
・・・キラやば――。
(主観的)あらすじ
ひかるは夢を見ていました。
フワが帰ってくる夢。ララやユニとも再会できる夢。もう一度みんなとプリキュアできる夢。新しいプリキュアとも出会えちゃったりなんかして。会えなかった間のことを語りあい、冷めることもなかった旧交を温めあい。それはそれは楽しいひとときでした。
結局のところ、それは夢でしかないのだけれど。
朝起きてみれば何もかもが違っていました。
あれは夢。そして今日は、ひかるが夢を叶える日です。
ひかるは宇宙飛行士になっていました。今日、日本初の有人ロケットに乗って宇宙へ飛びたちます。
このプロジェクトにはまどかも参加していました。彼女は今、かつてのお父さんと同じ宇宙開発特別捜査局の仕事に携わっています。
この一大ニュースの報道にはえれなも参加していました。彼女も夢を叶え、ずっと憧れていた通訳者として活躍しています。
夢を叶えたのはひかるたちだけじゃありません。
地球で大きく成長したララの姿は惑星サマーンの人々の考えかたに多大な影響を与え、また、彼女自身も調査員として順調に管轄宙域を広げています。
ユニはアイワーンと協力してついに惑星レインボーを復活。みんなと協力して、自分たちの星を日に日に豊かに開拓していっています。
ふたりとも、いつかひかるたちと再会できる日を心待ちにしながら。
ひかるを乗せたロケットが宇宙へ出発します。
今日はひかるの夢が叶う日。まどかとえれなの夢がそれを手伝い、遠い宇宙ではララとユニの夢が再会に向けた準備を整えています。それから、もうひとり――。
ひかるの夢は叶いました。これからも叶うでしょう。
夢を叶えられたのは、ひかるたち自身がそれぞれがんばったおかげなんですから。
しれっと凝ったギミックを仕掛けてきた、『スタートゥインクルプリキュア』らしい最終話。
夢オチにフツーに騙されちゃったのなんて何年ぶりでしょうか。後で見返してみれば充分すぎるほどヒントは出ていたのにね。たぶん、先週の次回予告でひかるたちが変身しているのを見て、今のひかるたちのイマジネーションならそのくらいのこと自力でやってのけるだろうと納得しちゃったせいです。思い込みって怖い。
実際は私が予想していたよりもっとプリキュアらしい結末でした。プリキュアだった少女たちは自分たちで守った日常へ帰還し、けれど奇跡の力だけが日常のなかに息づきます。がんばった子の夢は叶う、といったかたちで。
プリキュアは子どもたちのためのヒーローです。
子どもたちはプリキュアに憧れて、自分もプリキュアみたいになりたいと夢を抱いて、平凡な日常をちょっとだけがんばって暮らしていくことになります。
だから、子どもたちに夢を見せたプリキュアとしては、子どもたちのその努力の意義を肯定してあげなければなりません。超常的な力を持ったヒーローは現実には存在しませんが、それでも、私たちは本当にヒーローになれるんだってところまでをしっかり提示してあげなければなりません。
それこそがきっとヒーローを描く大人のやるべきことであり、やりたいこと。責任であり、願い。
どうか誰もが自分を幸せにするための努力を諦めませんように。
ひかるたちはそれぞれが自分の夢を叶えるために努力し、それでいて、みんながひかるの夢を叶えるために少しずつ協力してもいきました。その成果が今話で描かれた希望に満ちた未来。
大人になったひかるたちはプリキュアに変身できなくなりましたが、それでもトゥインクルイマジネーションは健在です。プリキュアになれなくたって、奇跡くらい本当は誰にだって起こせるものです。
爪痕
「私、何も知ろうとしていなかった。姫ノ城さんのこと。でも、今は少しだけわかる。私、もっと知りたい! 彼女のこと!」
「同感だ。敵を知れば弱点もわかる。倒すのに好都合というものだ」
「違う! 私は、私のことも知ってほしい!」
「敵に自分を? はっ。何のためだ」
「わかりあうため!」
「『わかりあう』だと? くだらん。そんなことに意味はない」
「意味なくなんかないよ、きっと。そこからきっと生まれるんだ。キラやばー!なものが!」(第35話)
ひかるたちのトゥインクルイマジネーションは、“やりたいこと”とそのために“やるべきこと”、自分の夢への道筋を明確化できる人の心に生まれ、そして“他人を知りたい”と望み“自分を知ってほしい”と願う、相互理解を目指す思いによって育まれます。
前話のダークネストとの最終決戦ではこのうち“自分を知ってほしい”の部分の描写が若干わかりにくくなっていたので、今話はまずその補完から。
「オリーフィオ!」
「ありがとう。――ユニ」
