名探偵プリキュア! 第11話感想 ウソつかない、と君は言うけれど。

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ありがとう。マシュタンの占いはよく当たるものね。

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「キュアアルカナ・シャドウ、現る」

大きな出来事1

メインキャラクター:るるか

目標

 宝生美術館にニセモノの美術品が展示されている状況を正す。

課題

 世間の注目度を高めたうえで目玉展示物・星明かりのプリンセスを盗みだせば、美術館のオーナーも本物を出すしかなくなるだろう。ただし、展示物に宿ったマコトジュエルを怪盗団ファントムに渡すわけにはいかない。

結末

【達成】

 予告状のニュースであんなたちをおびき寄せ、盗んだ星明かりのプリンセスがニセモノであることを知らせたうえで、マコトジュエルごと取り戻させることに成功した。
 何も知らずに支援に来たアゲセーヌはるるか自身が対処した。

心の変化

【ネガティブ】

 今回初めて直接対面したあんなたちは、展示されていた星明かりのプリンセスがニセモノであるにも関わらず、それでもマコトジュエルが宿るほど世間で人気が高かったことを見ていたはずなのに、そのことを考慮に入れずにあくまでウソは許さないと強弁した。
 その未熟な精神性では怪盗団ファントムに勝てないだろう。るるかは彼女たちとは協力せず、引き続き単独で行動していくことを決めた。

大きな出来事2

メインキャラクター:あんな

目標

 キュアアルカナ・シャドウの盗みを食い止める。

課題

 今回の怪盗団ファントムの刺客は優秀で、思慮深く知識も豊富なみくるですら後手に回ってしまっている。それでも名探偵として、盗まれた品は守りとおさなければならない。

結末

【達成】

 怪盗団の一味であり、同じプリキュアでもあるキュアアルカナ・シャドウは強敵だった。
 盗まれた星明かりのプリンセスは取り戻すことはできた。ただし、それもキュアアルカナ・シャドウが増援のアゲセーヌと戦ってくれたからにすぎない。もしかしたらこの結末自体、彼女の狙いどおりだったんじゃないかと感じる。

心の変化

【ポジティブ】

 キュアアルカナ・シャドウに「ウソもまんざら悪いものじゃない」というテーゼを投げかけられた。しかし、あんなは自分がウソをつかないことを誇りとしている。たとえどんな事情があろうと「ウソをついて人のものを盗るなんて許されることじゃない」と思う。
 あんなの返したアンチテーゼに対し、キュアアルカナ・シャドウからの回答はなかった。

バトル

 キュアアルカナ・シャドウとの対決。後に首飾りを素体としたハンニンダーが増援に現れる。

苦戦

 同じプリキュアであるキュアアルカナ・シャドウとの実力差は明白。だからといって諦めるつもりはなかったが、そのうえさらにハンニンダーまで現れた。

勝利

 キュアアルカナ・シャドウが何故かハンニンダーを攻撃してくれたおかげで、浄化することができた。ハンニンダーの素体となった首飾りも、そこに宿っていたマコトジュエルも、無事に取り戻すことができた。

ピックアップ

「なんてかわいいポーチなの!」

 その子を初見でポーチだと見破らないでください。(第8話参照)

 このオーナー、目利きのセンスだけは本物なのだろう。

20億円のポーズ

 「に、20億円!?」

顔認証技術

 歴史上最初に実用レベルの精度に達した商用製品とされる、NEC社の「NeoFace」がリリースされたのが2002年。
 それ以前にもアメリカなどで導入実績のある製品はいくつか存在したが、1999年時点だとまだ「顔認証っていうのは三文判だよね」と言われるような、信頼性の低い製品しかなかった。

 現在でもスマートフォンなどに登載されている顔人称はそういう前提で、登載した顔認証技術を全面的に信用するのではなく、定期的にパスコードの入力を要求するなどして、別途セキュリティ性を担保している。顔認証はあくまで使い勝手のいい簡易的な合鍵という位置づけ。
 本当の意味で顔人称をセキュリティ性向上のために使用している、この手のセキュリティ機器では今でもNEC社が大きなシェアを握っている。

 案外、このオーナーは金にものをいわせてNECから開発途中の最新技術を融通してもらっているのかもしれない。だからこそこの全幅の信頼感なのだろうか。

「固くて開かなーい!」

 たしかに電気室の扉は大抵重いものだが、それ以前に鍵がかかってるのよ。鍵穴が見えてるのよ。中に高圧電流が流れている盤もあって関係者以外が入るのは危ないから、しっかり施錠確認するものなのよ。
 通りすがりの警備員に見つけてもらえてよかったね。

