戦闘記録 – のどかたちが戦ってきたものは何だったか振りかえる

重なるふたつの花! キュアグレース! ラビ!
交わるふたつの流れ! キュアフォンテーヌ! ペエ!
溶けあうふたつの光! キュアスパークル! ニャ!
地球をお手当て! ヒーリングっどプリキュア!

 プリキュアという物語はほとんどのエピソードにおいて、バトルシーン抜きでもストーリーが成立するようにできています。敵の侵攻状況が特段日常シーンに影響を及ぼさなかったり、バトル中に起こった出来事が終了時には全部元どおりに戻ったりします。
 このあたり、戦いを通して重要なテーマを語ろうとする仮面ライダーシリーズなど男の子向けヒーロー作品とは異なるところですね。
 意外とバトルヒーローものの派生というより、昔ながらの魔女っ子ものの系譜といえるのかもしれません。

 では、プリキュアはバトル中に何をやっているのかといえば、それはストーリーのリフレインです。各話の日常パートで起きた出来事を、バトルの文法に乗せて端的に再現しています。
 なので私みたいな(※ オタクくさい)スタンスでプリキュアを語っている人にとって、実は必ずしも毎回バトルシーンを語る必要はありません。わざとではないつもりなのですが、実際たまにバトルシーンの出来事をバッサリカットして感想文を書くこともあります。
 ただし、裏を返すならバトルシーンさえきちんと読み解けば、各話のストーリーが何を意図していたのか把握できるということでもあります。日常シーンの読解が本当に合っているのかバトルシーンで確認することもできますし、反対にバトルシーンでの描写をヒントに日常シーンを解釈しなおすこともできます。けっして軽んじていい描写ではありません。

 そんなわけで、この記事では各話のバトルシーンが何を描いていたのか改めて解釈していこうと思います。
 どんな【ピンチ】を、どんな【チャンス】をつかんで乗り越えていったのかだけ把握しとけばだいたいオッケーじゃね? というモノグサなスタイルですが気にしない気にしない。

第1話『手と手でキュン! 二人でプリキュア♡キュアグレース』

【メガビョーゲン】花のエレメントさんからつくられた普通の人型
【敵幹部】ダルイゼン

【ピンチ】メガビョーゲン出現によりラテが苦しむが、誰も助けてあげられない。
【チャンス】のどかとラビリンがパートナーとなってキュアグレースに変身、メガビョーゲンを浄化した。

 のどかは自分の目に映るみんなの役に立ちたいと思っていて、その一環としてラテを救いたいと望んだのですが、そのための力がありませんでした。一方のラビリンも地球をお手当てするという使命を果たしたいと強く思っていましたが、やはり力が足りませんでした。
 2人ともやりたいことがあるのにひとりの力ではそれができない、というのがこのエピソードにおける最大のピンチ。だから力を合わせてプリキュアに変身することさえできたら、バトル自体は圧倒的有利に進行します。

第2話『パートナー解消!? わたしじゃダメなの?』

【メガビョーゲン】木のエレメントさんからつくられた歩く大樹型
【敵幹部】ダルイゼン

【ピンチ】ラビリンにパートナー関係を解消されて変身できない。生身ではメガビョーゲンに敵わない。
【チャンス】のどかにとってプリキュアになれたことがどんなに嬉しかったかを切々と語り、改めてパートナーになれた。

 ラビリンには自分の使命を果たすためだけにのどかを巻き込んでしまったという申し訳ない気持ちがありました。だから危険だと感じた時点でパートナー関係を解消しようとしたのですが、一方でのどかにもみんなの役に立てる力が欲しくてプリキュアになりたかったという個人的動機がありました。
 無力な2人がそれぞれのやりたいことのためお互いの力を必要とする、そういう相互関係を確認することがこのエピソードの核でした。

