名探偵プリキュア! 第1話感想 勇気ひとつを友にして。

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「一歩踏み出せば答えはついてくる。一歩の勇気が答えになる」だよ!

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「誕生! 名探偵プリキュア!」

大きな出来事

メインキャラクター:みくる

目標

 キュアット探偵事務所の名探偵になる。

課題

 みくるはまだ未熟で、名探偵として肝心な推理の実力が伴っていない。思い込みであんなのことを入所試験の試験官だと早合点してしまうほど。

結末

【達成】

 厳密にはまだ探偵事務所に所属できていないが、ともかく名探偵プリキュアに変身することができた。あんなが「みくるちゃんは名探偵になるんだ!」と力強く肯定してくれたおかげである。

心の変化

【ポジティブ】

 あんなの「一歩の勇気が答えになる」という言葉が胸に響き、失敗しても、今の自分が情けなくても、前へ進みつづける勇気を得た。

バトル

 ティアラを素体としたハンニンダー。

苦戦

 普通の女の子であるあんなとみくるではハンニンダーに対抗することができない。目の前で相対して、体の震えが止まらない。

勝利

 お互いの勇気に支えられたふたりは怖くとも立ち向かうことを諦めず、その勇気によってプリキュアに変身する奇跡を起こした。

ピックアップ

マコトミライタウン

 街中ロープウェーにタワーマンション、誕生日プレゼントのスマートフォンと、短い描写のなかに近未来的なアイテムが散りばめられている。全て現実の2027年にも実在するものでありながら、うまいこと未来の世界みたいな印象が演出されてある。(街中ロープウェーって横浜に実在してるのね。知らなかった)

伏線

 大抵のオッサンオバサンのプリキュアファンは事前情報を仕入れているだろうから関係ないが、未来のマコトミライタウンではあんながコートを着ていたり道端に残雪が残っていたりと、季節が冬であるという情報を映像に落としこんでいる。
 対して、1999年のまことみらい市ではみくるが春服を着ていたり、桜の木や花びら、ツツジの花を写していたりして、こちらもさりげなく季節が春であるという伏線を映像に埋め込んである。あんなが部屋着でタイムスリップしたせいで季節感が曖昧になる点も憎らしい。

 ・・・思ってた以上に本格的にミステリものをやるつもりだ、これ!

P-MODE

 現実にも1999年2月にNTTドコモのi-modeがサービス開始したばかり。つまり、当時web系のコンテンツはまだまだ未発達で、i-mode以前はメールすら使えなかった。もちろんカメラも未搭載。このころ携帯電話を所有していたのはビジネスマンくらいのものだった。
 気軽に携帯電話を使える環境ではないという舞台設定は、ミステリを描くうえで非常に意義が大きい。

ツツジ

 生垣として広く植えられている。春に咲く花なので、これが咲いていること自体が4月である(少なくとも冬ではない)という伏線になっている。
 花言葉は「節度」「もろさ」「恋の喜び」など。無理に当てはめようとするならみくるの精神性を象徴していると読めなくもないが、まあ、普通に季節の暗示として登場しているだけだろう。

変装

 ニジーが普段から芝居がかった口調をしているおかげで、別の声優が変装したニジーとして喋っていても違和感が少ない。なるほどなー。うまいこと考えている。

 最近のプリキュアシリーズ、主人公が最初から精神的に成熟していて昔の特撮ヒーローみたいだなと思っていましたが、ついにここまで来ました。
 第1話からすでにみくるのほうが主役っぽい。劇中のキャラクターアーク(精神的な成長)が、明らかにみくるのほうを中心に描かれています。あんなもしっかり活躍してはいますが、物語の中心にいるのはどちらなのかと考えると、やはりみくるだといえます。
 まあ、探偵小説もそういうものですしね。探偵は超人的な推理力で大活躍する、完成されたヒーロー(不完全ではあっても未完成ではない)として描かれますが、物語を牽引するのはもっぱら一般的な読者と距離感が近いワトソン役です。