非常電源

 現在の非常電源設備にはUPSが接続されているため、急な停電があってもコンマ数秒以内に非常電源が供給される。もちろんバッテリ容量には限度があるが、それまでに重油などで発電する自家発電機が稼働しはじめる設計。
 一方、1999年当時はまだサーバー室以外にUPSが普及していなかったため、発電機が稼働するまで数秒といわず30秒くらいは真っ暗になってしまっていた。

 携帯電話の普及と並び、ミステリ的にやりにくくなってしまった有名なギミックのひとつ。
 もっとも、(本当は)非常誘導灯など以外の一般照明には給電されないため、人間の瞳孔の拡縮を考えると、暗闇に慣れるまで数秒程度前が見えなくなってしまう現象は現代でも健在かもしれない。

シャッフル、オープン、リバース

 ティアアルカナロッドにトランプカードのようなモチーフが取り入れられているが、「シャッフル」「オープン」はともかく、「リバース」はトランプゲームにおいて一般的な用語ではない。(よく似たカードゲームの『UNO』で有名だが、UNO自体にアルカナとの歴史的な接点がない。トランプなら小アルカナからの派生で生まれたという立派な歴史的経緯がある)

 そんなわけで、ここは素直にタロット占いを元ネタにしていると考えてよさそう。タロット占いになら「シャッフル」も「オープン」も「リバース」も全てある。
 タロット占いの文脈で「リバース(逆位置)」と言うのだから、まあ、やっぱり後々ひっくり返るんだろうね!

ウソ

 「マコトジュエルは残念だったな。まあ落ち込むな。失敗は成功のもとだ」
 「いいえ。私に失敗はない」

 ゴウエモンさあ。ホントそういうところよ? 面倒なやつだって言われちゃうのは。

 常々感じることですが、この人、組織としての目標達成を二の次に考えてますよね。それでいて別に組織を裏切っている感じでもない。目標達成以外の個人的な動機を優先してしまうって点ではニジーも同じことをしているんですが、あちらが悪いことをしている自覚を持っていたのに対し、こっちはそもそも悪いことだと思っている素振りがないんですよね。
 これが何か別のところを評価するかたちで励ますんだったら優しい先輩だなって思うんですが、最重要目標の未達そのものを大したことないことみたいに言っちゃうのは、組織内の教育活動としてよろしくないです。本当によくない。あなた、後輩にどう成長してほしいの? まさか自分がいいカッコしたいだけじゃないよね?

 半ば私怨みたいなイヤミはさておき。

 「私に失敗はない」

 ゴウエモンがいいかげんなフォローを入れるからこそ目立ちますね、るるかの意図的な背信行為。
 るるかにとって、今回の盗みの失敗は失敗ではありませんでした。最優先事項はマコトジュエルを持ち帰“らない”こと。

 宝生美術館がニセモノの展示を行っていることはやめさせたい。けれど、盗みを成功させてもいけない。
 マコトジュエルはミラージュの書が感知してしまうから、放っておいても他の幹部たちが出撃する。そうなってもたぶん名探偵プリキュアが立ち塞がって回収してくれる。なんなら以前やったようにこっそりフォローすることもできる。
 しかし、ただ盗んだだけでは美術館の不正は暴かれない。怪盗からのメッセージにかこつけて、オーナーにニセモノだとバレていることを理解させなければならない。いつでもニセモノを盗んでしまえるんだと脅しつけなければならない。
 それでいて、盗んだものを持ち帰ってはならない。わざとではなかった、持ち帰ることができなかったんだ、という建前をどこかでつくらなければならない。
 ウソノワールにとってマコトジュエルの入手は自分の美学を翻すほどの重大事。悲願と言っていい。背信を見とがめられて、いつぞやのニジーのように粛清されてしまっては元も子もない。

 今回の事件ではそういう、どちらに偏りすぎてもダメになってしまう、綱渡りのような繊細なバランス感覚が要求されました。

 るるかが身を置いているのは、そういう難しい戦いの場です。
 だからこそ、

 「違う! ウソをついて人のものを盗るなんて、許されることじゃない!」

 そんな、カッコよくてわかりやすいだけのキレイゴトに安易に飛びついてしまう人では、仲間として頼ることができないのです。

 「ニセモノのウソの首飾りが人を惹きつけ、マコトジュエルも宿るなんて。ウソもまんざら悪いものじゃない。そう思わない? 名探偵さん」

 名探偵プリキュアの精神性を探るため、煽りました。けれどこれはるるかの本心ではありません。

 「すごい人気ね、あの首飾り」
 「ああ、そうですね。ファントムが狙ってて話題になってますし」
 「だけじゃない。騒動になる前から首飾りが好きな人はたくさんいた。何がそう惹きつけるのかしら」

