ふらいんぐうぃっち第12話 平穏な日々を楽しむ真琴は「日常の魔法」そのもの。

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日常も非日常も、まんなかに真琴がいることには変わりありません。

とりとめのないこと

 道具の手入れ。魔女というお仕事(生き方?)はずいぶんとスローライフなのですね。こんなのんびりと仕事道具の手入れをする職種って今どきあんまりない気がします。常々真琴には神秘性が似合わないと思っているのですが(勘が鈍いし)、こういうのんびりした作業風景を見ると、なるほど、彼女には魔女がよく似合いますね。
 でも包みを開けるまで大事な一張羅の存在を忘れていたのはどうかと思いますよ、真琴さん。

 つんつるてん。中学入学のとき仕立てたというだけあってつくりが簡素ですね。これ前はどこを留めるんでしょうか。
 そしてこういうつんつるてんな衣装というのもフェチいものです。手首とか胸元とか、いざ隠そうとしても隠せないであろう無防備さ、羞恥のストーリー性が良いのです。背中が裂けるとか最高。あと単純に黒のなかに覗く白い開襟シャツと喉元のまぶしさ。

 バリバリしました。チトさん17年も人間と言語コミュニケーションを取っているのに、思考がどこまでも猫ですよね。もう少し年上のケニーさんは仙人みたいにつかみ所のない性格をしているというのに。いいと思います。かわいらしくて。

 絵本作家のアトリエ。ポスターカラーの瓶を見ると『GA 芸術科アートデザインクラス』を思い出します。あれもふらいんぐうぃっちと同じく日常と非日常の境界をふらふらしていた良いアニメでした。こっちはファンタジー、あっちはメルヘン。

 「まっすぐ行って、右に曲がると薬局があるから、その向かいが布屋さん」 や、薬局・・・? あのあたりの薬局ってどこのことでしょう。私も基本方向音痴なのでさっぱりイメージつきません。化粧品屋が2件向かいあってるのなら何故か覚えてる。

 「方向音痴を直すのもひとつの目標なんで」 弘前の町並みは中途半端に古いので、ぱっと目立つランドマークが少ないんですよね。方向音痴には鬼門です。フリーペーパーでいくつかランドマークが紹介されていたことがあったのですが、普段歩いている通りなのに何故か見た記憶がなかったり。・・・私だけか。
 ところでお母さん地図帳まで取り出してどんだけ本気で道を教えようとしたんですか。お気付きのとおり、方向音痴は根本的に地図から距離感や方角を読み取ることができないのですよ。手描きの地図でも使って、道を曲がる目印だけにポイントを絞って教えていただかないと。ちなみに普段地図を使うことを諦めて生活しているので、たまに地図を渡されてもないがしろにしてしまいがちです。

 玄関前。なるほど。この地図だと最初にどっちに曲がったらいいのかわからない。たぶんまず大きな道路に出ろとかそういう感じで説明されたのでしょうが、残念ながらまともな人は方向音痴の気持ちなんてわからないのです。「よくわからないけどとりあえず弘前公園の方向だろ?」 と見当違いな道路に入って、いきなり公園とは真逆の方向に歩きだしたことが何度あったことか。
 というかとりあえず飛んでみるとか悪手中の悪手です、真琴さん。お母さんの道案内は空を飛んでいくことを前提に説明してはいません。そのうえ方向音痴は途中から地図のルートに戻ることもできません。早くも地図がただの紙切れに。ふらいんぐうぃっち史上最高のスリル感。

 ねぷた小屋。劇中ではねぷたの姿がちらっとしか見えませんが、この白いテントはねぷたを組み立てるためのものです。ねぷた制作をする各団体はもちろん普段は別の稼業をしているので、祭が近づいたときだけこうして各々仮設のねぷた小屋を建てるのですね。数週間~数ヶ月かけて絵付けまでやるので、最低限雨や風の影響を受けない屋内スペースが不可欠なのです。
 言うまでもなく仲間内の寄合所としての側面もあるので、たいがいビールがよく冷えています。

