困らせたり、困らされたりって、なんかいいよね。
久しぶりのゆゆ式。週1で原作読んでいるので実はあんまり久しぶり感なかったりもしますが。相変わらず偏執的に整合性の取れた原作チョイスをする脚本陣と、相変わらず高品質ながらリビドーダダ漏れな作画班。それらがギリギリのところで辛うじて調和しているのがアニメ版ゆゆ式です。
少女たちがキャイキャイ笑いあう何気ない日常を描写するためだけに、大人たちがギャアギャア大人げなく全力で個性を叩きつけあっているんです。これで面白くならないわけがない。
演技
声と作画の両面。この方面、詳しく語れるほど造詣が深くないので簡潔にいきますね。
ゆずこの声優はキャラ崩しが軽快になりましたね。さっきまで普通に演技していたのに、演技のスペクトラムを感じさせずスパッとギャグ演技に切り替えられるようになったみたいです。あまりにも切り替えがテキパキしていて、例えばネコの鳴き真似なんかゆずこのセリフだと一瞬気付くのが遅れたくらい。
作画の方は全体的にちんちくりんになりました。そこそこフェチい構図はあるのに、そういうタイミングに限ってやたらとデフォルメが効いていて色気を感じません。おかげで芸人ノリがよく映えます。あと瞳がテレビアニメのときより理性的になりました。バカやってるときもものすごく賢そうな目つきをしていて、ああ、この子確かにゆずこだなあとよくわからない説得力を醸し出しています。
唯の声優はちょっぴりユルい感じの演技になりましたね。テレビアニメのときはやたら一生懸命なツッコミを演技をしていましたが、今回はもう少し力を抜いて、原作の雰囲気により近い、友達同士の茶番って感じのセリフ回しになっています。その影響かなんなのか、セリフの入りが全体的にコンマ数秒遅れている(気がする)のが気になるところ。
作画の方も全体的に以前よりもフニャフニャした感じになっています。原作からしてそうなんですけどね。ツッコミ役という凝り固まったポジションから解放されて、この子が一番年相応の女の子って表情を見せている気がします。それからイモっぽさと色気の両方が強化されるという妙な塩梅の結果、絶妙にフェチい雰囲気を纏うこととなりました。
縁の声優が一番テレビアニメ当時の演技の面影を残していますね。このキャラクターは3人のコミュニケーションの基盤というか、安定性を担っているところがあるので、この子の演技が変わらないというだけで4年ぶりの新作がずいぶん違和感なくいつもの3人だ、という空気を運んでくれます。笑い声だけはさすがにちょっとだけ変わっているかな?
作画の方は美少女化甚だしい原作の変化に対応して、素晴らしくかわいらしい造形になっています。ちょっとした立ち居振る舞いだけでイイトコのお嬢さん且つとびきりの美人さん。それから、これはテレビアニメ版でもそうでしたが、この子の視線の演技はとんでもないです。ほんの些細な変調からフォローが必要な相手を見抜き、言葉をかけるタイミングを見計らうまでの一連の瞳の動きがきっちり描写されています。
困らせたり、困らされたり
「ほら、私たち唯ちゃん困らせ隊だから」
ゆずこたちのじゃれあいはだいたいいつも唯イジリを起点としています。あるいはそこに着地するように話題を誘導します。ともするとイジメにも発展しかねない危ういコミュニケーション術ですが、彼女たちはそこを思いやりと愛情表現、道化(ウソっこであるという明示)によってカバーしています。
特に縁が気遣い上手で、ゆずこは空気づくりが得意。そして唯はそんなふたりを信頼して、正面からイジリを受け入れています。こんな書き方をすると、むしろ唯が一番楽をしているんじゃないかという感じもしますが(唯自身がそういう自己評価をしている節すらありますが)、実のところそんなことは全くありません。
あなたは無心で他人に身を預けたことがあるでしょうか。演劇のワークショップにそういうのがあるんですけどね。目をつぶって直立して、その体勢のままパートナーがいる方向にまっすぐ倒れていくってやつ。教師向けにもよく紹介されるワークショップなので、もしかしたら小中学校の学級活動あたりで経験した方もいるかもしれませんね。
