名探偵プリキュア! 第3話感想 確証バイアスを剥いだ先にある真実。

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私に依頼してよ、あんな。

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「みんなおいでよ! キュアット探偵事務所!」

大きな出来事

メインキャラクター:みくる

目標

 立派な名探偵になる。

課題

 あんなには怪盗団ファントムと戦うべき明確な動機がある。一方、みくるには名探偵になりたい思いがあるが、そのために何をするべきかという具体的な道筋が立っていない。

結末

【達成】

 みくるはあんなを未来へ帰すことを当面の目標とした。
 あんなが自分のことを顧みないなら、あんなの代わりにみくるが解決する。

心の変化

【ポジティブ】

 あんなに喜ばれるとともに、自分自身が何をすべきかを確立することができた。あんなとみくるは一蓮托生のパートナーになれた。

バトル

 亀の置物を素体とした花形のハンニンダー。

苦戦

 ハンニンダーに捕らえられ、アゲセールによってマコトジュエルを盗られて悔しいだろうと嘲られた。

勝利

 あんなたちはマコトジュエルだけでなく、亀の置物に込められた店員たちの思いを取り戻すために戦っている。見当外れの挑発を見返すべく奮起し、逆転勝利した。

ピックアップ

地図

 ジェット先輩の地図と先輩プリキュアが残した地図。何らかのチェックが書き込まれている。
 ジェット先輩のものをあんなたちが解決した2つの事件の場所とするには、事務所から少し遠すぎるように思える。何を調べているんだろうか? 怪盗団ファントムが起こした過去の事件? しかし、その割にはお互いの認識が違いすぎる点が気になる。

PHS

 携帯電話と似て異なるもの。地方民の都会へのルサンチマンを刺激したもののひとつ。
 通話音質がよく料金も安かったため、当時は若者に人気があったらしい。メールサービスの展開もPHSが先行していた。
 ただし、通話エリアの広がりが遅く、自動車での移動中は使用不可能という弱点もあったため、当時私が住んでいたようなド田舎ではそもそも選択肢に入らなかった。なんで地方に生まれたというだけで割高料金を支払わなきゃならないんだクソが。
 当時は携帯電話とPHSで相互に通話もメールもできなかったという問題もあった。

ノストラダムスの大予言

 だいたい去年流行った『私が見た未来』みたいな感じ。一部の予言が当たっていたからと後付けで大騒ぎされた点も一緒。当時はあれよりもう少し大げさに持て囃されていたかもしれない。
 ちなみに『私が見た未来』自体1999年7月に出版されたマンガであり、ノストラダムスブームに便乗した作品だった。1999年の7の月に何も起こらなかったため世間の予言ネタへの関心自体が急速に萎え、当時はほとんど注目されていなかった。

コンテミス

 トムが来店する直前に亀の置物を元の場所に戻す、という今回のトリックではありえない行動を取っている。
 亀を搬入口から店外へ持ち去る直前、タイミング悪くトムに接客しなければならなくなったからぬいぐるみの山に隠した、という流れなのだから、これだとわざわざ亀を移動させる理由が無くなってしまう。あんなたちに亀を持ち運ばせず、その場でちほから由来を聞く流れになってしまった(アゲセーヌの運搬距離がほぼゼロになってしまった & 亀の置き場が店の入口付近になってしまった)のがそもそもの原因。

 亀の置物を花だと誤認する理由づけとして、さりげなくヒマワリの絵を近くに置いてあるのはよくできているのだが。

シール

 1995年に稼働開始した『プリント倶楽部』をきっかけに、1999年当時はシール帳が大流行していた。プリクラ中心ではあったが、2026年現在の再ブームのように市販のキャラものシールもよくトレードされていた。

 それはいいけどこんな余白のないシート印刷じゃ渡すのが大変だろ! わざわざその場で切り離すのか? そういうの実際あった気もするけれども! フチに他のシールの破片が残っていて微妙な気分になるやつ!

