
よし。それなら挑戦してみるか! 耕平とケバ子もOKならな!

「これでチャラ」
エピソードトラッカー
主人公:伊織
「俺はどこかでずっと今の関係が続くと思ってたみたいで。けど気付いたんです。今のままではいられないんだって」
目標
先輩たちもいずれ引退する、という時の流れを受け入れる。
課題
伊織の生活はPaBとの出会いで一変した。高校までの自分はもう少し常識人だった気がしないでもないが、今となってはPaBじゃない自分なんて考えられない。
PaBの先輩たちは全員3年生だ。引退したら1年生、つまり自分と同じく困惑させられる側だった同期しか残らない。もう引退式のことを考えなきゃいけない時期だが、今の日常から先輩たちがいなくなったらどうなるのか、想像もつかない。
結末
【達成】
伊織が先輩たちの引退のことを考えている間、千紗は千紗で別のことに悩んでいたらしい。裸を見られたことをきっかけに、伊織の自分を見る目が変わってしまったらどうしよう、と。
あまりにもバカバカしい話で気が抜けた。でも、そう言われてみれば「今のまま変わってほしくない」と思う気持ちは案外、いつも、何でもない些細なことにでも、抱いているものなのかもしれない。
少し気持ちが楽になった。
千紗とふたりで引退式の企画を練ってみた。ちょっと遠出してダイビングしてみよう、みたいないつものサークル活動の延長線上で。
心の変化
【ポジティブ】
きっと今が楽しいから、日常が変化していくことの実感が湧かないんだと乙矢くんは言う。千紗の迷走を眺めているうち、ふとその言葉が腑に落ちた。
先輩たちの引退式は最高に楽しく盛り上げたいと思う。楽しい今を惜しむ気持ちが自分のなかにあるのなら、これから先の未来も楽しくしていけば、今とつながっていくはずだ。
キーキャラクター
時田,寿,他 PaBの先輩たち
押しが強くて考えかたを曲げなくて、しかも常識がトチ狂っている厄介な人たち。伊織が股間に黒丸をぶら下げて暮らすようになったのは間違いなく彼らの影響だ。つきあっていて心底しんどいノリばかりだったが、間違いなく楽しい日々だった。
千紗
なんか急に思春期の女の子みたいなことを言いはじめた従妹かつ幼馴染み。本人は真剣に悩んでいるんだということがよく伝わってくるからこそ、伊織も共感することができた。
主人公:千紗
「でも、今の私の環境ってどこにでも伊織がいるし・・・。だから伊織がそういう感じになるとか、そんな変化考えられなくて」
目標
伊織が自分に恋愛的な興味を持ったかもしれない、という寝耳に水な事態と向きあう。
課題
今の千紗にとって伊織ほど身近な存在はいない。どこにいても、何をしていても、だいたい伊織が一緒にいる。
そんな伊織が、もし自分との関係性を変えたいと言いだしたら、いつもの日常はどんなふうに変わってしまうんだろう? まったく想像もつかない。好きとか嫌いとかそういう問題以前に、変わってしまうのが怖い。
結末
【達成】
伊織があまりにもしつこく口を割らせようとするから観念して打ち明けてみたところ、ただの誤解だったようだ。安心した。やっぱり伊織とは今の関係のままが気楽でいい。
先輩たちの引退式の相談をしている流れで、伊織がAOWライセンスを取得する気になってくれた。こういう変化なら大歓迎だ。
心の変化
【ポジティブ】
伊織との今の関係が恋愛ではないと確認できた。
現在地を確認したということは、今後どちらかに振れたとき自覚できてしまうということでもある。
キーキャラクター
伊織
千紗に対しては基本的にエロい感情を見せない男。それが本音かどうかはさておき、一応は一貫しているから千紗が信用している部分はある。ちょくちょくその信用は揺らぐ。
ピックアップ
よっぽど大事な相手

「そりゃああれを跳び降りてきたんだ。よっぽど大事な相手じゃないとなあ」
ムカゴとシイタケ

ムカゴとは山芋や長芋の葉の根元につく小さな芋のこと。種芋と同様、このムカゴを植えることでも芋類は増える。夏のムカゴは完熟していないため、青いリンゴやミカンが大抵そうであるように、強いエグ味を持つ。
シイタケに似た毒キノコとして、ツキヨタケやクサウラベニタケなどが挙げられる。シイタケがクヌギなどの原木から発生するのに対して、ツキヨタケは枯れ木に、クサウラベニタケは地面にそれぞれ生える。
未熟なムカゴが不味いことを知ったうえでわざと採ってきたり、シイタケに類似の毒キノコがあることを知っていて自信満々に食べたりしているあたりに、伊織が子ども時代にどういう遊びをしていたか輪郭が見える。
引退式

