
前置き(※ 何故か1000字近くある)
昔に比べてバーチャルYouTuberがつまらなくなったという人たちがいます。
今のバーチャルYouTuberが好きな人にとっては業腹な言い分でしょうが、ひとつの真実です。
というのも、最初期のバーチャルYouTuberファンは主にアーリーアダプターとアニメオタクで構成されていたからです。
アーリーアダプターたちはバーチャルYouTuberが最先端のVR技術を取り入れた目新しいコンテンツ群を発信してくれることを期待し、アニメオタクたちは演者のアドリブやファンの反応を積極的に取り入れていくフットワークの軽い制作体制によるアニメ風コンテンツを楽しんでいました。
そして、彼らは必ずしも配信者文化に興味を持っているわけではありませんでした。むしろ、それまで動画サイトに寄りつくことのなかった層を開拓できたからこそ、最初期のバーチャルYouTuberたちは爆発的にファンを増やすことができたわけですから。
バーチャルYouTuberがやっていればこそゲーム実況やASMRなどもある程度楽しめていたものの、本来はそういった種類のコンテンツに興味があるファン層ではないんですよね。あくまでアニメ然としたキャラクターたちが跳んだり跳ねたり表情コロコロ動かしたりする様を楽しんでいたのであって。
まあ、採算性を考えると既存の配信者文化を踏襲するようになったのも仕方ないことなんですが。
さて。この記事はそういうメンドクサイ人たちにバーチャルYouTuberの音楽ライブをオススメするために書きました。
たぶん、あなたが好きだったバーチャルYouTuberの世界は今こっちにあります。
こちらこそがメインストリームです。
最新鋭の機材と高品質の3Dモデルがあり、趣向を凝らしたステージがあり、なによりトラッキングに習熟したプロフェッショナルなパフォーマーたちが数多く集っています。
あなたが好きだった世界は無くなったわけではありません。
単にちょっと違うところに移っていただけです。
有料ライブなのでどうしてもちょっと敷居は高め。一度見てみるまでなかなか魅力は実感しにくいかもしれません。最初の1回を試してみるまでが本当に遠い世界のお話であるかのように感じられてしまいがち。
でもまあ、たぶんあなたの好きなやつだと思いますよ。そこは保障します。
絶対に見逃せない5つの超有名グループ
まりなす
AVALON(バーチャル・エイベックス株式会社)に所属する4人組ダンサブルユニット。
きわめて激しいダンスパフォーマンスで知られている、ステージアイドル系バーチャルYouTuberの看板的な存在です。初めてバーチャルYouTuberの音楽ライブを見るときは、まず彼女たちの高い身体能力と、それを正確に表現するトラッキング技術に圧倒されることでしょう。往年のMAXやSPEEDを思わせる由緒正しいエイベックスサウンドも特徴。
しっかり者でアイドルオタクの愛されリーダー・奏天まひろ、一見真面目そうに見えて実は甘えたがりのボケたがり・燈舞りん、優美なバレエと独特の空気感が魅力の核弾頭・音葉なほ、歌もダンスもカッコいいのにバーチャルYouTuber界で1,2を争う壊滅的アホっ子・鈴鳴すばる。4人が4人とも強烈な個性の持ち主であり、豊富な舞台経験と相まってマイクパフォーマンスも堂に入ったもの。隙あらばチケットを売ろうと営業を仕掛けてきます。買いましょう。
残念ながらメンバーの精神的支柱だった奏天まひろが大病を患い活動休止中ですが、残りの3人とプロデューサーが一丸となって彼女の愛した居場所を守りつづけています。
えのぐ
株式会社岩本町芸能社に所属するバーチャルアイドルグループ。
「世界一のVRアイドルになる」という高い志のもと、具体的には年間200ライブに出演するという目標を掲げて精力的に活動しています。バーチャルYouTuber関連に限らず、ありとあらゆる音楽ライブに参加しては生身のアーティストとしのぎを削っているため、バーチャルYouTuberに興味がなくともえのぐの名前は知っているという人も少なくありません。
持ち味はなんといってもエネルギッシュな歌声。このステージを最後に引退してしまうのではないかと毎回心配になってしまう本気の絶叫に、全ての観客はその魂ごと震わされることになるでしょう。アイドルをナメてはいけない。もちろんマイクパフォーマンスやダンスも本気の情熱を感じさせるものになっており、会場を熱くさせるという点にかけては比類する者のいない唯一無二の闘士です。
GEMS COMPANY(ジェムカン)
