プラネット・ウィズ 第1話感想 その救済は人を癒やすか、人を壊すか。

お前を許す。

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(主観的)あらすじ

 主人公は黒井宗矢。高校生。よくわからないゴスロリ女とよくわからないバケモノ猫と一緒に暮らしています。最近この街の高校に転校してきて、なぜだかそれ以前の記憶がないらしいです。ついでにいうとけっこう口が悪くてけっこうマイペース。好きな科目は数学。
 ある日、ふざけた姿の謎の飛行物体が世界各地に現れました。宗矢の住む街の近くにも。現代兵器の類はもちろん通用しません。おまけにパイロットの心を操るかなにかして平和的に追い払えるようです。
 これを倒すべく、7人のヒーローが現れました。彼らはでっかい巨人に変身して空を駆けます。彼らに対しては謎の飛行物体も普通に迎撃してくるようです。ヒーローのひとり、虎居英雄が飛行物体のコアを破壊すべく中に侵入することに成功します。
 虎居はそこで自分の過去を見ました。火事によって母親と死に別れた幼少の記憶。虎居は母親を死なせたことを悔やみ、その後消防士となったのでした。目の前で繰り広げられる過去の映像は、しかし、現実とは異なっていました。火事の現場に成長した虎居が現れました。虎居は母親を救出し、誰も傷つかないハッピーエンドへと至ります。
 ・・・けれど、あいにく現実の虎居は消防士を辞めてヒーローになっていました。自分ひとりが幸せを甘受するわけにはいきません。仲間のために、幻像のハッピーエンドごとコアを破壊します。虎居のハッピーエンドは「お前を許す」と言い残して消滅――。
 役目を果たして疲労困憊の虎居の前に、変な仮面をつけた宗矢が現れます。どうやら宗矢はヒーローを倒すためにバケモノ猫たちに養われてきたようです。宗矢はヒーローたちとよく似た姿の巨人に変身し、虎居を叩きのめし、彼の力の源であるアイテムを奪います。
 わけのわからないまま同居人たちの言いなりになっていた宗矢。しかし、奪ったヒーローの力の源が何なのかを目にすると、失われていた記憶とともに激情が湧きあがります。「お前ら全員、ぶっ倒してやる!!」

 わけのわからない物語をわけのわからないままに楽しむ第1話。それでちゃんと楽しい第1話。私は何を楽しんでいるのでしょうか? わからないなりに何に興味を惹かれているのでしょうか?
 私には“わからない”ということを楽しむ斜に構えた趣味もあるにはありますが(むしろだいぶ好きですが)、今話に関しては気に入ったシーンはが割とはっきりしています。まあ、やっぱり、虎居のハッピーエンドよね。わけのわからない物語のなかでそこそこわけがわかった気分になれたシーン。共感というフックに引っかけられて、わけのわからないものを全部わかりたいと思うハメになります。たぶん、全部夢中になって観るハメになります。これが恋か。

誰よりもあなたのための救済者

 3つの耳。5本の腕。2つの口。アルカイックスマイル。ハートマーク。「平和」(ただし誤字)。
 ネビュラがどうたらとかいう未確認飛行物体は人類に対して友好的でした。
 その耳は全方位に向けられ、その腕は握手を求めて人を傷つけず、その口から放たれる光芒は平和な幻想をもって人々に語りかける。敵意とともに放たれたミサイルをも柔らかく受け止める。去りゆく者には微笑みかける。
 何をしたかったのかさっぱりわかりませんが、とりあえずその存在は平和そのものでした。

 ヒーローに対して、以外は。
 ヒーローに対しては全身からマイクロミサイルめいた分身を無数に吐き出して迎撃し、口から放たれる光芒でもって彼らのアーマーを傷つける。明らかな害意。
 自衛隊のパイロットとヒーローとではいったい何が違うというのでしょうか。

 ・・・とか思っていたら、ところがぎっちょん。(死語)
 彼は、場合によってはヒーローにすら優しく接しました。
 胎内に侵入してきた虎居に対しては、なぜか自衛隊のパイロットと同様に平和な幻像を見せていました。
 現れた目的はわかりませんし対応が変わる条件もよくわかりませんが(念動装甲の有無でしょうか?)、やはり基本的には人間に対して平和的な存在のようでした。

 虎居は自分の過去を見ました。

 「母さん! 母さんが、母さんがまだ中に!」
 かつて虎居は母親を助けられなかったことを悔やみ、その後悔を取り返そうとするように消防士を志しました。
 「大丈夫だ。母さんは俺が助ける。任せろ!」
 だからこの現実とは異なる都合のいい過去は、虎居が本当にしたかったこと。
 したかったけれど現実は時間を巻き戻すことなんてできないから我慢して、諦めて、代わりに他のたくさんの人々を救う仕事を代償としてきました。立派な人物です。胸を張っていい志です。けれど、それでもやっぱり後悔は消えることはなかったでしょう。