 るるかの本音はこっち。

 マコトジュエルとは、「大切にする思いが、マコトジュエルを引き寄せた」(第1話)というかたちで様々な品に宿るもの。
 ニセモノでありながら、マコトジュエルが宿ってしまう。つまり、これがニセモノだと知らないみんなが、大切にしたいという思いを向けてしまっている。その不可解さ、あるいは理不尽さを、るるかはむしろ嫌悪する立場です。

 ウソが嫌いなのはいい。それはるるかも同じ。
 けれど、ウソが嫌いだからって、脊髄反射的に何でもウソだと決めつけようとするのでは話になりません。

 今回のトリックのテーマは“フェイク”。

 停電明けにオーナーが急いで顔認証を解除したのは、首飾りがニセモノとすり替えられてしまったのではないかと慌てたから。
 屋上から脱出しようとしたのは、普通なら正面入口から脱出しようとするはずだという考えの裏をかくため。

 ・・・ではありません。

 オーナーは首飾りが最初からニセモノだったと知っていて、そして、怪盗からそれがバレているという趣旨のメッセージを受け取りました。激しく取り乱したのは、むしろ目の前にある首飾りがニセモノだと、この場にいる人たちに疑われることを避けるため。
 監視カメラとマスコミひしめく正面入口から脱出しようとするのはそもそも困難。論理的に考えるみくるなら、より難易度の低い屋上からの脱出という発想に思い至るはず。そう見越して屋上でプリキュアを待ち受けました。

 ウソの、そのまたウソ。

 実のところ、今回の犯行を行うにあたって、るるかはウソを使っていません。
 ウソをついていると思わせただけ。

 「ウソをついて人のものを盗る」?

 誰が?

本当

 「はい! 私、ウソつかないんで。今回もはなまる解決します!」

 ウソが嫌いなのはいいでしょう。
 けれど、ウソと本当を見分けられないまま一方的にウソだと決めつけてしまうのでは、今度は自分がウソつきになってしまいます。

 ところでそもそもの話、どうしてウソをついちゃいけないんでしたっけ?

 「ウソをつかれて、ペンを取られたエリザさんは悲しんでる!」
 「人を悲しませるウソなんて――。プリキュアがウソを終わらせる!」(第2話)

 ウソは誰かを悲しませるからです。

 誰かを騙して、大切なものを奪うようなこと、絶対にあってはいけません。

 だったらこれはどうでしょう?

 ニセモノの首飾り。

 これに20億円の価値なんてありません。みんな騙されているだけです。
 けれどマコトジュエルは宿りました。

 人の心というのはどこに宿るのでしょうか?
 本物に? いいえ。
 心はただ、大切にしているものにこそ宿ります。

 前話、とある風景画家が残した自画像に当初マコトジュエルは宿っていませんでした。
 そこにマコトジュエルが宿ったのは、画家の娘が母親の本当の気持ちに気づいたから。
 その絵にこそ母親の本当の思いが表れていたんだと、今になって知ることができたから。
 亡くなった母親のことを、大切だって心から思えるようになったから。

 だから、あんなのウソを嫌う気持ちは“合って”います。

 ウソで大切なものを奪われることがイヤなんでしょう?
 ウソで人が悲しむことがイヤなんでしょう?

 だったらその気持ちは今回も間違えていません。
 るるかはウソこそついていませんが、美術館のオーナーが大切にしているものを盗みました。悲しませもしました。
 たとえその人がウソつきであろうと、人のものを盗み、悲しませることは許されることではありません。

 ウソかどうかは本質ではありません。
 何かを大切にしている誰かを悲しませたくないという思い、それこそがあんなの思いの本質です。

 「騒動になる前から首飾りが好きな人はたくさんいた。何がそう惹きつけるのかしら」
 「うーん。よくわからないけど、みんなの思いが集まってキラキラ輝いているから、ですかね」

 ね。

 だとしたら、たとえニセモノであったとしても、みんなが大切にしている首飾りは良いもの?

