
千紗ってさ、・・・カレシとか欲しくないの?
「印象ゲーム」
エピソードトラッカー
主人公:ケバ子
「・・・私だけなのかな。あのサークルでそんなことばっかり考えてるの」
目標
伊織と千紗はいとこ同士だが血はつながっていないという。それでひとつ屋根の下同棲生活。しかもあれだけ息ぴったりな仲なんだから、いつ間違いが起きたって不思議じゃない。
伊織が千紗に恋愛感情を持っているのか、今一度確かめなければならない。
課題
PaBの空気感だと正面から聞きに行くのはなかなか難しい。たぶん自分のキャラでもない。
結末
【失敗】
ケバメイクで武装しバカ酒飲んで強引にテンションを上げ、PaBの流儀で伊織を酔い潰して聞き出そうとしたが、伊織の飲んだふりを見抜けず失敗した。
心の変化
【ネガティブ】
酒が抜けて(ついでに風邪もひいて)冷静になってみると、自分だけ恋愛云々を気にして空回っているのがカッコ悪く思えてきた。ひょっとして自分だけPaBのなかで浮いてしまってはいないだろうか。
キーキャラクター
伊織
片想い中の相手。バカだし失礼な人だけど、根はどうしようもなく優しい人。
ケバ子も傷心中に優しくしてもらった。それで好きになった。でもそういうのは伊織にとって全然特別なことじゃない。ケバ子と伊織は全然特別な関係じゃない。
だから、伊織と特別な距離感にいる千紗にはいつも敵わないって思うし、焦る。
エピソードトラッカー
主人公:梓
「完成しちゃった関係だとなかなか動きだせなくなっちゃうからさ」
目標
奈々華に誤解されてしまった伊織を先輩としてフォローしてあげる。
課題
伊織の迂闊な失言がトラブルを引き起こすのはいつものことだ。それが楽しみで見守っている部分もある。根っこの部分は誠実な子だから放っておいても大抵最後には丸く納まる。
ただ、今回はやらかした相手が奈々華なこともあって難航しているようだ。見物ついでにそれとなく助けてあげようと思う。
結末
【達成】
伊織は要らないことを口に出しすぎなだけで、誠意もちゃんと言葉で示せる子だ。奈々華の誤解を解くには、彼がどうして実際には奈々華に手を出そうとしないのか、その理由を語ってもらうだけでいい。
心の変化
【ポジティブ】
時間さえかければ、伊織ならいずれ自力で解決できたと思う。ただ、PaBに入会したばかりで人間関係が固まりきっていない今だからこそ、引っかき回せる面白さが伊織の周囲にはまだあると思う。
彼が気兼ねなく暴れられる時間を少しでも多く守ってあげられたなら満足だ。
キーキャラクター
伊織
愉快な後輩。いつも予想の斜め上をゆくトラブルばかり起こしている。本人は無自覚だが、最近は彼中心に恋の嵐も吹き荒れているようだ。
奈々華,時田,寿
長いつきあいの仲間たち。ちなみに梓は奈々華を性的な目で見ているし、時田に惚れてもいる。ただ、奈々華はそういう目で見られるのが苦手だし、時田にはカノジョができてしまった。今さらこの心地良い関係を崩してまで距離を詰めたいとは、梓も思わない。
ピックアップ
「きっとこの2人は本音を口にしない。だから2人を泥酔させて本音を引き出す!」
2人についての理解自体は完璧に合っているから困る。
ケバメイク

ケバ子特有の武装。
もともとは大学デビューのため、雑誌の見よう見まねで化粧を練習したらこんな惨状になったという逸品。幼稚園児か。以前所属していたテニスサークルでは誰もおかしいと教えてくれず、裏でこっそり笑われていた。
トラウマになっていそうなものなのだが、本人は開き直って別キャラとして心の整理をつけているのか、テンションをぶち上げたいとき今でもときどきこのモードに入る。
“水”

