スタートゥインクルプリキュア 第48話感想 自分の未来を勝ち取るために。

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私、また、きっと行くよ。自分の力で宇宙に!

(主観的)あらすじ

 フワが決死の思いで行った儀式は成りませんでした。フワはスターパレスへ還り、ダークネストは未だ健在。プリキュアに変身することもできません。邪魔する者のいなくなったダークネストはさっそく宇宙を大いなる闇で飲みこみ、イマジネーションのない新たな宇宙をつくることを宣言します。

 闇に飲みこまれようとするなか、もはや誰もが諦めていました。それはひかるたちですらも同じ。フワを失った悲しみがみんなの胸を締めつけていました。
 けれどそのとき、ひかるの心にひとすじの星の光がまたたきます。そうだ。宇宙は外側にあるものだけが全部じゃない。ひとりひとりの心のなかにも広い宇宙がある。あのとき、ひかるはまだ出会ってもいないフワの姿を星座に思い描くことができました。ひかるのイマジネーションのなかに、フワは今もいました。
 守りたい。まだ、そう思えました。

 「きらめく星の光で憧れの私描くよ」
 ひかるたちは声をそろえ、イマジネーションの輝きを重ね、再びプリキュアに変身します。
 そしてダークネストとの最終決戦!
 ダークネストが「お前たちのイマジネーションはしょせんプリンセスたちの借り物」と嘲ります。けれど違いました。ひかるたちのイマジネーションはたしかにスタープリンセスたちから受け取ったもの。しかし今はひかるたちのもので、それぞれが自分で育てた、自分だけのイマジネーション。この宇宙にはスタープリンセスたちのイマジネーションを回収してなお余りあるたくさんのイマジネーションが星の数だけ、人の数だけ存在しているんです。
 それらを束ねてひとつの思いのもとに行使するプリキュア・スタートゥインクルイマジネーションの奇跡によって、ダークネストの大いなる闇は今度こそかき消されたのでした。

 戦いに敗れたダークネストは彼女なりのやりかたでこの宇宙を見守ることを約束し、どこかへ去りました。
 ひかるたちはスタープリンセスたちをも超えたイマジネーションの全てをふりしぼり、もう一度フワを呼び戻しました。もうプリキュアには変身できないでしょう。
 フワとプルンスはスターパレスへ。ララは惑星サマーンへ。ユニは惑星レインボーへ。そしてひかるたちは地球へ。みんなそれぞれの帰るべき場所へ別々に帰っていきます。

 けれど、いつかまた絶対に会えるでしょう。今度は誰かのくれた奇跡じゃない、自分自身のがんばりによって。

 アメリカのオハイオ州やインディアナ州、さらにその周辺地域には開拓時代からつづく古いリンゴ畑が広く点在しています。かつてジョニー・アップルシードと呼ばれたひとりの開拓者が、畑も整っていない未開発の土地で飢えていた人々のため、リンゴの種を植えてまわったからです。
 最初、それらのリンゴは彼がひとりで育てていました。やがて彼の活動に協力する人たちが集まるようになり、彼が亡くなった今も変わらず誰かの手によってリンゴが育てられています。それらの樹は彼の植えた種から育ったものかもしれませんし、誰かが新しく植えた種かもしれません。いずれにせよ、リンゴ畑は今もアメリカの大地に広く点在しています。

 ひかるたちのイマジネーションはたしかにスタープリンセスたちから受け取ったものだったでしょう。けれど、それは借りものなんかじゃない、正真正銘のギフトです。スタープリンセスたちは後から回収するつもりでイマジネーションの力を私たちに譲ってくれたわけではありません。
 それは最初からひかるたちの持ちものであり、それは最初からひかるたちの手によって育まれたものであり、つまりそれは当然にひかるたちだけのイマジネーションでした。

 ひかるたちはフワのためにイマジネーションの力を使いきり、プリキュアに変身できなくなりました。
 ・・・うん? イマジネーションってそういうものでしたっけ?
 「ララちゃんもプリキュアになりたいの? ――なれるよ! なりたいならさ、なればいいんだよ。プリキュアに!」(第2話)
 奇跡を起こすイマジネーションの力はすでに創造神から私たちに譲り渡されていて、だから、これからこの宇宙に奇跡を起こすのはいつだって私たちでなければなりません。
 「ララ様がプリキュアになる確率は0.000000012%です」
 「オヨ・・・。限りなく0に近いルン。じゃあ、星奈ひかるの確率は?」
 「その確率は0.000000012%です」
(第2話)
 もしひかるたちにまだやりたいことがあって、そのためにどうしてもやるべきことがあるのなら、そのときは――。