私の地元では「追いコン(追い出しコンパ)」とか、単に「追い出し」とか呼んでいた。
ウエイトベルト

そもそも人間の身体自体が水より軽いうえ、前話の感想文でも書いたようにダイビングスーツも水に浮く構造になっているため、装備全体のトータル(たとえば満タンの空気ボンベは水より重い)で適切な浮力になるよう調整しなければ沈むことはできない。
水中では深く潜れば潜るほど浮力が強くはたらくため、あらかじめ目的の水深で自然に浮きも沈みもしないちょうどいい浮力(中性浮力)に調整するのがポイント。
もちろん泳いで潜ることはできるだろうが、泳ぎつづけないと水深を維持できないなら落ち着いて水中散策を楽しめないし、体力とエアーの消費量も多くなる。
行く川の流れは絶えずして、しかも元の水にあらず
「ちょっと時田たちに気を使っただけだ。お前ら1年にはまだわからんだろうけどな、俺たち3年はもうすぐ引退なんだよ」

割と特殊なシチュエーションなのにも関わらず、どうしてこんなところに滑落していたのか劇中で一切説明がないティンベル会長。(聞いて面白い理由があるかはさておき)
伊織たちがどれだけこの人に興味を持っていないのかが窺えます。誰も何も聞こうとしない。会長のほうからはしっかり伊織の飛び降りた理由をイジられているというのに。
いっそ清々しいくらいパーソナルな部分を一切語らせてもらえない彼の発言のうち、唯一伊織たちが食いついた話題がこれ。
『ぐらんぶる』は1年生組のPaB以外の所属コミュニティが極端に少ない(※ 千紗に至ってはPaBと家族のみ)作品なので、構造上、物語に新しい風を吹きこんでくれるキャラクターが貴重なんですよね。PaBの人間関係や価値観を第三者視点で語れる人材がウルトラレア。だもんで、この人といい、桜子といい、1回の登場で3つ4つまとめて爆弾を落としていってくれます。
3年生は引退が近いんだそうです。
まあね。入学して半年経ってない時期だと、4年生と個人的な交流でもなきゃわからんよね。
伊織と耕平にとっては寝耳に水でした。なにせ入学初日からどっぷりPaBに沈められた2人です。むしろPaBのない大学生活を知りません。たまに野島たちとすら話が噛み合わなくなることもあります。
そして、PaBには2年生がいません。全員3年生。時田と寿と梓以外めったに個人名が出てこないレベルで集団としてのキャラの濃さを極めている彼らですが、彼らが醸していたPaB独特のマッチョでワッショイな空気感がごっそり入れ替わってしまうことになります。
1年生組にも常軌を逸したバカは2人いますが、彼らのノリも3年生組とは若干違います。女性陣の主張が強い点とか、ラブコメの空気感がほんのり漂っているところとかなんてあからさまに違います。
引退式の前と後で、PaBという場は、名前以外ほとんど共通点のない別物に変わってしまうことでしょう。
「先輩たちが引退か・・・」
「まったく想像できん」
伊織と耕平もそのくらいはわかります。出会いが完全にもらい事故、一方的に巻きこまれていった流れだったのでなおさらです。PaBはあの人たちがいるからPaBなのであって、自分たちが中心になったPaBにあの空気感はおそらく出ない。出したくても無理。
「まあ、お前たちが想像できないのは勝手だがな。終わりの時間は近いってわけだ」
引退する側はどうやってその空気感がつくられてきたのか知っているので気楽なものですが、そのレシピを知らない新参者にとっては軽く理不尽さすら感じる諸行無常。
サークルでも部活動でも会社のチームでも何でもいいですが、たぶん、誰もがどこかで何度となく経験していることなんじゃないでしょうか。
「それは・・・、きっと今が楽しいからだと思います」