惑星レインボーではついに復活させることができたオリーフィオに名前を呼ばれ、ユニは喜びの涙をこぼしました。
そこに込められたねぎらいと感謝の気持ちがよほど嬉しかったのでしょう。それから、もしかしたら彼女たちの一族ならではの理由もあるのかもしれません。(※ オリーフィオはユニの母親ですが、一方でユニだけじゃなく惑星レインボーの住人全員の母親でもあります)
「いいかげん出てくるニャン」
「・・・ごめんなさい、だっつーの」
また、ユニはためらうアイワーンに対して姿を見せることを促します。
怖いかもしれないけれど、アイワーンはそうしなければなりません。惑星レインボーの住人ときちんと向きあわなければ彼女はいつまで経ってもこの星でひとりぼっちのままですし、何より、惑星レインボーの人たちが彼女を許してあげることができません。
幼いころからずっと孤独だった彼女が幸せな未来を掴むためには、結局こうして、自分のことを知ってもらうことも必要でした。
オリーフィオが、辛そうにうつむく彼女のため手を差しのべます。
「一緒に行くのはいいルン。でも・・・、いいかげんホバーボート使うルン」
「だから。歩くララスタイルが流行ルン。――でも、ララのおかげで変わったルン。仕事もランク分けがなくなったし」
惑星サマーンは今、空前の地球文化ブーム。
コスモグミしか食べないはずのサマーン星で、ララの家の食卓にはおにぎりらしき不器用な塊が上がっています。お母さんもお玉を持って、どうやら他にも何か料理しているようです。
外に出てみればクタクタになりながらウォーキングに励む人たちの姿。移動に時間がかかるぶん、道ばたでちょっとしたコミュニケーションが起きやすくなったようです。そういえば、ひかるたちが来たときはどこに行っても全然人気のない星でした。
まるで懐かしの地球みたいな光景にちょっとだけ寂しさを覚えるララ。
「キラやばー! プリキュアのララルン!」
「キラやばー! ・・・って、どうしてルン?」
「マザーがよく言うルン」
意外なところから意外な言葉が飛び出してきました。
ひかるの口癖がマザーAI経由で流行しはじめているようです。
「また宇宙に行きたい」「もっとたくさんの宇宙人と知りあいたい」
遠く離れた地球でひかるの夢が今どのくらい進んでいるのかはわかりません。けれど、こうしてすでに叶えられているところもあります。
ひかるは最初、宇宙のたくさんの人やものと出会うことを楽しみにしていました。
けれど、少しずつ、少しずつ、やがて今度は自分のことも知ってほしいとも願うようになりました。そうして初めて相互理解につながっていくのだから。ただ出会うだけじゃ足りない。仲よくなりたい。
「こうしてさ、パジャマでみんなとおしゃべりだなんて、みんなに会う前、ちょっと前の自分からじゃ想像できなかったよ。私さ、友達と遊ぶよりひとりで天文台行ったりするほうが楽しかったから」
「でも、わかったんだ。ひとりでいるのも楽しいけど、みんなとこうしているのもすっごく楽しいんだって。みんなで新しい世界を知ったりとかさ、とっても、とーっても! キラやばー!なんだよね!」(第26話)
それはあくまでひかるのごく個人的な思いでしたが、ララやユニ、友達も同じ思いを共有するようになって、さらにその周りにいる人たちも共感するようになって、思いもよらないくらい遠くまで広まっていくことになりました。
だって、“相互”理解だからです。その思いは元々ひかるひとりで完結できるものではありません。誰かとつながることを望むようになったひかるの思いは、人と人とを伝って、宇宙全体へどんどん広まっていって――。その結果、たとえば前話、宇宙中の人たちとトゥインクルイマジネーションをひとつに重ねることすらできるようにもなったわけです。
「フワの力、長らくは戻りそうにないですね」
「あるいはもう・・・」
いいえ。
奇跡を行使できる可能性の片鱗はすでにひかるのもとを離れ、これまでひかるが出会ってきた人たちのなかに、あるいはまだ会ったことすらない人たちのなかにまでも、根付いています。
ひかるたちにトゥインクルイマジネーションの奇跡を行使することができていたのは、ひかるたちが特別な力を持った存在だったからではありません。ひかるたちはただ、自分の願いの元にみんなの思いを束ねただけ。
だとしたら、今や間違いなく宇宙人の一員であるフワにだって、きっと――。
夢と夢
「やっとひかるの夢が叶うのですね。宇宙にまた行くという夢が」
「うん」
「よく休めましたか?」
「バッチリ! 久しぶりにララやみんなの夢を見てさ。プリキュアになって。フワもいて。いい夢だった」
その日、ひかるは夢を見ました。
