トロピカル~ジュ!プリキュア 第1話感想 胸に太陽、目の前は大海原。さあ、冒険に出かけよう!

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何が大事かは自分で決める! 今大事なのは! 大事なのは――!!

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「トロピカれ! やる気全開! キュアサマー!」

活躍したひと

まなつ

 頭にヤシの木生えてる系のハイテンションガール。人の話を聞かずひたすら喋りたおすうえ、聞いたとしてもたいがい都合よくポジティブに捉える自己完結型。ただし、それもこれも全部「今自分が一番大事だと思うことをやる」ことを行動原理にしていることによるもの。

ローラ

 あとまわしの魔女によってやる気を奪われた故郷・グランオーシャンを救うためプリキュアを探しに来た人魚。・・・とはいえ本人は功績を立てて次期女王になることをモチベーションにしているちょっぴり腹黒な性格。人間を人魚より下に見ているフシがある。

トロピカってたもの

メイクの魔法

 目の前に不安を感じてやる気が挫けてしまいそうなとき、メイクすると幸せな気持ちと前向きな勇気がみなぎってくる。

「トロピカるぞーっ!」

 常夏の太陽みたいにキラキラ眩しい幸せな気持ちが、胸の奥から「ぶわーっ!」って湧きあがってくるような感じのこと。

「今自分が一番大事だと思うことをやれ!」
「何が大事かは自分で決める!」

 まなつの無限のやる気を支えている信条。ふたつ合わせることでものすごいゴーイングマイウェイな考えかたになっていると思われる。

うまくいかなかったこと

 (まなつにとって)期待に満ちていた都会での新生活だが、一方で見るもの全て目新しいものばかりで不安も感じていた。

 (ローラにとって)探しているプリキュアがなかなか見つからなかったこと。

やりきれたワケ

 (まなつにとって)失くしてしまった大事なリップを人魚が届けてくれた。

 (ローラにとって)偶然にもプリキュアが見つかった。

 今回から(主観的)あらすじを廃止しました。感想文を読んでもらう前に“私がどういうふうに本編を観ていたか”を書いておいたほうが伝わりやすいかなと思って始めたことでしたが、ぶっちゃけアレ読んで面白いと感じてくれる人がいるとは思えなかったので。新シリーズに合わせてリニューアルです。
 「活躍したひと」「トロピカってたもの」「うまくいかなかったこと」「やりきれたワケ」の4つでそれぞれ「起」「承」「転」「結」に対応するよう設計してみました。この形式のほうがかえってあらすじもわかりやすくなる・・・んじゃないですかね、たぶん。

 ローラのフルネームはローラ・アポロドーロス・ヒュギーヌス・ラメールだそうです。アルファベット表記にすると「Rola Apollodoros Hyginus La Mer」といったところでしょうか。
 ミドルネーム2つの元ネタはおそらく紀元前に活躍したギリシャ神話説話集の編纂者の名前ですね。アポロドーロスは『ビブリオテーケー』を、ガイウス・ユリウス・ヒュギーヌスは『神話集』をそれぞれ著しています。ラストネームのラメールはフランス語で海のこと。ちなみに全部wikipediaで調べました。

 さて、今作のテーマは「やる気」。敵の名前があとまわしの魔女ということで、子ども向けらしく“今この瞬間にやる気を出さなきゃいけない理由”にフォーカスを当てていくものと思われます。第1話のノリを見た感じだと、漠然とした不安感を→メイクや変身によるやる気で乗り越えて→最後に「ビクトリー!」の達成感を味わう・・・という流れが基本型になるんでしょうか。成功体験を重ねてどんどん強い子になっていきましょう。
 また、これと並んでちょっとした「差別や偏見」についても考えていくようです。キュアサマーのパーソナルカラーが虹色だということで以前から予想されていましたね。ここ数年、プリキュアがシリーズをまたいで取り組みつづけてきたテーマでもあるので、もうすっかりおなじみのことになりました。

 夏海まなつが怪物・ヤラネーダの攻撃を受けてもやる気を奪われなかったように、「やる気」というものは本来個人ひとりひとりの内面的な問題です。その点、対人関係の障害である「差別や偏見」のテーマ軸とどう絡みあっていくことになるのかが見どころですね。
 とはいえ、たとえば「どうせ宿題サボるつもりなんでしょ」なんて決めつけで言われてやる気がなくなってしまう、みたいに子どもにとっても割と身近な取りあわせのテーマでもあります。描きようは無限にあるはずなので今から楽しみです。

トロピカっちゃお!