誰も望んでいないエンディング

 「攻撃が・・・」「闇が、消えた?」「やったっつーの・・・?」「ヤツを倒したというのか?」
 「プリキュア。本当に感謝します。宇宙は救われました」

 めでたしめでたし。
 けれどそこには誰の笑顔もありません。
 状況をよくわかっていないノットレイダーたちですらどこか釈然としない思いを感じ、スタープリンセスたちもまた結局想定されていた結末に終わってしまったことを素直に喜べずにいます。フワを失ったひかるたちももちろん納得なんてしていません。
 胸が痛い。苦しい。悲しい思いばかりがつのるエンディング。

 こんなの誰も望んでない。

 「救われた、だと? フハハハハハ!」
 「お前たちのイマジネーションが仇となったようだな。『器を消したくない』。その思いが、大いなる力、その完成を邪魔したのだよ!」

 きわめて性格の悪い表現をするなら、“だから”物語はつづきます。
 この物語とその主人公とそれらを見届ける私たちには、まだやりたいことが残っています。
 「思いを重ねきれなかった・・・」

 「パレスに我の力を注ぎ、宇宙を呑む!」
 だからといって、もちろんただのバッドエンドもまた望んでなんかいないわけだけれども。

 「変身ルン! ・・・ひかる!」
 「・・・う、うん。スターカラーペンダント! ――え?」

 さあ、ハッピーエンドへ至る道筋を見つけださなければなりません。
 今のシナリオのまま唯々諾々と運命に従うのならさっきのサッドエンド。
 何もしないで立ちつくしているつもりならただのバッドエンド。
 これは何も考えず目の前のラスボスさえ倒せば丸く納まるような、レールの敷かれた物語ではありません。これはイマジネーションの戦いです。精一杯思考を回転させて、イマジネーションをいっぱい巡らせて、どうなれば自分たちにとってハッピーエンドといえるのかを考えて行動しなければ、何も得られることがありません。
 あなたのやるべきことはいつだってあなたのやりたいこととリンクしているべきです。さもなければ、たとえあなたがどんなに苦労して何かをやり遂げようとも、あなたは結局何も得られることがないでしょう。
 さっきまでの戦いみたいに。

 さあ、あなたなりのハッピーエンドへ至る道筋を見つけださなければなりません。
 幸いにして少しくらいの猶予なら与えられるでしょう。
 見た目はとことん絶望的な状況となりますが、プリキュアなら大丈夫。「諦めない、負けない!」(『キラキラkawaiiプリキュア大集合』)こそがプリキュアの合言葉でしょう?

夜空に見つけて

When the blazing sun is gone,
When he nothing shines upon,
Then you show your little light,
Twinkle, twinkle, all the night.

 あたりが真っ暗闇になって初めて存在に気付く小さな光があります。
 とてもか細い明かりなのでいつもはついつい忘れがちになってしまいますが、光は光。
 か細くても心細くはなく、暗闇をさまよう旅人に前を進むための勇気を与えてくれる、そんな光があります。
 きらきらひかる、おそらのほしよ。

 「――いるよ、ここに。・・・いたね、フワ」

 いつか描いた私だけのオリジナル星座。
 まだ出会ってもいない新しい友達の姿がスッと心に舞い降りてきた、奇跡みたいなイマジネーション。
 フワ。
 フワ座。

 ダークネストによると、宇宙のどの星々にも決まってスタープリンセスを表す12星座があるそうです。星の並びなんて観測する星の座標ごとに全然違って見えるはずなのに。それなのに、不思議とどの星でも12星座を描く人々が生まれたんだそうです。
 それはたしかに私たちにイマジネーションの力をくれたスタープリンセスたちの残り香なんでしょう。
 けれど、それはつまり、星座とはそこにそういうかたちがあるから描かれるのではなく、見る人にイマジネーションがあるからこそ自由に描かれるものなんだということです。

