スタートゥインクルプリキュア 第46話感想 高機動幻想スタートゥインクル・プリキュア。

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大丈夫だよ、プルンス。フワは必ず助けるから!

(主観的)あらすじ

 宇宙最後の希望、フワがダークネストに奪われました。

 ついに5つのトゥインクルイマジネーションが揃い、その力をもって宇宙に平和をもたらす儀式が執り行われようとしていたところ、ノットレイダーたちがスターパレスに総攻撃を仕掛けてきました。
 彼らはダークネストと同じ鎧を身につけており、いつもよりはるかに歪んだイマジネーションを増幅させていました。以前よりはるかに強く、そして以前よりはるかに濃い憎しみを滲ませ、血走った目でこちらを睨みつけていました。
 一方でプリキュアの味方として宇宙星空連合も援軍に駆けつけてきてくれましたが、ところが彼らはノットレイダーたちの猛攻に耐えかね、ノットレイダーたちを殲滅させる勢いで反撃をはじめました。
 その凄惨な戦いに心を痛めたひかるが両者の間に立ちます。みんなこの宇宙に生きる同じ宇宙人なんだという思いを切々と訴えると、ノットレイダーたちも宇宙星空連合もお互いを攻撃しようとする気持ちに疑問を持ってくれました。

 ところが。
 そこでダークネストがついに正体を現し、事前に用意していた策を発動させます。
 彼女の正体はスターパレスを離反した13番目のスタープリンセス。その目的は宇宙を自分たちのものにすることではなく、宇宙そのものを消滅させること。実は彼女にとってノットレイダーたちは体よく騙して利用していただけの捨て駒でしかなく、彼らに着せた鎧も歪んだイマジネーションを吸い取り自分の力に変えるための罠だったのです。
 ダークネストは吸い取った力でノットレイダーたちの心を憎しみ一色に染めあげ、もはや獣のごとく判断力を失ってしまった彼らをプリキュアにけしかけます。

 それ自体はトゥインクルイマジネーションによってパワーアップしたプリキュアの力で全員を浄化させることができました。
 けれど、それで持てる力を使い果たした隙を突かれ、ひかるたちはずっと守ると誓っていたはずのフワをダークネストに奪われてしまうのでした。

 年始さっそく『ヒーリングっどプリキュア』の番宣がはじまりましたね。
 例によって12月中旬にはキャラクターのバレ情報が出回っていましたが、その後1週間も経たないうちに公式発表が出されて話題ごと吸収していたように記憶しています。このあたりの攻防、すっかり手慣れたものですね。頼もしいやらちょっと申し訳ないやら。未解禁情報を流す人や知ろうとする人が大っぴらに活動しなければ、あそこまで早く公式に動く必要はないでしょうに。
 次回作はプリキュアひとりひとりに付くパートナーの妖精との友情にフォーカスが当てられるようです。個別に妖精が付くのは『ドキドキ!プリキュア』以来。他には『ふたりはプリキュア』『ふたりはプリキュアSplash Star』『ハートキャッチプリキュア!』、それから『スイートプリキュア』あたりが似たような編成でした。(『スイートプリキュア』のフェアリートーンが妖精扱いかどうかは微妙なところですが)
 ですが、パートナーとしての関係性を大きく扱うのは意外と初めての試みかもしれません。過去のパートナー妖精の系譜というより、案外プリキュアがバディ制だった時代みたいなストーリー(美墨なぎさと雪代ほのかの友情物語など)を人間と妖精のコンビで3組並行して進める感じになるのかもしれませんね。

 さて。それはさておき今はスタートゥインクルプリキュアのクライマックスです。
 この物語においてノットレイダーたちは行き場を失ったかわいそうな被害者ではありますが、それでいて彼らの主張については特に聞き入れるべきところがありません。彼らのしていることは基本的に八つ当たりでしかなく、宇宙全体を乗っ取った未来に何をしたいのか、彼らは一度たりとも主張したことがありません。
 未来を語らず、ひたすら過去ばかりを訴えて「自分と同じくお前らも不幸になれ」としか言ってきません。
 「我々のことを想像したこともなかろうに!」
 だからどうしたよ。想像したとして、それからこっちに何をしてほしいんだよ。
 その部分の主張がないから彼らは同類以外からの共感を得ることができません。同じ体験をしていないからわかりあえないんじゃないんです。他人に何も求めないから、こちらからも何もしてあげられないんです。

 ダークネストの目的は宇宙消滅。そもそもその目的自体が受け入れがたいものという問題はありますが、彼女とノットレイダーたちとの違いといえば意外とそのくらい。
 どっちにしろこちらに何も求めてこず、ただただ一方的にこちらを傷つけようと迫ってくるだけ。

