ひなたちゃん。・・・ありがとう!
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(主観的)あらすじ
今日はゆめぽーとでエンジェルフォト撮影会! ビーズアクセにヘアアクセ、ネイルシールに、それからドレス! 豊富なアイテム数のレンタル衣装を自由に集めてかわいい写真を撮れる、大人気イベントです!
オシャレ大好きなひなたがいつになく張りきっています。こういうところにあまり来たことがなかったのどか、ちょっと及び腰だったちゆも、ひなたがいっぱいオシャレを教えてくれるからとっても楽しくなってきました。
しかしそこは大人気イベント。人混みに揉まれ、元々体力のないのどかが途中で倒れてしまいました。
ひなたは配慮が足りなかった自分のことが情けなくて、一気に気持ちを沈ませてしまいます。気付いてあげるべきだった。誘うんじゃなかった。早く帰ろう、のどかへの心配で頭がいっぱいになったひなたはもうそれしか考えられません。のどか本人はまだ帰りたくないと言うのですが・・・。
そんなときにまたビョーゲンズが現れました。最初に気付いたのはたまたま2人から離れていたひなた。今すぐイベント会場を元に戻さなきゃと、のどかたちを呼ばずにひとりで戦うことにしました。
ところが今日のメガビョーゲンはいつになく手強く。ひなたはまた考えなしに先走ってしまった自分に情けなくなるのでした。
けれど、後から追いついてきたのどかたちが言ってくれるのです。今日は本当に楽しかった。ひなたが楽しませようとしてくれたおかげでワクワクできた。ありがとう。――ひなたの一生懸命な気持ちはどうやらムダじゃなかったようでした。
元気を取り戻したひなたはのどかたちと協力して、今度こそメガビョーゲンを浄化します。
戦いが終わったら撮影会の続き。実は今日のひなたにはひとつ目的がありました。
最近まで病気のせいであまり想い出をつくれずにいたのどかに、ステキな写真を撮らせてあげること。だから今日はいつも以上に張りきっていたのです。
その優しい気持ちに気付いたのどかは、またひなたに「ありがとう」と言ってくれるのでした。
ひなたは優しくなりたい子です。
「優しくなりたい」って何だよ、と我ながら変な日本語だとは思うのですが、この子に関しては実際こう表現するのが一番似合っています。
この子は本当に思いやりあふれている優しい子なんですが、色々と粗忽すぎて、気持ちに行動が追いついてくれません。周りにいる友達の優しさにいちいち感激するのはそんな情けない自分への感情の裏返し。みんな優しくて、自分だけが優しくない。優しくなりたいのに、優しくなれない。
本当に?
ひなたが優しくなれないのは、本当に粗忽なせいなんでしょうか。
粗忽者であるかぎり、ひなたはどうがんばっても誰かに優しくしてあげられないんでしょうか。
そんなことはありません。“優しい”って、本当はそういうものじゃありません。今話はそのお話です。
「優しくなりたい」って何だよ。ホントにさ。
YELLOW YELLOW HAPPY
誰かを好きになる瞬間って、どういうときでしょうか。
それはきっと、その人に親近感を覚えたとき。あるいはその人をカッコいいって思えたとき。
ただの他人を好きになることはあんまり無いと思います。カッコ悪い人を好きになるってこともなかなかですよね。絶対に無いってわけでもないですけど。
じゃあ、親近感って何でしょうか?
なんとなく身近なように感じることです。相手が自分とどこか似ているように感じるとき、私たちは目の前にいる人と一緒にいたいなって思います。
カッコいいって何でしょうか?
それは憧れです。目の前にいる人が自分に無いものを持っていて、それをうらやましく思ったりあやかりたいって思ったりしたとき、気付いたらその人のことが頭から離れなくなっています。
つまり、私たちは自分と似ている人か、自分と違う人のことを好きになるようにできています。
なんだそりゃ。好きになる理由って実は何でもいいのか。
別にそんなことはない気もするんですけど、変なことに、私たちは自分に近い人も遠い人もどちらも好きになります。
・・・ところで話は変わりますが、あなたは自分のことが好きですか?
好きだってはっきり言える人。絶対に嫌いだって言いきる人。どっちとも言えなくて困ってしまう人。――いろんな人がいると思います。
自分という存在ほど自分に近い人なんていないのにね。なのにどうして?
ひなたはどうやら自分のことをあんまり好きになれない子のようです。いつも失敗ばかりですからね。カッコ悪い子です。
代わりに、友達のことは人一倍大好きです。いっつも「優しー!」って目をうるうるさせています。
「わー、かわいい! ていうかのどかっち今と全然変わんないし! ・・・あれ? でも小さいころのばっかだね。最近のは?」
「ああ。休んでた間はあんまり撮らなかったから」
「あ・・・。ごめん! そうだよね、ホントごめん!」
「ううん。今はすっかり元気満タンだし。ね、ラテ」
今日も友達ののどかの優しさに胸を打たれました。
この子は本当に優しい。きっと気にしていないはずのないことを、まるでどうってことないかのように笑いとばす強さまで兼ね備えています。
そういうのどかのことがひなたは大好きです。この子はどんなときでも優しいことができるカッコいい人。自分とは全然違う。本当に違う。
こんなステキな友達のために、何か少しでも喜ばせてあげられることはないだろうか。
考えます。――この子は私と全然違う。そうだ! この子は自分と違ってオシャレなことにはあんまり詳しくない。オシャレは今ここにいるなかで自分だけの得意分野。おまけに最近あんまり写真を撮れずにいたらしい。ちょうど催されているオシャレな撮影会イベントに彼女を連れていったら、きっととっても喜んでもらえるはず!
