ヒーリングっどプリキュア 第3話感想 あなたが私を教えてくれた。私はあなたに教えてあげる。

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私はあなたより大きいから、少しは力になれると思う。もし勇気が足りないなら、私のを分けてあげる。大丈夫。私がいるわ。

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(主観的)あらすじ

 ペギタンは悩んでいました。今日はお留守番。ラビリンはのどかと一緒に学校に行き、ニャトランもパートナー探しに出かけています。ペギタンだけ何もしていません。早くパートナーを見つけて地球をお手当する役目を始めたい、その思いはみんなと一緒なのに・・・。
 怖いんです。怖くて、前へ踏み出せないんです。
 けれど、そうしているうちに、いつの間にかラテが姿を消してしまいました。探さなければなりません。嫌が応にも家の外へ出なければならなくなりました。

 ちゆは気になることを見つけると放っておけなくなる性格でした。このあいだ、学校で大きな怪物が暴れていたところに不思議な小動物たちを連れたのどかがいるのを見かけました。確かに見たのに、のどかはそのことを隠そうとします。気になります。
 追求したいと思っていたところで、学校に迷い込んできた仔犬を見つけました。このあいだのときのどかが連れていた子でした。のどかに話を聞いてみると、この子はラテという名の彼女の飼い犬で、どうやら勝手に家を抜け出して学校までついてきてしまうようでした。ちゆはひとまずラテを職員室に預けることを提案します。
 ちゆが親身に相談に乗ってくれることを喜ぶのどか。けれど、ちゆにしてみれば当然のことをしたまでです。だって、気になるから。放っておけないから。ついでに、のどかが喜びそうだと思って自宅の温泉旅館に招待することにしました。ペットと一緒に入れるお風呂も完備です。

 ところが、その温泉旅館にメガビョーゲンが現れました。ここはちゆにとって大好きで、大切な場所。病気になんてさせるわけにはいきません。けれど、プリキュアに変身して守ろうとしてくれたのどかはちゆを庇って怪我してしまい、絶体絶命の大ピンチ。
 そんなとき、物陰に隠れているペギタンを見つけました。この子がいればのどかと同じように変身できるかもしれない。大切な場所を守るため、自分にもできることがまだあるかもしれない。そう思ってちゆは彼に声をかけました。
 ペギタンは怖がっていました。せっかく力を持っているのに自分に自信がない子のようでした。ならば、とちゆは約束します。私もあなたのために少しは力を貸してあげられる。勇気が足りないなら私のを貸してあげる。
 だから、力を合わせてお互いの大切なものを守ろう。

 こうして2人目のプリキュアが誕生しました。
 大切な温泉旅館を守れたあとも、引きつづきプリキュアを続けることをちゆは約束します。だって、せっかく出会えたペギタンのことが気になりますから。

 ビクビクするのどかがかわいい。

 ひなたとラビリンの出会いがそうだったように、ちゆとペギタンもまた、お互いのことをよく知らないままにパートナーとなりました。
 それもしかたありません。だって、一度パートナーにでもならない限り、ふたりはどうあってもお互いに出会うことすら叶わなかったでしょうから。ペギタンが臆病な子ですからね。

 ひとたび出会ってみれば、心の肉球がキュンとときめきました。
 自分は臆病なのに、相手のことをまだ何も知らないのに、なんとなく、この子とならパートナーになれると直感的に信じられました。
 知りあうのはそれからでもいい。
 だって、好きな子のことをたくさん知りたくなるのは当然のことで、自然なことだからです。そういう出会いかたがあっていい。誰かを好きになるのってきっとそういうもの。だから、相手のことを知るのは好きになってからでいい。

 ・・・我ながら清々しいまでに『スタートゥインクルプリキュア』のときと真逆のことを言っていますね。別に矛盾しているつもりはないのですが。ほら、「好き」と「知りたい」って、もともとそういうものじゃないですか?

