映画 プリキュアスーパースターズ! まだ観ていない人にオススメするための感想

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ライトで奇跡を起こすんや! もっとライトの応援が必要や! もっとや! もっとー!

この記事は未視聴者向けとして、一応ネタバレに配慮しているつもりです。
他の記事はネタバレガンガン踏み込んでいるのでもし興味があればどうぞ。

とりあえずざっくりした感想

 いつも利用しているジャスコ(最近はイオンとかいって気取っているらしい)の映画館で8:30からの初回放映を観てきました。
 お客さんの入りは6割くらい? 去年よりはちょっと少ない気もしますが、これは去年と比べてテレビ放送オープニングでの告知が1週遅かった影響でしょうか。まあ今年のペースの方がむしろ平年どおりなんですけどね。とはいえ一昔前に比べるとそれでもだいぶ賑やかで、プリキュア人気が安定してきたことを肌で感じます。

 今年の春映画はいつもよりちょっとだけ年長さん向けな作品になっているように思います。

 去年のプリキュアドリームスターズ!の悪役・烏天狗がユーモラスだったのと違って、今年の悪役であるウソバーッカって結構コワいキャラクターなんですよね。強いし、大きいし、不気味だし、卑怯だし。
 ただ、そこらへん制作側も理解しているのでしょう、声優さんの演技はだいぶマイルドに味付けされていました。おかげでキャラクターの見た目と裏腹に威圧感はだいぶ中和されていて、少なくとも私が見に行った放映では泣きだす子はいませんでした。

 それからストーリー自体のストレス強度も比較的高めです。
 事情があって変身できなくなり、しかもさあやとほまれとは別行動することになったはなが、ウソバーッカの襲撃から逃げつつキラキラプリキュアアラモードと魔法つかいプリキュア!に助けを求める――という流れが前半の物語になります。
 ウソバーッカに対抗できず、しかも予告で語られている“クローバーとの約束を守れなかった”という負い目がはなの気持ちを沈ませていくので、観ている私たちにとっても絶望感、悲壮感が強く感じられます。例年同様ストレスを和らげるためのコメディシーンも挿入されていますが、今回は根底に横たわる悲壮感の重みがいつもより大きいので、劇場内の空気を換えてくれるほどには機能していません。
 どちらかというとあのコメディ要素は、どんなときでも絶対に諦めないプリキュアたちの心の強さを描写している感じですね。初代プリキュアが最終決戦のなかでふと宿題やおつかいのことを思いだしていたあの感じ。みなさんもプリキュアを見習って、後半の逆転勝利のときまで泣くのをグッと我慢して、プリキュアたちを精一杯応援しましょう。

 また、年長さん向けというのはただキツい映画だからというだけではありません。今年の映画はメッセージ性が非常に強くなっています。そこをきちんと読解できると物語としての面白みがグッと広がると思うので、そういった意味でちょっとだけ年長さん向け。だいたいひとりで絵本を読めるくらいの国語力があれば良い感じかも。
 特にクローバーの花言葉を活用したストーリーギミックがよくできているんですよ。単に場面ごとの都合に合わせた花言葉を引用しているというわけではなく、花言葉に多様性があることそれ自体に意味を求めているんですよね。
 違う花言葉を提示されるたびにそれぞれのキャラクターから受ける印象が二転三転、コロコロと変わっていきます。すべての戦いが終わったエピローグでクローバーがちょっと意外な胸の内を語るのですが、それも花言葉ギミックがあってこそ納得できる、味わい深いものでした。
 前半こそちょっと重苦しいものがありますが、終わってみれば総じて良い物語でしたよ。

クロスオーバー要素

 前述のとおり、はなが他のプリキュアたちに会いに行くというフォーマットでストーリーが展開します。なのでいろんなキャラクターがいろんな組み合わせで交流を深めていくという要素は、残念ながらそう多くはありません。
 そのかわり、各シリーズそれぞれの持ち味は存分に発揮されています。それぞれの違いがはっきりして並立していて、そこがすごくいい。

 ひとりひとりの個性の輝きを賛美し、過去から未来へと貫く自分らしさを肯定したキラキラプリキュアアラモード。
 いちかたちは相変わらずどんなときでもマイペースに賑やかで、どんな辛いときでも当たり前の日常を忘れません。この子たちがいなければ、はなたちは絶体絶命の状況に似つかわしく、笑顔を忘れてしまっていたことでしょう。のほほんとした笑顔を忘れないこの子たちは強い子です。

 まるで家族のような強い絆を築き、悲しいお別れにも挫けずに再会を信じて貫いた魔法つかいプリキュア!。
 みらいたちの当然にお互いを信じあうチームワークは今回すごくカッコよく描かれました。キラキラプリキュアアラモードが現在の日常を堅持する役割を担っていたなら、こちらは未来を切り開いていく建設的なポジション。ただの自己犠牲精神かと思いきや、それなりの計算があってあえて離ればなれになることを選んでいたんですもん。敵いませんね。

 HUGっと!プリキュアに関しては映画自体の核心に直結する立場なのでネタバレを回避しながら語るのは難しいですが・・・。
 「はなちゃんがやりたいことは?」
 繰り返し問われるこの命題の、映画全体に対する立ち位置がすごく良かったです。

 ちなみにはなたちがそれぞれのチームに会いに行く手段は過去のテレビシリーズや映画での経験に則したものになっています。はなが命綱なしのフリーフォールを体験するハメになったのはだいたいサクラと去年の私たちのせい。
 それぞれ独立した作品である以上、こういうのは単なるお遊びでしかないんですが、やっぱり楽しいですよね。

