フリップフラッパーズ第8話感想 第六夜。世界もあなたも私自身も、イジワル。

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大切なものを失って逃げ延びることにッ! 何のイミがあるッ!?

(主観的)あらすじ

 少し気持ちが落ち着いたのか、ときどき笑うようになったココナ。けれどそれはそれとして今日もピュアイリュージョンの冒険です。
 今回のピュアイリュージョンは怪物が徘徊するメガロポリス。ココナとパピカはこの都市をつくったというオッちゃんに出会います。オッちゃんは怪物に大切な街を破壊されることを嘆いていて、その気持ちはココナにとっても大いに共感できるものでした。大切なものを守るため、ココナたちはガッシャンガッシャン巨大ロボを乗り回し、ドッキャンドッキャン戦います。
 一方、この世界はヤヤカに素直な気持ちをさらけ出すことを求めます。「あのふたりを助けたいのかッ!?」 ずっとごまかしてきた本当の思いと向き合い、彼女はついに大切なものを守るための力を願います。
 結局街は壊してしまったものの、怪物をやっつけ、オッちゃんにも喜ばれ、大切なものを守れたと実感するココナ。・・・ところが、そんなハッピーエンドに冷や水を浴びせるかのように、パピカが奇妙な言葉を口にします。

 守ろうとする意志が変革を生む、今夜の夢は第六夜。(おお、ちょっとロボットアニメっぽい) 過去の名工に倣って仁王を彫ろうにも、そもそも現世には仁王がいないことを思い知らされる夢。
 さっそく揺さぶりにきましたね。ココナがどんな答えを持とうと、世の中はそんな都合と関係なしに動くし、自分自身のもたらした結末すら必ずしも思うようにはできません。けれど、だからこそ答えを持つことは大切です。あなたはあなたですから。
 ・・・それはそれとして、すっごい濃厚なセクハラ描写でしたね。スケベキャラ不在のシリアス展開でもここまで露骨で執拗なセクハラを描ける情熱がいっそカッコイイ。つくづくキネマシトラスに似たフェチズムの持ち主です、この制作会社。

世界の謎萌え追い隊

 今回のゲストキャラ、オッちゃん。
 「異界からの来訪者とは珍しい。・・・が、これも定めか。ククク」「あなたは」「フッ、知る必要はない。――ただッ! ワタシのコトを呼ぶときはッ! 白き偉大なる創造主! にしてッ!! ゼンチゼンノーを司ルッ」「ねえオッちゃん。・・・オッちゃーん?」「フンッ。・・・それも悪くない」
 ちょっと待って。パピカさんどうして即座にオッちゃん呼び? しかもイントネーションおかしいし。
 役名はOO-303。なるほど、だからオッちゃん。公式サイトの表記では「オッサン」なのでなおさらぴったり。・・・どうしてパピカは彼の名前を知っていたんですかね。パピカのイントネーションがおかしいので「年配の男性」という意味でのおじさん呼びとは思えません。「あの、オッちゃん・・・さん?」 隣にいるココナも一瞬驚いただけですぐに人名として認識したようですし。
 それに見た目もせいぜい20代前半くらいにしか・・・と思っていたら「何言ってんだ。・・・ていうか誰だこの小さいおっさん」 ヤヤカもおっさん呼ばわりしてますね。若い子の感覚だあ。
 ついでに拾うと、このシーンでパピカがわざわざ「オッちゃんだよ?」と訂正しているあたり、ますます違和感が増しますね。

 この役名、ブーちゃん(TT-392)に似ています。ちなみにこの識別IDっぽいのはパピカたちにも割り振られていて、パピカはOO-746、ココナはTS-345となっています。(第1話) いかがわしい! フリップフラップいかがわしい!
 SFっぽくピュアイリュージョン含む全世界の人々に固有のIDがある設定だとしても、それはそれでパピカとオッちゃんの頭文字が共通している理由がわからないですしね。オッちゃんは何らかの形でフリップフラップに所属していたことがある、ということでしょうか。だからパピカに面識がある。
 パピカの前任者か、ピュアイリュージョンから帰れなくなった冒険者か、第1話で倒れていたようなハズレの候補者のひとりか、はたまたヒダカが所有しているっぽい脳のストックのひとつか。嫌な想像しかできない!

 まあそのあたりは明かす気があるならそのうち明らかになる情報でしょうし、そうでないならそもそもどうでもいい設定ということでしょう。好きな人だけ好きに考察して萌え萌えしつつ、ほどほどに頭から切り離して本筋を楽しみましょう。
 私はこういうの好きなタチですが、思考が論理的じゃないのでめったに正解しません。

 閑話休題。

停滞なんてしていられない

 「ちょっとはマシになったみたいだな」 柔らかく笑うココナの表情を見て、ヤヤカが声をかけます。前話、先輩のことで気を重くしていたココナと比べてのことでしょうか。彼女はピュアイリュージョンでもパピカと合流する前のココナしか見ていませんからね。今日ようやくココナの表情が柔らかくなっていることを確認できて、どうやら安心したようです。
 事情は次回明らかになるっぽいですが、甘い甘いと言いながらもココナのことをいつも気にかけているヤヤカ。その気持ちは今さら疑うようなものではなく、今話の展開としてもそれはわかりきっていることとして進んでいきます。ココナがパピカを好きになる過程の物語とも被りますしね。そこらへんは清々しいほどのテンプレツンデレ描写であっさり処理されます。

