ゼノブレイドクロス Definitive Edition プレイ日記その10 第11章 調査率62.39%

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シャーメイ、チェンシー・・・。なあ、俺、――まだお前らのとこに行けないらしいぜ・・・。

“パスファインダー” ラオ

このブログはあなたがプレイ済みであることを前提に、割と躊躇なくネタバレします。

第11章 悔恨

 「ラオ! 何考えてる! その情報が俺たちにとってどういうものなのかわかっているだろう!」
 「わかっているさ。だから俺は行動したんだ。ずっと待っていたんだ! この日を!」

 私たちが探し求めていた最優先ライフポイント――、セントラルライフの落下座標が判明したその日、ラオさんが出奔しました。
 最新鋭のドール・プログアレスと、座標の解析データが詰まったデータデバイスを持ち出して。――座標解析過程のデータに至るまで、全てのバックアップデータを破壊して。

 グロウスはどういうわけか地球人の生身の身体を危険視しているといいます。ラオさんが持ち出したデータが彼らの手に渡れば、即刻セントラルライフを破壊しに行くことでしょう。
 改めて1から解析をやり直す時間は残っていません。私たちはラオさんを追うしかありませんでした。・・・裏切り者として。

 ラオさんが向かったのは、おそらく黒鋼の大陸に複数あるグロウスの拠点のいずれか。
 あの大陸にはまだ充分な数のデータプローブを設置できていないのでぶっつけ本番、フライトユニットを装備したドール部隊による人力捜査となります。
 幸い、グロウスから亡命してきたスンボイトンさんやスラブティさんの協力で、主要な拠点の大まかな位置だけはあらかじめ知ることができました。
 あとは、あまりにも分の悪い、時間との勝負――。

 と。

 グロウスの重要拠点のひとつ、オ・ラ・シーム城からプログアレスの反応が検出されました。
 露骨でした。ラオさんだって、軍事機密の固まりであるプログアレスに何重ものトラッカーが仕込まれていることは百も承知のはずです。そのリスクをわかったうえで、あえてあのドールを盗み出したっていうところからもう不自然。
 出奔後にすぐ解体していなかったというのなら、それはもう明らかな罠でしかありませんでした。

 ただ、時間がありません。
 ここはエースチームである私たちが担当し、死中に活を求めるしかありませんでした。

 「やつらがライフを破壊すれば、このB.B.を動かしてる俺たちの意識も消える。あと少しさ」
 「あなたはそれが恐ろしくないの?」
 「恐ろしいどころか楽しみさ。幽霊として徘徊する、この偽りの生から解放されるんだからな」

 意外にも、と言うべきか。それとも当然と言うべきか。
 プログアレスの反応があったところにラオさんはいました。

 「偽りの生だなんて・・・。たとえB.B.だとしても私たちは生きてます! 偽物なんかじゃない!」
 「いいや。俺たちは死んだのさ。あのとき、地球と一緒にな」

 ラオさんは言います。B.B.である今の私たちは亡霊のようだと。消えてしまうべきなんだと。
 ラオさんは大切な家族を地球に置いてきてしまったんだと聞いています。家族を白鯨に乗せるためにクルーに志願したのに、乗艦権を得られたのはラオさんひとりだけだったと。惑星ミラに降りたばかりのころは、それこそ死人のような様子だったんだと。
 ・・・そのことを言っているんでしょうか?

 ――何か、私たちにはまだ知らされていない含みを持たせているような響きがありました。

 エルマさんの表情がこわばっていました。

 「知っているか。国籍や人種が異なる一般人で白鯨に乗れたのは、移民船を維持するクルーとして集められた俺たちだけだ。その他の多くの者たち――、今もセントラルライフに眠っている移民団は最初から選ばれるべくして選ばれた者たちなんだよ! エルマ。あんたは知っていたんだろう!?」
 「・・・恣意的に選ばれた者がいなかったとは言わない。それでも、何もしないより有意義な計画だと思ったから私は協力した。国籍。人種。富。才能。人と人を隔てるそれら壁は、あくまで人が定義したものにすぎない。遺伝子レベルで見ればごくわずかな差異でしかないわ」
 「わずかな差異なんかじゃないんだよ。地球人にとってはな。あんたには理解できねえだろ、エルマ

 申し訳ないのですが、私たちには時間がありません。ラオさんを無力化し、一刻も早くデータデバイスを回収するのが第一優先事項。
 ラオさんはすでにグロウスへの情報提供を済ませてしまったんだそうです。セントラルライフにも防衛機構はあるとはいえ、本当に一刻の猶予もありません。
 残りの問答はお互い銃火を交わしながらになりました。

 対話に集中できないせいか、ラオさんとエルマさんの言っていることの意味がところどころよくわかりません。まるで、エルマさんに人間の感情がわからないみたいな。
 いやいや。そういうのが苦手なのはどちらかというと私です。私がリンさんに人でなしを見るような目で見られることはあっても、エルマさんがそういうふうになることは今まで一度もありませんでした。
 私、マ・ノン人にもザルボッガ人にも変なことを言ってしまって、人間じゃないみたいな目で見られたことがあるんです。仮にエルマさんが異星人であったとしても、そんなの関係ない。違う星で生まれた者同士であっても言われてイヤなことはそう大きく変わらない。お互い人の気持ちくらいわかる。わかりあえる。

 そのはずなのに――。

 「いいや。“地球人”なんてひとくくりにする必要はないな。この俺の感情さ

 私には、ラオさんの言わんとしていることがわかってしまうんです。
 エルマさんに引き金を引くことをやめようとする様子がないのに、私はもう、ラオさんと戦いたくなくなっているんです。