アルコール度数96%の某スピリタスのこと。(気化したアルコールの粘膜刺激が気にならなければ)無味無臭。
ちなみに迂闊に火を近づけると、状況によっては気化したアルコールが爆発したり、可燃性気体が延々供給されつづけるせいで無限に燃えつづけたりして危険だから、絶対にマネをしてはいけない。
飲んだふりして自分の体にかけても、ものすごい勢いで皮脂が分解されるうえ、皮膚常在菌も根こそぎ死滅して大惨事になるからこれも絶対にマネをしてはいけない。
そもそも人間の(というか生物の)身体はこれをストレートで飲むことに耐えられる構造をしていない。本来この某ウォッカは果実酒を漬けるための素材である。
おっぱい

ケバ子最大のコンプレックス。
ケバ子が貧乳判定なのはまあわかるが、ときたま千紗も小さい側として語られることがある。解せぬ。絵面からすると充分大きいほうのはずなのだが、周りに奈々華と梓がいるせいで感覚がマヒしているのだろう。
だからケバ子からの評価も時と場合によって“ご同輩”と“嫉妬対象”を行ったり来たりする。
両刀

梓はソッチ方面に関しては大らかで、男女ともイケるクチ。奈々華を狙っているし、以前は伊織を誘ったこともあった。
ただ、(下着姿でうろつく割に)ちゃんと後先考えて自重する性格でもあるので、奈々華に欲情してしまいそうな場面ではわざと間に伊織や千紗を挟んで自分自身を牽制するなどしている。
私は原作既読のアニメを観たいと思うこと自体めったにないんですが、たまに観ると最近のこの手のアニメすごいですよね。
今話なんて全てのセリフが(一部の書き文字が省略されただけで)原作どおりなんですもん。画面すらキャラクターの向きが一部違っているだけで基本的に原作に忠実ですし。(それすらマンガはコマ割りと視線を合わせようとする一方、アニメは視点の連続性を守ろうとするからこうなるという、メディアの違いによる必然でしかない)
私だけなのかな
「だって、いとこだと思って安心してたのに、2人に血のつながりがなかったなんて・・・。もしかしたらもう子どもができてるかも!?」

安心してたっけ・・・?
実際のところ、血がつながっているかどうかって性的対象と見なす一線になりうるものなんですかね? いやまあ、生物学的にはマズいってことは知識として知ってますけど。
それ言うほど人間の行動原理になるもの? 90年代のソフ倫じゃあるまいし。私の感覚だとそういうのより、家族としての情の影響のほうがずっと大きい気がするんですが。
「栞ちゃんは実の妹だって知ってるでしょ!?」
「だからこそ燃えあがる可能性も」
「ないから! そんなの普通の人なら!」
そういえば耕平ってデカい箱のエロゲを大量に持っているくせに、そこのタブー感はないんですよね。ちゃんと自分の世代のエロゲ中心に嗜んで、古いゲームにはあまり接してこなかったということでしょうか。(マジメに考察するなら今の【20歳以上の成人】だとそもそも同人エロゲ世代だと思いますが)
どうでもいい話はさておき。
ケバ子がPaBの流儀に染まったこのあたりから、バカ騒ぎの主体が時田,寿,梓その他の3年生組から伊織,耕平,ケバ子,千紗の1年生組へシフトしていきます。
最初は先輩たちの異常性に振りまわされぎみだった伊織たちが、自分たちのキャラの濃さを前面に出すことを躊躇しなくなってきます。
PaBのメンバーがみんな大らかでどんな話題にも親身に付きあってくれるって、前期の沖縄編で理解できたことが大きいんでしょうね。
今話のケバ子を暴走させた「血のつながりがない問題」なんて、本気で気になっていたのケバ子ただひとりでしたし。(時田と寿はピンと来ていない顔、耕平は単純に友達付きあいがいいだけ、梓については後述) それなのに全員ケバ子の策略に協力してくれるっていう。
ただ、この人たちは本当に人がいいだけなんです。
「あの2人、本音がよくわからないっていうか」
「何かを隠しているようには思えんが」
「それはきっと巧妙に隠しているからで!」
「ふむ・・・」

