超人女子戦士ガリベンガーV 第1回感想 理想的な授業風景でした。

この記事は約9分で読めます。
スポンサーリンク

生徒役:電脳少女シロ、ヤマトイオリ、神楽すず

アニメーション共はしゃいでんじゃねえよ!

出演バーチャルYouTuber

電脳少女シロ

「小峠さん相手だとちょっとシロ本気出しちゃうかな。シュッシュッ!」

 バーチャルYouTuber四天王と呼ばれる5人の一角。バーチャルYouTuber黎明期にデビューし、主にオタク層をこのジャンルに引きずり込む伝道者として活躍しました。
 やたらと語録が豊富、そしてやたらと逸話も豊富。というのも彼女は多趣味・多芸なうえ、やたらと柔軟な発想力も持ちあわせ、ついでに傍若無人な性格なため、自由にさせると大抵常人に理解できない奇矯な言動をしはじめるからです。彼女の動画を見てなんともいえない気持ちになったときは「シロちゃんの動画は為になるなあ」と、とりあえず納得しましょう。彼女はあなたが為になることを望んでいます。
 まるでアブない人のようですが、そして実際アブない人なのは確かなのですが、こう見えて彼女は共演者をよく見ています。聡明です。共演者の対応力を推し測り、ギリギリ捌ききれる程度のムチャ振りを仕掛けるのです。きわめてタチが悪い。

ヤマトイオリ

「すごい。葉っぱみたい。すごい。あ、そっか、葉っぱだ! 三葉虫の『葉』って葉っぱじゃない?」

 電脳少女シロの後輩。「ゆっくりハイペース」「性善説の擬人化」「頭お花畑」などの異名を持ちます。最後のは罵倒にしか聞こえませんが本人は気に入っています。そして彼女の配信を観ればきっとあなたも真意を理解することになるはずです。
 最も好評を博しているコンテンツはなんと雑談。雑談配信といえばネタが尽きた配信者の逃げの一手とみなされがちですが、彼女の場合は違います。正真正銘雑談こそが面白い。見てのとおりのおっとりした口調から繰り出されるのは「あのねあのね!」で急転直下のジェットコースター&夢幻ループ。話している内容はごくありふれた日常の出来事のはずなのですが、俗世の垢に汚れていない平和な世界観と幼児のような純朴な好奇心でもって我々を困惑させ、さらに話題がころころと、それでいてとめどなくつらつらとシームレスに移り変わっていくスピード感で我々を翻弄します。1分たりとも目をそらすな、ふり落とされるぞ。
 残念ながら今回の番組では彼女の発言の大部分がカットされてしまったそうです。しゃーない。この子の話ときたらめっちゃくちゃシームレスかつ延々と続くので、いわゆる“編集点”というやつが無いんですよね。30分の尺に収めるのが難しすぎる。でもかわいかったでしょ?

神楽すず

「私、突起物をそんな侮辱だとは思ってないですよ」

 同じく電脳少女シロの後輩。デビューからしばらくは“音楽好きで清楚だけどちょっと地味”という印象でしたが、とあるたった一度の配信で評価が180度反転しました。やっぱりあのシロちゃんの後輩でした。
 人気のコンテンツはウクレレ弾き語りとロボットゲーム実況。あとクラシック音楽解説やパーティゲーム1人プレイなんかも好評ですね。まるで統一感のない並びですが、実際毎回配信の空気が違います。歌っているときは深窓の佳人そのものなのに、ロボットに乗っているときはまるで富野アニメの悪役。なまじっか透き通った声質と豊富な語彙力を持ちあわせているからタチが悪い。「宙の藻屑になってください」だの「信号くらいは守っていきたいですよ。――人の生命は守れなくても」だのといった味わい深い発言が次々飛び出す女子高生がどこにいる。
 バイオリン演奏で楽団に参加しているらしく、そこで培われたと思われる鋼の舞台度胸もまた彼女の魅力。今回も明らかに緊張しているにもかかわらず、萎縮はしないで堂々と発言していました。本当にすごいことです。それはつまり失敗を恐れる臆病さを持ちながら、それでも楽観思考で前のめりに進んでいける勇気も持ちあわせているということなんですから。

授業構成おさらい

超難問:なんでエベレストは重いのに沈まないの?