楽しい夢。嬉しい夢。焦がれていた夢。・・・ちょっと、都合がよすぎるところもあったかもしれない夢。
いい夢だと思いました。
その夢は叶いません。
いきなりフワの力が目覚めて何もかもうまくいくだなんて、そんな都合のいい話。
その夢は叶いません。
自分の力で宇宙に行くしかないって思っていたのに、それを腰砕けにするような話。
夢と現実は違います。
夢のなかではどんな荒唐無稽なこともお手軽に実現しえますが、現実は強固で、頑固で、そうそう簡単にはねじ曲げさせてくれません。
夢と現実は違います。
夢のなかでできたからって、現実でもそっくり同じことができるわけではありません。
ですがその日、ひかるは夢を叶えました。
だって、そうするしかなかったからです。
そもそもひかるは今朝見たような夢を夢のままで終わらせるつもりがありませんでした。いつかえれなやまどかが留学して、ララとユニも故郷に帰ってしまったとしても、それでもできることならみんなとずっと一緒にいたいと願っていました。もう二度と会えない、なんてこと認めるつもりがありませんでした。
そして夢を現実にしようと思ったら、まずは宇宙に飛び出して、ララたちの住む星空界に行かなければどうしようもありませんでした。当初はフワがいつでもワープで連れていってくれるという見込みもありましたが、今のフワは力を失っていて、しかも離ればなれです。だったら自分の力でどうにかするしかありませんでした。
ひかるのなかでやりたいこととやるべきことが明確になっていました。たとえそれが現実にはどんなに困難な夢物語だったとしても、そうするしかないのなら、そうします。
夢で現実は変えられません。夢と同じ感覚で現実を変えられると思ったら大間違いです。
だけど、現実を変えられるのは夢だけです。現実をどういうふうに変えたいかの見本となってくれて、諦めたくないと思える目標を示してくれるのは、いつだって夢だけです。
今朝の夢はいい夢でした。
またあんなふうにみんなと会いたいと思えるステキな夢でした。
夢のままで終わらせたくないと心から思う夢でした。
ひかるのこれまでのがんばりが間違いじゃなかったことを実感できる、そんな甘くまぶしい夢でした。
「会いたいなあ」
やっと、見果てぬ夢が叶います。
夢と夢と夢と夢と夢と
実際のところ、ひかるがいくらがんばったところで、本来その夢が叶うことはありえませんでした。
今どき宇宙開発て。有人ロケットを飛ばすのに充分な予算や人員を出してくれる国がどこにある。どこの国民が納得する。
いくらひかるが会いたい一心で努力しようと、そんなのララたちには関係ない。10年、15年、それほどの長いスパンを待ってくれる保証はない。
第一、仮に大気圏外まで出たところでその後は? 宇宙星空連合の持つワープ技術ですら行き来することが叶わないのに。
しょせん夢は夢。夢に現実を変える力なんてやっぱりありません。
――奇跡でも起きないかぎりは。
「私たち、宇宙開発特別捜査局にお任せください」
ロケット開発のプロジェクトはまどかが主導してくれました。
別にひかるの夢を叶えるために官僚になったわけではないはずです。宇宙開発特別捜査局はかつてお父さんが働いていた部署。留学の話は辞退しても、彼女はやっぱりお父さんのことを尊敬していて、ちゃんと自分で考えたうえで、お父さんと同じ道に進んだわけです。
そのうえで、ひかるの夢のアシストとなる業務に携わってくれたのもまた彼女の意志でしょうけれど。
「日本で初めての有人ロケットの打ち上げは我々も喜ばしく思います。日本の宇宙への第一歩を祝福したいと思います」
えれなも報道の第一線に参加してくれました。あくまで自分の夢であった通訳者として受けた仕事ですけどね。
とはいえ彼女もまどかと連絡を取りあい、ひかるの夢が叶う瞬間に特別な思いを込めて駆けつけてくれています。
「調査でたくさんの星をまわったルン。――でも、地球には遠すぎて行けないルン」
ララは何年経っても待ちつづけてくれていました。むしろ彼女自身調査員としてどんどん活躍の場を広げ、それでも地球までは行くことができない自分の力不足を寂しく思うほどでした。
「会えるわ。ひかる、言ったニャン。『私も会って話してみたい。この星の人たちと!』――まだ約束、果たせてないニャン」
あのユニでさえ待ってくれていました。いつか会えることは当然のことと信じて、自分の星の開発を進めながら、のんびり泰然と待つつもりでいてくれました。
「もう一度会いたいルン」
「会いたいなあ」
「会いたいルン」
「みんなに。会いたい、みんなに。みんなに・・・会いたい!」
奇跡というものは案外こういうかたちをしています。