 まあ、私個人の考えで言うなら「それもいいんじゃない?」って感じなんですけどね。
 1つ条件をつけてもいいのなら、の話ですが。

 どんな条件だと思います?
 たぶん、ニセモノでもいいという人ならみんな同じことを考えると思うんですけど。

 “バレなきゃいい”んですよ。要は。

 バレなきゃ誰も不幸になりません。

 でも、今回バレちゃいました。
 大抵のウソはいつかバレるものです。

 そしてウソがバレた結果、ウソつきだったオーナーにとっても、あの首飾りを好きだった人たちにとっても、誰にも嬉しくない結末を迎えてしまいました。

 だからウソはダメなんですね。

 「ウソもまんざら悪いものじゃない」

 そんなウソを騙るるるかの、あからさまなつくり笑い。

 隠している過去にいったい何があったのか、悲痛な顔をして言い返せなくなるみくる。

 バレないウソなら、もしかしたら悪いものじゃないのかもしれません。
 だけど、あなたも知ってますよね? 大抵のウソはバレるんだって。

 「違う! ウソをついて人のものを盗るなんて、許されることじゃない!」

 ウソで傷ついた経験がある誰もにとって、あんなのこのまっすぐな叫びが、どんなに頼もしく聞こえることか。

 ウソにならなければいいですね。

 ・・・本当に。

 あんなの“本当”が“ウソ”にならないと信じきれないからこそ、るるかは彼女を頼りにしません。

 今の名探偵プリキュアにはある程度の実力があります。
 るるかの仕掛けたトリックを見破り、脱出経路を読みきる見事な推理力があります。

 また、その精神性も高潔なものです。
 名探偵は困っている人を助けられる存在。それを真に実行しつづけてきました。

 それでも頼れないのです。

 マシュタンにだけ見せられる、るるかの本当の笑顔。
 今のあんなたちにはまだ見せることができません。

 “ウソ”は、誰かの大切にしている思いを奪ってしまうものだから。

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    コメント

    1. ピンク より:

      まあ、警備員になりすましたのは一応明確にウソですかね。
      どうやら一貫して本人が成長した外見になる辺り、プリキットグロスの変身は『いつか実現するかもしれない未来を具現化してる』って感じだと思いますけど。小さい子供とか動物になったらごめんなさい。

      しかしキュアアルカナ・シャドウ、あんだけ分かりやすく敵対しても嫌な顔されるだけで済むとは、今更ながらどんな名目で怪盗団ファントムに居座ってるんでしょ。

      • ピンク より:

        プリホリ回では全然違う風貌になってたことを、すっかり忘れてました!!
        (メイクとかあるので、まるっきり不可能ではないですが)

    2. 東堂伊豆守 より:

      森亜るるかがキュアアンサー&キュアミスティックの戦闘を初めて間近で観戦したとき、「ふーん、プリキュアね」と吐き捨てて立ち去ったんですが……あれ、「未熟者のクセにプリキュアを名乗るなんてね」という意味合いかと思っていたんですけど、ひょっとすると「偽物プリキュアのクセに本物気取りなんてね」って意味だったのかもしれません。
      たとえば―――ポチタンに正規のプリキュアを生み出す資格が無く、彼(彼女?)の生み出すプリキュアはあくまでも“贋作”でしかない―――みたいな事情があるとか。
      で、そんな贋作プリキュアをキュアアルカナ・シャドウは頭ごなしには否定せず、むしろ「たとえ出自は偽物でも、その精神や行動次第で“本物”になり得る」と助け船を出した(「ウソもまんざら悪いものじゃない」という台詞が偽物の首飾りと偽物プリキュアの両方に向けられたダブルミーニングになっている)―――ら、なんとキュアアンサー本人がその“助け船”を「ウソは許さない」とかほざいて撃沈しちまうという。
      さらに、キュアアンサーこと明智あんなは「別の時代からやって来たプリキュア」で1999年には存在しないはずの人間―――つまりは“偽物”の1999年人ということでもある。
      (キュアアルカナ・シャドウがキュアミスティック/小林みくるには比較的好意的な態度なのに対し、キュアアンサー/明智あんなには厳しめの態度で臨むのは、「時空を越える人間は原則許されない存在」と考えているからなのかもしれず、それでもまだ「キュアアンサーを即座に始末すべき」としないだけ相当譲歩しているということなのかも)
      そうなると、「キュアアンサー/明智あんなは偽物のプリキュアにして偽物の人間である」という事実が、怪盗団ファントムにとってキュアアンサーを「お前の存在自体が“ウソ”じゃん」と完膚なきまでに叩きのめす切り札になってしまう訳で……確かにこの明智あんなのアキレス腱を、キュアアルカナ・シャドウの呈示した(アルカナ自身も全面的には納得していない)“言い訳”に頼ることなくカバーする論理を見つけ出せない限り、今のままでは「ファントムに勝てない」……よなあ。
      さて、どうする?明智あんな。

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