本質的には伊織たちと同じ。
ケバ子にとって伊織はちょっとした恩人であり、片想い中の相手です。
千紗はPaBでは貴重な常識人仲間であり、大切な友達。
だけどこの2人、恋愛面ではケバ子と価値観を共有しがたい一面も持ち合わせています。
伊織も千紗も普段はどう見てもお互いを尊重していない、恋愛なんてもってのほかみたいな態度をしているのに、たとえば食事の支度など何気ないシーンでは妙に息ぴったり。本当はこっそり付きあっているんじゃないか?と考えたほうが納得できそうなくらいです。
それでいて同時に、ケバ子は2人の人柄もよく知っています。伊織も千紗も裏表のないまっすぐな人で、隠しごとは得意じゃないタイプ。
それがわかっているからこそ、ときどきわからなくなるんです。
どう見てもお似合いの2人。だけど付きあっていないのも確か。
それってつまり。ケバ子が当たり前だと思っている(テレビドラマとかでよく見る普通の)恋愛観を、2人は当たり前だと思っていないんじゃないか?
その部分がPaBのみんなも同じなんです。

みんな人がいいから伊織の本音を聞き出そうとする策略にノってくれる。
だけど自分以外はみんな、別に伊織と千紗のことを疑っているわけじゃない。あくまで(飲み会ついでに)手伝ってくれているだけ。
もちろんありがたいとは思っています。とても居心地がよくて、多少はっちゃけてみても絶対に受け入れてもらえる安心感があります。みんなのことを信じています。でも。
それってつまり。ケバ子が当たり前だと思っている(テレビドラマとかでよく見る普通の)恋愛観を、みんなは当たり前だと思っていないんじゃないか?
「・・・私だけなのかな。あのサークルでそんなことばっかり考えてるの」
どうしようもなく。疎外感を感じてしまうんです。
風邪をひいて心が弱ってしまったときなんか、特に余計に。
動けるうちに動けってこと
「ははは。さてはお前国語が苦手だろ! だって、『やりたい』か『やりたくない』に、『できる』『できない』で答えるなんて」
「最初から自分ができるものだけ選んでいたら何も始まらない。大事なのは、お前が興味を抱いているかどうかだろ」(『ぐらんぶる』第1話)
これは天然でクサいセリフが言える寿ならではの言いまわしですが、理念としてはPaB一同で共有している価値観です。
「あのね、愛菜。愛菜が私らに敬語を使ってるのはどうして?」
「え。それは先輩だから当然のことで――」
「うんうん。愛菜にとって先輩に敬意を示すのは当然のことなんだね。だったらさ、尊敬される先輩が寛容なのも、当然だと思わない?」(『ぐらんぶる』第10話)
こと恋愛観に関してはなかなかケバ子と価値観を共有できないPaBの面々ですが、それでも彼女が考えたバカげた(彼女にとっては切実な)策略にノってくれたのは、先輩として努めて寛容であろうとしてくれるからです。
かわいい後輩たちが「やりたい」と思うことを「できる」に変えてあげたいと思っているからです。
それは、ケバ子にとってとてもありがたいことであると同時に、今回のような場面では心のどこかに疎外感を感じさせてしまう要因でもありました。
ただ、梓だけそのあたりの事情が少し異なります。
「迷惑だった?」
「いえ。助かりました」
「なんのなんの。異性関連だけは他のみんなには任せられないからね」