 トラディショナルなヒーロー像は人々を救うことに徹するお助けヒーローといったものでしたが、近年のプリキュアにおいても時代が一周してきた感があります。だいたい『トロピカル~ジュ!プリキュア』あたりからでしょうか?
 もっとも、『月光仮面』などの時代と違って、今のプリキュアも(描写が控えめなだけで)しっかり主人公の成長も掘り下げられていますので、私の感想文のスタイルは変わらないのですが。

名探偵に憧れて

 「・・・わからないんです。これじゃまりさんを笑顔にできない。名探偵にだって」
 「どうして名探偵になりたいの?」
 「私も助けられたから。今度は私が名探偵になって、みんなを助けたい!」

 まだ詳しい背景は明かされていませんが、ともかくみくるは名探偵に憧れています。以前、名探偵に助けられたことがあるんだそうです。
 しかし、それゆえに自身の今の実力と、理想とする名探偵の才覚を比較し、必要以上に自己評価を落としてしまっています。

 あんなとポチタンの行動力に引っぱられてのこととはいえ、自分がティアラを見つけてみせると宣言した意志力は大したもの。聞き込みで得た情報はしっかりとメモを取り、ティアラを帽子やカバンに隠して運んだのではないかという推論を立派に立て、検証する。
 大人の視点から見れば、そこまでできるだけでも充分に立派です。誇っていい。

 ですが、みくるはその検証の結果、自分の推理が的外れだったというだけで落ち込んでしまうのです。

 昔、『BLEACH』というマンガの「憧れは理解から最も遠い感情だよ」というセリフが流行ったことがありましたが、まさにその心理。
 そもそも、自分には無いものを持っている相手だからこそ、その人に憧れるのです。
 探偵だけでなく、ヒーローやアイドルもみんなそうですが、あれらは強いからカッコいいのです。誰にでもできることではないことをやってのける。並々ならぬ努力が必要なことをやり遂げる。そういう強い意志力を持っている。あるいは非凡な才覚がある。そういうところがカッコいい。
 自分もいつかあんなふうになりたい。ああなれたらいいな。――それはつまり、今の自分が未熟だと認めているのと同じです。今の自分がカッコよくないからこそ、カッコいい人に憧れるんです。

 だから、誰かに憧れている人が、憧れの対象と同じ実力を持ちあわせていないのは当たり前。同じ目線に立てていないのは当たり前。

 そこはむしろ大前提です。
 できなくて当然。まだできなくていい。そう思えたらいいのですが――。

 「さあ、探偵ごっこはおしまいだよ。怯える瞳が全てを物語っている。君は探偵じゃない。探偵気取りの真っ赤なニセモノだ」

 ニセモノと断じられてみくるは打ちひしがれます。

 何故って、みくるは憧れの人と同じ存在になるために生きてきたんですから。
 名探偵になりたくて、だから、名探偵になれない自分には存在する意味がありません。

 何のためにがんばってきたんだろう?
 何のために名探偵に憧れつづけてきたんだろう?
 ニジーの心ない言葉は、みくるのこれまでの在り方をズタズタに引き裂きます。

 酷いことを言うものです。
 誰かに憧れている人が、その誰かと比べて自分は劣っていると感じているなんて、本人が一番よくわかっていることでしょうに。
 自分は本物かニセモノかと問われたら、ニセモノだと認める他ありません。

 それが否定しようのない事実だこそ、みくるはあんなの、たったひとつの言葉で救われることになります。

 「本物だよ! みくるちゃんは名探偵になるんだ!」

 それは、今ここにある現実を棚上げして、遠い未来にしか存在しえない夢想を讃える言葉。

“憧れ”に憧れる

 「やっぱりすごいんだね。名探偵なら、ティアラを見つけてまりさんを笑顔にできるんでしょ? だったらなろうよ、名探偵に!」

 あんなの目には、みくるが見ているものとは全然違う世界の姿が見えていました。

 みくるは努力家でした。
 強い意志を持っていました。
 親切で、突然見知らぬ場所に迷いこんだあんなの面倒も見てくれて、すごく助かりました。
 けれど、それよりも何よりも、名探偵への憧れを熱心に語る、その瞳の輝きがステキだったのです。