これ、相手を信頼できずに身構えてしまうとかえってケガをします。倒れる側の重心がブレるせいで支えられなくなっちゃうんですよね。逆にまっすぐそのまま体重を預けられたなら、多少体格に差があっても問題なく受け止めてもらえます。
身を預ける側にも勇気が必要ってことですよ。勇気というと語弊がありますが、積極的に信頼しようとするからこそ、信頼関係はうまく機能するものです。
唯がゆずこと縁を心から信頼するからこそ、ゆずこたちの唯イジリは3人ともを楽しませることができるし、それぞれの長所もうまく引きだすことができます。この3人はそれぞれがそれぞれに何ら劣ることなく、相補完的にお互いのステキさを上手に引き立てあっているわけです。
「困らせたり、困らされたりって、なんかいいよね」
このOVAにおいて、あいちゃんは実質的に4人目の主人公として機能します。原作のこのシーンでも思ったものですが、最近の彼女はとても良い感じです。
「あとはあいちゃん困らしかなー」「おっ」「やめろやめろ!」「あいちゃん困らし3の、唯ちゃん困らし7だよ」「じゃあこっち10でいいよ、もう」
ここでさらっと10を受け入れる唯もステキですが、それは上でもう語った話なのでさて置いといて、これに対してあいちゃんはこう反応します。
「3くらいいいのに・・・」
このイジられたがりさん。
あいちゃんのところのグループにおいて、彼女はお姫さまのような扱いです。他のふたりはナイト。おかちーは過剰に気遣いすぎて自制気味ですし、ふみおはあいちゃんの気持ちを察してはいてもあえて期待をはずそうとしてくる子です。
あいちゃんは見るからにグループの中心にいるのに、唯のようにイジってはもらえません。実は彼女たちのグループの話題の中心は大抵おかちーだったりします。まるで聖域のように、触れば崩れるとでもいうかのように、このグループにおいてあいちゃんは繊細に扱われています。
単に美人さんなだけで、雰囲気がちょっぴりおしとやかなだけで、あとおかちーが必要以上に入れ込んでいるだけで、別にこの子、そんな特別な子じゃないのにね。
唯たちはお互いを信頼しあっているからイジリが成立する。ならばあいちゃんがイジられないのは信頼されていないから・・・? もちろんそんなことはなくて、彼女自身もよーくわかっている様子ですが、それでも少しだけ物足りなさが残るのは仕方がないことかもしれません。
彼女が憧れの唯よりもゆずこと親しくなったのは、そういう欲求不満を埋めてくれる子だからなのかもしれません。
情報処理部室に遊びに来たあいちゃんに、ゆずこの容赦ない身内ノリがぶつけられます。
「誰だ! 敵か? それともパン派か?」
何言ってんだオマエ。けれどゆずこはちゃんとわかっています。わかっててやっています。
元々おかちーと思考パターンの近い唯はゆずこの容赦なさっぷりを心配しますが、たぶんあいちゃんの期待に応えられているのはゆずこの方。その証拠に縁センサーもゆずこを支持しています。
「さては乳が大っきいな? あっ、さては入りづらいな!」 繰り返しますが、ゆずこはわかっててやっています。わかっててゆずこ劇場に巻きこんでいくのが彼女流。言外にあいちゃんだとわかっていることを知らせ、さりげなく唯のツッコミを誘導して茶番に一区切りをつけます。
あいちゃん戸惑いっぱなしですがとっても楽しそう。
もちろん一番の友達はおかちーとふみおですが、そちらでもこんなに楽しく振り回されることができるかどうかは彼女次第。(あとたぶんおかちーの意向も)
ゆずこたちの空気を向こうに運んでいくのか、それとも向こうは向こうで独自の発展を遂げるのか。
結論は原作がもうちょっと進んだ先で。
今日のまとめ。
「人って、求められたいんだね・・・」(原作3巻47ページ/縁のセリフ)
とりとめなく
のっけから。デフォルメしきった作画でノッシノッシと崖を上ってくるゆずこの芸人魂がいきなりステキ。ちったあ普通のたたずまいでいられないのか。
ゆゆ式が帰ってきたぞー!
「服着たままお風呂入ってみたーい」 原作の時点でめいっぱいフェチかったこのシーンがなんで強化されてるんですか。バスタブに入る前一度立ち止まる作画に強烈なフェチズムを感じます。膝の裏! ああっ! 膝の裏!