コギャル

 実はコギャルは90年代前半のブームだったため、1999年当時すでに廃れかけていた。いつの間にかコギャルではなくギャルにシフトしていたように記憶している。コギャルは女子高生だがギャルは社会人なため、実際に芸能人としてテレビ出演できる者が多く、現在に至るまで長く発信しつづけられたのだろう。
 「チョベリグ」「チョベリバ」などのコギャル用語(ギャル語)は当時すでに死語で、逆に「アゲ~」はもうちょっと先(2010年ごろ)で生まれる流行語。
 コギャルブーム自体そもそもテレビが面白おかしく伝えた虚構のムーブメントであって、現実にはほとんど流行っていなかったという指摘もある。私は地方民だから当時の東京が実際どうだったかは知らない。

ハイビスカス

 コギャルファッションの一部としてやたら流行っていた(らしい)。
 花言葉は「繊細な美」「新しい恋」などだが、コギャルの象徴として登場しているんだろうから深く考えなくていいだろう。

怪盗団ファントムの元ネタ

 ニジーの元ネタは『名探偵明智小五郎』シリーズに登場する怪人二十面相だと思われる。
 アゲセーヌは『アルセーヌ・ルパン』シリーズのアルセーヌ・ルパン
 もうひとりいる隈取りの男は歌舞伎『楼門五三桐』などに登場する石川五右衛門だろう。
 そしてキュアアルカナ・シャドウである森亜るるかが、『シャーロック・ホームズ』シリーズに登場する世界一有名な(ぽっと出の)悪役モリアーティ教授というわけだ。

 ウソノワールはフランスの小説『オペラ座の怪人』に登場する仮面の怪人ファントムだろうか。オペラ座をアジトにしていたり、アンニュイなキャラクター像だったりするのはいかにもファントム(エリック)って感じ。
 フランスではこの他にも悪人を主人公とした小説がたびたび流行しており、ノワール小説という一大ジャンルが形成されるきっかけにもなっている。「noir」という言葉自体は”黒”という意味。

未来自由(ミラージュ)の書

 予言書らしいから7月に大きな展開があるのかもしれない。(元からいつもその時期ではある)
 物語の舞台が2026年のマコトミライタウンになるとか? 帆羽くれあの娘がプリキュアになるとか?

”密室”

 背景がほとんど変わらないのにわざわざ異空間って言い張るあたり、よっぽど避難誘導描写がメンドくさかったんだろうね。
 今作は1話のなかでやることが多いためか、いろいろ割りきりがすごい。

るるかの好物はアイスクリーム

 想像の4倍アイスを食べていらっしゃる。ちゃんと時間経過で食べ進めているあたりムダに丁寧。

調査時の確証バイアスの除去の重要性

 「初めての依頼はどんな事件かな」
 「私、決めてるの。初めての依頼人」
 「・・・え? 私?」
 「ええ。あんな。あなたを元の時代に返すって」

 割と唐突感があるみくるの宣言。

 けれど、みくるがこういう考えに至ったのにはきちんとした文脈がありました。

 「調査時の確証バイアスの除去の重要性、か――」

 今話の犯行のトリックは「確証バイアスの除去」をテーマに展開されました。
 確証バイアスとは、目の前に有力な(あるいは単純に興味を引かれる)仮説があると、他の可能性を検証しないまま、安易に飛びついてしまう近視眼的な心理傾向のことをいいます。ウチのブログでもちょいちょいやらかしていることですね。

 容疑者は4人。だけど真犯人は他にいて、すでに亀の置物を持ち出したあとという可能性もある。
 正面入口にはドアベルがあるため、ここから逃げたということはない。しかし、別の搬入口からでも出入りは可能。
 とりあえず、仮にまだ持ち出されていないとしたら、亀は店内に隠してあるはず。
 ――見つけた。つまり犯人はまだ目的を達していない。どちらの出入り口もまだ使われていない。ということは、犯人は依然このなかにいる可能性が高い。