 「ローラもちょっとやってみる? ――ほら! どう?勇気が湧いてこない? 『トロピカるぞー!』って感じで!」
 「『トロピカる』って何?」
 「『トロピカるぞー!』っていうのはね、常夏の太陽みたいにキラキラ眩しい幸せな気持ちが、胸の奥からこう、ぶわーっ!って湧きあがってくるような感じ!」

 あんまりにもイミワカンナイ口癖だったので、放送前までは毎話どういうときに使っていたのかリストアップして考察してやろうと密かに計画していました。フタを開けてみれば思いのほかマジメな意味が込められていたので逆に困惑。

 ローラも困惑しました。

 「あなたが伝説のプリキュアなの?」

 何の悩みもなさそうな脳みそ常夏娘が語るのは、探していた伝説と奇妙に符合する心意気。

 「それを開けることのできる人間を探すのです」
 「人間が開けるカギを持ってるの?」
 「そうです。心の中にきらめく太陽を持った人間と私たち人魚の心が通じあったとき、カギが現れるでしょう」

 女王様が言っていました。プリキュアは心の中に太陽を持っているんだと。
 まなつは言いました。太陽みたいな気持ちが胸の奥から溢れてくるんだと。

 じゃあ、目の前にいるこの子がプリキュア?

 ・・・違ったようです。
 まなつはトロピカルパクトを開けることができませんでした。“太陽”という符合があったからといって、少し安直に考えすぎたのかもしれません。そもそも夏の空気に脳みそまで茹で上がっていそうな人間に人魚の国を救う希望が務まるわけない。

 ローラはひとつ肝心なことを忘れていたみたいですね。
 女王様が言っていたのは「心の中にきらめく太陽を持った人間と私たち人魚の心が通じあったとき」だったのに。

常夏の太陽みたいな気持ち

 この日、夏海まなつはひとつの冒険に踏み出しました。

 「今日は旅立ちの日! 都会の水族館で働いているお母さんのところへ! そして都会の中学に入学! 友達たくさんつくって、部活に入って、休みの日はオシャレなオープンカフェでランチ、電車に乗るときはカードをピッとタッチして、遊園地で絶叫マシーンに乗って、都会で流行ってるスイーツも食べて、かわいいコスメショップに行って、それからそれから――!!」

 まなつは中学校進学を機に故郷・南乃島を離れて都会の街・あおぞら市に引っ越すことにしました。
 事情はまだ詳しく描かれていませんが、島に中学校が無くてやむをえず引っ越しすることになったのかもしれません。一応日本の学校法制上では中学校教育課程まで義務教育とされており、教育を必要とする生徒が1人でもいるなら離島だろうが通学圏に中学校教師が派遣されるはずなので、もしかしたらまなつ自身がそれを断って引っ越しを選んだのかもしれません。
 いずれにせよ、まなつは引っ越しという生まれてはじめての大冒険に、憧れの大都会への期待に胸膨らませながら挑みました。他の荷物と一緒に事前に送っとけばいいものを、わざわざ服ばっかり山ほどトランクに詰めこんで。
 (ところで背景のポスターにあった「GRATE TOWN AOZORA」とはいったい・・・。GREAT CITY AOZORAではないのか)

 「人間はまだ5%しか海のことをわかってないっていわれているのよ」

 今日は冒険の日です。
 島での暮らししか知らなかったまなつにとっては360度ありとあらゆるものが未知の世界。

 いつも見守ってくれていた優しい大人たちはお父さん含めてみんな島に残り、到着した先にお母さんが待っているとはいえ、まなつたったひとりでの旅路です。
 当然、ワクワクするような楽しみばかりではありません。心配なこと、不安なことはやっぱりどうしても出てきます。

 「恐怖は思考を停止する」(『スタートゥインクルプリキュア』第1話)

 「わかったんだ。・・・宇宙って広いんだなあって。いろんな人たちがいて、いろんな考えかたがあって、まだよくわからないし、あなたのこともメチャクチャ恐い。でも――」(『スタートゥインクルプリキュア』第31話)

 かつて「恐怖は思考を停止する」と語った人物がいました。故郷を追われ、寄る辺ない者同士で身を寄せあい、必死に生き延びてきた者の経験則。
 事実でした。好奇心で自分から未知の世界へ飛び込んでいけるキラやば娘にすら、ときに恐怖で押しつぶされそうになってしまう瞬間が何度もありました。