気になることを放っておけないだけ

 「花寺さんは見たんじゃない、怪物。始業式の日、下校してからもう一度学校に来てたでしょう?」
 「怪物が出たあと学校で見かけたから。さっきはどうして学校に来てないなんて言ったの? あのとき一緒にいた、なんだか不思議なウサギやペンギンと関係ある?」

 ちゆは――、なんというか、ぱっと見の印象と違って『スタートゥインクルプリキュア』の星奈ひかるみたいな子ですね。好奇心先行でグイグイ来ます。
 前話でのどかの体験入部ツアーにひととおり付きあったうえで、さらに運動経験のなさを指摘しに来たのも気になったからなんでしょうか。あとメガビョーゲンから逃げなかったのも。

 別にのどかが隠しごとをしているからといって、そんなのちゆにとっては本来関係ないことです。別にどうしても知らなきゃいけないほどのことではありません。
 だからこそ、こういう子の追求はすごく厄介。
 なんといっても興味本位です。損得勘定抜きの純粋な好奇心である以上、どんな話題逸らしも通用しません。たとえはぐらかしたとしても飽きるまで延々と興味を持ちつづけます。

 「み、見間違いじゃないかなあ」
 「そう?」

 下手な嘘をついても納得なんてしてくれません。
 自分で目撃したのだから間違いないことだって確信していますし、何より、好奇心が満たされません。「見間違いだ」ってことで納得するより、「やっぱり何か隠してる」と思っていたほうが面白い。だから納得する気になれません。
 ちょっとひねくれたものの見かたかもしれませんが、納得できるかどうかというのは案外そんな基準で判断されるものです。信じるのと信じないの、自分にとってはどっちがいいか。
 反対に、真実か虚構かという基準で納得できる人はいません。だって、何が真実なのかだなんて個人の主観からはそもそもわかりっこないんですから。それで納得できるのは、疑いようのない根拠を示されて「これ以上追求しても面白い答えは出てこない」と諦めがついたときだけです。

 「えっと・・・、飼ってるの。ちょっと珍しいウサギとペンギンも。あのときも、この子たちが逃げちゃったのを探しに来て、勝手に学校入っちゃったから怒られるかなって。だから」
 ただし、上手な嘘でなら意外と納得してくれます。たとえ虚構であっても、好奇心を満足させるような面白いストーリーなら。
 ほどよくそれっぽく。それでいて、別の好奇心を刺激するもの。のどかは空中に浮かぶ&人間の言葉を話す謎生物をペットとして飼っていると認めました。ただのペットだというならそのうち会わせてくれるかもしれません。というか、会ってみたい。

 「いつか珍しいウサギさんたちにも会わせてね」
 「うん!」
 「そうだ。そのときはウチに来て。きっと喜んでもらえると思うの」

 言質取った。
 あげくダメ押し。
 「ここはペットも入れる温泉なの。日帰りの入浴も大歓迎だから、よかったらご家族で遊びに来て。ウサギさんたちもね」
 執拗にダメ押し。

 こういうふうに書くと「この子こわい」という印象にしかなりませんが、もちろん実際のところちゆの好奇心はそれだけのものではありません。星奈ひかるの好奇心が「フワを守りたい」「みんなを守りたい」という感情につながっていったのと同じように。
 「授業中は職員室で預かってもらえるよう、先生にお願いしたほうがいいわね。私も一緒に行くから」
 「ありがとう、沢泉さん。いつも優しくしてくれて」
 「大したことしてないわ。気になることを放っておけないだけ」

 好奇心が強いということは、そのまま他人に積極的に関わりたい気持ちも強いということでもあります。
 だってほら、自分の部屋に籠もりっきりじゃ新しい出会いなんて一向に訪れませんから。

 ねえ。

僕は何もできてない

 「はあ。・・・なんとか人間に見つからずにパートナーを探せないかペエ」
 絵に描いたようなダメ人間っぷりを発揮するペギタン。
 いや、まず君らの探しているパートナーがそもそも人間だから。しかも心の肉球にキュンとくる人を選ぶんならとりあえず会ってみるしかないから。

 「僕は何もできてないペエ。パートナーも探しに行けないし、ラテ様のお世話もちゃんとできないペエ」

 この子の場合、本当に人間が怖いってだけじゃなさそうです。人間が怖いというより、人間と会ってもそのあとどうしたらいいかわからないって感じです。
 実際のところやるべきことはわかりきっています。ラビリンがどうやってのどかとパートナーになったのかを見ているんですから。会ってみて、話してみて、それで心の肉球にキュンと来るものがあったらその子がパートナーです。ニャトランなんかはそのあたりちゃんと理解してパートナー探しに出かけていますね。
 わかっているのに、できない。・・・なんか去年、そういう人たちを1年通して見てきたような。
 ちゆが星奈ひかるなら、ペギタンはノットレイダーです。さすがに彼らほど拗らせてはいませんが、やるべきことが見えているのにやらない、思考のデッドロックぶりは彼らととてもよく似ています。

