名探偵プリキュア! 第8話感想 後ろがダメなら裏をつく。

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夢中になれるかわいいものがいっぱい!っていう意味だよ。

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「プリティホリックでプリティスマイル!」

大きな出来事

メインキャラクター:ジェット先輩

目標

 どうして発明品がかわいいと喜ばれるのか理解する。

課題

 発明品のかわいさを絶賛するあんなたちの提案で、キュアット探偵事務所にプリティホリックを併設することになった。その準備中、シニアン先生から譲られたゴーグルをファントムに盗まれてしまった。

結末

【達成】

 ジェット先輩が発明品のかわいさにこだわるのは、「使う人を笑顔にすることも大切」という先生の教えによるものだ。愛着を持てる道具という意味で、先生のゴーグルを大切にする思いとよく似た概念だといえる。
 ジェット先輩のつくるかわいいものが好きで、なおかつジェット先輩の個人的な想い出も尊重するあんなたちによってゴーグルは奪還。無事プリティホリック開店に漕ぎつけた。

心の変化

【ポジティブ】

 自分の発明品は探偵業務のためにある、というのがジェット先輩の当初の認識。プリティホリック開店の意義には懐疑的だった。
 しかし、プリティホリック店内で嬉しそうにコスメを選ぶお客さんたちを見て、自分が今まさに先生から習ったものづくり精神を実践できている、という確かな喜びを感じた。

バトル

 ゴーグルを素体としたハンニンダー。

苦戦

 全周囲どの方位からの攻撃にも反応できる迎撃能力が脅威。

勝利

 あえてあんなが正面から攻撃を仕掛けて注意を引きつけ、ハンニンダーの注意がそちらに向いている隙を突いてみくるが背後から相手の視界を奪った。

ピックアップ

プリプリ! プリティスマイル!

 1個1個おまじないをかけないといけないのか……。せっかく素体の製造ラインは自動化できているのに、お疲れ様です。

階段に置き捨てられた花

 証言のイメージ映像では花屋(ニジー)が外階段を通っているのに対し、実際には内階段の踊り場に花が残置されている。この階段はあんなたちのいる応接間の真正面にあり、向かって左側から昇降する位置関係。
 ところが花屋は家具屋とともに、応接間の右側(過去話の描写と合わせて考えると玄関がある方向)から入ってきている。おそらく、実際には内階段から応接間の様子をうかがっていて、ゴーグルがジェット先輩の手から離れたのを見てすかさず盗みに入ったのだろう。そのまままっすぐ玄関の外へ脱出しようとしたところ、外階段を降りてきた家具屋とうっかり鉢合わせてしまったため、やむをえず一緒に戻ってきたというストーリーだろうか。
 今回プリキュアと交戦しないというのがウソノワール様からのオーダーだったのもあって、ギリギリまで穏便に済ませようとしたのかもしれない。

 ・・・いや、一般人のひとりやふたりくらい振りきって逃げなさいよ!
 室内に3人もいる状況下で盗み出すクソ度胸があるのにどうしてそこだけヘタレるんだ、ニジー!

 ちなみに花はプリムラか何かっぽいが、地味に特定困難なので花言葉は割愛。

ニチニチソウ

 オープンしたプリティホリックに飾られている花はニチニチソウ。たくさんの花がぎゅっと集まって咲く賑やかさに由来して、花言葉は「楽しい想い出」。白い花の場合は「生涯の友情」とされることもある。
 いかにも意味ありげにフォーカスされているだけあって、今話のジェット先輩の心情に完璧に寄り添った花言葉だといえる。

想い出 vs かわいい vs 機能性という名のダークライ

 「たかが古いゴーグル1つに大げさだな。世のなかには物があふれてる。代わりのゴーグルを買えばいいだろう」
 「代わりなんてない! それはただのゴーグルじゃない。ジェット先輩にとって、世界にひとつしかない大切なものだよ!」
 「みんなの笑顔を生み出す、宝物なんだから!」

 今話の核心はここです。
 物に対する愛着の話。それを2つの観点から語っています。

 1つ目はわかりやすいですね。あんなが言っているほう。
 ジェット先輩がゴーグルを大切にしているのは、それが先生からのプレゼントだったからです。
 ジェット先輩の先生に対する思いは回想としてしっかり描かれているので、ここに引っかかりを覚える人はあんまりいないと思います。

 2つ目、みくるのセリフのほうも、何を訴えているのかははっきりしています。
 元々は実用性一辺倒だったジェット先輩がかわいさにもこだわるようになったのは、先生の教えによるものです。
 その象徴として今でも先生のゴーグルを大切にしているというのは、ありきたりながら物語として強い説得力がありますね。