 犯人であるアゲセーヌは、盗み出す置物を亀ではなく花だと誤認してしまった。
 たしかに裏返せば花に見えなくもない。しかし、もし本物の店員なら由来を教えられているのだから、亀以外のものだと思い込むはずがない。
 一時的に成り変わっているだけのアゲセーヌはその事実を知らない。だから自分の思い込みを正す機会がなかった。

 「花じゃなくて亀だってば!」

 他の可能性をひとつずつ排除していき、最終的に見事真実へ辿りついた名探偵。
 ひとつの思い込みを修正することなく、最後まで勘違いしたままだったせいで尻尾を掴まれた怪盗。

 他に、英語が話せないから外国人からアリバイ確認できないだとか、猫語がわからないから猫は証人にできないといった思い込みもありました。けれど名探偵はプリキットの力でその先入観をも越えていきました。

 今回のナゾは確証性バイアスを排除できたかどうかが明暗を分けたのです。

 あんなとみくるはまた一歩、真の名探偵へと歩みを進めることができました。

 然るに。

 「私たちで困った人達を助ける! マコトジュエルを守って、ポチタンも元に戻して、そしたらあんなも元の時代に――!」
 「うん。でも私決めちゃったんだ。みんなを助けるって! ウソで覆われた世界なんて嫌だから。私、みくると一緒に名探偵プリキュアがんばる! 戻るのはその後!」
(第2話)

 みくるの胸には、ひとつ引っかかっている思いがありました。

 あんながしばらく元の世界に帰らないと言ってくれたこと。
 彼女はみくるが名探偵を目指すにあたって頼もしい相棒です。あんなが怪盗団ファントムの問題を解決するまで帰らないと言ってくれたことは正直ありがたい。
 また、彼女は自分はウソをつかないんだと言っていました。だからこそ、ウソで他人を悲しませるファントムが許せないと。スジは通っています。納得できる理由づけです。

 それでも――。

 「これってこのへんの地図? キュアット探偵事務所はここかな。私の街は――、ここにできるんだ」
 「・・・あんな?」
 「近いんだね。知らなかった。こっちのほうに来たことなかったから」

 どんなに納得できる理屈があったとしても、それはあんなが別の思いを抱いている可能性を排除していい根拠にならない。

 「――来てみよう。元の時代に戻ったら」

 密かに、あんなは元の世界に帰りたいという思いを押し殺していました。

 自分にはまだこの時代でやりたいことがある。
 だからまだ帰るわけにはいかない。今はまだ帰りたいと思うべき段階じゃない。
 ・・・だけど。

 それは考えても仕方ないこと。
 すでにやることは決まっていて、今さら後ろを振り返ったって歩みを止めることにしかならない、余計な考え。
 それでも心の奥底でこんこんと湧きつづける正直な気持ち。

 「私に依頼してよ、あんな」

 このままでいいはずがない。

 名探偵はいろいろな事件を調べて解決し、人々を助ける、みんなの憧れ。希望。
 私の憧れ。早く名探偵になって、かつての自分がそうだったように、みんなを助けてあげたい。

 あんなは私を助けてくれた。不安に押しつぶされそうな自分の手を取って、一歩前へ踏み出させてくれた。
 あのときのあんなは、自分の抱える問題を全て解決してくれる、本当の名探偵だった。
 だから、今度は自分が。

 ミステリにおいて、名探偵はしばしば孤独な存在として描かれます。
 超人的な頭脳を持ち、誰も見つけることのできなかった真実へとただひとり辿りつき、後に残されるものは、無。解体されたトリックと、裁かれた犯人、畏敬する他の登場人物たち。彼らは役割を終えた舞台装置。名探偵とともに並び立とうとする存在はどこにもいません。
 名探偵シャーロック・ホームズにとって最大の理解者は、自分と同等の頭脳を持ち、対極に立ち塞がる、稀代の大犯罪者モリアーティ教授でした。ホームズはライヘンバッハの滝で彼と格闘し、落下し、巨悪の撃滅とともに自分自身も心中しました。ワトソンですら、その瞬間に立ち会うことは叶いませんでした。

