映画プリキュアミラクルユニバース まだ観ていない人にオススメするための感想

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そのミラクルライトはピトンの思いで光ってるんだよ。

この記事は未視聴者向けとして、一応ネタバレに配慮しているつもりです。
他の記事はネタバレガンガン踏み込んでいるのでもし興味があればどうぞ。

ざっくりと雑感

 あらすじを一言で表すなら“ピトン(ゲストキャラ)の応援を受けたプリキュアたちが力を合わせて巨悪をやっつける!”といったところ。いかにも子ども向けアニメって感じでとってもシンプルです。
 全編通して2Dアニメで描かれたプリキュアたちがとにかくかわいらしく、カッコよく、それでいてしっかりと成長も描かれていて、面白い映画でした。

 ただ、巨悪をやっつけるにしてもそこで“どうして応援したいと思うのか?”という要素を大切にしている作品でもありまして、そのあたりのテーマまで読み取ろうとすると少し苦戦するかもしれません。いくつか抽象的な表現も出てきますしね。
 まあ難しく考えなくても全体を通して観ればなんとなく伝わってくる構造にはなっているので、素直に映画を楽しもうとする子どもなら特につまづくところはないでしょう。
 反対に、細かいシーンひとつひとつの意味にこだわるメンドクサイ大人にとってはなかなか理解に苦しむ作品かもしれません。そこを自力で読解していくことこそが物語の楽しさなんですから、子ども向けアニメと舐めてかからずちゃんと思考しながら鑑賞しましょう。その姿勢自体も本作のテーマと密接に関わるわけですし。

 今回、敵キャラには深い事情だとか複雑な背景だとかはありません。シンプルにプリキュアのアクションを映えさせるためのサンドバッグです。
 なので造形的にはそこまで不気味な表現がされず、プリキュアが苦戦するシーンもほとんどありません。たぶん、怖がる子どもはあまりいないと思います。少なくとも私が観に行った映画館で泣きだした子はひとりもいませんでした。

 恒例のミラクルライトは今回子どもたちにとってかなり振りやすかった様子です。ちょっとズルいくらいわかりやすい演出がされていたおかげですね。好みは分かれるでしょうが、子どもの誘導として私はああいうのアリだと思っています。
 あと、例年バトルシーン以外ではライトを振りにくそうにしている子どもの姿を見かけていたのですが、どうやら東映アニメーションの方でもその課題は認識していたらしく、今回ミラクルライトを振らせる場面ではバトルの流れじゃなくても必ずプリキュアが敵を倒してお礼を言うカットを挿入していました。そういう細かい配慮のおかげもあってか、今年は自信を持って大きくライトを振っている子が多かったように思います。

プリキュアの描写について

 上でも書きましたが、今年の映画はキャラクターに3Dモデルをほとんど使っていません。
 3Dモデルをつくるコストの都合でここ最近の春映画はプリキュアの姿でいるシーンが非常に長かったのですが、本作は2D制作になったおかげで変身前の姿がたくさん映るようになりました。これ見よがしに変身前後の切り替えをちょくちょく見せてきます。
 特に予告映像でもよく使われている、スカートをパタパタさせる愛崎えみるがサイコーにかわいらしい。そしてちょっとフェチい。あと琴爪ゆかりがいつにも増してよくわからない動きをしていました。旧シリーズのキャラクターのなかでは特にえみるとルールー、ゆかりとあきらのコンビが目立って活躍していましたね。

 プリキュアの技もあまりバンクを使わず、大半が新規作画で描写されています。これバンクでも不都合ないのでは?ってシーンまで新規作画。よっぽど描きたかったんでしょうか。
 アクションの華やかさでは3Dの方に分があるので私は3Dアニメも好きなんですが、2Dで1枚1枚描かれた表情はやっぱりいいものですね。オタクにとっては嬉しいサプライズでした。

 サプライズといえば――こういう他人の感想文を読みたがる人ならこの手のネタバレはむしろ鑑賞意欲を刺激されると思うのでバラしますが――、今回直近3作以外のプリキュアも全シリーズ登場します。
 朝日奈みらい、春野はるか、美墨なぎさ、雪城ほのかはセリフつき。その他のキャラクターも枚数は少ないながら新規作画があります。やったね、今年もキュアハートに会えました。

ストーリーについて最後にふわっと

 今回の映画では“本当にこの人を信じていいのか?”という不安の種が多く描かれます。
 ゲストキャラのピトンは半人前なうえ簡単にものごとを投げだそうとする無責任者ですし、プリキュアたちも最初の戦いで色々あってピトンたちの星系の人々から信頼を失ってしまいます。一般道徳として信じることはステキなことだとよくいわれていますが、信じようにも、そもそも信じるための根拠が不足している状態です。
 さらには他のゲストキャラのなかに、敵なのか味方なのかなかなかはっきりしない人物も登場します。この人物を敵か味方か確定させる情報は映画を観ている私たちにすら提示されません。どちらともつかないなかで、なのに信じるかどうかの決断を迫られます。

 プリキュアは仲間との絆を大切にするヒーローなので、他人を信じることのメリットならたくさん示すことができます。みんなといっしょなら笑顔になれる。強くなれる。勇気が出る。
 ・・・それはいいのですが、根本的な話、“本当にこの人を信じていいのか?”という不安はやっぱり別の問題なんですよね。
 そこを、さてどうしようというのがこの映画のストーリー。

 せっかく信じたのに裏切られてしまうことって、やっぱりあります。
 そもそも自分自身のことすら信じきれなくなってしまうこと、どうしてもあります。
 けれど誰も信じられないままだとひとりぼっちになるしかなくて、そしてひとりぼっちの力なんて大したことがないからいつまでも何も変えられなくて、それだと結局いつまでもひとりぼっちでいるしかなくて。

 現実って残酷です。だって、知りうるかぎりの客観的事実だけかき集めてものごとを判断しようとするかぎり、一度信用を失ってしまった人はもう二度と信用されなくなりますから。
 もう一度信じてもらおうにも、そもそも自分を理解してもらうためのつながり自体が途絶えてしまうわけですから。
 甘えだといってしまえばそれまでですが、ちょっとかわいそうではあります。もったいなくもあります。もしかしたらその人だって、どこかの誰かに力を貸してもらえたなら、想像もできないようなすごいことをやって見せてくれるかもしれないのに――。

 『キラキラプリキュアアラモード』は、ちょっとした心の隙にすらつけ込んでくる悪意に対抗するため、ありとあらゆる個性の持ち主と分け隔てなく絆を結ぶことで相互の身を守りました。

 『HUGっと!プリキュア』は、挫折を経験し自分を信じられなくなった人のことを代わりに信じてあげて、自分が絶望したときは反対に信じてもらって、という永遠の循環で不確定未来への不安を乗り越えました。

 物語がスタートしたばかりの『スタートゥインクルプリキュア』は――、何も知らない出会ったばかりの宇宙人たちを、まずは信じてみることからはじめました。きっとこの子たちとならステキなことができると、イマジネーションで思い描いた空想未来に期待して。

 テレビシリーズの方でフワやララを信じたのと同じように、ひかるは今回の映画でもまずピトンを信頼することからはじめます。
 彼女はどうしてピトンを信じてあげることができたのか。そして彼女の信頼はピトンをどう変えていったのか。ピトンはどうしてプリキュアを応援したいと思うようになったのか。
 そのあたりに注目してみると、きっとこの映画のストーリーをもっと楽しめるようになるんじゃないかなと、私は思います。

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