だって、私もこの子の“自分には無いところ”を嬉しく思ったんだから。
「エンジェルフォト撮影会! いろんなブースでレンタルしたものでめっちゃかわいくなって、最後に写真撮ってもらえるってイベントなの。毎年大人気で、かわいいアイテムは競争率も高いんだよね」
「面白そう! 私、やりたい!」
よかった。今日は失敗しなかった。
ビーズも、ネイルも、それからドレスも。きっとこの子が詳しくないだろうオシャレのことをたくさん教えてあげて、今日はたくさん喜んでもらおう。こんな嬉しいことができる日なんてめったに来ない。今日は自分のことより友達のこと最優先にしよう!
自分はあんまり好きじゃなくて、友達のことは大好き。
だって、ひなたの好きな人は、自分に無いものを持つ人、憧れられる人、自分とは一番遠い人なんだから。
黄色い化けの皮
優しいことをしよう。
いつも失敗してばかりだけど、せめて今日だけは上手にできますように。
「えー、のどかっちのかわいい! あ、でもいろんな色混ぜるんなら、いっそボリューム出しちゃえば? ほら、こんな感じ!」
「ちゆちーのはねえ。シンプルにつくるんなら、ワンポイント置くとめっちゃカッコよくなるよ!」
「うわー! ちゆちー、大人っぽくていい! めっちゃ似合ってるし!」
「おっけー。だったら・・・ほら! お花畑でまとまったじゃん。えへへ。任せといて!」
「こっちは頭もお花畑ー!」
「ぬおー! お、これなんかのどかっちにいいかも! あ、こっちはちゆちーっぽい!」
今日は、それはそれは楽しい一日でした。
だって、いつもなかなかできずにいたことが、今日だけは全部うまくできる気がしたから。
・・・気がした、だけでしたが。
「――のどか!」
「あ・・・。のどかっち」
ひなたは粗忽な子です。
いっつも考えが足りなくて、みんなに優しくしたくてがんばっているのに、かえって迷惑ばかりかけてしまいます。
体の弱いのどかにはこういうイベントに参加することも大変なんだって、気付いてあげられませんでした。本当に優しい子なら、きっと気付いてあげなきゃいけないことだったのに・・・。
「ごめん! 本当にごめん! ・・・ダメダメだよね。のどかっちが辛かったのに全然気付かないで。もう! 私ってばつい周りが見えなくなるっていうか。ひとりでどんどん突っ走っちゃって。――これ飲んで落ち着いたら帰ろ。ね、そうしよ」
ひなたの好きな人は、自分に無いものを持つ人、憧れられる人、自分とは一番遠い人。――優しいことができる人。
だから、ひなたは優しくなることができません。だって、自分が優しくなれないってわかっているからこそ、のどかみたいな友達を好きになるわけですから。のどかを好きになるってことは、やっぱりひなたは優しくないんです。
どうせ優しいことなんてできっこないんです。
憧れは、ただの憧れ。
ちゆが青いからこそ青空に憧れるのなら、ひなたは自分が黄色くないから黄色い光に憧れる。
思えば、ひなたがプリキュアになることを決めたのも、それが理由でした。
「ニャトラン、行くよ!」
「おいおい。その前にふたりを連れてこようぜ」
「そんなの待てないって! 今すぐここを守んなきゃ。私ひとりでなんとかするし! ほら、ニャトラン!」
ひとりじゃ優しいことひとつできない私だけれど、プリキュアに変身したら優しいことができるようになる。
「なあ、ひなた。俺と一緒にプリキュアになんないか」(第4話)
プリキュアになればそれができるんだと、ニャトランが教えてくれました。
「あの怪物。ビョーゲンズから地球を守るんだ。お前のなかの好きなものや大切なものを、お前の手で、守るんだよ。ひなた。お前ならできる。ていうか、俺はお前と組みたい!」(第4話)
それは文字どおりの変身願望でした。なりたい自分になれる。できない自分ができるようになる。――そんな都合のいい夢物語。
夢物語をひとときだけでも現実のものにしてくれるのが、ひなたにとってのプリキュアです。
だから、プリキュアになりさえすれば、こんな情けない自分にだって優しいことができる!