 問題は、どうしてこの2つを並列してきたのか。
 微妙に噛み合わないと思いませんか? 一方は何の変哲もない普通の道具を、個人的な思い入れから大切にしている話。もう一方は誰かに気に入ってもらえるよう、最初からデザインを工夫して道具をつくる話。
 “物に対する愛着”という観点だけ見たらたしかに共通しているかもしれません。けれど、その愛着がどこから来ているのか、どうして愛着を持つようになるのかのルーツがほとんど正反対です。その違和感がなんともキモチワルイ。

 実際、ジェット先輩は当初この2つを結びつけて考えていなかったんですよね。

 「ジェット先輩がつくったプリキットを、何かかわいいグッズにして、お店をやったらいいと思うんだ!」
 「それいい! 2階の空いてる部屋をお店にしたらどう?」
 「私たちも手伝うし、どうかな」
 「うーん、でもな・・・。発明品は探偵業務のためにつくってるんだよな」

 ジェット先輩は先生の教えを守って、発明品をつくるときは毎回かわいく仕上げることを心がけていました。そうしたほうが使う人に喜ばれるから。

 先生のつくる発明品はたくさんの人に愛されていました。
 質実剛健、機能性偏重のジェット先輩の発明品も高く評価されてはいましたが、それでも先生のものに及ぶことはありませんでした。実用上は何のメリットもない、たかがデザインの違い、その一点のせいで正当に評価されないもどかしさ。
 その差を埋めるため、ジェット先輩は先生がつくる発明品のかわいさを学びました。

 ジェット先輩にとって、発明品のかわいさとはそのためにあるものでした。
 とにかく自分の道具の機能性に見合う正当な評価を受けたい。機能性を褒められたい。

 だから、せっかくかわいいものをつくれるデザインセンスを持っていても、それを広くたくさんの人に使ってもらおうという発想にはなりません。
 ジェット先輩の発明品はあくまで機能的な道具。その機能性を必要とする人に喜んでもらえさえしたら、それで充分。
 かわいくなかったらそもそも評価を受ける対象にすらなりえないこともある。だからかわいくする。それだけ。

 「そのゴーグル、何か特別な力があるの?
 「ゴーグルに力はない。これを着けるのは、おまじないみたいなものだ」

 そんなジェット先輩だって、物の価値は実用性ばかりではないことくらい理解しています。
 なにせジェット先輩自身、機能面だけ見たらそこまで執着する意味のないゴーグルを大切に愛用していますしね。

 でも、結びつけられないんです。
 気付けないんです。

 それはそれ、これはこれと、切り分けちゃっているから。

 かわいいというだけでみんなが高く評価する不思議と、自分自身が実用性の低い道具を愛用している不思議。
 それらを成り立たせている思いがどちらも“愛着”であるというシンプルな事実に、ジェット先輩は気付けません。

自分以外には無価値な宝物

 「前後左右、どこから近づいてもロックオンされる。君たちに勝ち目はないよ!」

 「ジ・エンド」
 「――そっちがね!」

 360度全方位への備えが万全なハンニンダー。
 一見して隙のない強敵。ところが、今回プリキュアはこの守りが万全に見える敵を、意表を突くという作戦で撃破しています。

 前から攻撃しても後ろから攻撃しても、どこから攻撃しても反撃されてしまうはずの相手。
 ところが、そんな相手であっても、実際には裏をかく余地がまだ残されていたのです。

 前にばかり注目していると、本来なら見えていたはずの後ろがいつの間にか見えなくなってしまう。

 「犯人? 僕が? 何のことです?」
 「とぼけてもムダだよ」
 「『ポーチがしゃべった!?』ってみんなが驚いてたのに、あなただけが驚かなかった」
 「私たち以外でポチタンのことを知っているのは、怪盗団ファントムだけ!」

 そんなのありかよって(私は)ずっこけた、今話の推理要素。

 ニジーの犯行は完璧でした。
 事件発生当時の証言に不審な点はなく、証拠も、手がかりも、ひとつも見つかっていません。どうやって盗んだのかすらプリキュアはろくに推理できませんでした。(じっくり捜査する時間があったらまた違ったんでしょうけどね。家具屋のお姉さんにどこで合流したか聞けばたぶんボロが出る)

