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プラネット・ウィズ 第7話感想 愛と力を手に、今一度正義を問う。

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元気がないね。君の戦いはまだ終わってないのに。

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(主観的)あらすじ

 宗矢はシリウスが滅亡する日の夢を見ました。当時他の星系まで侵略の手を伸ばしていたシリウス人は、ある日、悪行への怒りに燃える竜によってまたたく間に滅ぼされました。草木の1本も残らない執拗な破壊の爪痕から辛うじて宗矢ひとりを救いあげた先生は、竜を厳しく非難し、また誓います。この破壊は邪悪な行いだ。なぜならシリウス人にも愛の進化を果たす可能性があった。この子を正しく育てることでお前の過ちを証明しよう、と。
 しかし彼の誓いの行く末が竜に見届けられることはありませんでした。竜はシリウス星系を滅ぼした咎によってネビュラ史上初の死刑を執行され、滅びました。そうして、先生はシリウス人も竜も救えなかった自分の無力を嘆きました。――その一部始終を、宗矢は銀子の視点から夢に見ました。
 数日ぶりに目を覚ました宗矢は呆けていました。ふり返ってみれば、宗矢が龍造寺を殺したこと、あの戦いのせいで多くの住民を町から遠ざけてしまったことの2点が結果として残ったのでしょう。けれど宗矢にはまだ実感が追いついていませんでした。復讐が終わり、胸にぽっかりと穴が空いたようで、宗矢は穏やかな時間をどう過ごしていいのかわからずにいました。のぞみを頼ればとりあえず遊びに連れ回してもらったりできるのでしょうが・・・。
 唐突に、宗矢の前に兄の姿をした人物が現れました。彼は宇宙で最も古い種族・楽園の民だと名乗り、宗矢の戦いがまだ終わっていないことを告げました。宗矢が彼の姿に怒りを露わにすると、念動力が発現しました。いつの間にか宗矢のサイキック能力は強くなっていたようです。さらにはグランドパラディンの残党がネビュラ封印派に合流し、宗矢を取りまく世界は再び不穏の色を強めていきます。

 竜が死んだ日、先生の手にはリゲルの代表者・銀子とシリウス唯一の生き残り・宗矢、それから痛烈な無力感が残りました。己が少なからぬ人々を救えたという実感は彼の手から零れていきました。
 龍造寺が死んだ日、宗矢の手にはテレパス能力とサイコキネシス能力、自分を気にかけてくれる友人、そして無為な時間が残りました。人を殺めたことと町から住民が立ち去ったこと、戦いの爪痕ふたつは未だ実感を伴わず、飲み下せずにいます。
 さて、これから何ができるでしょうか。愛の証明か力の可能性か、はたまた新たな道に己の存在意義を探し出すか。人生が続くかぎり、たとえひとつの物語が終わっても第二第三の物語が連なっていくでしょう。何のために? さて、あなたは何をするために?

愛は邪悪へ堕ちた

 「いいか。シリウスによるリゲル侵略の情報が入ったとき、竜は『悪に正義の天誅を下してやる』と怒鳴り散らして飛び出したそうだ。ヤツは正義の怒りに我を忘れている」
 竜は正しき人々が理不尽な暴力に虐げられようとしていることを知って怒りました。
 ならばその精神はたしかに愛でした。

 実際にリゲルの人々はシリウスの侵略から救われるための助けを必要としていました。
 「助けてくださってありがとうございました!」
 「おお! ネビュラとは、あの!」「ああ。愛の進化種族の宇宙政府!」「よかった。リゲルは救われた!」

 リゲルの人々は目の前で自分たちを守ってくれたネビュラの戦士に感謝の言葉を贈りました。しかし実際のところ、シリウスの侵略部隊が撤退したのは竜による本星急襲の報が届いたからです。彼らを救ったのは実質的には先生ではなく、竜でした。

 それにも関わらず、竜の行いは誰にも認められることがありませんでした。
 「そこまでだ、竜よ! お前を逮捕する。星ひとつ滅ぼした罪は重いぞ」
 愛の進化種族たる竜の正義は、同じ愛の進化種族であるネビュラの同胞たちによって死罪に値すると断じられました。
 「私は悪の種族を滅ぼしただけだ。正義の行いなり。悪の種族に民間も何もない」
 「竜よ! 二度と正義の殺戮を行うな! それこそが真の邪悪だ!」

 正義のために悪を滅ぼした彼の愛は、“邪悪”と呼ばれました。

 一方、同じく愛の進化種族の一員である先生は、竜の暴走を止めるために奔走しました。
 「竜はシリウス軍を――いや、シリウス人種のすべてを滅ぼすかもしれん。そしてそのあとは竜も極刑に処されるだろう。私は竜もシリウス人も救いたいのだ」
 シリウスを救うために。そして竜をも救うために。
 どうして彼がそこまでしなければならなかったのか。それは――。
 「それをせずして、ネビュラは愛の進化種族による宇宙政府といえるのか」
 それは、すべてを救うことが彼にとっての愛だったからです。

