしてばっけ愛が強い割に、意外と弘前でもばっけ料理を出すお店って多くないんですよね。あれはあくまで家庭の味覚。家庭で食べ逃すと本当に食べる機会がない。
 ただ一度、弘前公園の近くの居酒屋さんで出していただいたことがありました。学生の頃ひとりでふらっとランチに入ったのですが、その手のお客がよほど珍しかったのか、夜に出す予定だというお通しを試食させていただいたのです。
 ばっけのピーナッツ和え。食べてみると甘めの味付けで、ピーナッツの他に酒粕の香りもしました。ばっけの爽やかな青くささにピーナッツの香ばしさ、酒粕の華やかさ、3つの香味が合わさって、これがなんともステキな味わいでした。・・・そこまで思うところがあってなぜ自分で料理する機会を逃すのか。

 さて、冒頭で述べたとおり、津軽人の郷愁は茶色と白、黒、灰色の世界にあります。恐ろしく地味な冬の景色。とあるマーケティングによると、津軽人が好んで着る服の色もやはり茶色と白、黒、灰色。津軽人は骨の髄まで冬の寂しい色合いに馴染んでいます。
 そこに、春になるとパッと緑色のつぼみが顔を出すんですよ。白や茶色に穴を穿つように。そこかしこ、それこそ土のあるところならどこにでも。その鮮やかさときたら。
 ばっけの花言葉は「待望」。検索してみればあるものですねえ。身近すぎて忘れがちですが、なるほどこれも確かに花。春の訪れを告げるこの花を、なるほど、私たちは毎年待望します。

 津軽人の郷愁に緑はありません。緑はもっと特別な、春の訪れという瞬間を切り取る色です。

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