 「――そうだ、こんなときは!」

 だけど、ほんの一塗りのリップが心配や不安から心を守ってくれることもある。

 まなつにとってそれは誰より近しい人がくれた親しみ深いアイテムでした。
 だから、不安なときも安心して勇気を持てる。

 一方でちょっとだけ背伸びしてみる憧れの象徴でもありました。
 だから、何もわからないことの恐ろしさが、何か新しいことに挑戦できる楽しみに変わる。

 メイクという魔法。
 お母さんのリップがどんなときでもまなつをトロピカらせてくれる。

 まなつにとって今日は冒険の日でした。
 大好きなオシャレを満載にしたトランクは未知なる世界への期待の象徴であり、不安から身を守るための鎧でもあり。

 「それじゃ、まなつ。私は仕事に戻るから。街の見物でもしてくれば?」

 大切なリップを失くし、重いトランクもすでに下ろしてしまった、メイクも落としてしまった。
 よりにもよってそんなタイミングでまなつはもう一度冒険することになります。

 今日は本当に、とことん冒険の日のようです。

 街でふいに都会っ子と目が合ってしまいました。同い年くらいであろう彼女は自分と違ってこういう場面に慣れているらしく、なんだか大人なスマイルでリアクションを返してくれました。
 対して、私は・・・。

 まなつとローラの衝撃の出会いがあったのは、まさにそんな気分のときでした。
 ローラがまなつのもとに大切なリップを届けてくれたのは、まさにそんな気分のときでした。

 「急にどうしたの? あ! ひょっとしてホームシック? だよねー。知らない街で独りって心細いよねー。わかるよ。実は私もちょっとだけ不安になったんだ」

 「でも大丈夫! ステキな魔法があるんだよ!」

今、自分が一番大事だと思うこと

 「しつこいやつだな! 自分と人魚のどっちが大事なんだよ? 自分だろ!」

 ローラとの出会いより少し後、まなつに対して怪人が全くの正論を言ってきました。
 そりゃそうです。誰だって自分が一番大事。自分より他人を優先するなんて大昔のヒーローにしか許されない狂った考え。最近はヒーローですら「地球のため、みんなのため」よりも自分が個人的に大切に思うものを守るため戦っています。

 だとしたらまなつはおかしい。
 安全な自宅から飛び出して、今日出会ったばかりのローラのために、自分の身長の何倍も大きな怪物に敢然と立ち向かっています。自分の命が惜しくはないんでしょうか? 自分よりもローラのほうが大切だとでもいうんでしょうか?

 違う!

 「何が大事かは自分で決める!」

 これは、自分が大事だからこその戦いです。

 自分の思いが。
 今、自分が一番やりたいと思うことが。
 まなつにとって何より大事だからこそ。

 ここに踏みこんだらどうなるかわからない。
 怪物に刃向かったところでローラを助けられるかわからない。自分が無事に帰れるかどうかもわからない。
 危険かもしれない。怖い目にあうかもしれない。失敗するかもしれない。何もできないかもしれない。
 それでも。

 今日は冒険の日です。

 自分の身を守ることだけが“自分のため”というのならそれは違う。
 だって、まなつは今日、これまで見守っていてくれた大人たちがいる故郷から飛び出してきたばかりなんだから。
 まなつのやりたいことは常に心配や不安と背中あわせ。
 だって、まだよく知らないからこそ、憧れるんだから。挑戦してみたいと思えるのだから。

 小さな冒険者は5%の海から旅立ちます。
 危険で、怖くて、わからないことだらけで、だけどきっと自分の一番大事に思うものが待っている、95%の大海原へ。

 大丈夫。同じ海ならどこまでもつながっている。空を見上げたらいつだって故郷と同じ太陽を見ることができる。うっかり落としてしまった大切なリップが意外な巡りあわせで手元に返ってきたように。
 いつだって、安心できる場所と未知なる冒険先はつながっている。
 だから勇気を出してみよう。

 今日はまず、旅先で心細い思いをしていた自分のもとへ魔法のリップを届けてくれた仲間と冒険を続けられる未来を勝ち取るために、戦おう。

 「心の中にきらめく太陽を持った人間と私たち人魚の心が通じあったとき、カギが現れるでしょう」

 そうです。まなつとローラはすでに仲間です。それぞれに燃えるような強い憧れを胸に抱いて、ともに未知なる世界へ漕ぎだしはじめた冒険仲間になりました。
 だって、人間と人魚、たしかに心を通じあえたわけですから。

 「――というわけで! これからは私のもとで戦ってもらうからよろしくね!」
 「よろしく! ・・・うん? 戦う?」

 もっとも、当人たちに心を通じあえた自覚はまだまだできていないようですけどね。

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    コメント

    1. ピンク より:

      とにかく期待に胸躍る1話でした!
      今回は3月直前に放送されたことで、過去作以上に自分の卒業や入学or入園、あるいは引っ越しと重ね合わせた子供たちもいるでしょうね。