 弘前公園。初夏はここまで人通りの多い印象はありませんが、散歩する人や楽器練習する人がそこかしこにいますね。占い屋さんとアイス屋さんもいます。

 赤レンガ倉庫と白い犬の像。いつぞや話題に挙げました、奈良美智さんの個展『A to Z』の会場となった建物ですね。犬の像は『メモリアルドッグ』というそうです。初めて知りました。青森県立美術館にいるのが『あおもり犬』なので、この子のことも弘前犬ってずっと呼んでました。
 ところで『メモリアルドッグ』は今年から屋内展示となったそうです。 真っ白な像が季節の移ろいとともに表情を変え、年月の経過を汚れとして刻み込んでいく、みたいな作品テーマがあった記憶がありますが、よじ登ったりイタズラされたりが後を絶たなかったようで・・・残念なことです。
 ちなみに倉庫の方も立派な建物ですが、今は使われていません。そもそも『A to Z』は廃屋や廃材を多用して、それぞれの個性的な味わいを生かすことをテーマにした個展でした。その価値を評価されず、さりとて解体するコストを賄うこともできずに放置されている古い建物が弘前には数多くあります。喫茶コンクルシオのモデルとなった藤田記念庭園の洋館はむしろ例外。『A to Z』を皮切りに古い廃屋を再評価する流れがわずかに生まれつつありましたが、はてさて。

 配達中のなおさん。見た感じビールケース自転車に固定されていませんが大丈夫ですか? というか器用ですねこの子。

 ニッテング ソーイング いまや。しまやですね。
 地方の個人商店には珍しく、ちゃんとホームページもあるお店です。 是非ストリートビューで探してみてください。そっくりです。

 提灯に土手町と書いてありますが、実際の所在地はお隣の百石町。ただし土手町商店街に含まれていたはず。土手町といえば味噌ラーメンですね。市内唯一(異論あり)の百貨店、中三の地下フードコートにある「中みそ」の味噌ラーメンは昔から地元の方に愛されてきました。元は「チャイナドール」という名前で五所川原市にもあったような。甘ったるい味噌スープと細めのちぢれ麺の上に二郎系の如くたっぷり盛り付けられた炒め野菜が特徴の素朴なラーメンです。フードコートのくせに味噌ラーメン以外食べているお客さんがほとんどいないくらいには名物店なので、弘前観光の際にはぜひお試しください。弘前土産には同百貨店で売っているリンゴの和風グラッセ「薄紅」が素朴に美しくて滋味豊かでオススメ。・・・布屋さんの話どこいった。

 完全な門外漢のくせに興味本位でふらっと布屋さんを覗くことがあるのですが、あの陳列ってなんともいえない魅力がありますよね。同じ色でも素材や織りによって色味も風合いも全然違いますし。何に使うのか一切想像できないような個性的な柄物とかも置いてありますし。ボタンもいい。でっかいロール生地を抱えて「xメートルください」ってやつ一度やってみたいものです。テーブルクロス用にでも。・・・完全にただの冷やかしですね。すみません。

 窓から入る千夏。これだから玄関に鍵をかける意味がないのです。私も昔何度かやりました。倉本家ほど庭が広くないので本当に玄関の目の前スレスレを横切ってわざわざ窓のある方へ行く、アタマワルイコースでした。

 ランドセル。私は辛うじてまだ赤黒世代だったのでぴんと来ませんでしたが、そういえば今の子って自分の好きな色でランドセルを選ぶんでしたね。千夏の好きな色を聞く話の導入としてよくできた演出なのですが、なんというか、微妙にジェネレーションギャップというものが。

 鶴の恩返し。好奇心担当の千夏にこんなの効くわけなし。真琴さんまだミシンを出すどころか型紙すら引いてませんよ? この子にかかっては非日常の神秘性は根こそぎ損なわれ、せいぜいハレの日くらいの扱いに。
 ・・・そう考えるとこの子、盆と正月が交互に来てるような生活送っているんだなあ。なんだよそれ、最強じゃん。(無敵です)

 日本酒鈴蘭。青森県の日本酒といえば豊盃(弘前市)と寒立馬(むつ市)くらいしか知らない私には元ネタがどの酒だか見当もつきませんでした。でも寒立馬知ってるだけで結構な通扱いされると思いますよ青森県内なら。そもそも相手が寒立馬知らない可能性すらありますが。おいしいですよ、寒立馬。(ダイレクトマーケティング)

 糸切りばさみ。裁縫道具箱のノスタルジックさ加減からすでにそんな気配漂ってましたが、持っている道具全般的に渋すぎです真琴さん。この糸切りばさみ、お婆ちゃんちで見たことあるー。