 けれどみくるはワトソンではなく、小林少年でもなく、もうひとりの名探偵です。
 もしこの世界に、名探偵ですら解決できない事件があるのなら、それを解決するために別の名探偵が必要です。
 そこに事件が残るかぎり、名探偵キュアミスティックの手によって解決されなければなりません。絶対に。

 「みくる――。私を元の時代に返して!」
 「その依頼、引き受けた!」

 かくして、徹底して確証バイアスを除去しきったみくるの慧眼により、あんなの欺瞞は暴かれました。
 ここに、名探偵プリキュアが2人いなければならない理由、あんなとみくるがふたり一緒にいなければならない理由が確立します。

 「あなたの事件を解決するためにも、がんばって立派な名探偵にならないと」
 「そうだね。一緒に協力して立派な名探偵になろう」

 孤独になんてさせるものか。
 孤高になんてさせるものか。

 名探偵プリキュアはウソと戦います。
 ウソは誰かを傷つけてしまうからです。

 もし、あんなが無自覚なまま自分自身にウソをついていたとしても、みくるが必ず暴きます。
 あらゆる真実を解き明かし、人を救うことができるからこそ、名探偵なんです。

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    コメント

    1. ピンク より:

      >コンテミス
      トムの接客しながら頑張って運んだんですかねw

      地味なところで、時期柄最も合うはずの桜とかではなくわざわざひまわりを勧めてる不自然さもポイントというか。
      店のラインナップとしてだけなら、まあ100均にでも行けばオールシーズンで見かける光景ですけど。

      • ピンク より:

        見返したら犯人ではないお姉さんもひまわりのシール勧めてました……
        というかこのシート、選ぶ楽しみがめちゃくちゃ薄い!w

    2. 東堂伊豆守 より:

      どうも怪盗団ファントムのギャル系構成員・アゲセーヌって名前以外の「アルセーヌ・ルパン」要素が希薄で(それに何で「ギャルセーヌ」にしなかったんでしょうね?揚げ煎餅みたいな名前で余計しっくりこない)、むしろやっぱりキュアアルカナ・シャドウこと森亜るるかさんの方が「モーリス・ルブラン/アルセーヌ・ルパン」っぽい印象が拭えないんですよね……。
      アルセーヌ・ルパンってモーリス・ルブランが書いた「バーネット探偵社」でジム・バーネットの偽名で探偵稼業をやっていたこともあって、ラスボス一辺倒な筈のジェームズ・モリアーティよりも“怪盗と探偵のダブルフェイス”設定を持ち込み易い筈だし、また江戸川乱歩の「黄金仮面」ではフランスから日本に遠征してきたルパンと明智小五郎が対決する展開になっていて、W主人公・明智あんな&小林みくると対峙する好敵手という側面もモリアーティより打ち出し易いと思えるんですよ。
      ……というわけで、私としては森亜るるか=「モーリス・ルブラン/アルセーヌ・ルパン」&「ジェームズ・モリアーティ」のダブルモチーフ説をまだまだ押していきたい、うん(往生際サイアクーチョベリバー)。
      ところで、「オペラ座の怪人」エリックがメインモチーフと見て、こちらは間違いなさそうな怪盗団ファントム首領・ウソノワール様、なんですが……
      この方「キラキラプリキュアアラモード」のノワールと「HUGっと!プリキュア」のジョージ・クライのブレンド、っぽさも感じるんですよね。特に後者は変な予言書みたいな本を持ってる点でも共通してるし。
      で、この二作品を挟み込む形となる「魔法つかいプリキュア!」と「スター☆トゥインクルプリキュア」でシリーズ構成を手掛けたのが今作「名探偵プリキュア!」のシリーズ構成・村山功氏だったりする。
      ……村山さん、プリアラとHUGプリに結構思うところあるんかしら、ねえ?

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