 『白鯨』――。
 私たちが乗った移民船の名前は、たぶんアメリカ人作家のハーマン・メルヴィルが書いた小説のタイトルから取られたんだと思います。
 私は覚えていませんが、当時移民船団は白鯨以外にも地球各国の主要都市から複数打ち上げられたんだと聞いています。白鯨が運んだ入植都市の名前はNLA。ニュー・ロサンゼルス。白鯨はアメリカから打ち上げられたんでしょう。
 都市の名前にも、艦自体の名前にも、アメリカのナショナリズムが染みついています。
 地球には統合政府があったと聞かされていますが、それでも依然、旧来の国家の枠組みが残っていたことが窺えて、それってつまり、ラオさんたちが言うみたいに人種や民族で移民の選抜が選り好みされていただろうことも、たぶん事実なんだろうと思わされます。

 ラオさん、名前からして中国系の出身です。北京や上海あたりでも移民船の打ち上げプロジェクトはあったはずです。ただ、もともと傭兵として世界中を渡り歩いていたという話ですから、ラオさんの母国は自国の居住者を優先して、ラオさんたち家族は移民船に乗せてもらえなかったんでしょうね。
 そちらにも、やるせない壁。

 「できるのか? エルマ。俺の身体のどこにデータデバイスがあるのか、お前にわかるのか? 撃てよ、さあ! 胸か! 頭か! 確率は半々だぜ。人類の命運をお前のその指に委ねる。最高じゃないか! ああ、そうさ。最高の瞬間だぜ」

 小説の『白鯨』、私は難しくて最後まで読んだことないんですが、たしか白いマッコウクジラに足をかじり取られたエイハブ船長の復讐譚だったはずです。
 ものすっごい長い小説だし、復讐に執着するエイハブ船長の気持ちが全然理解できないしで、途中でウンザリしてwebであらすじを読んで放り投げちゃったんですが、たしか最後はエイハブ船長とマッコウクジラ両方共倒れで終わる、さびしい結末だったはず。

 ラオさん、エイハブ船長になろうとしていたんですね。
 あまりにも巨大な敵への、しかも他人には理解しがたい個人的な復讐心を満足させるため、自分の命を投げだそうと――。

 でも。
 白鯨って、エルマさんって、そんなにも話の通じない相手でしたっけ?
 自殺じみた復讐でしか解決できないくらい、頑なな相手でしたっけ?
 そもそもです。『白鯨』のエイハブ船長だって、たったひとりでマッコウクジラと戦ったんでしたっけ!?

 私、覚えてますよ。
 私が初めてNLAに来たとき、私ってとにかく自分で決めることが苦手なので、なんでもいいから長いものに巻かれたい、ブレイド隊に入ってほしいならそう命令してほしいって思ってたんです。
 でも、エルマさんはそれを許しませんでした。「本人の意思を尊重したい」「無理強いはしたくない」「自発的意志で答えてほしい」って、それだけは譲ってくれなくて。

 「エルマさん。私、ラオさんの気持ち、わかるんです。私のお父さんとお母さんはずっと前に死んでしまった。でも、もし地球に置き去りにされて死んだんだったら、きっと生き延びた人を憎むと思う! ラオさんと同じことをしたと思う! 醜いですよね。汚いですよね。でも、人間ってそんなもんなんです。もしかしたら宇宙から消え去ったほうがいいのかもしれない。でも――。でも!」

 戦意を喪失したリンさんが、銃を下ろしてラオさんとエルマさんの間に立ちました。今にも泣きだしそうな顔で。
 それなら、私も。

 私はリンさんの隣に立ちました。
 リンさんみたいにエルマさんを説得するためじゃないんですけど。――むしろ、エルマさんの味方をするために。

 ラオさんはすでにデータデバイスの中身をグロウスに渡してしまったんだそうです。
 そもそもラオさんの目的はセントラルライフの破壊にあったみたいです。
 だったら、この人が今もまだデータデバイスを大事に持ち歩いているとは限りません。理屈でいえばとっくに処分している可能性のほうがはるかに大きい。
 今、この人を殺すわけにはいきません。万が一の場合を考えると、生かしたまま逮捕して、NLAに連れて帰って、薬物でも拷問でも何でも使って、本人の口から直接情報を回収するという手段を残しておくべきです。

 ・・・騙りです。
 ラオさんの性格なら、本人が「持っている」と言うなら本当に持っているのでしょう。
 どうして持っているのかっていったら、もう理屈じゃないんですが、この人たぶん、リンさんみたいな人に止めてほしかったんじゃないかと思います。・・・だって、英雄ですから。
 胸か、頭か? 2択を当ててラオさんの死体から無傷のデータデバイスを回収できれば、本当はそれでこの任務は解決です。わかっています。
 だけど――。

 エルマさんがどういう立場の人なのかはわかりません。
 もしかしたら本当に異星人なのかもしれません。
 ただ、私はこの人のこと、それなりによく知っているつもりなんですよね。

 「そこの新入り君をブレイド隊員にするから研修として任務をひとつやらせてみてくれ、だそうだ」
 「
相変わらず強引な人ね状況は理解できるけど、本人の意思は尊重しないと」
 「自発的意志、か――。なるほど、わかった。どうだ。ブレイドの一員として働いてみる気はあるか?」
(第2章)

 この優しくて厳しい人に、地球人類の命運を賭けた選択を、しかも私たちのほうから迫るのって、ものすごく残酷なことだと思ったんです。それだけ。

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