 うまくやれる自信がないから、前に踏み出せないんです。
 失敗したら今よりひどい目にあうかもしれないから、現状を変えられないんです。
 今の自分じゃ満足できないくせに、未来を過剰に恐れて、現状のまま我慢しようとしてしまうんです。そのくせ結局今のままじゃダメだってこともわかりきっているから、なおさら自己嫌悪。以下ループ。
 我慢。自己嫌悪。我慢。自己嫌悪。

 「た、大変ペエ! ラテ様がいなくなっちゃったペエ!」
 ラテはどこまで理解していてお出かけしたんでしょうね。
 こういうときの解決方法はただひとつ。それでも前へ進むことです。

 「どうしよう、ラビリン! ラテ様がいなくなっちゃったペエ!」
 「ラテ様? なら大丈夫ラテ。あの人が助けてくれたラビ」
 「あの人が。・・・よかった、ペエ」

 ペギタンとラビリンの温度差よ。
 後から振りかえってみれば、案外取り返しのつく失敗というのはいっぱいあります。
 自分のことでいっぱいいっぱいなときはなかなか気付けないとしても。
 そんな失敗を悔いるよりもずっとステキなことがもっと他にあるはずです。

 ニャトランたちにはラテのお世話を任されていました。
 それすらも失敗しました。ますます自分がイヤになります。
 けれど、そのおかげでペギタンは外に出ることができました。

 できましたよ、ペギタン。

私の知らない私

 ――ふと、意外なことを言われました。

 「ふふ。沢泉さん、おうちが大好きなんだね。すごく楽しそうに教えてくれるから」

 「え?」と、心から驚いたようなトーンでした。何か思うところがあるんでしょうか。
 けれど、言われてみればすぐに実感します。
 「そうね。大好きで、大切な場所よ」
 こちらも心の奥底から染み出してきたかのような、愛おしそうな声色。

 そんな大切な家が、今、ビョーゲンズによって蹂躙されようとしています。

 そうとも。大切だ。大好きだ。絶対に守らなきゃいけない。
 今、身を挺して守ってくれているのはのどか。運動が苦手みたいだったのに、それでも健闘してくれています。
 「最初は欲ばらないこと、かな。まずは基礎体力をつけながら、自分の一番やりたいことを決めて、がんばるといいんじゃない」(第2話)
 すごい。あんなにできている。あんなにがんばれている。きっとあれがあの子の一番やりたいことなんだ。
 一番やりたいことをやる人って、あんなにもすごいものなんだ。
 「――私にできることはないの?」
 やりたいことなら、ある。
 さっきのどかが教えてくれました。私はこの家を大切に思ってる。絶対に守らなきゃいけない。
 だったら、――できることを見つけなきゃ!

 ――ふと、意外なことを言われました。

 「ペンギンさん! もしかして、あなたもああやって戦えるんじゃない?」

 できるかどうかといったら、できます。そのために地球に来たんですから。
 「む、無理ペエ。・・・自信ないペエ。ラビリンでも苦戦してるのに、こんな僕の力じゃ君を危ない目にあわせるだけペエ」
 ただ、うまくできるとは思っていません。ダメダメな自分じゃきっと手ひどく失敗します。ラテのお世話に失敗したさっきみたいに、また後悔することになりそう。

 「でも、あなたも助けたいんでしょう?」

 もうひとつ、意外な言葉。

 「怪物は私も恐いわ。でも、それ以上に大切なものを守りたいの。どうしても守りたいの! あなたは?」

 私以外の誰かが教えてくれた意外な私が、ちゆに勇気を貸してくれます。何をおいてもやらなきゃいけないことがある。だったら、私は自分にできることをやらなきゃいけない。

 「・・・守りたいペエ」

 だからペギタンは今ここにいます。ラテがいなくなったことに気付いたとき、彼は諦めませんでした。パートナーを探すことには尻込みして部屋に引きこもっていた彼も、ラテがいなくなったときには勇気を出して部屋の外へ飛び出しました。
 それだけは絶対に取り返さなきゃいけない失敗だったから。もっと悪いことになる未来なんて考えもせず、彼は前へ進みました。
 だから今、ペギタンは部屋の外にいます。
 この期に及んで本人はまだ気付いていませんが、この子はちゃんとできる子です。