お湯につかりきったらデフォルメ顔になるのもそれはそれでまたフェチぃ。
唯のポッキーの食べ方。SEの小気味よさがまた。そんなんだからいじられキャラなんですよ、唯さん。
「あいちゃんちのお泊まり会、まだ起きてるかね?」「2時か。じゃあまだ・・・」 縁さんは聞き上手。話している人、話題になっている相手、注目すべきところに誰よりも早く、逐一しっかり顔を向けています。そのうえゆずこや唯が視線だけ向けるような距離感でもちゃんと体ごと向きを変えているんですよね。マイペースなようで、ものすごく心遣いが細やかな子です。
おねむあいちゃんにプリッツ。他人の口に棒状のお菓子を差し込むのってエロいですよね。お菓子から唇や舌のねっとりした柔らかさが伝わってきて、これもう半分ディープキスしてるようなもんじゃんと。歯で噛み砕く衝撃が意外なくらい大きく響くのもポイント。
「千穂、ケータイ」 ここの口の動きさりげなくすごくカワイイ。そういえばふみおさん、縁と同様に美少女化進行中でしたね。
「どこで取れる? お前の免許」 ここのゆずこさん、すっごくエッチいポーズしてるし服のしわの描き込みもしっかりツボを押さえたフェチさだというのに、何故か色気がないという珍妙な絵面。そんなゆずこが私は一番好きです。
オープニング。縁が先頭を走るシーンが2回。珍しいですけど変ではないんですよね。この子自分が前に出ること自体には意外と物怖じしないので。普段はゆずこが率先して前に出ているというだけで、実はいつでもゆずことポジションをスイッチできる積極性を秘めています。
「えーでもー・・・あー! やってるー」 こういうのを天然でしでかすのが縁の恐ろしさ。それでいて計算してのボケができないかというとそんなこともないのもまた。原作初期の頃はここまで器用じゃなかったはずですが、やっぱりゆずこの影響ですかね?
「縁ちゃん、どっかに何か付いてる!」「はっ!」 これなんかまさにお互い計算しあって茶番してる好例ですね。さっきとは違ってこちらでは明らかにわざと手を前に出しています。
「なんだろう。腹減ってるし甘いのよりは・・・。でもダルそうだし重いのもなあ・・・」 言葉づかいの荒さの割に妙に几帳面というか、神経細いのが唯らしさ。そんなんだからいじられキャラなんですよ。
「津軽海峡にパンが引っかかるから」 事実、縄文・弥生文化あたりは津軽海峡を境に以北にはほとんど伝わることがありませんでした。地図上では小舟で渡れそうな狭い海峡に見えますが、あそこ実はけっこうな難所として知られています。というか狭いからこそ潮の流れが荒れるんですよね。
・・・え? そういう話じゃない?
「いなかったら私アレだよ。ネコの鳴き真似するよ」 原作第8巻で一番好きなエピソード。この茶番感丸出しな仕込みからのネタ披露はいかにもゆずこらしくて大好きです。丁寧にお膳立てしてある分、唯のツッコミも縁の笑いもキビッと冴えていますしね。
「打ち消しの1ネズミ」 ほんのりしょげたゆずこを労るためのネタなので、実際合ってたかどうかはあんまり問題にしていないような気がします。たぶんゆずこがどんなの返しても「合ってた」と言ってくれるはず。ゆずこが拾ってテンション元に戻してくれることが最重要。
というかこの子の場合、ゆずこが拾ってくれることを期待して適当に投げっぱなしている可能性の方が高い気もします。
「ほぇぇぇぇい」 原作のハイタッチにはなかった気の抜けたかけ声。明らかに合わせる気のない直前のネタとの連携を加味して、アニメオリジナル要素のなかではここが一番好きです。
「ああー、押しとどめれなかったー」 原作では靴を履いたまま蹴っていたのですが、こちらでは靴を脱いでいます。作画班のフェチズムの暴走・・・というわけではなくて、おそらく縁なら他人の靴下に足跡をつけたがらないというキャラ解釈でしょう。また、靴を脱ぐ間を挟むことによって、ここでの彼女の行動が天然ではなく計算だということを強調しているように思います。
情報処理部のホワイトボード。だんご、だんご、だんご、だんご、だんご大家族。
「タイミングが・・・」「あっ、さては入りづらいな!」 ここのゆずこの勘の鋭さ、やっぱりすごいですよね。やってることは芸人なのに、心遣いはジェントルメン。公園のベンチにハンカチを敷くがごとく、なめらかな所作であいちゃんの困惑を解きほぐします。・・・まあ困惑させたのもこの子なんですが。