 やっぱりすごいんだね、名探偵。

 あんな自身はこれまで名探偵というものに憧れたことはありません。
 けれど、みくるの話を聞いていると、憧れるのもわかるなあって思います。
 だって、みくる自身がまずカッコいい女の子なんですから。これほどカッコいい子が憧れる人って、それはもう、どれほどカッコいい人だってことになるんでしょうか。

 たしかに失敗はします。結婚式場で最初に披露した推理は残念ながら的外れでした。
 ですが、それが何だっていうんでしょうか。

 みくるは名探偵になりたいんだそうです。
 つまり、これからもっとカッコよくなる子なんです。
 情熱あふれる彼女のことを、あんなは、いいなって思います。

 「キュアップ・ラパパ! 怪物よ、あっちへ行きなさい!」(『魔法つかいプリキュア!』第1話)

 出会ったばかりの子に対して、あんなと同じ思いを抱いたプリキュアは過去にもいました。
 朝日奈みらい。魔法に憧れる女の子。彼女が出会ったリコという魔法つかいは率直に言ってヘッポコで、みらいと初対面の時点ですでに何度か醜態を晒しています。けれど、彼女のその情けない姿は、みらいから見た彼女の評価を下げませんでした。
 リコが頑張り屋さんだったからです。できないことは数多くて、だけど、できるようになろうと必死に足掻きつづけている姿が、とにかくカッコよかった。実際には何の効果ももたらさない、実際には何の力もないリコの魔法の言葉を引き継いで、みらいはプリキュアの奇跡を起こしてみせます。色褪せない魔法つかいへの憧れを胸に抱いて。

 「――名探偵? さすがにありえないよ」
 「なれる! 助けたいって気持ちがあるから!」

 あんなから見たみくるという子は、すでに充分にカッコいい子でした。

 みくるが言うには、名探偵とは誰かを助けることができる、すごい人なんだそうです。
 そして、あんなはみくるの親切さに助けられました。
 誰かを助けられることがすごいことなら、今のみくるだってカッコいい。

 たしかに最初の推理は的外れだったかもしれない。
 ハンニンダーとかいう怪物を前にしたら無力なのかもしれない。
 だけどそれは、みくるがあんなを助けてくれた事実を否定する根拠にはならない。
 誰かを助けられる人がすごい人なら、今も変わらず、あんなはすごい。

 しかも、みくるはこれから名探偵になるんです。
 今ですらカッコいい子が、これからもっとカッコよくなっていくんです。

 そのカッコよさを、誰にも否定させたくありません。

 「怖い・・・。怖いけど、ティアラを取り返したい! 困っているまりさんを私も助けたい! ――みくるちゃんと一緒に!」

 この子と同じ道を歩んでいけば、いつか自分もカッコよくなれる気がする。

ウソ / 本当

 「悩んでるだけじゃ始まらないよ。『一歩踏み出せば答えはついてくる。一歩の勇気が答えになる』だよ!」

 前作『キミとアイドルプリキュア』では、蒼風なながよく似た言葉を繰り返し使っていました。
 「一歩踏み出す、win-win ウインク」。彼女はその信条をもとに、あらゆる人の勇気を引き出していきました。自分自身も、仲間も、敵さえも。
 最初の一歩を踏み出す勇気さえ得られたら、あとは何だってうまくいく。そう言わんばかりの勇気盲信ぶり。しかもそれで本当に全てを解決していったんですからタチが悪い。

 あんなにとって、みくるはとてもカッコいい子でした。
 そのカッコよさは、名探偵への憧れに向かってひた走る、彼女の強い熱意に支えられていました。

 だから、あんなはみくるがしょんぼりしている姿なんて見たくありません。
 この子は前を向いて努力しているときがいちばん輝いていると、そう感じます。

 みくるからしたら、あんなの、どんなときでも前向きで諦めないところがカッコよく見えたかもしれません。彼女は推理に失敗したときですら変わりませんでした。もう一度やり直してみようと言ってくれました。
 その強さが、みくるにとって何より救いになりました。

 それが、あんなからすると正反対。みくるこそが前向きでカッコいい。
 名探偵に憧れていて、名探偵になりたくて、そのための努力をしている子。名探偵みたいに、実際に彼女自身も誰かを助けてあげられる子。常に自分を律して、これからもカッコよくなりつづけるであろう子。