一言でまとめるとそういうこと。
伊織や耕平だってね、小学校中学校高校と、どこかしらで似たような経験はしてきているはずなんです。なのに今回、大学生にもなって今さら、これほどの衝撃を受けているということは――。
よっぽど愛着があるんでしょう。それに尽きます。
さて。だとしたらどうすればいいんでしょう?
これまでの毎日がそんなに大切だったなら、移ろいゆく時の流れのなかで、どのようにそれを守ったらいいのでしょうか?
あと2,3年ほど先輩たちに留年してもらいましょうか?
それとも、自分たちの今の人格を消してコピー人間になりましょうか?
世界中駆けずりまわってドッペルゲンガーでも集めてみましょうか?
あるいはいっそ、すっぱり諦めてしまいますか?
できません。
イヤですよ。
どうしようもないことだって頭ではわかっていますが、だからといってどうして、何の対価でもないのに自分の大切なものを一方的に差し出さなくちゃいけないんですか。
「ちょっと話したいことがあってな。とりあえずドアを――」
「絶対ダメ」
「・・・異様に返事が早い」
「つまらない話?」
「ああ、ええっと・・・。実はすごく大事な話なんだ」
「じゃあ絶対ダメ!」
そして、同じような理不尽に抗おうとしている人物が、ここにもうひとり。
淀みに浮ぶ泡沫は、かつ消え、かつ結びて、久しく留まることなし
「まさか伊織が・・・、私を意識してる? あれで――!?」
千紗にとって、伊織の性欲ほどわけのわからないものはありませんでした。

あの男は自室にエロ本やエロDVDをしこたま溜めこんでいる不潔ヤローです。
部屋の壁全面に自分の顔でコラージュしたグラビアポスターを貼りまくっているのを見たときはおぞましさすら感じました。
幸い、こちらにその性欲を直接ぶつけてきたことはまだありません。
じゃあ最低限の分別がついているのかな?と思いきや、身内でも梓や奈々華のことはエロい目で見ているんだそうです。
だったら自分やケバ子だけが対象外? 胸が大きくないから? ・・・だけどそういえば「いい尻だ」と言われたことがありました。
それなら隠しているだけで、本当は密かにエロい目で見られている? でも、その割には普段隙を見せちゃっても案外踏み込んでこないことも確か。
実妹(栞)への言動を見るかぎり、あの男は別に性欲抜きでもセクハラをかます。
あげく、もしかしたら本当は同性愛者なんじゃ?と疑ったときには、「右のおっぱいだけ好きだ」と意味のわからないことを口走りました。
過去何度も伊織を警戒して、その都度誤解だとわかって、気を許してきました。
千紗は恋を知りません。愛したことがあるのは海だけです。
まして男性の、しかも性欲含みの恋愛感情なんてわかるはずがありません。
だから、基本的には伊織はたぶん安全だって思いつつも、何かあるとどうしても疑惑が再燃してきてしまうのです。
・・・その都度、また気を許してきたのも千紗なのですが。
「言っておくけど、ダイビング以外の話は聞く気ないから」
「お前は何をそんなに警戒しているんだ? そもそも俺が話したいのは――」
なんだかんだ言っても、ダイビング仲間だから。・・・ううん。それを差し引いて、さらに失点あまりある普段の生活態度をマイナスして、それでもギリギリ、一緒にいてもまあいいかなと思えるくらいには、信頼できる人だから。たまに頼りにもなる人だから。そしてやっぱり、ダイビングを好きでいてくれる人だから。
これがどうでもいい人なら、いいかげん絶交しちゃってもいいくらい散々な思いをさせられています。
そのあたりの不愉快さを飲みこんでなお、・・・結局のところ、伊織と一緒にいる時間はそれなりに心地よかったのです。
「なんだかアニメで幼馴染みを意識しはじめるセリフみたい」

千紗自身はあまり詳しくない世界ですが、一部には幼馴染みからでも恋愛関係に発展しうるという共通観念もあるらしいです。
とすると、やっぱり気を許してしまっていたのは間違いだったんでしょうか?
でも、伊織やみんなと過ごした大学生活の楽しさは諦めがたい。
裸なんて見せなければよかった。
慣れないマネをして、無理して酔い潰れて、着替えを覗かれるような隙なんてつくらなきゃよかった。
そうすれば、ずっと変わらない関係のままでいられたのに。
「で、何に気を取られてたんだ? ――ほう、そんな態度を取るのか。安全確認の怠慢はバディにも危険が及ぶのになあ! イントラ志望がそれでいいのか?」
みじめな気持ちでいっぱいになります。
元はといえば、夢を誰にも否定されたくなくて無理をしたことがそもそもの原因でした。
わかっています。本当はイントラ向きの性格じゃないってこと。
夢を叶えたいなら自分を変えなきゃいけないんだってことくらいわかっています。
でも、変わったら――。伊織との関係性が“変わって”しまったら、今の自分が気に入っていることひとつ、諦めなきゃならなくなります。

