
寸田先輩、カッコよかったですよ!

「まわれ! 寸田先輩!」
大きな出来事
メインキャラクター:寸田先輩
目標
祖父は若いころ世界中を旅して、回転舞踊で世界を救ってきたのだという。
敬愛する祖父にあやかるため、まずはダンシングスターカップで優勝する。
課題
今年はダンシングスターカップ中学生部門の最後のチャンス。必死にスピン練習に打ちこんでいるものの、何か手応えを掴む前に、周りに迷惑をかけてしまっているようだ。このままではよくないと自分でもわかっているが、だからといってどうしたらいいのかわからない。
解決
こころの助言によって、自分がダンスのなかでスピンに固執する理由が整理できた。
祖父は回転することで自分の周り全方位に笑顔を見せられるから、より多くの人と共鳴できるのだと言っていた。
自分も祖父のように多くの人を笑顔にし、ひいては世界を救える人になりたい。だからスピンするのだ。
結局優勝は逃してしまったが、こころが言うには自分がどれだけダンスが好きなのか伝わってくる、心キュンキュンするパフォーマンスだったという。その言葉に救われた。
バトル
寸田先輩を素体としたキャップ型ダークランダー。
苦戦
スピンしはじめると手がつけられず、しかも練習しつづけた成果か寸田先輩の弱点だった足元の不安定さすら克服していた。
勝利
大会の邪魔をされたくないダンシングスタープリキュアが参戦し、ダークランダーをダウンしてくれた。
ピックアップ
回転舞踊

寸田家に代々伝わる踊りなのか祖父が見出した奥義なのかはっきりしろ。
ちなみに寸田先輩をよく見ればわかるとおり、スピンダンスは客席がある一方向にできるだけ顔の向きを固定するようにして回転するため、いうほど東西南北全てに笑顔を向けているわけではない。
もうひとつちなみに、「dance」の日本語における一般的な訳語は「舞踊(ぶよう)」であって「舞踏(ぶとう)」ではないことに注意。
なぜか「dance party」だけ「舞踏会(ぶとうかい)」と翻訳されるせいで混乱が生じているが、日本国内で舞踏というと、普通は暗黒舞踏という、ダンスと聞いて想像する一般的な踊りとはかけ離れたコンテンポラリーダンスのことを指すので混同してはいけない。
Dancing Star プリキュア

男性俳優だけで演じられるミュージカル舞台劇シリーズ。
赤が「キュアトップぅ!」など語尾を伸ばし気味なのも、緑がビジュアルの割にやたらトゲトゲしい物言いなのも、妖精が愛嬌ありすぎて逆に怪しく見えるのも、全て原作どおり。
テレビシリーズでは主人公からポーズを取るのが普通なところ、こちらは主人公が最後になるという珍しい構成となっている。
5人それぞれスポットライトの範囲内でポーズを取らなければならない舞台劇特有の制約上、口上を述べるとき全員その場から一歩も動かずにポーズを取っていることにも注目。テレビシリーズの感覚だとちょっと不思議に感じるよね、あの下半身の動きの小ささ。
ちなみにダークランダーをダウンさせたあの5人技は「プリキュア・コズミックスタービート」という名称。本来はキミとアイドルプリキュア同様、ダンスパフォーマンスから流れるように発動する。
まだ2万回しか回ってない
「世界を救うため? どういうことですか」
「中学を卒業する前にどうしてもダンシングスターカップで優勝したいんだ。スタイルにこだわらず、見ている人にどれだけ感動を与え、笑顔にできるかを競う大会で、中学生部門は今年がラストチャンスなんだ」
「先輩、3年生ですもんね」
「てなわけで、俺はトレーニングに戻るよ。まだ2万回しか回ってないしね」
この世界は質問に答えない人が多すぎる。

結局ろくに説明してくれなかったので事情はよくわかりませんが、寸田先輩は必死でした。
とにかく必死だということだけはこのうえなく伝わってきます。
こころも人並み以上の努力家です。夢中になったことのためなら何時間、何日、何年だって打ち込み続けても飽きることがありませんし、ときには徹夜だって平気、へっちゃらです。
かつて、お父さんにダンスを褒められたことがありました。
それ以来ずっとダンスに夢中で、お父さんが死んだあとも何年も続けていたら、中学校でダンス部にスカウトされるほどの腕前になっていました。
一方で、プリキュアにスカウトされたこともありました。
入学したての中学1年生でキュアアイドル研究会を立ち上げ、毎日遅くまでグッズを手づくりしたり会員たちと熱く語りあったりしているうち、同じく大のアイドルプリキュアファンであるプリルンに見初められました。
どちらも、どうしてもやり遂げたい目標があったわけではありません。ただ好きだっただけ。ただ夢中だっただけ。好きなことのためにひたすら一生懸命でいるのが、とにかく楽しかったんです。
こころは努力することが好きです。
好きなもののために夢中になってのめり込むことが何より大好きです。
だから。
「寸田先輩、止まってください!」