 ここ数年間、プリキュアはずっとこういう思想的に閉じこもった人たちと手を取りあうために戦ってきました。
 救いを求める声を上げない人たちを、それでも救う方法を模索しつづけてきました。
 『Go!プリンセスプリキュア』は自助努力を推奨することによって。
 『魔法つかいプリキュア!』は世界の優しいことを信頼することによって。
 『キラキラプリキュアアラモード』は自分のためにもあなたが必要だと訴えることによって。
 『HUGっと!プリキュア』は拒絶されようと応援しつづける意志を示すことによって。

 『スタートゥインクルプリキュア』はまた別の方法で彼らを救います。
 そのための手段がトゥインクルイマジネーション。やりたいこととやるべきこと、他人を知りたいという願いと自分を知ってほしいという望み、その全ての結実。個人的な夢と相互理解に挑む意志の混合物。
 けれど、それを実現する前にまず示さなければいけないものがあります。なにせこの戦いは例年1年がかりでやっと達成できたくらいの困難なテーマなんですから。

 諦めない、負けない。
 まずはそういう心の強さが、プリキュアを前へと歩ませてきました。

後ろに留まるためのイマジネーション

 「歪みが足りぬか。だが、鎧の力は試された」(第44話)
 「お前の激しい歪み、憤りをたぎらせるのだ」(第45話)

 ノットレイダーたちの力の源がどうして“歪んだ”イマジネーションと呼ばれているのかといえば、それは彼らのイマジネーションがひかるの持つそれとは対照的な作用を発揮するからです。

 「サザンクロスは人々に進む力を――イマジネーションをくれる星座なんだよ」(第11話)
 ひかるのイマジネーションは宇宙に散らばるキラやばー!なものを見つけるためのもの。まだ見ぬ楽しいものの存在を心に思い描き、憧れ、期待に胸ふくらませてくれます。
 だからひかる自身にとっては当然いろんなところに行ってみたいというモチベーションになりますし、周りの友達にとってもその前向きさは自分も新しいことに挑戦してみようという勇気になります。

 「考えたこともなかろう。宇宙の最果て、暗く凍える場所に追いやられ、闇に潜んで生きてきた我々を!」(第11話)
 対して、ノットレイダーたちのイマジネーションは自らの置かれた現実を理解するために用いられます。自分たちがいかに哀れか。いかに異端か。どうせ他の誰にも自分たちの怒りや悲しみは理解できないだろう、と結論づけるために思考を巡らせています。
 だから彼らはひかるたちが何度思いやりを示しても拒絶しようとします。彼らのなかではすでに結論が出ていることだから。誰にも理解してもらえないと確信しているから。これ以上裏切られ傷つく前にはじめから他人を拒絶してしまおうと、自分たちの心を守るために「どうせ無理だ」と事前に想像しています。

 ・・・そんな考えかたでいったい何を為せるというのか。
 彼らに建設的な思考はありません。彼らに進歩的な思考はできません。そんなんだからダークネストに騙されるんです。
 やりたいこと、やるべきことを自分で考えてみることを放棄して、彼らは代わりにダークネストの示した「宇宙を乗っ取る」という野望に相乗りしました。ダークネストが彼らの意志を汲んで組織としての目標をまとめあげたわけではないんです。彼らは特にやりたいことが思いつかなかったからダークネストに従ってみただけ。だから彼らは宇宙を乗っ取ったあと何をしたいのか語ることができません。ただただ、復讐のためにそういうことをするんだと自己正当化に終始します。

 だからこそ“歪んだ”イマジネーションなんです。
 そのせっかくのイマジネーションは、彼らをどこにも連れていかないから。
 これまで彼らに歪んだイマジネーションを利用された被害者たちを振りかえってみるとわかりやすいでしょう。彼らはみんな、直前に何かイヤな思いをして、そのことばかりに心を囚われていたところでした。
 ただひたすら現状を維持するためだけに全力を費やし、しかもその現状が彼らにとって守るべき大切なものかというと全然そんなことはない。むしろ不幸のどん底。なのに現状を変えようとしない。変えられない。自分で自分を束縛し、不幸の永遠たることを助長しつづける。
 そんなの、ちゃんとものを考えているようにみせかけて、実際は何も考えていないのと同じです。

 いったい何のために頭を使っているんですか?
 あなたは自分を不幸にしたくて一生懸命がんばっているんですか?
 そんなわけないでしょう。
 だとしたら、今あなたがしていることは何ですか?

