超人女子戦士ガリベンガーV 第49話感想 きっと歌姫の瞳にも映るであろう地上の星空を思って。

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生徒役:小峠英二

あれはすごかった。この仕事をやってなかったら見ることのなかった景色でしょうからね。

出演バーチャルYouTuber

電脳少女シロ

 あのハイトーンなキャラクターボイスでまともに歌うのは無理があるだろう・・・と思っていたら、いったいどれだけのボイストレーニングを重ねたのやら、去年の生誕祭あたりからしっかり厚みのある歌声を披露してくれるようになりました。やることなすこといちいち不可能なんてないことを体現してくれます。
 「いるだけで○○な子」という表現がこれほど似合わない人物もなかなかいないでしょう。いればだいたい何かしています。傍若無人に暴れてみたり、賢く機転の利くトークを繰りひろげてみたり、斜め上にカッ飛んだ名言を連発してみたり、他の共演者を気遣ったり、イジりたおしたり、あるいはゴキゲンにキュイキュイ笑っていたり。ちょくちょくワケワカンナイこともやりたがりますが、そういうときは「シロちゃんの動画は為になるなあ!」と、とりあえず納得しましょう。彼女はあなたが為になることを望んでいます。
 まるでアブない人のようですが、そして実際アブない人なのは確かなのですが、ああ見えて彼女は共演者をよく見ています。聡明です。共演者の対応力を推し測り、ギリギリ捌ききれる程度のムチャ振りを仕掛けるのです。おかげでいつのまにか人脈の輪がずんどこ広がってきました。タチが悪いったらありゃしない。

天神子兎音

 いかにも八百万の神々の一柱、みたいな和装のいでたちとウラハラ、実はゴリゴリのJ-ROCKを得意としている現代っ子500歳ロリータゴッド。パンクファッションも好んで着こなしているのですが、はたして小峠教官はそちらの衣装の彼女を同一人物だと気付いてあげられるでしょうか?
 京都在住、ちょっとお金にがめつく、割とヨゴレ、アニメやマンガを愛し、コンビニ飯と缶チューハイもこよなく愛し、あと喋ってる途中でちょくちょく噛み様。基本、大上段からファンを見下ろすような高飛車なスタンスが持ち味です。なにせ神様ですから。ただしけっしてドM向けなキャラクターというわけではありません。サドとマゾは両立しうる性癖なのでそのあたりはご安心を。なんか理不尽にエラそうにしている女の子はポンコツであればこそイイのです。
 普段はとりあえずドッキリ企画をしてみたり、ひととおりYouTubeでの流行に乗っかってみたり、どちらかというと生身のYouTuberに近いノリで活動しています。それでも最近は生配信と歌動画の比率が増えてきたぶんバーチャルYouTuberっぽくもあるか?

燦鳥ノム

 水のように清らかに、太陽のようにみんなを照らす、サントリー公式バーチャルYouTuber。クラフトボスや特茶などのキャンペーンキャラクターに起用されたり、デカビタCのweb CMに出演したりと、なかなかの活躍です。実際に広告塔として成果も着々出ている様子。気がつけば日本最大の広告賞であるACC TOKYO CREATIVITY AWARDSにおいて、ちゃっかりシルバー賞まで受賞していました。その割にサントリーの公式サイトではニュースリリース以外ほとんど扱いがないというちょっと不思議な立ち位置。公式アカウント一覧にくらい載せてあげて!
 楚々とした佇まい。凜として朗らかな人柄。そして明け方の瑠璃鳥のような爽やかな歌声。まるで清楚という言葉が正しい意味で(!)具現化したかのようなキャラクターです。一方で茶目っ気も相当強く、一切打ち合わせしていないゲームのルール説明を同僚に丸投げしたり、お笑いタレントの持ちネタを強奪して本当にあちこちで披露してみせたりと、数々の武勇伝を持っています。なのに清楚なことには疑いの余地がないという。

八重沢なとり

 無尽蔵の体力と頑丈な喉で最近立て続けに長時間配信をこなしているエネルギッシュ女子高生。これが若さか。というか四半日以上途切れることなく喋りつづけるとか、もはや身体のつくりから違うのではないかと疑う領域。でもよくよく考えてみれば私も大学時代までは何時間もお喋りできたものでした。若さ、か。
 彼女の最大の持ち味はなんといっても親しみやすさでしょう。イラストが上手かったりリズム感が優れていたり、何をやらせてもたいがい器用にこなす優等生のはずなのですが、なぜだかいつも隙だらけ。ついつい軽口を叩いて怒らせたくなってしまいます。感受性高く、涙もろく、隣に座ってころころ変わるいろんな表情を眺めていたくもなります。
 ちなみにスカートの話は取り締まり対象なのでご注意を。あなたが言わなくても向こうから話を振ってきます。罠だ! 稲穂を振りまわして攻撃してくるので、うまく躱してお煎餅でご機嫌取りしましょう。それで風紀が守られます。