これは違う。
好きなもののために一生懸命になるのはいいことです。
なかなかうまくいかなくて、もどかしくて、それでもできるようになりたくて真剣に努力しつづけることはいいことだと思います。
だけど、寸田先輩が今やっていることはそういうのじゃない気がしたんです。
「そんな、頼むよ! 時雨さんのダンス、小学生のころから見てるけど、本当にすごいと思ってる! 一緒に大会目指そうよ」
「ありがとうございます。私、入学する前はダンス部に入ろうと思ってたんですけど、今は他のことに心キュンキュンしてます。キュアアイドルとキュアウインクです! だから、ごめんなさい」(第6話)
寸田先輩はいい人です。こころがダンス部に入ることを熱望してくれていたのに、本人にもっと夢中になっているものがあるとわかったら、さっぱりと諦めてくれました。むしろ、こころがそれほど夢中になるものとはどんなものだろうと、アイドルプリキュアのライブを見学しようとすらしてくれました。
この人は「好き」という心のエネルギーがどんなに尊いものか、よくわかっている人です。
なのに。
「駄目だ! 明日が本番なのに何かが足りない。これじゃダンシングスターには届かない!」
今日の寸田先輩は、スピンしながらずっと苦しそうにしていました。

心キュンキュン
「寸田先輩。私とダンスバトルしませんか?」
「時雨さん。どうして?」
「私は寸田先輩の誘いを断ってアイドルプリキュア研究会を立ちあげました。だからわかるんです。アイドルプリキュアにあって、今の寸田先輩にないものが。それを伝えたいんです」
夢中になれるものに打ちこんでいる時間が、必ずしもいつも楽しいばかりじゃないってこと、こころにもわかります。
「気づくと集中しちゃってます。踊るのはやっぱり楽しくて、イヤなこととか忘れられるんです。今も、昔も」(第7話)
お父さんが死んだときの悲しみはダンスが忘れさせてくれました。
アイドルプリキュアが思っていたのと違っていて、怪物と戦ったり、怖い思いをしなきゃいけないんだって知ったときも、無心になって踊っていました。
ダンスはどんなときでも楽しいものでした。
「おかしい・・・。踊っても、踊っても、踊っても・・・! 頭から離れない。ふたりのことが」(第7話)

いいえ。夢中になれることと楽しいことって、本当はちょっと違います。
大好きなもののためならいくらだって努力できちゃいます。すごく楽しいから。
でも。大好きなもののためじゃない瞬間であっても、案外、努力ってできちゃうものなんです。たとえ楽しくなくたって。
「ダンスは世界を救うんですよね?」
「ああ。その通りだ」
「そのために大事なことは何ですか?」
「それはスピン! もっと早く、もっと回る!」
「違います! スピンの先に何があるんですか? 何のためにスピンするんですか!?」

アイドルプリキュアの現実を知って、失望して、その悲しみをダンスで押し流そうと思ったとき。・・・不思議と楽しくありませんでした。
見ていた寸田先輩が褒めてくれるくらい集中できて、これならもう一度ダンスに打ちこんでみてもいいかもしれないと思ったくらいなのに、心はずっと空っぽのままでした。
今の寸田先輩とは少し事情が違います。あのときのこころと違って、寸田先輩には大会で優勝したいという目標があります。
だけど似たようなものでした。あのときのこころはダンス部に入ったあと何をしたいとかって目標は特になくて、そして今の寸田先輩も、大会で優勝したあとどうしたいかって夢を見失っているんです。
「あの言葉で自分の気持ちがはっきりしたんです。ずっと2人のことを考えちゃうのも、つい踊っちゃうのも。そう。私が心キュンキュンしてるのは、2人みたいになりたいから・・・! 同じステージに立ちたいからなんだって! こんな気持ち、生まれて初めて!」(第6話)
「うた先輩、なな先輩。先輩たちを追いかけるっていっても、私はもうただのファンじゃありません。プリキュアになったからには、どこまでも追いかけて、追いかけつづけて、いつかは追い抜きます! 先輩たちの背中を!」(第7話)
それが、アイドルプリキュアにはありました。今ももちろん変わらずにあります。
かわいいな。カッコいいな。
いつか自分もあんなふうになりたいなと心キュンキュンせずにはいられない、体ごと自分を突き動かす憧れが。
大好きなもののためじゃなくても、案外、努力ってできちゃうものです。楽しくなくたって。
でも、そういう努力ってやっぱり、楽しんで、がんばりたくてがんばりたくてやっている努力とは、どこか違う。