 「守りたい」と言いました。
 他人のため積極的に何かしてあげたいと思える子は、すなわち好奇心を持つ子でもあります。他人に興味を持たなければ、そもそも何かをしてあげることなんてできっこないんですから。
 ちゆとペギタンは、遠いようで、よく似ています。

 「私はあなたより大きいから、少しは力になれると思う。もし勇気が足りないなら、私のを分けてあげる。大丈夫。私がいるわ」
 ここでパースを崩してちゆの手を実際より大きく写しているカット、すごいいいですよね。

 僕の知らない意外な僕を教えてくれた人が、ペギタンを頼ってくれています。こんなに大きな人にもまだできないことがあると。僕が一緒ならそれができるんだと。だったら、僕は自分にできることをやってみたい。やってみよう。

 力を貸すのはちゆで、勇気を貸すのもちゆ。
 いいえ。
 ちゆが必要としているのは何よりもペギタンの持つ力。そして、ちゆが貸す勇気もあくまでペギタンに足りていない分だけ。

 力を貸すのはちゆで、力を貸すのはペギタンで、勇気を貸すのもちゆで、勇気を貸すのもペギタン。
 ふたりで一緒にプリキュアしましょう。ふたりにはお互いが必要だから。
 心の肉球がキュンときます。

 ――そして。

 「はあっ! 今だよ、フォンテーヌ!」
 キュアフォンテーヌのピンチをキュアグレースが助けてくれます。
 そもそもこの変身はふたりだけではうまくできませんでした。ふたりがパートナーになれたのは、のどかやラテのおかげでもあります。

 これでプリキュアは2人になりました。
 そして、プリキュアに変身するのはこれで4人。

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    コメント

    1. 東堂伊豆守 より:

      うーむ、どうも”自己犠牲”という観点で評価したとき、本当にヤバいのは花寺のどか/キュアグレースではなく沢泉ちゆ/キュアフォンテーヌであるような気がしてきたぞ……。
      のどかが暴走気味になる理由って、経験不足からくる加減のわからなさに加え、長いこと療養生活を強いられ「同世代の子達から置いてきぼりを喰った」という焦りやコンプレックスを抱えているから、のように思われるんですが、そうだとすれば「経験を積」んで「自信をつける」ことで彼女の暴走癖は改善される余地が十分ある、と考えられます。
      ところが……ちゆの方は(何らかの理由で)「献身」に対する責任感に取りつかれちゃってる印象が拭えないんですね。で、彼女の身体的・精神的ハイスペックさが”自己犠牲”に邁進するリスクを(今のところ)顕在化させないで済ませている……だけのように思えてしまう。
      さらに言えば、恵まれた健康体をフルに活かして生きてきた沢泉ちゆは、間違いなく花寺のどかに焦りとコンプレックスを感じさせる対象でもある筈で……そんなちゆの抱える”意外な”脆さを知ることで、のどかの「健康体に恵まれた子達」へのコンプレックスと焦りが希釈されるーーーーーーという展開が用意されていてもおかしくはない、かなぁ、と。
      さて、先行する2ユニット「のどか/グレース&ラビリン」「ちゆ/フォンテーヌ&ペギタン」がいずれも”暴走”タイプ……となると、一見チャランポランなようで実は一番周りも自分も見えている冷静なリアリスト・ニャトランの働きが今後のチームの命運を左右するのかもしれず、彼とコンビを組むーーーーーー平光ひなた/キュアスパークルが担う役割もまたチームの”ストッパー”とか”バランサー”なのかもしれません……が、はてさて。

      • 疲ぃ より:

         ちゆさんホントこれ↓に尽きる子だと思いますよ。
         「大したことしてないわ。気になることを放っておけないだけ」
         親切なのは興味津々な気持ちの裏返し。他人を観察していると、困っていることとか悩んでいることとか色々見えてきて、そして今度はそれが解決できたときの顔も見てみたくなる。だから親切にする。
         私はそういう、むしろ子どもっぽくて無邪気な子のような印象を受けました。まあ、つまるところ一旦スイッチが入ったらイケイケゴーゴー暴走するタイプですね。

         そういう好奇心強めなタイプの子が将来的にひなびた温泉旅館を継ぐことに満足できるのか、それとも大勢のお客さんと接することができる仕事ということで好きになっていくのか。
         個人的には今話で彼女が一瞬見せた家業への複雑な感情がこれからどうなっていくのかが楽しみです。

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