夢か、伊織か。
並べてしまえば価値の差にとんでもない開きがある気がしてきますが、でも、それはそれとして本音を言えばどちらも諦めたくないのです。
変わらなきゃいけない。
でも、変わりたくない。
千紗がそういう二者択一の間で苦悩している裏では、実のところ、千紗の意志とは無関係に時の流れが常に移ろいつづけていたりもする。
子どもみたいに癇癪を起こして、伊織とのこれ以上の関わりを徹底的に排除しようと思ったこともありました。
でも、千紗が好きなのは結局、どこまでも、伊織もみんなと一緒にいてくれる時間なんです。
「・・・いや、別に。お前も今の生活を楽しんでるんだなって思ってさ」
「はあ? わけわかんないこと言わないで」
「ははははは。そりゃ失礼」

世のなかにある人と、住み処と、また斯くの如し
「伊織は、その・・・。何? 私のことが好きなの?」
唐突に、千紗がわけのわからない質問をしてきました。
好きかどうかでいうなら、そりゃ当然好きです。大事な友達ですし、サークル仲間ですし、妹みたいだなって家族同然に思っています。
ただ、こういうときの千紗はどうにもよくわからない思考の迷走をしているようでした。
先日は「伊織は本当におっぱいが好きなの?」と聞いてきました。あまりにも意図が読めない質問だったので、好きとか嫌いとか諸々の間を程よく取って、「右側のおっぱいだけ好きだ」(第9話)と答えてみました。お気に召さない様子でした。
伊織は普段からバカだバカだとよく不本意な評価をされるタチでしたが、実のところ、ひとつひとつよく考えてから言葉にする慎重な性格です。同じ間違いは繰り返さないつもりです。
前回は考えすぎてバッドコミュニケーションに終わりました。なら、今回は極力シンプルに、素直な言葉で――。

「好きだぞ」
・・・どうしてだか、今回も選択肢を間違えたようでした。
逃げだそうとする千紗を力尽くで引き留めて、やっとの思いで口を割らせると、どうもこちらに千紗に対する恋愛感情があると誤解していた様子。
それで「好きだ」と答えた結果、喜ぶでもなく純粋に困り果てていたということは、単純な話。千紗は今の関係が崩れてしまうことを一番怖れていたということです。
先日乙矢くんが言っていた言葉が思い起こされます。
「それは・・・、きっと今が楽しいからだと思います」
いわゆる金言というやつだったのでしょう。先輩たちの引退を不安に思う自分の気持ちも、恋愛による関係性の変化を怖れる千紗の気持ちも、両方きれいに説明することができる。
いいえ。そもそもこの2つが本質的に同じ悩みだったということなのかもしれません。
「――妹と同じってわけにもいかないか」
思いのほか見事だった千紗の裸体を見て、伊織はそういうふうなことをぼんやり思っていました。

一応は血のつながらない従兄妹同士。栞に同じことをしたら、・・・殺されかねないほど激怒するのは共通として、きっと栞はあんな顔でこっちを見ることはないだろうなと、なんとなく思います。
無防備に放りだされた乳房以上に印象的な、きれいで、胸を締めつけられるような表情でした。
もしかしたら千紗ではなく、自分の目がおかしいのかもしれません。血がつながっているか、いないかの違いで相手の表情に表れた差異ではなく、本当はこちらの栞を見る目と、千紗を見る目が、どこか違っているのかもしれません。
「で、実際千紗ちゃんとはどうなんだ?」
「うーん。うまく表現できませんが――、“同い年の仲間”って感じなんですよね。だからあまりピンとこないっていうか」(第3話)
以前、先輩に問われたときは淀みなくそんなふうに答えました。
だって、そういうふうでありたいとも思っていましたから。
多少のことなら冗談で流せる梓や奈々華と違って、千紗は免疫が本当にゼロです。うっかり不用意なことを口に出してしまった瞬間、取り返しがつかないくらい関係が壊れてしまいかねません。もっとも、照れ隠しや言い逃れを模索するうちうっかりセクハラが漏れ出てしまう、男のサガというものもどうしてもありますが。
実際、梓や奈々華に対しても自分なりの線引きはしてあります。エロいものをこっそり見るだけならともかく、それ以上はさすがに無しです。過去何度か据え膳を目の前に出されたことがありましたが、必死に理性をつなぎ止めて、自分から断りを入れました。それはさすがに、人間関係が変わってしまう。
千紗の場合は――、本人の知らないところでこっそり、ということすら考えていません。本人が気付かなければ関係性なんて変わりようがないだろ?・・・とは、不思議と思えません。
これまでずっと、千紗のことは妹みたいなものだと思っていました。
そのように思うようにもしていました。
「でも、今の私の環境ってどこにでも伊織がいるし・・・。だから伊織がそういう感じになるとか、そんな変化考えられなくて」
千紗の様子を見るかぎり、どうやらこちらは正解だったようです。
妹で納得しているかどうかはさておいて、自分たちの関係が変わってしまうことを、少なくとも今の千紗は望んでいないようでした。