感想

 前回の感想文で関係ないことをダラダラ書いていたあたりバレバレなところもあるかもしれませんが、正直に言ってしまえば私はバーチャルYouTuberの歌系コンテンツにほとんど興味がありません。
 これは私がバーチャルYouTuberをキャラクターコンテンツとして楽しんでいるためです。まずキャラクター表現があって、そのキャラクター性に厚みを持たせたりコンテンツ展開としての広がりを持たせるためにキャラクターソングがあるという感覚で捉えています。なので今回の特集のようにまず歌ありきで紹介されると主従が逆転してしまって、あんまり思うところが無いんですよね。
 たぶん、アイドル文化とか配信文化とかの文脈からバーチャルYouTuberを好きになったかたならまた違った語り口を持つのでしょうが、あいにく私はその方面には疎いもので・・・。
 けっして歌の上手い下手であれこれ評価しているわけではないです。単純に私の個人的関心の問題。あくまで音楽への興味がバーチャルYouTuberへ向ける興味とは別腹ってだけ。

天神子兎音

 「なんだよあの『子・兎・音! 子兎音様!』って偉そうなコールは」
 あえてへりくだった立場になる遊びも参加型コンテンツとして面白いってことです。
 それこそガリベンガーVの授業中に見せたふるまいもそんな感じでしたが、天神子兎音はけっして神性を感じさせるようなキャラクターではありません。むしろ神様を自称している割にダメ人間寄り。まともに考えるなら信仰対象になんかしたいと思えないキャラクターをしています。
 ですが、そんなポンコツ500歳ロリっ子が「よっ! ポンコツ信者さんたちー!」と、やたら上から見下してくる目線で崇拝しろと要求してくるんです。ラフに。そこが面白いところ。素直に応じてあげて、おだてられて喜んでいる姿を楽しむも良し。わざと上げてから落として、茶番めいた煽りあいを楽しむのも良し。
 こういうのはキャラクターコンテンツでありながら双方向コミュニケーションが取れるバーチャルYouTuberならではのエンターテイメントのひとつですね。一種の参加型演劇空間。ロールプレイングゲームでわざとネタ選択肢を選んでゲームキャラの反応を楽しむ遊びにも似ます。

 「やっぱりファンのかたにね、コールしてもらったらVTuberも爆アゲですからね。コールが実際に組み込まれたオリジナルソングって素晴らしいんですよ」
 このあたりはバーチャルYouTuberに限らず舞台経験のある人全員がしみじみ思うところでしょうね。客席が冷えきった場でいつもどおりの芸を披露することほどしんどいこともありません。
 たまに客の反応が悪いとか言ってライブを中断してしまう気難しいアーティストの話が聞こえてきますが、あれ本人からするとマジでやりにくいんです。アマチュア演劇で安易にコメディものの脚本を選んでしまって、案の定客席から笑い声が全然上がらず本番中に役者が泣き崩れてしまうなんて悲劇も後を絶ちません。
 向こうはお客さんを楽しませようと一生懸命準備したうえで舞台に立っているわけですからね。「楽しんでるよ!」という気持ちの表明としてリアクションを返してあげる、つまり「今あなたがしてくれていることは私たちにとって嬉しいことなんだよ」「あなたががんばってきたことにはちゃんと意味があったんだよ」とはっきり伝えてあげることは、きっとあなたの想像するより何倍も何倍もはるかに大きく彼女たちのパワーになっているはずですよ。ライブに限らず、YouTubeの配信でも。
 その点、コールというのはいいものですね。なにせ定型文のやりとりだけでも充分に客側の好意が伝わります。気軽に参加して、気軽に気持ちを伝えてあげられます。

燦鳥ノム

 「これはMVみたいなもんか」
 たぶん小峠教官は客席が見えないせいで微妙に勘違いしているんだと思いますが、これはオンライン配信で行われた生ライブの映像です。リアルタイムで歌声が届けられ、観客の応援メッセージなどもリアルタイムに拾われています。
 投げ込まれているのはクラフトボスとデカビタCのペットボトル。燦鳥ノムといえばクラフトボスの販促をしている印象が強いですが、デカビタCも動画内でよく飲んでいますね。
 ちなみに前回のときのそらの映像も同じライブイベントのものだったので同じくものが投げ込まれていました。あちらは彼女のマスコットキャラクターであるクマのぬいぐるみでしたね。

 「声の透明感もさることながら、すごく凜とされていましたね」
 「うん。たしかにちょっといつもとイメージが違うね」

 むしろ彼女の場合はああいうパワフルな姿こそ本質というか・・・。よくよく思い返してみるといっつもテンション高くてムチャクチャなことばかり言っているんですが、あの声と物腰の柔らかさのせいでひたすら清楚な印象として残ってしまうのが燦鳥ノムという人物のキャラクターです。
 燦鳥ノムのオリジナルソングは3曲とも彼女のキャラクター性を丁寧に楽曲全体に織り込んでいてとてもステキですね。歌詞だけじゃなく、フレーズひとつひとつまでまさに燦鳥ノムって感じです。『僕たちはまだ世界を知らない』に限ってはそれ以上にGRAY感が強烈ですが。個人的には『君にルムウム』が清楚で偽装された力攻め感を濃厚に感じられて一番好きです。