第3話『湧き上がる想い! 変身! キュアフォンテーヌ』

【メガビョーゲン】水のエレメントさんからつくられた温泉ポンプ型
【敵幹部】シンドイーネ

【ピンチ】流れ弾からちゆを庇い、キュアグレースがダメージを負う。
【チャンス】ちゆがキュアフォンテーヌに変身、キュアグレースと協力してメガビョーゲンを浄化した。

 ちゆはとにかく好奇心が強い子で、このエピソードではのどかが隠したがる秘密(※ プリキュアのこと)を追いかけまわす姿が多く描写されます。けれど彼女が変身したきっかけは意外にその好奇心と無関係。メガビョーゲンから自宅の温泉宿を守るためでした。
 この子、冷静そうに見えて実は足元が疎かなタイプなんですよね。色々とよく気がつくくせに、自分の大切なものに限ってなかなか自覚できない。のどかに指摘されて初めて自分の思いに気付く。今話のバトルでもその気質が反映されていて、キュアグレースのフォローを受けながらメガビョーゲンを浄化していました。

第4話『カワイイ! なりたい! キュアスパークル誕生』

【メガビョーゲン】光のエレメントさんからつくられたマネキン型
【敵幹部】グアイワル

【ピンチ】技を反射してくるメガビョーゲンに攻めあぐねる。
【チャンス】不器用娘のひなたがキュアスパークルに変身。反射攻撃を正面から強引にねじ伏せた。

 周りの人の親切に憧れているのに、粗忽者すぎて何をやってもうまくできない、何もかもに自信を持てないひなた。そんな彼女がニャトランに「お前ならできる」と背中を押してもらうかたちでプリキュアに変身します。
 技を反射してくる(=こちらの攻撃が失敗する)敵に対して彼女が取った攻略方法は反射攻撃の再反射。ゴリゴリの力押し。いかにも不器用な彼女らしく、それでいてプリキュアに変身したことで失敗続きだった自分を克服できたという構図にもなっていて、心に響くステキなバトルシーンでした。

第5話『気まずい水族館! チグハグなわたしたち』

【メガビョーゲン】泡のエレメントさんからつくられたクラゲ型
【敵幹部】シンドイーネ

【ピンチ】迷子のペギタンを探している最中にメガビョーゲン出現。どちらを優先するべきかちゆとひなたの意見が割れる。
【チャンス】のどかが両方の意見を取り入れた折衷案を提案した。

 ちゆは几帳面かつちょっと(だいぶ)空気の読めない子で、一方ひなたは粗忽者でありながら周りの人の気持ちをよく気にかける子です。そもそもの性格が正反対すぎてなかなか噛みあいません。このエピソードでは2人の性格をどちらも否定せず認め、のどかが間に入ることで正反対な2人でも協調できるという姿を描きます。
 ちゆとひなたが一緒に行動できた時点で物語としてはほぼ完結しているので、バトル中は特段ピンチになることもなく順当にプリキュアが勝ちました。

第6話『ママはどこラテ? おるすばん大脱走!』

【メガビョーゲン】実りのエレメントさんからつくられたイチゴのツタ型
【敵幹部】ダルイゼン

【ピンチ】「自分さえ良ければいい」と言いきるダルイゼンにキュアグレースが激昂。一方でメガビョーゲンと戦っている他の2人がやられそうになる。
【チャンス】キュアグレースがダルイゼンよりも仲間を優先し、3人力合わせてメガビョーゲンを浄化した。

 このエピソードではのどかのお母さんを慕う思いと、優しくしてくれたことに甘えてたくさん迷惑をかけてしまった申し訳なさが描かれました。
 のどかはお母さんをはじめとした優しい人たちに憧れ、彼女たちのようにみんなの役に立ちたくてプリキュアになりました。だから平気で他人に迷惑をかけようとするダルイゼンの考えかたが理解できません。腹が立ちます。ですが、のどかの本来やりたかったことはあくまでみんなの役に立つこと。優先順位で考えるなら仲間を助けることが先に来ます。
 今話はそれで解決なのですが、ダルイゼンに対して許せない感情が湧いたのも事実。みんなに優しくありたいのに、優しくできない相手や状況が存在してしまうという矛盾が、今後ののどかに課題として残ります。

