亜人ちゃんは語りたい 第5話感想 自分が信じられない子の場合。

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自分の中で折り合いがついたの。だからね、これからはどんどん触ってきてくれていいから。

 世にメンドクサイ性格の人は数多あれど、とりあえず一番メンドクサイのは自分が嫌いな子なんじゃないかなと思います。読書中、お風呂、寝る前・・・リラックスしてるときにぼんやりと自殺を考えはじめたら黄色信号。自分が消えてしまう妄想こそ一番の安らぎになるあの日あのとき。私がいなくなればきっと世界はちょっとだけ良くなる。そしたらようやく私は世界が好きになれる。なんて。自分が嫌いな人は世界も嫌い。世界が嫌いな人も、大抵はやっぱり自分が嫌い。
 私が日下部さんをメンドクサイメンドクサイ言ってたのはそういう匂いを感じていたからです。でも思っていたよりずっと軽傷だったみたいですね。普通に笑う彼女が可愛らしくて何よりです。

とりとめなく

 「私、雪女だから!」 ここ誤解してました。亜人としてのハンディキャップに他人を関わらせたくない、自分のハンディキャップに向き合えていないのは第一印象のままでしたが、その心性がこんなにもナイーブなものだったとは。まさか周りを傷つけることを恐れていたなんて。
 どうでもいいですが、見るからに弱っているとき突然のカミングアウト、これ大いに誤解を招きますよ日下部さん。弱みと秘め事のミックスアタックなんて吊り橋効果よりえげつない。哀れ佐竹君はおそらくこの瞬間に恋に落ちました。どうでもいいことですが。

 雪の多い田舎町路肩の雪に何やらしま模様が入っていますね。何だと思いますか? ・・・ほんと何なんですかね? 田んぼや畑なんかの広い平地に雪が積もると、風か何かの具合でよくこういう模様ができます。ちょっと調べてみましたが何という現象なのかよくわかりませんでした。

 「恐いんです。結局自分がどのくらい危険なのかわからない。それがわかって人に伝えられれば、胸を張って私は雪女だ、と言えるのに」 現実の障害者研究はこのためにあると言っていいでしょう。人は現象からしか事実を捉えることができません。だから障害者は自分のハンディキャップがどのくらいのものなのか、自分が経験した範囲でしか知ることができません。それは酷くおそろしいことです。
 例えば何かの拍子にパニックを起こしてしまう障害を持つ人が、自分が何をきっかけにそうなってしまうのか把握できずにいたら、彼は人前になんか出られません。だから医者に相談します。医者は先人たちの蓄積した研究情報と第三者としての冷静な視点を持っていて、彼と一緒にパニックの規則性を探ることができます。気をつけるべきことを類型化して頭に入れておけば、彼は人前に出ても誰かに迷惑をかけずに済むでしょう。
 また、障害者の周りの人にとっても「気をつけるべきこと」を理解してさえいれば、彼を恐れず当たり前に受け入れることができるでしょう。周りの人から理解されるためにも、障害者は自分のハンディキャップがどういうものなのか正しく把握していなければいけません。
 ただ、知ること。それだけでハンディキャップというものは劇的につきあいやすくなるものです。(※ もちろん、周りにいる私たちが協力する姿勢でいることが前提ですが)

 「実は私、汗はほとんどかかないんです。というよりもかけないという方が正しいですね」 この子わりとしょっちゅう頬に汗をかいている気がしますが、あれはあくまで漫画符です。無粋なツッコミをしてはいけません。
 汗をかかない人たちといえば・・・四川の人は激辛料理を食べる、フィンランド人はサウナに入るなど、努めて汗をかく習慣を持っていますが、先天的に汗腺が少ないこの子に同じことをやらせても逆効果なんでしょうね。激しい運動をしたときの体温上昇なんかはどうやって処理しているんでしょう。

 「涙はいつだって凍るのに」 繰り返しますが、人は現象からしか事実を捉えることができません。自分が経験した範囲でしか知ることができません。

 「・・・先生?」 漫画的な円型の瞳がぱちくりするのはちょっと新しい気がします。かわいい。どうかこれからどんどん流行ってください。

 「何か相談してたの?」「うん。でも変な話して余計な心配かけちゃったかなって」 ひかりや町は亜人について語ること自体を目的に鉄男と面談していましたが、日下部さんの場合は解決したい具体的な問題を抱えています。語るだけでは解決しません。ひかりたちとの温度差はその違いから来るものです。
 「アイス食べ行かない?」と気分転換を提案する町は聡いですが、残念ながら日下部さんの抱える問題はそれで晴れるようなものではありません。