所属は大手ゲームメーカーの株式会社スクウェア・エニックス。実は他にもProject:;COLDなど、バーチャルキャラクター事業に力を入れている会社でもあります。
当初は美麗なグラフィックで話題を席巻し動画サイトでの配信メインで活動としていましたが、現在の活動の中核はどちらかというと音楽ライブ。とはいえメンバーそれぞれに配信活動も継続しており、正統派アイドルから積極的にヨゴレキャラを演じるメンバーまで、多様な顔ぶれを揃えています。
音楽ライブではモーニング娘。やAKB48のような大人数でのフォーメーションダンスが強み。確かな練習量に裏付けられ、舞台の隅から隅まで一糸も乱れることがないフォーメーションは圧巻の大迫力です。
行動力を持て余した奇人変人がやたらに多く、ステージ上でも唐突に悪ふざけじみた一幕を仕掛けてくるので油断してはいけません。
Palette Project(パレプロ)
MateReal株式会社がプロモーションするバーチャルアイドルグループ。
メンバーそれぞれが得意とする曲調に合わせてAltimate!!、REGALILIA、Sputripという3つのグループ内グループを編成しており、音楽ライブでもどちらかというとこの小グループ単位での出演が多くなっています。それぞれのグループにも全体にもオリジナルの持ち歌あり。グループごとに違うカラーを持つ輝きと、全員が集まったときの華やかさのコントラストが魅力です。
GEMS COMPANY同様、個々のメンバーによる配信活動も行われています。どちらかというとおっとりほのぼのした空気感のアイドルらしいキャラクターが多いでしょうか。
VALIS(ヴァリス)
所属は深脊界計画。花譜で知られるKAMITSUBAKI STUDIOの派生プロジェクトであり、株式会社THINKR、株式会社バンダイナムコアーツ、パルス株式会社の3社協同プロデュースです。
2020年デビューと主要5グループのなかで最も新興のグループではありますが、「神出鬼没のバーチャルサーカス団」をコンセプトとした独創的なビジュアル・音楽性、そして活発な活動歴によって、すでに大きな存在感を示しています。
まるで古びた西洋人形が動きだしたかのような怪しげな雰囲気と、しなやかな身体操作による蠱惑的なダンスパフォーマンスがこのグループの個性。音楽ライブには必ずしも6人フルメンバーで出演するわけではなく、3~5人でステージに立つことも多いです。そのぶん毎回異なるフォーメーションを見られるところも珍しい特徴ですね。
バーチャルキャラクターとしての姿はアバターであるという割り切ったスタンスで、生身でのアーティスト活動も並行して行っています。
個人的に好きな注目アーティスト
キズナアイ
ご存じバーチャルYouTuber文化の創始者。Kizuna AI株式会社に所属しています。
「みんなと繋がりたい」という思いを己のミッションとし、国境や言語の壁を越えるための手段として歌を選びました。ステージアイドル系バーチャルYouTuberの誕生に先駆けてオリジナルの持ち歌を制作するなど、実はこの方面でも第一人者だったりします。
シンギュラリティを起こしたスーパーAIという設定に即して持ち歌は全てゴリゴリのエレクトロサウンド。ライブでは多くのパートナー企業や大学の協力を得て惜しみなく最新技術が投入され、目新しいステージ演出や華麗な衣装に身を包んだキズナアイが軽やかに歌い、ステップを踏んでいました。その先進的な取り組みの数々は単純なファーストペンギンとしての価値に留まらず、後に続くバーチャルアーティストたちにとっての指標ともなりました。
現在はリブートに向けて活動休止中。遠くない未来にまた元気な姿を見せてくれることでしょう。
LiLYPSE(リリップス)
AVALON(バーチャル・エイベックス株式会社)に所属のデュオユニット。
きわめて高クオリティのハーモニーと人外めいた超ロングハイトーン、見事に息の合ったシンクロダンスに、それから何故か間奏中たびたび漫才トークが披露されるという個性まみれのユニットです。えるすりー1でサプライズ的にデビューして観客の度肝を抜きました。
その後2年ほど、長期間音沙汰なかったり、突然オリジナル曲を披露したり、またしばらく沈黙したり、いつの間にかライブ常連勢の仲間入りしていたり、全然プロモーションビデオを出してくれなかったりと、ファンをやきもきさせつづけたのはご愛敬。もはやLiLYPSEなら何が起きても仕方ない。何が起きても驚くが。今年5月にようやくファーストライブが開催されます。
富士葵