 「母さん。俺、今度結婚するんだ。相手は高校時代から俺を支えてくれた人で」
 「まあ。おめでとう、英雄。立派になったわね」

 伝える。たったそれだけのことすらできないんです。祝福の言葉ひとつもらえないんです。
 そしてたったそれだけのことが救いになるんです。なるとわかっていて、なのに手に届かないこともわかっているんです。
 彼は。私たちは。
 たったそれだけのことで一生胸を締めつけられ、たったそれだけのことで人生すら決まってしまう。
 不思議なものです。
 恐いことでもあります。

 「そう。消防士さんになったの。すごいわねえ。がんばったのね」
 「・・・っ。がんばった。がんばったんだよ。俺、あの日の母さん、助けたくて――」

 恐く、ありませんか?

 「いいのよ、英雄。・・・幸せにね」
 「お前を許す」

 謎の未確認飛行物体が見せた幻像は、虎居のすべてを許しました。
 地球上の誰にもできない方法で、誰もが諦めていたものをいとも簡単に救ってみせました。
 ヒーロー・虎居はその救いを拒絶しました。

その安息 / その絶望

 虎居にもたらされたその救いは、はたして彼にとって幸福なものだったのでしょうか?

 ええ。こんなの嬉しいに決まっています。涙が出るくらい嬉しいことで、為せるものなら生涯をかけてでも為したいに決まっています。
 だからこそ。この救いははたして本当にもたらされてよいものかどうか、私はふと疑問に思うのです。

 虎居は母親を救えなかった代償として消防士を志しました。
 そしてみごとそれを成し遂げました。
 後悔が虎居の人生を決定づけ、後悔が虎居を突き動かす原動力になったわけです。
 過去は絶対に取り戻せないものだからこそ、その後の人生のすべてにわたって影響を与えつづけるのです。

 もし、その後悔が解消されるとしたら?
 そのとき私はどうなってしまうのでしょう。
 私の人生を決めてくれていたものが、私の背中を押してくれていたものが無くなったとしたら。
 私は変わらず今の人生を歩みつづけられるでしょうか?
 私はそれでも誰かのために何かをしつづけられるでしょうか?
 私はそれから、何のために生きるのでしょうか?

 「くそっ。これからもこんなのがずっと続くのか」

 きっと、恐いです。
 もし後悔の記憶すべてに許されてしまったとしたら、私はきっと、私ではなくなってしまいます。

歪んだ過去 / 歪んだ未来

 宗矢は記憶を失っていました。
 過去が無いって、どんな感じなんでしょうね。
 学校での宗矢はどこか浮世離れしているような印象でした。
 明らかに異常な家庭環境なのに平然としているし、未確認飛行物体が現れたと聞いては呑気に見物したがるし、トンカツひとつであっさり悪役めいた活動に手を染めるし。
 何をしたら喜ぶのか。何をしたら怒るのか。次に何をしはじめるのか。何もかもまるで想像の及ばない人物でした。
 これが、過去が無いということなのでしょうか?

 虎居は虎居で不思議な経歴の持ち主でした。
 彼はどうして消防士を辞めてヒーローになったのでしょう。母親を亡くすという劇的な出来事をきっかけとした大切な仕事だったはずなのに。
 なぜかそのあたりの経緯だけが今回すっぽり抜けて、語られませんでした。
 いったいなぜ?
 けれど、見かたを変えればそのおかげで今回虎居は救済を振り切ることができたのだと考えることもできます。
 「母さん。俺、今は仲間を助けなきゃ」
 人生を変えるほどの後悔と並び立つほどの大きな決意。
 そんなもの、ひとりの人生のなかで2つも3つも経験しうるものなのでしょうか?

 現状では宗矢と虎居たち一味、あるいはネビュラとやら、いずれが善ともいずれが悪とも予想を立てられません。
 いずれも不気味で、いずれもそれぞれ大切なところで歪んでいるように思えます。
 いずれの目的が遂げられたとしても、全部ろくなことにならなさそうだなと思えてなりません。
 今回私が想像した救済の末路も果たして物語的に正しい解釈なのかというと確信を持てません。
 何もかもわからないことづくしです。

 この暗迷とした物語のなかであえてひとりだけ主人公として選ばれた黒井宗矢。
 彼の物語はいったいこれからどんなものを描き出すのでしょうか。

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