ひかるも、ひかる以外のみんなも、一番に優先してきたことは自分の夢を叶えることです。彼女たちはそれぞれのステージで自分のために努力して、それぞれのステージで順調に幸せな未来を築きつつあります。
その一方で、彼女たちはひとつの願いのもと全員で協力しあってもいます。「会いたい」と。そのためにひかるの夢を支えて、ひかるにできないことを受け持って、ひかるが夢を叶えられることを一緒に信じて。
それこそがひかるたちの見つけたトゥインクルイマジネーションの輝き。ひとりの力では実現できないことを、たくさんの人の力を束ねて叶える。宇宙をつくりかえようとしたダークネストにすら対抗できるほどの巨大な力を、彼女たちは、あるいは私たちは、ごく日常的に行使しています。
それはひとりの夢のため他の人々に犠牲を強いるようなものですらありません。あくまで誰もが自分のために日々生きているなかで、ステキな夢だから協力したいと思えること、お互いのことが好きだから手を取りあおうと思うことの集積です。
「みんな違うイマジネーションを持ってる。だから、だから宇宙は楽しいルン!」
「それがあるから苦しむこともあるニャン!」
「でも、だから、わかりあえたときの笑顔が輝く!」
「イマジネーションがあるから私たちは未来を創造できるんです!」
「イマジネーションはさ。消すよりも、星みたくたっくさん輝いていたほうが、――キラやばー!だよ!」(第48話)
誰もが自分の意志を持って、自分のために行動していながら、それでいてお互いに助けあうこともできる。みんな違うからといってバラバラに好き勝手するのではなく、みんなが自分の気持ちを大切にするからこそ、誰かとつながり、みんなで力を合わせて大きなことも実現できる。
そんな奇跡みたいによくできた、ある意味で都合のいい仕組みが、イマジネーションの力とともにこの宇宙に満ちています。
「10、9、8、7、6、5、4、3、2、1――」
ひかるは夢を叶えました。
たくさんの人の助けに支えられながら。たくさんの人と思いをひとつに重ねながら。
・・・もうひとり、絶対にこの場に居合わせないといけない子がいましたね。
その子はひかるにとって最初の友達で、
ひかるとずっと一緒にいたいと言ってくれた子で、
ひかるたちの役に立ちたいといつも考えていた子で、
みんながバラバラの道に進むときひかるを安心させることができた子で、
すなわち、ひかるの夢を叶えるうえで最後の障害となるものを取り除く奇跡を行使できる唯一の子。
「フワがいるから大丈夫フワ。みんなといつでも会えるフワ!」(第44話)
スタープリンセスたちはフワの力が戻る可能性に悲観的でしたが、どうやら彼女たちはまだ理解していないようです。イマジネーションを持つ人々がつくった驚くべき世界のありようを。かつて自分たちが「見てみたい」と言っていたものがすでにかたちとなっていることを。きっとフワがスターパレスから姿を消したとき、前話でプリキュアが儀式を行ったときと同じくらい驚いた顔をしていたでしょうね。
フワはひかるたちの友達で、望まれてこの宇宙に生まれた、この宇宙に住む宇宙人のひとりです。私たちと同じで奇跡くらい起こせるでしょう。
コメント
本放送観終わった時点でAパートが夢オチだと全く分からなかったという、私の馬鹿すぎる話は置いといて(まあ色々と違和感はあったんですが)
大人ひかるの隣には同僚だろう男性宇宙飛行士もいます。
彼もきっとフワープの奇跡に立ち会うのでしょう。
……となると、ああいう仕事って映像記録とかされるでしょうし、多分拒む理由もないので【地球人が星空界と公的な形で交流できるようになる】んですね。
さて、どれほどキラやば〜☆な世界になるんでしょう。
違和感があったのに見破れなかったって、一番悔しいパターンですね。人に話しても言い訳としてしか受け取ってもらえないからひとりで悶々とするしかないヤツ。私も同じパターンだったわけですが。
なんか聞くところによると、感謝祭(「1年間の応援に私たちからありがとうの気持ちを込めて!」のアレ)で演じられる朗読劇の内容が本編終了後を描いた書き下ろしストーリーらしいですね。もしかしたら地球が宇宙星空連合に加入した未来も語られるかもしれません。映像ソフト化してほしい・・・。来年やるなら同時web配信もしてほしい・・・。
ただ、交流するならインフラ整備が課題ですね。遠すぎてフワープでしか行き来できないので。まさかフワを酷使して定期便を走らせるわけにもいきませんし。・・・ああ、マタークッキーを食べさせて増やせばいいのか。(非人道的発想)
とりあえず、現時点ですでに地球文化フリークな惑星サマーンが大変なことになるのは間違いない。