 今回の授業ではエベレスト山脈に対するちょっとした好奇心をきっかけとし、地殻とマントルによって成り立つ地球表層の構造について学習しました。

トピック1:エベレストと富士山の違い

 最初に、どうして授業の起点がエベレスト山脈でなければならないのかを検証しました。
 日本人にとって最も身近な山である富士山は火山であり、断続的に地表に吹き出てきた溶岩が高く積み上がってできた地形です。対してエベレスト山脈は2枚の大陸プレートが衝突して隆起した地形となります。
 今回の授業ではこの「大陸プレート」という発想が重要なので、エベレスト山脈の話題が起点となりました。

トピック2:大陸移動説

 次は大陸プレートの説明に進みました。
 エベレスト山脈は2枚の大陸プレートが衝突してできた地形です。つまり、大陸というのはゆっくりではありますがたえず動きつづけているということになるわけです。この学説を「大陸移動説」といいます。

トピック3:プレートテクトニクス

 その次はマントルの説明。
 大陸プレートはたえず動きつづけています。では、どうして動くのでしょうか?
 ここで神楽すずから「プレートがぶつかりあうのならいずれ小さくなってしまうのでは?」という質問が飛び出しました。これにより授業は発展。大陸プレートはぶつかりあい沈みこむと同時に、海溝から新たなプレートが押し上げられてもくる、だから大陸は小さくならないんだと解説されます。
 沈みこんだり、浮きあがったり。まるで沸騰した味噌汁のような大陸プレートの挙動は、すなわちプレートが対流する流体に“浮かんで”動いていることを示唆しているわけです。この流体を「マントル」といい、大陸プレートがマントルの対流によって動いている構造を「プレートテクトニクス」と呼びます。

トピック4:アイソスタシー

 ここまで理解できればすでに答えはわかったも同然。
 南極の巨大な氷山が海に浮かんでいることと同じように、一見とてつもなく大きく重そうに思える大陸プレートも、より比重の大きなマントルの上に浮かんでいるわけです。だから大陸プレートの一部であるエベレストも当然沈むことがありません。ちなみにこの学説を「アイソスタシー」と呼びます。

回答:エベレストが浮かんでいるから

 以上で授業は無事終わりました。

感想

 上記授業の流れを見るとわかるかと思いますが、今回の白眉はなんといっても神楽すずによる鋭い質問です。
 「プレートが、こう、ぶつかりあってちっちゃくなるみたいなことはないんですか?」
 
これによって授業後半がスムーズに進み、より要点がわかりやすく、そして授業と関係ない(視聴者が見たがっているはずの)生徒たちの雑談をより多く収録することが可能となりました。

 もしかしたら台本なのかもしれませんが、実際どうなんでしょうね? アイソスタシーの例えとして別途氷山の話を用意していたあたり、これは教師役の人も想定していなかった流れのようにも思えます。後半2トピックのペース配分もおかしかったですし。
 教師役の人が絶賛していたように、あの質問は本当に素晴らしい。もともとスムーズだった番組進行をさらに良い流れに変えてくれました。

 私、もともとこの神楽すずというキャラクターが大好きなんですけど、その好きになった最大の理由がこれです。
 物怖じしない。躊躇しない。自信がなくてもとりあえず踏み出してみる勇気。
 あの質問内容はその時点での授業の流れからは多少脱線したものでした。もしかしたら自分のせいで場の流れを崩してしまうかもしれません。共演者みんなに迷惑をかけてしまうかもしれません。それでも彼女は切り込みました。とても、とても勇気のある発言でした。
 学生演劇でガッチガチに固まってしまってセリフが出てこなくなった経験のある私としては心底尊敬します。私は何回舞台に立ってもちっともこの手の度胸が身につかなくて。今思えば舞台に挑む意気込みが甘かったんでしょうね。