かつて株式会社Smarprise(Gunosyグループ)に所属していましたが、現在は個人で活動しているようです。
バーチャルYouTuberとして最も早くメジャーデビューを果たしたことで知られています。よく語られるのは歌姫としての活動ですが、元々はキズナアイらと同様の動画投稿者であり、タレントとしての活動実績も豊富。現在も変わらず歌のみに縛られないマルチタレントとして活動を続けています。
歌声は技巧的ながらもパワフル。呼気圧濃強でよく響く、マッシブな声質を持っています。普段の屈託なくよく笑う朗らかな人柄から打って変わって、ひとたびステージに立てば圧倒的な迫力で観客を飲み込んでいきます。以前はダンスにだけ苦手意識があったようですが、長年自覚しながら活動を続けてきただけあって、今では相当に克服されています。
ヒメヒナ
株式会社LaRa所属。前身は田中工務店というクリエイターサークルから始まりました。
こちらも活動の主軸は動画投稿で、よく動く3Dモデルとデビュー当時まだ珍しかったコンビでの活動で最初の人気を集めました。以後、サークル運営ならではの機動力でコロナ禍を経てなお現在に至るまで動画中心の活動スタイルを維持してきました。
元々歌にもダンスにも素養があり、歌ってみた動画が人気を博して以降は次第にこちらでの活動も増やしていきました。得意とする楽曲はややメタル寄りのハードロック。特にオリジナル曲では独特の世界観を有する切迫感ある歌詞を疾風怒濤のサウンドで息つく暇もなく叩きつけてきます。私個人の感性での印象論になりますが、音楽による客席制圧力ではおそらくバーチャルYouTuber界随一。
銀河アリス
所属はバルス株式会社。
何時間歌おうとも踊ろうとも騒ごうとも、息ひとつ乱すことない無尽蔵の体力を持っています。そもそも本人がじっとしていることを苦手としているようで、誇張抜きに四六時中常に跳ねまわっています。それでも息が乱れない。意味がわからない。ついでにジャンクフード大好きでインドア志向。それでどうしてあれほどの持久力が身につくのか。
オリジナルの持ち歌はかわいい曲調のJ-POPが多いでしょうか。自身で振りつけした、バレエのエッセンスを取り入れたダンスを伸び伸びと、歌いながら踊りあげます。歌と同じくらいダンスも感情表現豊かなところが特徴。本人が素直で人なつこい性格をしていることもあり、本当に口で話す言葉と同じくらいわかりやすくダンスでお喋りしてきます。「ダンスの楽しみかたなんてよくわかんないよー」みたいな人にもオススメ。
ちなみにバーチャルYouTuber界一のアホっ子最有力候補のひとりでもあります。
人気が高い注目ライブイベント
Life Like a Live!(えるすりー)

主催はバーチャル・エイベックス株式会社。
2020年の初演から過去3回開催されました。(※ ブイアワ開催期間中に行われたミニえるすりーを含めると4回)
多い年は4日間に渡り計6公演も行われたことがある、VTuber関連では間違いなく最大規模のイベントです。このイベントだけでステージアイドル系バーチャルYouTuberを一通り網羅できるほどの特大ボリュームで、この方面のバーチャルYouTuberファンからの注目度も随一。開催時期さえ合うのならこのイベントから音楽ライブの世界を知っていくのが一番オススメです。
ライブハウスで上演するのではなく、最初からオンライン配信前提で催されるため、他のイベントに比べてダイナミックなカメラワークや鮮烈なステージ演出をふんだんに盛り込んでくるのも大きな特徴ですね。
まりなす、GEMS COMPANY、Palette Project、VALISなどの人気グループが一堂に会するだけでなく、これらのメンバーを入れ替えたシャッフルユニットによるここだけのパフォーマンスが見られるのも大きな魅力のひとつ。しかもこのシャッフルユニットのために新曲まで書き下ろす至れり尽くせりっぷり。
特にまりなす、LiLYPSEはこのイベントで大きく名を上げました。.LIVEの花京院ちえりがステージアイドル系のバーチャルYouTuberたちから注目を浴びるようになったのも、このイベントでの好演がきっかけです。
Virtual Music Award(ブイアワ)

主催はバーチャル・エイベックス株式会社。
2020年の初演から過去3回開催されました。
バーチャルYouTuberのオリジナル曲に限定してセットリストを編成しているのが最大の魅力。(※ ただし、必ずしも本人の持ち歌というわけではなくカバー歌唱も多く含みます) バーチャルYouTuberという巨大コンテンツ群を広く愛する人にとって究極の祭典といっても過言ではないでしょう。ディープなバーチャルYouTuberファンから熱烈な支持を受けているイベントです。