 先生は先生で自分の正義に従って行動しました。
 竜とは異なる正義で、竜をも救うために竜と対峙しました。
 「竜よ! 二度と正義の殺戮を行うな! それこそが真の邪悪だ!」
 竜をも救うために、自分とは異なる竜の正義を“邪悪”と断じました。
 竜のしたことはネビュラにとって到底看過できない、愛の進化種族としての道を外れた行為でした。ならば彼を再びネビュラの同胞として迎え入れるためには彼の誤った正義を否定し、自分たちと同じ正義のありかたを共有させなければなりませんでした。
 「――この子は私が引き取り、育てる。そしてこの子の人格をもって証明する。この子のなかにも愛があることを。シリウス人にも愛の進化種族になる可能性があったことを。お前の正義感が殺したのは未来の愛の進化種族だったと証明する!」
 竜に過ちを自覚させることだけが、彼を正しい愛の進化種族のありかたに引き戻すための唯一の手段でした。

 しかし、先生の愛もまたネビュラの同胞たちによって否定されました。
 「そこまでだ、竜よ! お前を逮捕する。星ひとつ滅ぼした罪は重いぞ」
 竜に過ちを自覚させるまでの猶予は与えられませんでした。
 「竜は・・・どうなる」
 「ネビュラ史上初の死刑になるだろうな」
 「それではダメだ。シリウス人にも愛があることを証明できれば、竜も悔い改める!」
 「・・・諦めろ」

 これによって、先生の正義が残したものは、竜の正義に“邪悪”の汚名を着せてしまったという不名誉だけとなりました。
 本来ならば一旦汚名を着せたうえで反省させ、未来において彼の罪を禊がせられるはずだったのに。道半ばで寸断されてしまった先生の正義はいたずらに竜の尊厳を汚しただけで、考えうるかぎり最も悲しい結果を残して終わりました。

 竜の正義。
 先生の正義。
 「・・・間に合わなかった。シリウスも、竜も、助けられなかった」
 その衝突の果てに、愛の進化種族・竜は“邪悪”として無様に死ぬこととなりました。

力は正義へ昇れなかった

 「あー・・・。終わった・・・。俺、やったよ。兄ちゃん」
 復讐をやり遂げた宗矢に残ったものは、胸にぽっかりと穴を穿つ虚無感でした。
 「はあ。もっと嬉しいもんかと思ったけど・・・」
 何も残りませんでした。

 「生身のお主に問う。誰の味方で、誰の敵じゃ!」
 「俺は――。俺は俺が味方したい人の味方で、俺が倒したいやつの敵だ!」
(第5話)

 あの戦いで宗矢が味方したかったものをあえて挙げるなら、それはきっと町を守ることでした。
 「なんか、人少ないな」
 「黒井くんが学校休んでいる間にみんな引っ越しちゃって。このあいだの事件はすごかったからね」

 果たされませんでした。

 あの戦いで宗矢が倒そうとしたものは、おそらく直接的には龍造寺だったということになるでしょう。
 「あれって、俺、人を殺しちゃったってこと? ・・・うわ、全然ピンとこねえな。だって砂だし。普通あんな死にかたする?」
 こちらも実感は湧いてきませんでした。

 「――獣じゃのう」
 「・・・獣だよ」
(第5話)
 復讐、それ自体に宗矢は特に何の思想も込めておらず、従って宗矢があの戦いで何かを得ることがあるとすれば「味方したい人」あるいは「倒したいやつ」に由来するはずでした。
 そのどちらも空振りでした。
 「黒井くん、大丈夫? なんかずっとぼんやりして」
 「・・・いや、なんか色々終わったから、気が抜けて」

 自身を突き動かしていた復讐心だけが揮発し、結果、戦いを終えた宗矢の胸には何も残りませんでした。

 「竜から町を守るんだ! 兄ちゃんが、兄ちゃんが守ろうとしたみたいに、俺だって!」(第6話)
 龍造寺を死なせたことはともかくとして、町を守ることに関しては宗矢もそれなりにこだわっていたはずでした。
 「学校どうだった?」
 「まあまあ」
 「『もしよかったら地球に永住してもいいニャ』と、先生は仰っている」
 「・・・全部。全部復讐が終わってからだ」
(第3話)
 復讐が終わったあとのことをわずかなりとも考えられたのは唯一この件だけでした。
 「――あ。あとひとつ、これ最後。・・・町を守ってくれてありがとう!」
 「え。ま、守ってないけど・・・?」
 「守ったよ。こないだ守ったじゃん、暴走した竜から町を」
(第5話)
 この戦いに復讐以外の価値を提示してもらえたのは唯一この件だけでした。