 ひかるたちはトゥインクルイマジネーションを完成させる過程でそれぞれのやりたいこと、やるべきことを振りかえりました。
 そのふたつはイマジネーションの持つ力を正しく使うため絶対に必要な要件だったからです。
 自分が何をしたいと思っているのか。そのためにこれから何をしなければいけないのか。それをしっかり想像しておかなければ、人は前へ歩みだすことができません。そもそも「前」がどちらの方角にあるのかすらわからないでしょう。

 「恐怖は思考を停止する」(第1話)といいます。まったくもってそのとおり。
 ノットレイダーたちがイマジネーションを歪ませた原因は過去の失敗体験。トラウマ。これ以上傷つくことを恐れて前へ進むことを諦めたから、彼らはいつまで経っても不幸なままなんです。
 現状がろくでもないことを理解していながら、それでも現状を堅守しようとしてしまう不合理な思考。歪んでいます。

 「本気で宇宙を乗っ取れるとでも? 見捨てられし日陰者たちが。おこがましい」
 だってそれ、お前らが本心からやりたいと思っていたことじゃねーだろ。

現実に向きあう

 「我々のことなど想像したこともなかろうに!」
 「みんなで笑顔など無理なのさ。お前らのは想像ではない。幻想!」

 バカバカしい。
 自らの置かれた現実を理解するためにイマジネーションを費やしているノットレイダーたちからすると、きっとひかるたちのイマジネーションは現実逃避した夢物語のように見えるでしょう。ひかるたちは自分たちが今どういう状況に立たされているのかを基本的に問題にしません。「フワを守る!」など、いつも都合のいい理想論ばかり語っています。
 それがどうした。
 それの何が問題だと思っている?
 むしろどうして理想論ばかり語っているのか、あなたたちこそその理由を想像してみたらいい。

 イマジネーションは進む力です。楽しいことを想像し、楽しい出会いを期待し、楽しい未来へ向かって歩むための原動力です。
 現実ばかり見据えていてもどこにも歩めやしないでしょう。
 ここではないどこかが、ここよりきっと楽しいに違いないと信じるからこそ、歩むんです。

 「全てを乗っ取る! この力で!」
 「これが力? あなたも、みんなも、自分を制御出来ていない! このままではまた失うわよ。あなたに付いてきたみんなを」

 現実を知ること自体はそれなりに大切なことです。やりたいこと、自分の夢と現実の乖離を正しく理解することで、私たちは自分がこれからやるべきことを具体的に悟ります。
 ですが、それは自分のなかにやりたいことがあってこそ。やりたいことがないまま現実を眺めていたって苦痛なだけです。世のなかつくづくろくでもないなあって、しょうもない悲観を抱くだけ。破滅的な思想に至るだけ。
 夢の力で現実を変えることは難しいでしょう。それでも、現実を変えることができるのは夢だけだと私は信じます。
 自分の今置かれている現状が不幸だと思うのならばこそ、あなたはまず理想を抱くべきです。現実を考えるのはそれからでいい。

 「我はヤツらとともにこの宇宙をつくった。だが、忌々しい想像力がはびこるこの宇宙は完全なる失敗作。よって、全て消し去る」
 ダークネストがイマジネーションの何をそれほど憎んでいるのか、今はまだわかりません。これから語られていくのでしょう。
 ですが、なんとなく想像することはできます。それこそ歪んだイマジネーションのことじゃないかな、と。
 ノットレイダーたちのように、イマジネーションによって自らを不幸な現状へと縛りつけようとするバカバカしさ。
 それからひかるのお爺ちゃんのような、イマジネーションを働かせるからこそ余計な先入観でもって他人を理解した気になってしまう愚かしさ。
 イマジネーションは歪むことでそういう愚行の温床にもなってしまっています。彼女はそういう人間のありかたに呆れているのかもしれません。そういう現実は、まあ、確かにあります。

 それでも。
 イマジネーションなくして、私たちはどうやって幸せになったらいいんでしょう?
 現実を見据えるなら、イマジネーションの良いところ悪いところばかりを見るのではなく、それが私たちにとってどんな役割を担っているかまで考えなければなりません。
 だって、思考することを放棄して目の前にあるもの全部を否定したら楽になれるかといったら――そんなことなかったでしょう? ノットレイダーたちを見るかぎり。