 今回解決すべき唯一の問題は、彼女が停滞に甘んじていること。
 ココナを大切に思いながらも、所属する組織の都合で何度も敵対してきました。「覚悟が違う」とうそぶきながらも、ココナのために自分の果たすべき使命を曲げてきました。自己矛盾です。中途半端です。当然組織内での立場は悪くなるし、ココナを仲間に引き入れることもできません。
 どうしてそんなことになってしまうのかといえば、それはヤヤカが自分の意志で行動していないから。ココナが大切なら組織なんて辞めてしまえばいいんです。使命が大切ならココナのことは割り切ればいいんです。両方大切ならさっさと第三の道を模索すればいいんです。(もっとも、実際にはそんな決断力のある人なんてそうそういませんけどね)
 「情報をもらっとかなきゃ動けねーだろ」 ごもっともな言い分ですが、同時にそれは甘えです。自力でどうにかしようという意思に欠け、ままならないことを組織のせいにしているだけです。組織の方も彼女の他人任せな性質を見抜いていて、「後追いしなければアモルファスを見つけられぬ。アモルファスの子どもにも劣る」と的確な批判を浴びせています。

 自分で何かをしようとしなければ何もできません。夢見なければ現実は覆りません。だから彼女はこれまで変身できませんでした。
 「・・・彼女たちを助けたいのか?」 オッちゃんは指示してくれません。助力を求めてもくれません。
 「あのメカがもうないのかって聞いてんだよ!」 どんな道具があったって、誰かが振るわなければ何も起こせません。
 「ならば質問に答えてもらおうッ!」 振るうのはあなたです。振るいたいと願っているのはあなたです。その自覚が求められています。
 停滞に甘んじていては何も変えられません。きっと誰にだって叶えたい願いがあるはずです。つまりあなたは停滞に甘んじることを良しとしていません。あなたは前に進みたがっています。自覚しましょう。他の誰のものでもない、何かをしたいと願うあなたの思いだけが、あなたの願いを叶える原動力になるのですから。
 「無謀」「あさはか」もどっかにポイして、夢で現実をひっくり返してしまいましょう。フリップフラッピング!

運慶が今日まで生きている理由

 道具箱から鑿と金槌を持ち出して、裏へ出て見ると、せんだっての暴風で倒れた樫を、薪にするつもりで、木挽に挽かせた手頃な奴が、たくさん積んであった。
 自分は一番大きいのを選んで、勢いよく彫り始めて見たが、不幸にして、仁王は見当らなかった。その次のにも運悪く掘り当てる事ができなかった。三番目のにも仁王はいなかった。自分は積んである薪を片っ端から彫って見たが、どれもこれも仁王を蔵しているのはなかった。ついに明治の木にはとうてい仁王は埋っていないものだと悟った。それで運慶が今日まで生きている理由もほぼ解った。

 「そうだッ! この街は全てワタシが創ったッ! 永い年月を懸けてひとつずつ積み重ねてきた迸る英知の結晶なのだ・・・ッ 全てワタシの作品なんだ・・・」
 再び視点を変えて、ここからはココナの物語。オッちゃんの慟哭はココナにとって大いに共感できるものでした。
 「私、ココナが変わってもココナのこと好きだよ。ココナは?」 前回そう問われて、ココナは「私の知ってるパピカじゃないから」とだけ答えました。問いかけの根本にある「私のこと、好き?」には未だに答えを出せていません。先輩を変えてしまった罪の意識は未だ肯定も否定もされていません。
 だから今のココナにわかる重大事は、大切なものを守ること。少なくともそれは自分が悲しく思ったことの延長線上にある前向きな考え方で、きっと正しいことだろうとココナは信じます。

 無駄に含みのある書き方をしていますが、単に私がこのココナの決意の意義を読みかねているだけです。
 決意に至る流れは順当で、ヒロイックでもありますが、しかしこの思想にはCパートで早々に影が差します。「進路に悩み」「空っぽと嘲笑された」キャラクターの導く答えとして「守ること」がふさわしいかというと疑問が残ります。しかしド王道で、定番で、カッコイイのも否定しがたいところ。この先どう描かれるんでしょうね。

 なんにせよ、今のココナが導き出せる答えとして最大限前向きなことには変わりありません。
 「行きます! 私にも守りたいものがあるんです」

 「ガラクタはこの部屋じゃないですか」「ヒダカさんが捨てないなら私が捨てますからね」 ヒダカのラボにも似たオッちゃんの街は、かくしてココナたちの願いによって守られます。
 仁王の埋まっていないガラクタは、守ることを是とするココナの願いによって、巨大な仁王へと変身を遂げます。「変なところ」「キレイ・・・」へ、「ガラクタ」「ドクター・ヒダカ」へ、認識が塗り替えられていきます。
 ココナの「守りたい」という願いが世界に浸透していきます。