 まあ、私は本来生身の人間にこの手の尊敬(勝手な期待)を押しつけないようにしようと考えている立場なんですけどね。その人が本当は私の思っていたような人ではなかったとき、今度は「裏切られた」と勝手な失望を押しつけてしまいかねないので。そんなの失礼だし、かわいそうじゃないですか。
 バーチャルYouTuberに興味を持ったのも、そういう観客の身勝手さを乗り越えられる偶像になりうるんじゃないかと思ったからでしたね。よくよく考えてみると私たちは生身の人間どころかアニメの登場人物にすら日頃から勝手な期待を押しつけているわけで、バーチャルな存在だからって何が変わるわけでもなかったんですが。
 でもまあ、結局尊敬しちゃったものは仕方ない。あとは何があっても失望に変えないよう事後努力。

 あとは、さすが場慣れしているだけあってシロの活躍が全体的にステキでしたね。今回がテレビ初出演の後輩ふたりに常に目を配っていて。ツッコミが鋭いぶん少々当たりキツめな小峠さんにノッケからガンガン絡んでいって良い空気を醸成してもいました。
 放課後トークでヤマトイオリが繰り出した「もち巾着に包まれてたツッコミ」という謎発言を即座に「包容力がすげえ!」と翻訳してみせたのも相変わらずおみごと。

 ヤマトイオリも発言の機会こそ少なかったですが、身ぶりがかわいらしくて存在感ありましたね。
 「あ、そっか、葉っぱだ! 三葉虫の『葉』って葉っぱじゃない?」
 
こういう気付きもいつもながらすごい。天才。

 なお、今回の番組最大のツッコミどころは授業テーマだと思っています。
 「なんでエベレストは重いのに沈まないの?」
 
アカデミックにもほどがある。
 初見でこの疑問に「たしかに!」と共感できた人がいったい何人くらいいたでしょうか。
 これ、そもそも大陸プレートが流体の上に浮かんでいるという発想ができてなきゃ共感しようのない疑問です。しかもマントルの存在を知っていたらその時点で疑問が解消できちゃうというね。

 「私もうすごく真面目に考えて、突起物? 地球の突起物かなあって思ってました」
 
アイソスタシーの概念が頭になかったらそりゃ突起物って考えるしかないわな。地面の下が全部固体の岩石なら、それはたしかに突起物としか表現しようがない。

 「お菓子は一口で口に運べる。軽いものじゃなくちゃ。軽いから沈まないんですよ。ドン!」
 
一方でシロは最初から答えがわかっていたようですね。なんかひどくわかりにくい例えで答えそのものを言っちゃってます。本来は知らないフリをしなきゃいけないはずの場面なので小峠さんから雑なツッコミをもらっていますが、Twitterによると彼女はこのときまだリハーサルだと思っていたそうで。

 いえまあ、いいんですけど。この手の教養バラエティの本質は単純な疑問解消じゃなくて、自分も一緒に考えてみる学問的楽しさにあるので。このテーマたぶん学者が考えたんだろうなあ、と思うとほほえましくすらあります。

 全体的によくまとまっていて、ほどよく意外な揺らぎもあり、たいへん楽しい番組でした。
 次回は引き続き電脳少女シロと、猫乃木もち&八重沢なとりが出演するそうです。 猫乃木もちは神楽すずと同じく舞台度胸があるタイプで、八重沢なとりはヤマトイオリと対照的に秩序立ったトークが上手い子ですね。ふたりとも真面目で乙女チックな面が共通するコンビでもあります。
 番組の空気がガラリと変わりそうですね。楽しみです。

よろしければ感想を聞かせてください

    記事の長さはどうでしたか?

    文章は読みやすかったですか?

    当てはまるものを選んでください。

    コメント

    スポンサーリンク
    タイトルとURLをコピーしました