出演アーティストに実力派が多く、ステージ演出も豪華、音響その他機材も最高水準と、純粋に音楽イベントとしての品質が非常に高いので、えるすりーと並んで万人向けにオススメできます。
なお、アワードと銘打っていますが別に表彰とかはしません。
ヰ世界情緒や波羅ノ鬼、HACHI、花鋏キョウなど名だたるバーチャルYouTuberが入れ替わり立ち替わり歌を披露します。どちらかというとダンスよりも歌唱に力を入れているアーティストが多いでしょうか。
えるすりーが特定グループ間のシャッフルユニットに力を入れているのに対し、こちらでは所属事務所の垣根を越えたコラボレーションステージがたいへん多く、えるすりー以上に多様な組み合わせのパフォーマンスを楽しむことができます。
VILLS

主催は日本テレビ放送網株式会社 他。
2020年の初演から過去3回開催されました。
このイベント最大の特徴は音楽ライブとは別にバラエティショーがあること。にじさんじ、ホロライブ、.LIVE、774.incなどに所属するストリーマーとして高い人気のタレントたちが、普段はなかなか披露する機会の少ないフルトラッキングで全身をのびのびと動かしながら、大喜利やら体力測定やらのバラエティ企画に挑戦します。
どちらかというとストリーマーが主役のイベントなので、音楽ライブのほうでもそちら側の出演が多め。とはいえエイベックス系列のイベントでもあるのでステージアイドル系の出番もしっかり押さえてあり、多様なパフォーマンスが楽しめます。
普段バラエティ方面で3Dの活動経験を蓄えているタレントたちはステージアイドルのライブパフォーマンスとはまた違った輝きを見せてくれるので、そのあたりがこのイベントならではの見どころになります。激しいダンスはなくとも、見栄えのするポーズやかわいらしく見える仕草などをよく心得ている熟練の出演者が多いです。
VTuber Fes Japan

主催は株式会社ドワンゴ。2018年という早期からいくつものバーチャルYouTuber関連イベントを手がけてきました。
VTuber Fes Japan自体は2019年の初演から過去3回開催されました。2022年4月29日に4回目が開催されます。
元々ニコニコ超会議の一企画として出発し、その後独立したイベントになったり、再び超会議に吸収されたりしています。ライブステージの他、現地会場では1on1のおしゃべり会やコスプレショーなんかの企画も併催されています。
このイベント最大の特徴はテンポの良さ。通常、バーチャルYouTuberの音楽ライブはトラッカーを交換するなどの都合でアーティストが交代するたび数分程度の幕間が入るのですが、このイベントではそういったことがありません。間延び感なく音楽を浴びることができます。幕間を入れるときも総合司会がトークで場を繋いでくれます。
出演アーティストは話題性で選出される印象が強いでしょうか。前年にバズった人、ニュースの当事者、それから業界最大手ホロライブなどの出演が目立ちます。
実力が高い割に合同ライブで見かけることは少ないヒメヒナの熱演を見られる貴重な機会でもあります。
TUBEOUT!fes(チューバウト!フェス)

主催はバルス株式会社。
2021年に2回開催されました。
元々TUBEOUT!と題して小規模ライブを展開していたイベントのフェス版です。一般的な野外フェス同様、3つに分かれたステージでたくさんのアーティストのパフォーマンスが同時並行的に進行していきます。あっちこっち目移りさせながらそこら中に音楽があふれているお祭り騒ぎを楽しみましょう。
バルス所属のMonster Mateや銀河アリスのカラーを色濃く反映し、ハードロックなナンバーや激しいダンスパフォーマンスを得意としている本格派のアーティストが多数出演します。他のイベントではなかなか見かけないアーティストも少なくなく、音楽系バーチャルYouTuberの裾野の広がりを感じることでしょう。毛色の違いこそがこのイベントならではの個性ですね。
とか何とか言っておきながら実は私自身これだけまだ観に行けていないのですが・・・。(次こそチケット買おう)
コメント
今更突っ込むのも野暮だが、VILLSは日テレ主催でavexは関係ない
これ素で勘違いしてました。すみません。
バーチャルエイベックス社は出資者ではなく制作担当ですね。