第7話『大スクープ!? のどかの秘密』

【メガビョーゲン】雨のエレメントさんからつくられた雨傘型
【敵幹部】グアイワル

【ピンチ】苦戦しなかった。(雨粒攻撃をしてきたが普通に対抗できた)
【チャンス】雨粒攻撃中のメガビョーゲンを実りのエレメントボトルの力で撃ち落とした。

 このエピソードでは迷惑者の益子くんが話してみれば意外にいい子だったという二面性が語られていて、雨についても、雨上がりにはステキなことが待っているから楽しみな気分でいられるというふうに描かれました。このため、今回のバトルにおいて雨は晴らすものでこそあったものの、特段嫌な相手というわけではありませんでした。

第8話『とべないちゆ!? 陸上大会大ピンチ!』

【メガビョーゲン】氷のエレメントさんからつくられたクーラーボックス型
【敵幹部】ダルイゼン

【ピンチ】氷を操り、氷を鎧にもする厄介なメガビョーゲンに攻撃が届かない。
【チャンス】他の2人にサポートを頼み、キュアフォンテーヌがハイジャンプして頭上から攻撃した。

 ちゆは基本的に自己完結型の性格で、このエピソードにおいて直面したスランプも泥臭い根性論で自力解決してしまいました。
 ただし、それは彼女がひとりでも平気でいられるという意味ではありません。スランプを乗り越えるまでにはのどかやペギタンたちの応援が大きな助けとなりました。バトルにおいても物語の流れがそのまま反映されています。彼女は初変身のときもキュアグレースのフォローを受けながら戦っていましたね。我が道を行くタイプに見えて意外とそういう子なんです。

第9話『ひなたのカワイイ大作戦!』

【メガビョーゲン】宝石のエレメントさんからつくられていてとても頑丈
【敵幹部】シンドイーネ

【ピンチ】キュアスパークルが先走って1人で戦うも、追い詰められる。
【チャンス】キュアグレースたちが合流して対抗、特にキュアフォンテーヌの持つ氷のエレメントボトルが決め手となった。

 ひなたの悪いところは粗忽者なこと以上に、他人への迷惑を気にしすぎるところにあります。いつも周りの人に喜んでもらえるようがんばっているくせに、その結果を自己評価するときは「喜んでもらえたか」ではなく「迷惑をかけなかったか」で考えるんだから、失敗つづきに感じられて当たり前。一番肝心のところが見えていません。
 今話でもあらゆることに近視眼的になるあまり、ドラマパートでは勝手にひとりで思い詰め、バトルパートでは解決を焦りすぎて追い詰められ、もう散々でした。

第10話『緊急お手当て! メガビョーゲンがいっぱい!?』

【メガビョーゲン】光のエレメントさんからつくられたトゲトゲのオブジェ型
【敵幹部】グアイワル

【ピンチ】メガビョーゲンが同時に3体出現し、プリキュアも3手に分かれたがジリ貧。それでもキュアグレースは美術館を守ることにこだわり、合流することをためらった。
【チャンス】キュアグレースのところに他のプリキュアたちが再集合。各個撃破する作戦に切りかえた。

 のどかはひなたとまた違って、とにかく良いと思ったことをやり通そうと考える子です。だいぶムチャなレベルで高い理想を抱いていますが、それがプリキュアになれるほどの強烈なモチベーションとなっているので一概に否定すべきものでもないのが難しいところ。なので、のどか本人が判断ミスだったと反省する今回の行動を、ラビリンのほうは間違いだったと言いません。
 ただし、のどかたちはそもそも未熟者同士助けあうこと前提でプリキュアしているので、分かれて戦う作戦自体はやはりうまくいきませんでした。

第11話『力を一つに! ミラクルヒーリング!』

【メガビョーゲン】花のエレメントさんからつくられ、強大に成長したタンポポ型(と、水のエレメントさんからつくられた普通の人型)
【敵幹部】ダルイゼン(、シンドイーネ)