約束

 今回の映画は「約束」がテーマになっています。
 幼いころに謎の少年・クローバーと交わした約束を果たせなかった、はなの苦しい胸の内が物語の核です。

 約束って、何のためにするのでしょう。
 未来のことなんて誰にもわからないのに。もしかしたら守れないことだってあるかもしれないのに。
 そして、守れなかったら、約束した人も約束してもらった人も、どちらも悲しい思いをしてしまうのに。
 そういうコワい側面だってあるのに、どうして私たちは約束しようとするのでしょう。
 その答えが、この映画にあります。

 さすがにテーマの話となるとネタバレ抜きで語るのは難しいのでほどほどにしておきますけどね。
 ですがこの映画で語られる“約束の意義”というのは、社会人の私たちが日頃しているような、相手を契約で縛りつけるための世知辛いものではありません。もっと夢があって、もっと希望に満ちていて、「ああ、あのとき約束していてよかったな」と思えるような、そういうとってもステキなものです。
 はっとするような、どこまでも暖かな視点がそこにはあります。

 そういう答えを導いていく、はならしい心の交流と葛藤。
 ぜひともテレビシリーズでのはなたちの活躍とあわせて、約束というものの意義を考えてみてください。

ミラクルライト

 今作のミラクルライトを振るタイミングは全部で3回ありました。

 そのうち1回目と2回目はいつにも増してヒーローショーの文法そのもの。
 「こんにーちわー! ・・・んー? 元気が足りないぞー。もう一回! こーんにーちわー! ・・・わー! みんなとっても大きい声でお姉さんビックリしちゃったー!」
 ああいう感じです。繰り返しの呼びかけとリアクションが1セットとして明確にパッケージングされていて、結構な強制力を持って子どもたちを参加させ、参加したことに見合うだけの感謝の言葉ももらえる仕組みになっています。
 1回目と2回目のミラクルライトはバトルと関係ないタイミングで、例年なら子どもたちが振りづらそうにしているはずのシーンなのですが、このカッチリした仕組みを持ち込んだおかげで、子どもたちは一生懸命ライトを振ることができている様子でした。「ここだ!」っていうタイミングがわかりやすいと安心感があるんですよね。

 ただ、こういうやり方で振らせるのは子どもたちにとって受動的な行為でしかありません。
 プリキュアのミラクルライトって、初めて試みをはじめたときから一貫して子どもたちに自由にプリキュアを応援してもらいたいという狙いが見て取れるんですよね。その意図からすると、この手のヒーローショー的手続きはまったくもってミラクルライトらしくありません。
 子どもたちにはもっと自由に、能動的に映画に参加してほしい。だって、自分でやりたいと思って始める応援の方が絶対楽しいじゃないですか。
 それを実現するためにプリキュア映画は毎年様々に趣向を変えてきました。前説に加えて短編映画を挟んで事前に場を暖めてみたり、どうしても必要なとき以外はあえてミラクルライトを振る指示をしなかったり。なかなかうまくいかなかったんですけどね。

 そういう、子どもたちの主体性を引き出そうとする試みが、今回やっと成功したように思います。
 ミラクルライト3回目は白熱のバトルシーンです。
 このシーン、最後の大技の直前までミラクルライトを振る指示は出ません。はぐたんがライトを振っているカットがたまに挿入されるだけです。
 なのに、ですよ。子どもたちは一生懸命に振っていました。びっくりしました。
 例年だとこういうシーンは積極的な子がちらほらまばらに振っているのが見えるだけだったのですが、今年は前2回と遜色ないくらいたくさんの子が腕を大きく伸ばして振ってくれていました。
 このシーン単体で見ると、やっていることは過去の例と変わらないはずなんですけどね。子どもたちのテンションが全然違っていました。重ねていいますが、ほんとびっくりしました。隣に座っている子のライトが私の膝にぶつかって、そのせいでその子のライトの振り方が心持ち控えめになってしまいました。ゴメンよ。そのくらい、みんな夢中になって振っていました。

 たぶん、前2回がいい感じに導入として機能したんでしょうね。
 振ればいいことがある。奇跡が起きる。プリキュアに「ありがとう」って言ってもらえる。そういう明確な成功経験が子どもたちの積極性を引き出したんでしょうね。
 特に今回の映画はこれでもかってくらいはなの苦しむ様子が描かれつづけましたから。それをようやくひっくり返すことができるチャンス、そりゃあ確かに誰だって応援したくなりますとも。

 「君たちはプリキュアに力を与える特別な存在」
 長老が前説で妙に気取った言い回しをしているとは思いましたが、なるほど、これもすべてはこのためだったんですね。
 今年のミラクルライトは単なる観客参加型コンテンツではありません。今年のミラクルライトにはホンモノの奇跡の力が眠っていて、その力を行使できる子どもたちはホンモノのヒーローなんです。・・・ああ、うらやましい体験だなあ。

 決まったシーンでみんな一斉にライトを振る光景と比べるとそこまできれいなものではありません。
 ですが、感動しました。この子たちは本当に本当に心からプリキュアを応援しているんだなあというのがよく伝わってきて、愛おしい気持ちでいっぱいになりました。大の大人が子ども向けアニメの、それも観客席を見て目を潤ませてしまいましたが、別にロリコンとかそういうのじゃないので許してください。
 オッサンオバサンにはミラクルライトを振る権利は与えられませんが、興味がある人は(子どもたちのジャマにならない程度に)早めに劇場に足を運ぶことをオススメします。気合いの入っている子ほど映画を見に来るのが早いので。

 今年はまあ、そんな感じかな。
 良い映画体験でした。

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