ダンスは世界を救う
「回れば世界中どこの国でも、どんな時でも笑顔になれて、誰とでも友になれた! 種族の壁すら乗り越えた! ダンスは世界を救う」
「いい笑顔じゃ。お前が回ることによって、周りの人みんながお前の笑顔を見ることができる。東西南北全てに笑顔を向ければ、その力は何十倍にもなる! そしてお前の笑顔で周りの人々の笑顔もなり、心が通いあう――」
寸田先輩のお爺さんは、率直に言ってだいぶ変な人でした。極みに極まったダンス信奉者でした。
彼は言います。ダンスを踊れば笑顔になれる。自分だけでなく、周りの人たちも一緒に。それこそがダンス。ダンスは世界を救う。
彼の武勇伝がどこまで本当なのかはさっぱりわかりませんが、ともかく、寸田先輩はそんな彼が語る夢物語に強く憧れを抱きました。
ダンスだ。ダンスを踊ればみんなが笑顔。みんな笑ってくれるんだから世界は救われるのだ。

とてもプリキュア的な考えでした。
それはちょうど、こころが「怪物と戦う」アイドルプリキュアに失望した最大の理由であり、また、「キラキラしたアイドル」としてのアイドルプリキュアに憧れた最大の理由でもありました。
歌って踊っているときのアイドルプリキュアはすごく楽しそうで、だから見ているこっちもすごく楽しくなってきて。
だけど戦っているときのアイドルプリキュアはすごく大変そうで、自分にはとてもあんなことできる気がしなくて――。
楽しむことです。
アイドルプリキュアにあって、今の寸田先輩に欠けていると思った、こころなりの答え。
一生懸命真剣にがんばるのはいいんですけど、その努力は何よりまず「自分が楽しむため」であるべきだという視点が彼には欠けていました。
ちなみに今話のゲスト『Dancing Star プリキュア』も概ねそういう感じのストーリーなので、興味があれば観てみてください。
5人それぞれやりたいダンスのジャンルも違えば価値観もまるで違う。全編めちゃくちゃギスりあって衝突して、小さなことにいちいちこだわって、それでもお互いのやりたいことを認めあおうとする。ダンスや、他にも様々なことを楽しもうってみんなの気持ちを、力を合わせて守ろうとする。そういう物語です。
戦闘シーンだけパッと現れてサッと去っていく感じの出番でしたが、実はストーリー自体もちゃんとリンクしています。
「俺、今日はスピンが本当に楽しくて、その気持ちは確かにみんなに伝えることができたって思えたんだ。――だから、優勝できなくて悔しいよ。ごめんな。みんなあんなに力を貸してくれたのに」

ダンスで世界を救ったお爺さんに憧れ、同じ道を歩もうとした寸田先輩は、しかし大会で思ったような支持を得られず、悔し涙を流しました。
話に聞く若かりしころのお爺さんなら、ひとたび踊ればみんなを笑顔にできたわけですから、当然満場一致の支持を得られたことでしょう。完全に力不足です。みんなを笑顔にしてあげられませんでした。
けれど。
「私は寸田先輩のダンスを見て、寸田先輩がどれだけダンスが好きなのか、どれだけダンスが楽しいのかが伝わってきたから、心キュンキュンしたんです。これですよね、寸田先輩。ダンスは世界を救う! 寸田先輩、カッコよかったですよ!」

こころはそんな寸田先輩を讃えます。
心キュンキュンしたと、最大限の敬意を捧げます。
だって、寸田先輩のお爺さんが成したという、世界を救うプロセスは2段階で構成されていました。
1つ。まずは自分が回転舞踊を楽しんで、笑顔になること。
2つ。その笑顔を回転しながら周りのみんなに見せて、共鳴すること。
ファンを笑顔にし、ファンの応援で自分も笑顔になるという、アイドルプリキュアの活動によく似た協同の精神。
寸田先輩はまず、その第1段階を達成できたのです。

こころ自身もまた、道半ばの身。プリキュアになったからには先輩のうたたちも追い抜いて、自分が理想とする最高のアイドルの道を極めたいと思っていますが、未だゴールは見えていません。
思いがけず、身近にまたひとり「カッコいい」ライバルが見つかりました。



コメント
元々日本舞踊か何かやってたのを、円さんが魔改造したとかなんですかね……?
冒頭、破壊されたベンチが次のカットでも破片になってるのがツボすぎて大笑いしましたw
生身でそんなパワーがあるなら、そりゃダークランダーは凄まじい強敵でしょう。
ダンシングスタープリキュアが来てくれて本当によかったです。
向こうは向こうで、敵の構成員に何メートルもありそうな怪物がいない以上、真上から決め技だけやってくのはある意味原作通りってところでしょうか。
もうちょっと見たかったなーと思いますが、この度YouTube公式チャンネルでたくさん動画出してくれただけ良しとします。
あっちは敵幹部狙い撃ちで毎公演撃破しているようなものですしねえ。しかも黄色と緑は物語開始前からプリキュアやってた猛者ですし。そりゃ強い。
でも日本舞踊に回転は・・・、ああいや。
年齢を考えるとお爺さんが留学したのって昭和末~平成初期くらいなんですよね。そう考えると5代とか6代とか西洋舞踊をやっていても全然おかしくないのか。