 「みんな、『宇宙は渡さない』とか『乗っ取る』とか、そんなのおかしいよ。宇宙にはいろんな人たちがいるんだ。みんなそれぞれ思いや考えかたも全然違う。そんな人たちがたくさん、たくさん、いるんだよ。この宇宙は誰かのものじゃない。みんなの宇宙でしょ。星空連合も、ノットレイダーも、私も、みんな、みんな、同じ宇宙に住む宇宙人でしょ!」

プリキュア

 そんなこんなで以前も何度か書いた気がする、歪んだイマジネーションの正体だの、ノットレイダーたちの問題点だのを今回改めて長々と語ろうと思った理由は、全て今話最後のひかるのセリフに集約されます。

 「あなたが最後の希望」「プルンス。フワを頼みます」
 「――プルンスは、守れなかったでプルンス!」

 宇宙最後の希望とされ、絶対に守らなければならなかったはずのフワ。
 これまでも危うい出来事は何度かありましたが、なんだかんだで約束どおり守ることができていたフワ。
 今話、ひかるたちはついにフワを守り通すことに失敗しました。あの気丈なプルンスですら絶望してしまいます。

 だというのに、我らが主人公・星奈ひかるはどうやらまだ諦めていないようです。

 「大丈夫だよ、プルンス。フワは必ず助けるから!」

 なぜなら、ひかるのイマジネーションは進む力だからです。
 なぜなら、ひかるは現実ばかりに頓着せず理想を抱ける女の子だからです。

 フワが奪われました。最悪の展開です。
 このままでは宇宙が危ういですし、何よりフワは大好きな友達です。
 ひかるの現状は不幸のどん底。

 だからどうした。

 だったら、だからこそ、今すぐやるべきことがある。
 立ち止まってなんかいられない。
 前を向いて走りだすしかない。
 諦めてなんかいられない。
 負けてなんかいられない。

 「諦めない、負けない!」(『キラキラkawaiiプリキュア大集合』)

 星奈ひかるはプリキュアです。
 プリキュアというヒーローは自分たちの幸せな日常を守るために戦うものです。
 いつだって、誰だって、プリキュアを名乗る女の子たち(ときどき老若男女含む)はみんなそうやって幸せに物語を綴じていきました。

 やりたいこと。
 やるべきこと。
 理想と現実。
 起こすべき奇跡。

 自分自身にとっての幸せな未来<ハッピーエンド>を守るため、ひかるは絶望の底でこそ、まっすぐ前を向かなければなりません。

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    コメント

    1. 匿名 より:

      「地球人も宇宙人だ」とはよく言われますが、こうまで見事にそれを描いたのは自分が知る限り初めてですね。

      さて、今話でダークネストの正体が13番目のプリンセスである蛇使い座だったことが明らかになりましたが、同時にスタープリンセスが宇宙を創造した造物主であることも明らかになりました。

      蛇使い座の目的が現宇宙を消し去ることだということは、この世界は「神(1/13)に見捨てられた世界」とも言えるわけですね。

      どうしてそのような目的を持つに至ったかは次回かその次の回で判明すると思いますが、多様性を認めるということは内包する悪意も認めることにつながるのでそれを認められないものも当然います(ジョージ・クライもそうでしょうか)。「みんな違う」ことを認めればずっと付きまとう課題です。

      悪党がいる世界をそれでも「キラやば~☆」と言えるひかるたちとそんな世界を認められなかった蛇使い座。

      果たしてスタープリンセスは宇宙の枠外に存在する「異星人」なのか同じ宇宙に生きる「宇宙人」なのかどちらなんでしょうね

      • 疲ぃ より:

         宇宙を総括した流れから「その宇宙、失敗作だぞ」とひっくり返す意地の悪さまで含めてカンペキでしたね。それでいて、スタートゥインクルプリキュアの敵は映画含めて対話不可能な他人って立ち位置で一貫していたので、意外と順当な流れだという。

         彼女のやろうとしていること自体は神様つながりで『ハピネスチャージプリキュア!』のレッドと大差ないと思っています。「俺は諦めたからお前らも諦めろ」みたいなノリで他人に不幸を押しつけるという意味で。『HUGっと!プリキュア』のジョージ・クライもたしかに同じタイプのキャラクターですね。あっちはそれで相手を救っているつもりなのでなおのこと歪んでいますが。
         (というかプリキュア側が「諦めない、負けない」を是としているので、対となるラスボスは半分くらいそういう思想になっちゃうんですが)

         “神様”って立ち位置の彼女がひかるの守るべき宇宙の内にいるか外にいるかは微妙なところですが、どちらにせよ彼女と意思疎通できなきゃはじまりません。私としてはひかるがどういうふうに彼女から話を聞いて、どういうふうに自分を主張していくのかが楽しみです。

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