「――スパークル、大丈夫か!?」
「あーはっはっはっは! やあね。プリキュア3人だって大して強くもないくせに、たったひとりでどうにかしようだなんて! ホント、考えなしなんだから」
できるはず、だったのに。
夢は夢。
ひなたはひなた。
憧れは憧れ。
優しくなれない子はどうがんばったって優しくなれない。
ひなたは黄色くなれません。絶対に。
それが、泣きたくなるようなひなたの現実。
遠くて近い
「ひなたちゃん。私、まだ帰らないよ」
ひなたの大好きな友達、のどか。
そののどかは知っています。ひなたの知らない意外なことを。
だって、彼女はひなたと全然違うんだから。
「スパークル!」
「ごめんね、気付くの遅くて。待ってて! 今助けるから!」
ひなたの現実。
プリキュアになってなお、優しいことひとつできない情けない自分。のどかたちがいなければ無力なばかりの自分。
のどかたちが助けに来てくれました。ふたりは優しいから。――私と違って。
いいえ。
「スパークル。さっき最後まで言えなかったけど――。今日、ずっと自分のことそっちのけで、かわいいアクセサリーとか私たちに似合うの見つけてくれたよね。私、もう楽しすぎて胸がいっぱいになっちゃった!」
「私も。・・・私も『最初はドレスで写真なんて』って思っていたけど。その。ワクワクしたわ。それに、突っ走ってしまったのはあなたが一生懸命だったからでしょう。今だってここを守るために」
いいえ。のどかは知っています。ちゆですら知っています。
ふたりは優しいから。
ふたりはひなたと違うから。
のどかたちは、ひなたが優しい子だってことを、知っています。
誰かを好きになる瞬間って、どういうときでしょうか。
それはきっと、その人に親近感を覚えたとき。あるいはその人をカッコいいって思えたとき。
私たちは自分に近い人も遠い人も、どちらも好きになります。
「いや、だから・・・。見世物になる前に保護するとか、迷子ならおうち探すとか、早くお兄に相談!って思ったら慌てちゃって・・・」(第4話)
のどかにとって。あるいはちゆにとって。ひなたは友達になったばかりのころからずっと優しい子でした。
優しいのどかたちにはそれがわかります。それが好ましいことだと思えます。
ひなたはのどかたちとはまた違ったかたちで、それでいてのどかたちと同じく、とっても優しい子でした。
私たちは自分に近い人も遠い人も、どちらも好きになります。
きっと人を好きになる理由なんて実際どちらでもいいんでしょう。近いとか遠いとか、そんなことよりもっと大切なことがあります。
「ありがとう。私、そんなスパークルが好き!」
嬉しかったかどうか。
一緒にいて、幸せになれるかどうか。
「ひなたちゃん。私、まだ帰らないよ。――だって、こんなにドキドキするくらい楽しいんだもん。帰りたくないよ」
今日は、それはそれは楽しい一日でした。
ひなたにとってだけじゃありません。
のどかにとっても。ちゆにとっても。今日は本当に楽しい一日でした。
全部、ひなたのおかげです。
ひなたがとっても優しくしてくれて、その好意がのどかやちゆにはとっても嬉しいもので、だからこそ。
今日は3人にとって幸せな一日でした。
忘れちゃいけません。ひなたは、あの優しいのどかとちゆが友達になりたいと思ってくれるくらい、優しい子なんです。
ひなたはのどかたちのことが好きです。
優しくなれない自分とは、ずっと遠い子たちだから。
ひなたは自分のことがあまり好きではありません。
優しくなりたい自分の理想とは、ほど遠い子だから。
けれど、のどかたちはひなたのことが好きです。
優しくあろうと思う自分と、とっても近い子だから。
あの子みたいに自分も優しくなろう、そう思える子だから。
それが、のどかたちの知っている、ひなたの現実。
“優しい”って、そういうものです。
必ずしも行為の結果ばかりじゃありません。
そこに込められた好意そのものだって、もちろん誰かを幸せにしてあげられる。
・・・このあたり、むやみやたらと親切をしようとするのどかにも刺さる話だったりしますね。
近くて遠い。
遠くて近い。
そんな些末なことはどうでもいい。
ただ、好きだから好きなんです。
一緒にいて嬉しい気持ちになれるから好きなんです。
ひなたはもっと自分のことを好きになるべきですね。
だって、大好きな自分といつも一緒にいられたなら、きっと今よりずっと楽しく毎日を暮らせるはずですから。
ひなたという子は、ちょうどひなたが好きになれるような、とっても優しい女の子なわけですし。
「――あ、そうだ。のどかっち。それあそこに飾ったらいいじゃん。のどかっちの部屋の写真コーナー」
「・・・え? ひなたちゃん、ひょっとして」
「ひなた。最初からのどかのために写真撮りに来たんでしょ」
ひなたがナイショにしてきた秘密、のどかたちには筒抜けです。ちゆに至っては相変わらず空気が読めなくて要らんことまで言いやがります。
だって、ひなたは自分が優しくなれないと思い込んでいるかもしれませんが、のどかたちにしてみればひなたが優しい子なんだってこと、とっくにわかっているんですから。
誰かと友達になるってそういうものです。自分ひとりでは知ることのできなかった、自分の新しい一面をいくつも知ることになります。なにせ、私とあなたとではそれぞれ見えている世界が違うわけですから。
ニャトランも言っていたでしょう。「ひなた。お前ならできる」(第4話)って。
これが、ひなたの現実。
照れくさくて顔が真っ赤になるくらい、優しい自分と幸せいっぱいな毎日。
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