 魔女のローブ。ケープ付きでデザイン性向上したうえに寸法完璧。冒頭のローブと比べてこの縫製技術の向上ぶり。裏地が黒いのでいざというときも安心の夜闇対応。

 「あれ? 母ちゃん、千夏は?」「さあー?」「おおー、かっけーじゃん」 この家族のこういうノリのいいところがステキ。子どもを喜ばせるために世界が回っている感。そりゃ千夏も自由奔放に育つわ。蚊帳の外のお父さんはお父さんで、案外ああいう空気感を持った家族がひとりいたほうが子どもは安心してはしゃげるものです。

 「お兄ちゃんよ、ドーナツになれー!」 細かいところで別エピソードの話を持ち出してくるのは何気にこのアニメ独特の時間描写。我々にとっては20分ちょっとの物語ですが、彼女たちにとって日常は当然ながら連続しています。それにしてもこんなところで2話連続放送の恩恵にあずかれるとは。

 「昼くらいから・・・ねぷたのおっちゃんと・・・あと犬養とも・・・」 あるある。ねぷたじゃなくてもお正月とかお通夜とか。

 どんぎょ。長崎県に「どろどんぎょ祭り」というのがあるようですが、これは特に魚がどうこうという意味ではないようで、元ネタはわかりません。
 赤くなると見た目は金魚ねぷた。ねぷた見物のパック旅行ならたいがい制作体験がコースに含まれているのではないでしょうか。いまやの軒先に飾っていたように、祭りシーズンは三大ねぶた祭地域のどこの店先にも飾っているほか、お土産屋さんでもよく見かけます。

 どんぎょに包囲される真琴。もし体験したければ奈良公園で鹿せんべいを見せびらかして歩きましょう。ちなみにたいへん危険です。

 弘前ねぷた。扇形の絵付け灯籠が主流で、比較的題材に女性が登場しやすいねぷたです。人形型が主なのは青森ねぶた。それから全高10メートルを越える巨大な人形型が名物の五所川原立ちねぷたを合わせて3大ねぶたといいます。ね「ぶ」たとね「ぷ」たの使い分けは単なる音便の違いです。地元住民でも区別のついていない人と地域ごとに厳密に分けたがる人とがいたりします。そもそも人形型の五所川原だって立ちね「ぷ」たですしね。
 あまり知られてはいませんが、3大ねぶた以外でもあちこちで小規模のねぶた祭が行われています。3大ねぶたに次ぐ規模のものといえば浅虫ねぶたでしょうか。あそこは観光客の集まりやすい温泉地ですからね。青森以外では珍しく人形型のねぶたが多く運行されています。それ以外の地域はコスト面で優しい弘前型の扇ねぶたが主ですね。
 弘前ねぷたで是非見ていただきたいのが劇団夜行館のねぷた。電球やLEDに移行した現代ねぷたのなかで唯一昔ながらの松明の明かりを使っている団体です。電球の明かりに慣れていると松明の明かりはいっそおどろおどろしく不気味で、しばしば刃傷沙汰を巻き起こしていた熱狂的な時代の雰囲気を色濃く残しています。(もう何年も見に行っていないのでもしとっくに運行をやめていたらゴメンナサイ)

またお話しすることが、ひとつ増えましたね。

 目立つ役どころは千夏と茜が担っていますが、この物語の主人公は間違いなく真琴です。
 新しい出会い。新しい巡りあわせ。新しい出来事。新しい決断。新しい風景。新しい日常。新しい非日常。その全てが真琴を中心につながります。きっと彼女こそが日常そのものだから。おっとりとした彼女の視線を通して見るからこそ、世界はあるがままに日常で、あるいはあるがままに非日常で、その両方ともが結局のところ日常です。
 ドラマは日常の中にこそあります。ドラマとは人間の心の動きを描く物語ですから。本当であれば人がいるところならどこにだってドラマはあります。テレビの向こうにしかないように見えるのは、それは私たちが気付いていないだけ。例えば弘前に引っ越してきた。例えば道ばたにふきのとうが咲いていた。例えば畑をつくった。例えば犬のお姉さんに出会った。例えば猫の後を追いかけてみた。例えば親戚の子が魔女見習いになった。例えばコゴミがおいしかった。例えば喫茶店でキツネに出会った。例えばハンバーグをつくった。例えばクジラを見てきた。例えばきれいな夜空を見上げた。例えば空を飛んでみた。例えば。例えば。例えば。例えば。例えば。
 あなたの日常はいつだってあなたを祝福しています。あなたがあなた日々の色鮮やかさに気付けたならば。あなたが明日もいい日になりますようにと祈るならば。あなたを祝福しています。

 あるがままの日常から、あるがままのドラマを見つける視線こそが、きっと「日常の魔法」。
 ステキな物語でした。

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