 あのときフワはそこにいました。
 ひかるの心のなかに。だから描くことができました。
 フワが地球にやって来る前から、すでにフワはひかるの心の宇宙に遊びに来ていました。
 直後本当に地球に来てくれたので忘れてしまいがちですが、フワを地球に呼んだのは間違いなくひかるのイマジネーションのたまものでした。

 「宇宙は消えてない。まだある。まだ、残ってるよ。私の――私たちの心の宇宙」

 フワは消えていない。宇宙もまだ消えていない。
 だってここにあるから。心の宇宙に全部残っているから。
 だったら守らなければなりません。だったら戦わなければなりません。
 ひかるがこれまでプリキュアとして戦ってきた大きな理由のひとつは、大好きなそれらを守るためだったんですから。

 「きらめく星の力で憧れの私描くよ――」
 だから変身だってできるはず。
 今まさにやりたいことがあるんだから。
 今まさにやるべきことがあるんだから。
 どんな暗闇のなかでもまっすぐ前を向いて歩みつづける力、イマジネーションがここにたしかにあるんだから。
 できなきゃ奇跡を起こすしかありません。
 けれど今の自分になら奇跡くらい起こせるでしょう。
 これまでだって、不安で、できないかもしれないって、膝をつきそうになったことが何度もありました。
 けれどそのたびに友達が、仲間が、あるいは周りにいる誰かが、いつも支えてくれました。
 「トゥインクル、トゥインクルプリキュア――」
 今も目の前に友達がいます。
 同じ思いのため心をひとつに重ねてくれています。
 だったらいつも通り、きっと奇跡くらい起こせるでしょう。
 「スタートゥインクル、スタートゥインクルプリキュア、Ah――」
 いつも怖いこといっぱいの道行きだったけれど。今も不安でペンから目を背けたくなってしまうけれど。
 それでもひかるはいつもこうして精一杯に前へ進んできました。

 今日もいつも通り、自分の大好きなもののためにがんばるだけです。

消えないイマジネーション

 「ちっ。全てのイマジネーションは我の闇に消したはずなのに」

 なのに、消えませんでした。
 スタープリンセスたちのイマジネーションの力の半分はスターカラーペンを通してフワのなかに。残りの半分は宇宙じゅうの人たちに分け与えられていましたが、ひかるたちがトゥインクルイマジネーションとしてまとめあげ、こちらもフワに回収されました。そしてそのフワはダークネストが宇宙を闇で呑みこんだとき一緒に消えたはずでした。
 なのに、イマジネーションは未だここにあります。

 「元はプリンセスの力かもしれないルン!」
 「でも今は私たちのイマジネーションなんだ!」
 「私たちは自分たちで考え、思いを巡らせ!」
 「イマジネーションを育てていったニャン!」
 「だから、“私たちの”イマジネーションなんだ!」

 今ここにあるのはスタープリンセスたちがくれたイマジネーションだけじゃないからです。
 いつか星を眺めていたひかるの心に突然フワのイメージが降りてきたように、本来イマジネーションなんてものは何か想像力を刺激されることがあればいくらでも湧きあがってくるものです。
 ひかるたちはイマジネーションを通してひとりひとりが異なる自分らしさを実現させていきました。これから進むつもりでいる道もてんでバラバラ。同じスタープリンセスたちのイマジネーションの力を受け取って、これまでずっとプリキュアとして同じものを見つめてきながら、それでもみんな、異なる自分らしさを見つけるようになりました。
 今、ひかるたちが持っているイマジネーションのかたちはそれぞれ異なります。

 「――そんなのつまんないじゃん!」
 「そうルン。みんな違うイマジネーションを持ってる。だから、だから宇宙は楽しいルン!」
 「それがあるから苦しむこともあるニャン!」
 「でも、だから、わかりあえたときの笑顔が輝く!」
 「イマジネーションがあるから私たちは未来を創造できるんです!」

 これからもイマジネーションを育てていくつもりなら、今の宇宙のありかたのほうが合っているでしょう。
 この宇宙にはまだまだイマジネーションを刺激してくれるであろう未知の出会いが待っています。なかなか思い通りにはいかない出会いもあって、そのたびに新しい気付きをもたらしてもくれます。みんな違うってことがわかっているから、胸を張って自分だけのありかたを追求することもできるでしょう。