乱逆の力

 「ならば託そう、乱逆の力をッ!」
 乱逆=謀反、反逆。ココナは「守りたい」と言っているのに、どうしてそこで渡すものが「乱逆の力」なんでしょうね、このオッちゃん。

 前回、ココナは結局自力では「私の知ってるパピカ」を見つけることができませんでした。「ここは楽しいけど、でも帰らなきゃ」と考えた理由を自覚できませんでした。言い換えるなら、自分自身が迷子になっていたことに気付けませんでした。
 それでも安心して笑っていられたのは、自分で答えを出せずとも「私の知ってるパピカ」の方から傍にいようとしてくれたから。

 世界はイジワルです。私が答えを出すまで待ってくれません。私が答えを出したとしても、必ずしもそれに従ってはくれません。
 あなたはイジワルです。私の答えとは関係なしに、ただあなたの答えにだけ従って行動します。

 果たして欠片がどんな影響を及ぼしてパピカにココナを「ミミ」と呼ばせたのかはわかりません。この影響が一時的なものか、永続的なものかもわかりません。ただひとつわかることは、ココナの目の前にいるパピカが「私の知ってるパピカ」じゃなくなってしまったことだけ。
 「私たち、ちゃんと守れたよね」 ようやくピュアイリュージョンへの接し方がわかった気がしたのに、なんてイジワルなタイミング。

 かつてウェルウィッチアはココナを「空っぽ」と評したうえで、「何かしたいでしょう? 何かになりたいでしょう? 私と行くなら役割をあげる」と誘惑しました。あのときココナははっきり「嫌」と拒絶しましたが・・・
 でもそれって、今のココナにとってのパピカと同じではないでしょうか。パピカが傍にいてくれて、パピカが一緒に遊んでくれて、パピカが好きだと言ってくれるから、ココナは笑っていられます。「パピカが好きでいてくれる私」という役割をもらえたから。
 ココナ自身は依然空っぽです。いくら笑っていても、決意と呼べるものを見つけても、結局その土台になるものが他人に依存したものであるなら、その人が変わってしまっただけであっさり足元を掬われてしまいます。たったそれだけで何もかもを失ってしまいます。おばちゃんに忘れられてしまったイロちゃんのように。

 世界はイジワルで、あなたはイジワルで、そして私自身もイジワルです。私自身の思いもよらぬところから、積み上げてきた答えをあっさり崩してしまいます。

 今回、ピュアイリュージョンの冒険とは一見無関係にヒダカのエピソードが挿話されました。その意味については様々な解釈ができるでしょうが、私はこう解釈しましょう。
 「ピュアイリュージョンはサブジェクトとのインタレレーションシップによる一種のパーセプション、イデアワールドだと考えられている」 前話でヒダカが披露した説を信じるならば、ピュアイリュージョンの正体は主体同士の相互関係によって形づくられる一種の共有認識、つまりプラトン哲学でいうところのイデアだということです。
 今回、ココナたちは滅び行くオッちゃんの街に対して「守る」という干渉を行いました。彼女のその願いはイデアを塗り替え、全世界全生命のものの見方を更新します。その結果、以前まではヒダカのラボを「ガラクタ」としか認識できなかったサユリに、「ドクター・ヒダカ」のラボとして尊重されるべきものという新たな認識を与えることになりました。
 ココナのあずかり知らぬところで、ココナの願いは世界を変えていきます。たとえココナが望まなくても。

 守ろうが壊そうが、どうあったってあなたの行動がすなわち誰かへの干渉であるという点は同じです。あなたがどう行動したって、結局「摩擦のないユートピアなど存在しない」。もしそれでも何も変えたくないと願うなら、あなたは何も行動しない、つまり停滞するしかないでしょう。ただし、停滞していてる限りあなたの願いは何ひとつ叶いません。さて、あなたならどうしますか?
 ココナはオッちゃんの街を守ろうとしました。結果、欠片の怪物を消滅させる一方、自らの手で街の一部を破壊してしまいました。
 ココナは先輩を元に戻したいと願っています。もしその願いが叶えば元の先輩は蘇るでしょうが、同時に今の先輩は死ぬでしょう。ハッピーエンドを迎えたイロちゃんの物語もなかったことになりますね。

 あなたの意志は、行動は、きっとあなたの望む結果をもたらすでしょう。そして同時に、望んでいなかった結果までももたらすでしょう。良い結果ばかりをもたらす正しい選択なんて存在しません。あっちを立てればこっちが立たず、こっちを立てればあっちは倒れ、どちらを立てるかはあなた次第。そんなイジワルな世界で、さて、あなたは何を良しとし何を悪しとしますか?
 結局あなたの望みを叶えるための道しるべはあなたの価値観だけです。誰かのモノサシに頼っていてもいずれ齟齬を感じてしまうだけ。現実で戦おうが夢で遊ぼうが、そこは変わりません。夢は保護されたユートピアじゃない。だからこそ現実を変えられる。

 さあ、あなたが本当に大切にしているものは何ですか? その大切なもののために、あなたの手で世界を塗り替えましょう。

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