 「サン! 見つける!」
 「ロク! 向きあう!」
 「キュー! 奇跡のふたり!」
 「ぐるっと回して! キュートに決めるよ!」

 お互いにお互いをカッコいいと思うふたりは、まさに奇跡の巡りあわせでした。
 お互い自分に無いものを見つけあう名手で、お互いにお互いを高めあえるベストパートナー。
 ぐるっと回って、まるで円環のごとく、これからもお互いのカッコいいところをたくさん見つけていくことでしょう。

 憧れは人を強くします。

 夢ごときに冷たい現実を変える力はありませんが、しかし、それでも現実を変えることができるのは夢の力だけです。

 「すぐ見つけてあげる。私、ウソつかないから!」

 あんなはウソをつかないんだそうです。

 けれど、具体的にどういう場面でその信条を語ったかといえば、“これから”探しはじめるシーン。
 女の子がなくしたリボンを見つけてあげられる保障なんてどこにもありませんでした。もし、当てが外れてリボンを見つけられなかったとしたら、あんなはウソつきになってしまうところでした。
 たまたま今回は推測どおりにうまく見つけることができましたが、実際は薄氷の上を歩くような危うさの上での宣言でした。

 欺瞞といえば欺瞞。

 あんなの「ウソをつかない」とはそういう意味。
 現実に何か保障があるわけではありません。
 ただ、やり遂げただけ。
 成功するか失敗するかの可能性の問題を超えたところで、あんなはただ、意志力によって現実をねじ伏せたのです。

 みくるは名探偵になるでしょう。あんなはそう確信します。
 だって、みくるには「名探偵になりたい」という強い意志があるから。

 あんなは名探偵です。みくるの目にはそのように映っています。
 だって、あんなには推理に失敗しても真実に辿りつくまで諦めない、強い意志があるから。

 プリキュアとは超常的な力を持つヒーロー。
 誰かを助けられる存在。
 現実にはありえない存在。
 何の力もない、どこにでもいる普通の女の子が、それでも今、どうしても叶えたい願いを持つ。奇跡を起こしてでもその願いを叶えようとする、現実をねじ伏せようとする、ワガママなほどに強い意志の顕現。

 うたかたの夢。
 どうせ最終的には自力で現実と戦っていかなければならない。
 それでも奇跡を起こす。絶対に諦めたくないから。負けたくないから。

 夢に現実を変える力はありません。それでも、現実を変えることができるのは夢だけです。

 誰かに憧れる思いが強い力を生むことを知っているふたりは、いつかどんな願いだろうと、たとえ「名探偵になりたい」だなんて大それた夢であろうと、必ず叶えることができるでしょう。

 「一歩の勇気が!」
 「答えになる!」
 「これが私たちのアンサーだ!!」

 なにせ、最高に強くてカッコいい実例が、お互いすぐ隣にいるんですから。

 勇気をもって歩みつづけましょう。隣にいる子がそうしているように。

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    コメント

    1. ピンク より:

      >記事
      『勝利』の項目が抜け落ちてるのと、変身シーンで唱える数字は英語ではなく日本語ですね。

      >さて本篇
      ……なかなかやるじゃないですか(『どうせロケット団とかばいきんまんの変装レベルだろ』と舐め腐ってたところ、CMギリギリまでトリックを見抜けなかった)
      大人のメンツにかけて、せめて明言される前に全話正解を目指したいところですが、どうなりますやら。

      • 疲ぃ より:

         なんだこの間違い・・・。あ、再翻訳に失敗したときのやつか。(勝利は普通に書き忘れ)
         教えていただてありがとうございます。

         ちゃんと調査パートと解決パートを分けた本格的なフォーマットで出てきたことにまずびっくり。
         そして、タイムスリップまわりでやたら丁寧に伏線を引いていたことにもうひとつびっくりでした。タイムスリップ自体は事前告知されていたのであんまり注意深く見てなくて、2回目観返したときまさかこんなに色々仕込まれていたとは・・・!って驚きました。
         正直、わざわざ携帯電話封じまでしてきた制作陣の覚悟を舐めていました。やりおる。

        • 匿名 より:

          本気でやるつもりではないなら「名探偵」とは、銘打たないでしょうからね。

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