「俺はどこかでずっと今の関係が続くと思ってたみたいで。けど気付いたんです。今のままではいられないんだって」
どんなに今のままがいいと願っていても、秋になれば先輩たちは引退します。
何もかも永遠に変わらないまま、とはいきません。
自分自身、引退式をやるからには普段と違う特別なことを企画して、最高に盛り上げて送り出してやりたいと思っています。
自分の意志とは無関係に時の流れが移ろいゆくなか、では、自分が本当に大切にしているものは何だろうか?
「人が本気でやってることを邪魔すんじゃねえよ」
「あいつはあれでいいんだよ」(第6話)
基本的に、伊織は何か夢中になれるものを持っている人のことが好きです。
千紗のことも、プロのダイバーになりたがっている情熱まで含めて、気に入っています。
・・・それって、変わろうとすることまで含めて、好きなんだということにならないでしょうか?
今は千紗が恋愛を望まず、伊織自身も関係を変えたいと思っていないから、現状維持の方向で丸く納まっています。
先輩たちの引退式を盛大に行いたいという気持ちや、千紗のインストラクター向きの性格に変わりたいという気持ちは、そもそもこの件と別の問題なので関係ありません。(千紗はいつも変なところで潔癖というか、いちいち一貫性を求めすぎです)
ただ、もし千紗や伊織が今の関係性を変えたいと思う日が来たとしたら?
あるいはケバ子や、桜子が、新しい関係を迫ってきたら? 変わらない日常を守りつづけたいと願うことで、かえって誰かが傷ついてしまうことがあるとすれば?
伊織ほど今の自分たちの日常を気に入っていて、あらゆる干渉から守ろうと行動している人はなかなかいません。
いわば、伊織は日常の守り手です。
けれど、伊織が守ろうとしている“日常”とはどういうものなのでしょうか?
変わらない今? それとも――。
「ははは。さてはお前、国語が苦手だろう。だって“やりたい”か“やりたくない”に、“できる”“できない”で答えるなんて。――最初から自分ができるモノだけ選んでいたら何もはじまらない。大事なのはお前が興味を抱いているかどうかだろ」(『ぐらんぶる』第1話)
『ぐらんぶる』の物語は、PaBの先輩たちが、伊織の変わってみたいと思う気持ちを応援してくれたところから始まりました。

なお、2期はこれで最終回です。
無人島編はどう考えてもプロローグ的な位置づけのエピソードで、そのことはアニメの製作スタッフさんたちもよーく認識している様子ではあるのですが・・・。まあ、お話の続きは3期以降で。



コメント
一期一話から最後まで読み切ってしまいました。面白かったです。
このような感想文を読むのは初めてだったのですが、私も原作を読んでいたと言うのがあり、自分では見つけることのできなかった視点をより楽しめたと思います。
(1つだけ、「ウェイトベルト」の浮力の説明についてですが、浮力は「浮力」=「液体の密度」×「押しのけた物体の体積」×「重力加速度」だったはずなので、深さは関係ないかもしれません。
調べたところ、実際にはスーツ内の気泡が水圧の上昇で潰され、「スーツを含めた人間の体積」=「押しのけた物体の体積」が減少するので、深くなるほど浮力が小さくなり、より沈みやすくなるのだとか…)
何はともあれ、全体を通して、大変面白い文章でした。途中の話も、物理「基礎」を齧った文系の人間の話ですので、話半分にしていただけたらと思います(考察に全く関係ない話ですし)。
感想ブログも少なくなりましたからねえ。私も毎週チェックしているところが片手で数えられる程度になってしまいました。
浮力に関しては解説を読むかぎり、おそらくそちらの認識が正しいと思います。私、ド文系で高校の履修科目も化学と地学でしたし。
結構あちこち調べてGeminiにも質問しながら書いたんですが・・・、そっかー。そもそも基礎レベルで間違ってたかー。ご指摘ありがとうございます。次はもっと慎重に調べることにします。
今回は考察部分との関係が薄い話だったとはいえ、こういうさりげない部分から登場人物の心情を掘り下げていくの好きなんですよね。