梓はPaBでは貴重な、恋愛の機微がわかる人間です。
時田や寿が事情にピンとこないなりにケバ子を手伝っていた一方で、梓はちゃんと理解したうえでニヤニヤしながら彼女をフォローしていました。
そもそもケバ子がPaBに入会したいと相談してきた時点で、すでに彼女の目当てが伊織(と耕平)だということを把握していましたしね。
しかもケバ子の気持ちを把握したうえで、合流直前に伊織に千紗のカレシのふりを継続する約束を取りつけるという立ち回りまでしていました。千紗の乙女心に気を配ってのことです。
もっとも、半分くらいは見ていて面白くなるよう引っかきまわしたいって気持ちもあるのでしょうが。
なにせ伊織の奇行の数々をさんざ見ておいて、少し誘導してあげるだけで伊織主体でも奈々華の誤解を解けるって見抜いた人です。頼もしすぎる。
「で、実際千紗ちゃんとはどうなんだ?」
「うーん。うまく表現できませんが――、“同い年の仲間”って感じなんですよね。だからあまりピンとこないっていうか」
「ほう。そうなのか。じゃあ梓や奈々華さんは違うのか?」
「いや、当然仲間ではありますよ。ただあの2人はそのなかでも“年上のお姉さん”枠でして。だから俺は正直、同じいとこでも奈々華さんはエロい目で見てますね」

渦中の伊織のほうはといえば、わかっているんだかわかっていないんだか。
意識的に一線を引こうとしているんだろうなってのは伝わってくるんですけどね。念頭に置いているのが千紗なのかケバ子なのかがはっきりしないだけで。
「そりゃ奈々華さんは異性として魅力的ですけど、俺は実の姉みたいに思ってるんで。なのでそういうふうには手は出せません!」
梓が伊織の本音を的確に掘り当てることができたのも、伊織のそういう考えを見通しているからって部分もあるんでしょうね。
恋愛と性欲を切り分けようとする人ってだいたいこのパターン。性欲が恋愛面での欲求不満を発散するための代償になっているというか。性欲のほうには最初から本気でのめりこむつもりがないので、いざそういうチャンスが来てもある程度自制が効く。自制が効いてほしいと誰よりまず本人が願う。変に配慮しなくていいぶんナマより写真のほうが嬉しいまであるというか。有り体に言って童貞らしい考えかたですよね、こういうの。“操を立てる”っていうんですか?(さすがにちょっと違うか)
・・・って、そっか。その観点でいうと梓と伊織の恋愛観って案外似ているのか。
奈々華相手にはすぐエロいことしようとする割に、恋愛的に本気度高そうな時田にはしっかり一線を引いているところとか。
前期第11話の感想文で書いた梓の貞操観念についての評、今思うと半分くらい見当違いだったかもしれません。
「完成しちゃった関係だとなかなか動きだせなくなっちゃうからさ」

ぽつりと。梓の口から苦みを帯びた言葉がこぼれます。
ちょっとした後悔。でもうっかり漏れ出ちゃったわけじゃなくて、たぶん、この日伊織に一番聞かせてあげたかった言葉なんだと思います。
「要は動けるうちに動けってことさ、若人よ!」
梓と伊織の恋愛に対する姿勢は案外似ていて、だからこそ、できれば同じ轍は踏ませたくない。もし本人が「やりたい」と思うのなら、「できる」ように背中を押してあげたい。

「あの4人もいろいろあって今の関係に落ち着いたってことか――」
伊織はプリキュアです。(※ 急に何だ)
ここでいうプリキュアとは、何気ないいつもの日常を守るヒーローのこと。
「日常を守る」だなんて小さな願いを叶えるために、必要とあらば奇跡すら起こしてみせるほどの神剣な思いを抱いている人たち。
事と次第によっては、それが実は薄氷の上に成り立っている貴重な瞬間である場合もあるからこそ。
居心地のいい今の関係を壊してしまうくらいなら、自分の恋心にはフタをしたって構わないという人もいます。
その気高い思いを知ったうえで、それでもどうか、自分の願いを叶えてほしいと祈る人もいます。
伊織はそういう人で、梓はそういう人です。
「・・・私だけなのかな。あのサークルでそんなことばっかり考えてるの」
だから、案外。
そんなことを考えているのって、実はケバ子だけとは限らないわけですよ。
今話の物語は最後、ケバ子の疎外感がこもったつぶやきと、ほんのりビターな会話を交わしたあとの飲んだくれどもを重ねて幕を綴じます。


この終わりかた、原作で読んだときから好きだったんですよね。

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