 「イマジネーションはさ。消すよりも、星みたくたっくさん輝いていたほうが、――キラやばー!だよ!」

 ひかるたちの宇宙はそういうふうにできています。
 スタープリンセスたちからイマジネーションを分け与えられた人たちは、そういうふうに、自分たちのイマジネーションをもっとたくさん、もっと自分らしく育めるように、今の宇宙のありかたをつくりあげていきました。

 だから、イマジネーションはいくら闇に呑みこまれようと消えることがありませんでした。

ハッピーエンドの条件

 「プリキュアが、儀式を・・・?」
 「なぜだ。なぜ、大いなる闇だけを消し、我を消さなかった」

 スタープリンセスたちのいう“pre-cure”とは、イマジネーションの力に元々備わっている自浄作用のことです。彼女たちはその力が行使されれば歪んだイマジネーションが元の姿に戻り、ダークネストのような明確な敵対者は消滅することになると考えていたようですが、実際はこの通り。
 ひかるたちやこの宇宙が育んだイマジネーションは多様性を尊んでいて、一度イマジネーションを歪ませてしまった人も“元に戻す”のではなく“そのままもう一度受容する”ことを選びました。さらにはダークネストすらも。
 現在イマジネーションの力を運用しているのはスタープリンセスたちではなく、ひかるをはじめとしたこの宇宙の人々なので、その機能の一部であるpre-cureの作用が彼女たちの知っているものと多少異なっていたとしてもむべなるかな。
 「消すわけないじゃん」
 要するに、ひかるたちは自分の意志で戦いぬいたおかげで、スタープリンセスたちに運命を委ねるよりはるかに望ましい勝利を勝ち取ることができました。

 さて、問題はここから。

 「フワはプリンセスのイマジネーションで生まれたんだよね。だったらさ、私のこの力で戻せないかな?」
 「プリキュアの力を? ・・・それでも完全な復活は難しいでしょう。おそらく記憶も、ワープの力も。確かなのは、それをすれば我らと同じく力を失います。プリキュアになることはもう――」

 「『それでもフワに会いたい』。ひかるならそう言うルン」
 その2択自体はさほど迷うようなものでもありません。フワを優先するに決まっています。
 ただ、こちらを選ぶと“これからもいろんな宇宙を冒険すること”ひかるが元々願っていた夢をひとつ諦めることになってしまいます。宇宙に出られないということはララやユニ、フワ、プルンスなどの大切な友達にも会いに行けなくなるということでもあります。どうしてひかるがそう思ったのか、とか考えると色々ややこしくなりそうなのですが、少なくとも結果的にはそうなります。スターカラーペンダントの翻訳機能を失ったらロケットの所有者であるララが地球にいづらくなりますしね。
 いくら迷うまでもない選択肢とはいえ、何かを諦めるというのはあんまりハッピーエンドに似つかわしくありませんね。プリキュアはこういうときワガママです。こういうとき、彼女たちは決まって両方を勝ち取ろうとします。

 これを解決する方法はシンプル。
 大好きなもののためにがんばること。自分のやりたいことを考え、そのためにやるベきこととずっと向きあってきたひかるたちですから、それしかありません。
 「私、また、きっと行くよ。自分の力で宇宙に!」

 本当にできるかどうかといったら実際のところ未知数です。
 未来を信じるというのは勇気が要ることで、それが辛いからこそノットレイダーたちのように建設的な思考を放棄してしまう人たちもいるくらいで。

 ただ、ひかるには夢見る思いを力強く支えてくれる友達がいます。
 「ひ、かる。あり、がと」
 スターカラーペンダントの翻訳機能が失われたララが、それでも自力で覚えた拙い日本語でひかるに話しかけます。
 大丈夫。なんとかなる。そういうことを証明してみせるような、努力家の彼女らしい最大限のエール。

 きっとひかるの夢は叶うでしょう。
 だってひかるのイマジネーションは“進む力”。トゥインクルイマジネーションは“みんなと奇跡を起こす力”。自分の大好きなもののためなら彼女はいくらでもがんばることができるでしょうから。

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