 変装がバレてしまった原因は事件と全然関係ない部分でした。
 たとえ360度万全な犯人だったとしても、別に裏をかく余地がないわけじゃない。
 ニジーさんってばうっかりさんだなあ、もう。

 今話はそういう物語。

 「そのころの僕は、発明で一番大事なのは機能で、見た目は関係ないって思ってた。でも――。いつも一番人気だったのは、僕らの先生、シニアンの発明品だった」

 「プリプリ! プリティスマイル! ――それを使うみんなが笑顔になれますようにっておまじない。発明品は暮らしや仕事を便利にする。でも、心を豊かにすることも忘れてはいけないよ。笑顔をつくるドキドキ、ワクワクも大事」

 機能性が一番大事だと信じるジェット先輩は、どうしてみんながかわいさ(機能性以外の評価軸)を持て囃すのか理解できていませんでした。
 かわいさを一生懸命勉強して、それなりに極めることはできました。けれど、彼のつくる発明品はあくまで実用品。必要があって使われる機能的な道具。
 実用的には何の意味もなくても、ただかわいいというだけでテンションが上がる。そんな、かわいさを前面に押し出したアイテムなんて、これまで考えたこともありませんでした。

 自分自身は機能性なんて全然ない古びたゴーグルを愛用しているくせに。

 どうしてそんなゴーグルを大事にしているの?
 それは、ステキな想い出が詰まっているから。身につけることでおまじないになるから。
 機能性なんて全然ない。だけど、なんとなく、何かしらの大事な機能がある気がする。
 その機能は自分以外にはもたらされない。自分以外にとってはただの古いゴーグル。理解しようとしない人は、きっとこのゴーグルが持つ価値をとことんまで理解しない。
 自分以外にはもしかすると無価値な、大切な大切な宝物。

 「ポチタン、はなまるかわいい!」
 「かわいい・・・! 100点満点!」
 「・・・お前たち、いつもよりテンション高いな」
 「だってかわいいんだもん!」

 自分以外にはもしかすると無価値な、大切な大切な宝物。

 一方は何の変哲もない普通の道具を、個人的な思い入れから大切にしている話。もう一方は誰かに気に入ってもらえるよう、最初からデザインを工夫して道具をつくる話。
 どちらにせよ、それらの道具は誰かにとって、世界にひとつしかない大切なものになりうるでしょう。
 世間ではそれを“愛着”と呼びます。
 “愛着”という言葉の下、想い出の詰まったゆかりある品だろうが、なんとなく長年一緒に連れ添ったファンシーグッズだろうが、その価値は比較できるものではありません。

 頭では当たり前のことだってわかっちゃいるのですが、いざ他人の愛着ある品を目の前にすると忘れてしまいがちな話。ともすれば軽んじてしまいがちな話。
 ちょっと意外なものを並列で並べられて、裏をかかれた思いをして、当たり前のことに改めて気付かされる。

 今話はそういう物語でした。

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    コメント

    1. ピンク より:

      >そんなのありかよ
      私も「そこかーい?!」ってなりましたw
      地味に2〜3話(電波障害、亀の置物を『知らなかったこと』が決め手)とは真逆の糸口で、つくづく推理とは幅広いことを思い知らされます。

      今で言うなら絶対缶バッジやぬいぐるみの物量で重くなるであろう痛バみたいに、時に『可愛い』って機能性を下げたりもしますけど、そんなの押しのけちゃうパワーがあるんですよね。
      さて1月にプリキットグロスを見た瞬間感じた「探偵道具とプリティホリックをどう結びつけるんだ?」という疑問はバッチリ解決されました。お見事。

    2. 東堂伊豆守 より:

      今話の脚本を担当された成田良美さん。さすがはプリキュアシリーズ古参常連脚本家だけあって深みと安定感のある脚本に仕上がっていたと思うんですが……もしかすると成田さん、ミステリー物の執筆は苦手なのかなぁ?と感じてしまったんですよね。今話の謎解きパートがあまりにも雑なので。
      で、「階段に置かれたままの花」という意味ありげな描写が結局その後の展開でろくに拾われなかったのは、脚本で提示されていた謎解きがあまりにショボいことを演出家が問題視して、脚本にはなかった“視聴者向け謎解きヒント”を別途追加した……てな事情があったんではないか?と勘繰ってみたくもなるんですが。
      ともかく、本作「名探偵プリキュア!」の脚本はプリキュアシリーズとミステリー物の両方に造詣が深くないと執筆をこなしきれない難しさがあるわけで……そのことがシリーズ構成・村山功さんの登板話数の多さに繋がっているのかもしれません。

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