      とりあえず目先の今やるべきことは、あとまわしの魔女の目的を教えてもらうことでしょうか。
      単にやる気が無いだけの女性とその仲間ならわざわざ他人を巻き込む必要は皆無なわけで、+αが存在するはずです。
      それはさておき『何故プリキュアや街をいっぺんに襲わないのか』という視聴者のお約束的ツッコミを、チームワークの欠如以外で簡潔かつコミカルに返したのは、上手いなあと感心しました。

      • 疲ぃ より:

         子どもたちはやっぱりまなつの引っ越しの高揚感に共感したんですかね? それとも漠然とした不安感のほうでしょうか? 私は・・・、通学路を全然把握してないくせに謎の全能感を発揮して、しょっちゅうひとりで迷子になっていたなあ。
         コスメショップで窓越しに見たさんごのスマイルはいい描写だと思いましたね。あれで少ししゅんとなる気持ちは進学進級を控えた子どもにこそよく伝わるんじゃないでしょうか。少しお姉さんになれた気分だったところ鼻っ柱を折られた感じというか。同級生らしいので、次話で再会したときのまなつのリアクションも楽しみです。

         あとまわしの魔女は・・・。『人魚姫』の魔女だと、自分の醜い声と比較して人魚姫の美声が妬ましかったから秘薬の対価に要求してきたんですよね。元ネタをなぞるとしたらやる気を集めている目的もそのあたりでしょうか。
         前作の感想でも色々書きましたが、敵の目的を知る機会があればプリキュア側にできることの幅も大きく広がるので、開示されると嬉しいですね。

    2. 東堂伊豆守 より:

      オープニングの〆(放送局・広告代理店・制作会社のテロップがでるパート)がプリキュア姿ではなく普段の姿となるパターンが二作連続となりましたが、今後はこの形で定着するんでしょうか。
      まあ、本作は“変身願望”を満たす手段が「プリキュアに変身すること」だけではない、というテーマを掲げている(むしろ「プリキュアへの変身」は本作のテーマにとって二の次っぽい)ようなので、作品テーマに沿ったオープニングと言えるのかもしれません。
      ではなぜーーーーーー女子中学生達はプリキュア(=戦士)に変身して強大な敵と戦わなければならないのか……?
      この「プリキュアになって戦う理由」について、前作「ヒーリングっどプリキュア」は非常に理詰めに必然性を構築するアプローチを採った結果、設定やストーリーが異様に重苦しくなってしまい……制作者も視聴者も“押し潰されてしまった”印象がありました。
      それに対し本作「トロピカル~ジュプリキュア」は、「日曜の朝からカワイイ女の子が存分に暴れまわって、トドメに悪党を花火にする姿を見たら皆スカッとするだろうが。だったら他に理由なんて要らねえよ」……と居直ってきた感じがしますね。
      但し、この“居直り”は「プリキュアは女の子が出て肉弾戦する姿を、小さな女の子達に見せつける番組」という挑戦的なコンセプトを社会的に認知してもらう為に、東堂いづみが17年間に渡って試行錯誤と奮闘努力を積み重ねてきたからこそ可能となったことであるわけでーーーーーーまさに苦節17年の集大成が第18作「トロピカル~ジュプリキュア」と言えるんだと思います、ええ。
      よって、日曜の朝っぱらからワン○ースばりに鼻水垂らす女子中学生を見せつけられるのも「女児向けアニメの常識に挑んだ」プリキュア17年の集大成……いや、そこはもう少し加減してもよかったよーな。

      • 疲ぃ より:

         OPのラストカットに関しては、目下追加戦士の最有力好捕があの子なので、もしかしたら差替えコストを考えてムニャムニャ。(※ 余計な勘ぐり&無意味なボカし)
         ただまあ、もしあの子がプリキュアになるなら『人魚姫』と同じ人物から両足を貰うことになりそうで、今から密かにハラハラしています。

         今話のプリキュアに変身する動機は『スタートゥインクルプリキュア』みたいな感じでしたね。変身そのものが重要なのではなく、守りたい人こそが主人公にとって重要で、変身はあくまで守るための手段。
         今のところプリキュアである必要がないストーリーを、プリキュアであればこそのバトルの爽快感で美味しくコーティングした感じの作風になっていますね。これはこれでいいものですが、まあ、そのうちプリキュア活動をしていく理由は何かしら生えてくるんじゃないですかね。今後プリキュア同士で部活を立ち上げますますトロピカっていくようですし。

         鼻水? 慣れろ。
         女の子向け作品だとちょっと珍しいノリかもですが、そもそも大抵の女の子はちゃおやなかよしと合わせてコロコロコミックや少年ジャンプも履修済みなものです。(※ 性別逆だと変な目で見られがちなのに!) ヤツら鼻水どころかウンコもチンコも大好きですぜ。

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