 小泉八雲代表作は『怪談』。彼は生まれは日本人ではありません(ギリシャ生まれの帰化人)でしたが、誰よりも深く日本とその民俗に興味を持ち、その研究を世界に向けて発信した第一人者でした。言うなれば亜人じゃないのに亜人を研究している鉄男の同類ですね。

 足湯なんでこんなフェチいことを平然と要求できるんですかねこの学者バカ。靴下を脱ぐカットと引き上げたとき椅子の脚が塗れているカットのフェチいことフェチいこと。ごちそうさまです。

 凍る冷や汗ファンタジックな設定なので厳密に考える必要はないでしょうが、体内では液体だった汗が体外に排出された瞬間凍る感じでしょうか。涙もあんな大粒の氷が涙腺を通るわけがありませんしね。
 鉄男の言うとおり成分分析すれば興味深いデータが取れそうですが・・・まあ、まごう事なきセクハラですよね。

 「暖かい涙は凍らない」 人は現象からしか事実を捉えることができません。自分が経験した範囲でしか知ることができません。だから自分のことですら、他人の知識や客観を借りてみると、今までは見えていなかったことがいくらでもあると気付かされることがあります。
 嫌いだった自分が本当はそれほどダメな子じゃなかった。嫌いだった世界が本当は意外と優しかった。見方次第で目に映るものの姿はいくらでも変わります。いつか自分とは違うものの見方と出会えたなら。

 「別にいいじゃないか。冷たいヤツだな」「私、雪女ですから」 自分の性質がわかって、他人に伝えられたなら、日下部さんは胸を張って自分は雪女だって言うことができる。有言実行ですね。

 「あのね、アイス、食べ行こ」 かくして日下部さんに他人との触れあいを拒絶させていた問題は消えてなくなりました。彼女は雪女ですが、同時にどこにでもいる女子高生です。ひかりや町と同じように。
 ハンディキャップとはマイノリティと健常者との肉体的・精神的差異に由来するものではありません。その差異を許容できない社会や人間関係こそがマイノリティにハンディキャップを押しつけているんです。そしてこの世界観を元に、あらゆるハンディキャップをなくそうとするのがノーマライゼーションという考え方になります。

 アイス食べ行ったギクシャク亜人ちゃんは語りたい。語れずにいたことで孤独を味わっていたから。それはなにも亜人に関わることだけではありません。どこにでもあるごく当たり前の人間関係の中にも障害(バリア)はあって、けれどそれはちょっとした言葉だけでも取り除きうる(フリー)ことがあります。
 日下部さんの問題は解消されました。しかしひかりたちはそのことを知りません。日下部さんがそのことを話すまで、彼女のハンディキャップは本当の意味で解消されません。
 これは特に町が日頃思い知らされていることですね。話としてはひかりと日下部さんの距離感を題材にしていますが、だから隣で聞いているだけの町が一番重い表情を浮かべています。
 亜人ちゃんは語りたい。ハンディキャップに打ち勝つために。人と人との間にあるバリアを打ち壊すために。みんなひとつの社会で幸せに生きるために。

 かじかじこんな友達いたなあ。ヴァンパイアじゃなかったはずですが。犬用のガムでも買ってあげようか? と言ってみたことがありますが(酷いな、私)、人の体温と匂いと歯ごたえが重要なんだと熱弁食らいました。

 名前の呼び方日下部さんがひかりと町の呼び方を改めましたが、さて私はどうしましょうか。第1話時点だと確か日下部さんを雪と書いていたり、実はちょこちょこ安定していません。覚え直すのが面倒なので今のままでもいいですかね・・・?
 日下部さんだけ「さん」付けですが、別に他人行儀にしたいわけじゃなくて、なんとなく私の中でそっちの方がキャラらしいと感じられるだけです。「小鳥遊」とか「ひかりちゃん」だとなんとなく違和感あるのと同じことです。

 佐竹君だーから日下部さんみたいなタイプは数的優位を確保してくるって言ったでしょ。

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