「あいちゃんも先生のことお母さんって呼んだら?」 こうムチャ振りされてちゃんとやるあたり、あいちゃんやっぱりイジられたい族。私は照れが勝って最後までやらないタイプでした。(空気読めない族ともいう)
「最初に話しかけてくれたのがおかちーで、ふみおちゃんとおかちーがいつの間にか仲よくなってて」 経緯からしてもあいちゃんグループの主役はやっぱりおかちーなんですよね。あいちゃんはなんとなく真ん中に据え置かれているだけであって。
ちょっぴりイビツ。けれどたぶんこれが彼女たちにとって一番居心地のいい関係。あいちゃんは自分から話を振るより聞く側でいるのが好きなタイプだし、おかちーはあんまりイジられすぎるのは好きじゃない。
「セプテンバー!」 ドラマCDでも一度やったネタですが、唯がイジりたおされるこの話はOVAのテーマにぴったり合致するということでしょう。再びの起用となりました。ただしドラマCDのときとはだいぶ演技の仕方が変わっていて、こちらの方がチャキチャキテンポよく進行します。
唯ちゃん釣り。せっかく自分から仕掛けてもゆずこにカウンターされたら曲げるしかないんです。というか実際のところ、唯がゆずこを釣ってもあんまり面白くできないので喜んで自分から釣られてしまうんです。そんなんだからいじられキャラなんです。
うろこ雲。調べてみるとひつじ雲とはまた少し違うんですね。私どちらもひつじ雲と呼んでいました。生臭いのあんまり好きじゃないですし。
ところでゆずこさん、そのカッコ寒くないんですかね? 風の強い日って特にセーターは辛いですし。
「実際しっかりしてるしなあ。勉強できるし、頭回るし」「縁も人見知りとか、物怖じしないし、なんか大人慣れしてたり」 3人ともすごく良い子なんですが、実は唯だけ少し自己評価が低いんですよね。グループ内でのポジション的に、彼女はどうしても構ってもらってる感を感じちゃうでしょうし。
そしてそんな唯のアンニュイをいち早く察知し、「唯ちゃんち行く?」と早めに切り上げることを提案する縁さんマジラスボスの風格。ミズセ・アークデーモン・ユカリ。
「来月は縁ちゃんの誕生日だよ」 そんなラスボス・縁さんの唯一の弱点。実はこの子、自分がイジられるのはあまり得意じゃないみたいなんですよね。突然自分の話題を振られて固まってしまいます。オチが付くまで微動だにしないとかさすがに固まりすぎ。ゆずこもそのあたりは理解しているのでしょうね。初めから唯の方にむかってこの話題を切りだしています。
思えば幼い頃も、チヤホヤしてくれる取り巻きの子たちより素っ気なく構ってくれる唯の方を選ぶ子でした。ただ、それはそれとして寂しがり屋でもあるのでたまにイジワルもしてあげなきゃなんですけどね! ね、部長! 今日の部活テーマ早く決めてください!
「で、何の話してたっけ?」「縁の誕生日どうするって」「来年お祝いするときはもう3年生だよね」 だからどうして来年の話になるのか。まだ作中時間10月ですよ。
縁の勘の鋭さばかり目立ちますが、ゆずこだってちゃんと聡い子です。さっきから来年の話でボケかましてたのはここに持ってくるため。唯のアンニュイをほぐすため。
「今年と来年、いろんなことしよう」「うん。全部しようね」 唯が何にヘコんでいるかなんて、いくらなんでもゆずこたちにわかりっこないでしょうが、それでもネガってるよりポジってる方が絶対楽しいはず。
「無理だよ」 唯が困った顔をするのはちょっとだけ折れてくれたことのサイン。唯の口元が笑っているのはちょっとだけポジティブになってくれたことのサイン。彼女は素直じゃないのでしばしばアマノジャクなことを口にしますが、ゆずこと縁にかかれば本心なんて筒抜けです。だってゆずこたちは唯のファンなんですから。
夕方。アニメ版ゆゆ式の名物。30分おしまいの寂寥感。唯ちゃんセラピーも無事終了して、いつもの笑顔を取り戻しました。めでたしめでたし。
あ、今度こそひつじ雲ですね。
「しゅぽーん」 貴重な貴重なゆずこのエロス。まあ直後に唯の濃厚フェチズムで上書きされちゃうんですけどね。
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