 「・・・あ、あのさ。明日、放課後、どっか遊びに行かない? お祝いっていうか、町を守ってくれたお礼というか」
 「・・・。町を・・・」

 なのに、いざとなると全然ピンと来ませんでした。
 「黒井くんが学校休んでいる間にみんな引っ越しちゃって」
 だって、まるで守れた気がしませんでしたから。
 「・・・学校、閉鎖とかされるのかな」

 強大な敵を打ち破って宿願を遂げた宗矢の力。
 「お前を許す」(第1話)
 「弱くてもいいんだよ」(第2話)
 「誰もあなたを恐れていないよ」(第3話)
 「何も悔いることはない」(第5話)
 しかし、欠けた己を充足させるために力を求めながら道半ばで膝を屈したグランドパラディンたちと同様、宗矢の戦いも結局。
 何も、残りませんでした。

、それでも戦いは続く

 「やあ。元気がないね。君の戦いはまだ終わってないのに」
 愛は汚されたまま、力は無為なまま、戦いだけが終わったように思えました。
 しかし、否。どうやら戦いはこれからも続くようです。誰と戦わねばならないのかもわからないままに。

 どうして戦わなければならないのでしょうか。
 それはまあ、宗矢たちがまだ知らないいろんな宿命とかそういうのもあるでしょうけれど。
 何よりもまず、だって、あなたはまだ自分の戦いに満足できていないじゃないですか。
 力の進化を選ぶか、愛の進化を選ぶか、あなたは自分の道をまだ定めてすらいないじゃないですか。
 竜は何のために戦っていましたか? 龍造寺は何のために戦っていましたか? ――彼らは自分の“正義”のために戦っていました。
 翻って、先生はどうですか? そして宗矢は?

 あのとき先生が見失った己が正義の行く末、答えを見つけられないままであなたは自分の生きかたに満足できるでしょうか。
 あのとき手を伸ばして掴みそこなった宗矢の正義、未だ何の方向性も示せないままであなたは自分の生きかたに満足できるでしょうか。
 もしそれがイヤだというなら、あなたは答えが出るまで戦いつづけるべきでしょう。
 「お前を許す」(第1話)
 「弱くてもいいんだよ」(第2話)
 「誰もあなたを恐れていないよ」(第3話)
 「何も悔いることはない」(第5話)
 満たされぬ思いに苦しみながら、戦いに身を置いて必死にもがいていた彼らのように。

 今、宗矢にふたつのサイキックが与えられました。
 ひとつは夢で銀子の記憶に感応したテレパス能力。周りの誰かと心を伝えあうための“愛”のサイキックです。
 ひとつは公園のブランコを破壊したサイコキネシス能力。暴力によって自分の望みを押し通すための“力”のサイキックです。
 どちらの道を選ぶも宗矢次第。これまでの戦いで“愛”にも“力”にも、それぞれに正の側面、負の側面、両方が存在していることはわかってきたところでしょう。そうとも。あの戦いだってけっして何も残さなかったわけじゃありませんでした。どちらの道を選ぶにしても、あるいはもっと別の何かを模索するにしても、これからの宗矢の選択にあの戦いの経験は生きるはず。

 「この子は私が引き取り、育てる。そしてこの子の人格をもって証明する」
 竜のために証明しようとして半ばで挫かれた先生の正義は、今、宗矢に預けられています。証明すべき相手は見失ってしまいましたが、証明すべき信念は未だ果たされないまま、ここに保留されています。
 何が正しいのか今度こそはっきりさせましょう。誰のためよりもまず、自分自身のために。心に穴が空いたままではいつまでたっても苦しいままです。

 竜や龍造寺がそうだったように、ひとたび自分のなかの正義が定まれば周囲との軋轢も発生するでしょう。悲しいですが、きっと避けられないことです。
 ですが、だからといって封印派が主張するように己の進化を止めるべきだとは私は思いません。
 「Rainbow Planet. カラフルなんだよ、ひとりひとり」(EDテーマ『Rainbow Planet』)
 彼らが犯した大きな失敗のひとつは、自分の正義を周囲に押しつけようとしたことです。大前提として私やあなたはみんなひとりひとり違った考えを持つもの。あんな独善的なやりかたで自分の正義を成そうとしたら、そりゃあ反発されますとも。
 やりかたが間違っていたんです。正義を抱いたままでも他人と協調できる道はあるはずです。むしろみんなそれぞれ違っていて当然で、違うからこそ協力できたときは力を増すことすらあるんです。それこそ宗矢と先生のように。

 「あなたは私たちとこの子を救いました。あなたは真の勇者です」
 「あ、あのさ。明日、放課後、どっか遊びに行かない? お祝いっていうか、町を守ってくれたお礼というか」

 戦いを再開しましょう。あなたは不満足だったかもしれませんが、それでもあなたの戦いには尊い価値がありました。
 今度こそ納得できるまで貫いてやりましょう。あなたのために。そしていずれは、あなた以外の誰かのためにも。

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