【ピンチ】発生から時間が経ち、いつもよりはるかに強大になったメガビョーゲンにまったく歯が立たない。
【チャンス】キュアグレースたちは諦めず戦った。やがて地球と花のエレメントさんを救いたいと願うプリキュアやエレメントさんたちの気持ちがひとつとなり、ミラクルヒーリングボトルが出現した。

 諦めなければ負けない、というのはプリキュアという物語の基本骨子のひとつです。ぶっちゃけ憧れのヒーローに変身できた時点で現実に存在するほとんどの理不尽も突破できているわけですから、残る挫折要因なんて意志の問題くらいです。
 そのうえで、『ヒーリングっどプリキュア』はさらにみんなの思いをひとつに重ねることの意義を強調します。なにせこれは未熟者同士が手を取りあうことでお互いのやりたいことを実現していく物語。思いを重ねあうことで不可能を可能に変えられなければバディを、そしてチームを組む意味がありません。

第12話『以心伝心!? チームワーク大作戦』

【メガビョーゲン】宝石のエレメントさんからつくられたバックホウ型。
【敵幹部】バテテモーダ

【ピンチ】幹部なのに直接バトルに参加してくるバテテモーダが強敵。
【チャンス】3人のコンビネーションで逆転。

 今話においてラビリンたちはチームワークの強化が必要だと考えていましたが、それは大きな勘違いでした。実際は個の力では敵わないバテテモーダをチームでなら圧倒できるくらいにはチームワークが取れていました。
 むしろ自分たちの力を信じきれずにいることが今後の課題として残るかたちですね。なにせ元が実力不足を自覚している6人の寄りあい所帯ですから、チームとしての自分たちまで過小評価してしまうのも仕方ないことかもしれません。

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『戦闘記録 – のどかたちが戦ってきたものは何だったか振りかえる』へのコメント

  1. 名前:東堂伊豆守 投稿日:2020/05/19(火) 01:22:36 ID:7d9ba6d7a 返信

    プリキュアシリーズが前々作「HUGっと!プリキュア」辺りまで「バトルをストーリーの軸に据えない」方針を採っていたのは、そもそも第1作「ふたりはプリキュア」が、前番組の商業的失敗を受けて時間枠活性化の為に企画された変化球的(いささか禁じ手・掟破りな)作品だったことが大きいんでしょうね。
    「女子中学生に人類の命運を賭けて暴力を振るわせ、その姿を小さな女の子達に見せる」ことに制作陣が負い目・引け目を(視聴者以上に)感じていて、そこで一種の自主規制として「バトルをストーリーの軸に据えない」方針が打ち出されたんだろうな、と。
    ただ「人類を守る為に実力行使する女子中学生」というコンセプトは十数年間の内にプリキュアシリーズのブランドバリューとして社会的に認知されており、今さら制作サイドで引け目を感じることに意味は無く、さらにバトル要素を売り物にしておきながらバトルをストーリーの軸とすることに消極的であり続けることは(作中人物に対しても視聴者に対しても)却って不誠実とも言えるわけで……。
    そういう判断が制作陣にもあったのか、前作「スタートゥインクルプリキュア」辺りから結構バトルがストーリーの軸を占める作りに変わってきた印象があります。
    それでも、「殺るか殺られるか」「勧善懲悪」といった展開は避けて「皆仲良くノーサイド」な決着に持ち込んだり、「”(剣という禍々しいビジュアルをもった)凶器”で相手の生存そのものを否定することはプリキュアにとって御法度」という主張を盛り込んだりして、女の子向けアニメとしての”守るべき一線”へのこだわりは堅持されているようですが。
    さて、ここで気になるのが本作「ヒーリングっどプリキュア」の敵・ビョーゲンズが感染症とか外来生物とかをモチーフとしている点で、一種の自然災害的脅威とも言える彼らとの和解・共存展開があり得るのか、あるいは「魔法つかいプリキュア」のデウスマスト(シリーズ構成・村山功氏によると、プリキュア側のドラマを描くことに専念する為に自然災害的存在として造形したそうな)のような扱いとなるのか(実際ダルイゼンのキャラ造形はジュリオ/ピカリオなどよりオルーバとかに近い印象)、どうにも分からないんですよね……。