八重沢なとり

 「心に届いてきますよね、歌が」
 八重沢なとりの歌にはいかにもカラオケで慣らした感のあるクセがあるんですが、そんなのどうでもよくなるくらいにエネルギッシュなところが魅力ですね。変ないいかたになりますが、やっぱり頭のいい子なんだなと思います。歌詞と曲とを丁寧に読解して、どこにどういう感情表現を乗せるべきかしっかり考えながら歌っています。だからこそ篭めるべきところに心のエネルギーが篭もるんです。
 歌はパフォーミングアーツです。本質的にアートであり、従って表現作品です。テクニックがあることに越したことはありませんが、それだけでは聞く人の心に叩きつけるべきものが乗りません。また、心にあふれんばかりのパッションを抱えていたとしても、それをかたちにできなければ結局誰のところにも届きません。
 絵画の素養もあるからなんでしょうか。この子は荒削りながら、そういう“表現する”ということの意味をよく思考しています。誰に何を伝えたいのか、自分が何を思っているのか、そしてどういうふうに訴えたいのか。そういったことを深く考えながら歌っているのが伝わってきます。ちょっと頭でっかちなぶん考えて歌っているところ以外の表現が疎かになりがちなところだけ玉に瑕ですが。とにかく「これが私なんだ!」と訴えかけてくる圧がすごい。

 「情に厚そうだよね。やっぱあんだけじっちゃばっちゃ言ってたらね」

電脳少女シロ

 「これ、初めてオリソンをお披露目した回だったんですよ」
 このときのインパクトたるや。
 電脳少女シロはこのイベントまでめったに歌を披露してきませんでした。それまでの活動で数曲だけ歌っていたのを聞いたこともあるんですが、はっきりいって声に厚みがない、迫力の足りない歌声だと思っていました。そもそもの声質があのハイトーンですからね。あの声のままマトモに歌うのは大変だろうというのは容易に想像できたので、きっと本人も歌に苦手意識があるから歌うのを避けているんだろうなと私は勝手に考えていました。
 それが、時は巡ってこれですよ。やられました。みごとに私の浅はかさを突きつけ返されました。いったい見えないところでどれほど努力してきたのか。元々人並みならない素養があるにしても、それにしたってどれだけの努力を重ねたらここまでムチャクチャな無理を押し通すことができるのか。私が不可能と思い込んでいたものは可能でした。彼女が可能としました。
 最初『叩ケ叩ケ手ェ叩ケ』ときは本当に心からびっくりしましたし、改めて尊敬しましたね。電脳少女シロは私の想像力の埒外を行くすさまじい存在なんだと。

 「あと、2曲目と3曲目はファンのかたが提供してくださった曲で。そうなんです」
 「へえ。そうなんだ。ファンの人がつくったってこと? へー、すげえ。そりゃ嬉しいだろうね、ファンの人。そんな、自分がつくった曲を歌ってくれたら」
 「本当にファンのかたのおかげで白は今日まで存在できているので。一緒にファンのかたと歩んできた楽曲ですね」

 特に3曲目の『またあした』はファンの二次創作作品として発表された曲です。また、このときのステージ衣装も同時期に発表されたデザイン画を元に製作されています。コンブとかいうな。海産少女シロに似合っているけれども。
 電脳少女シロはいつもそうやってファンに寄りそい、ファンに感謝の言葉を語りかけながら今日まで歩んできました。幸運なことに彼女の周りにはその思いを理解してくれる大勢のスタッフが集まってくれて、そのスタッフたちにも彼女はまた感謝して。

 「あの空間に英二は昼の部で立っていたわけなんですよ。そしてペンライトを振られたときの気持ち、思い出せますか?」
 「まーまー、あれはすごかった。この仕事をやってなかったら見ることのなかった景色でしょうからね」

 小峠教官、ここまでの映像を見ていて歌以上に客席の熱気のほうに関心を持っていた様子でした。上でも書きましたが、やっぱりああいうのって小峠教官ほどのキャリアを持つタレントにとってもすごい大きいんでしょうね。
 あれほどのパワーをもらえる舞台に立てるのは本当に恵まれたことですし、それを引き出すことができたパフォーマーもたしかにすごい。
 私もむかーし、小さい舞台になら立ったことがあるんですが、舞台上から見下ろす客席って意外と広いんですよ。視界全部がシートで埋め尽くされるんですよ。そして、舞台上って暑いんですよ。大口径のライトを何本も浴びるからそりゃ暑いに決まっているんですが、お客さんが入りはじめるとその熱気でまた2度3度室温が上がった感じがするんですよ。するとこっちも昂揚してきて、お腹のなかに自分の体温じゃない熱の塊が宿るのを感じて、私はその熱の塊に全身を操縦されて、自分の声と一緒に熱の塊を喉から吐き出しながら、また吸いながら、全身を巡らしながら、満たされながら、そうして、いつもの自分とはどこかが明らかに違う私が舞台に立つんです。それこそ熱に浮かされているような心地で。

 「やっぱりね。ライブイベントっていうのはVTuberも人間たちを目の当たりにするといつも以上にパワーが出る、パワーをもらうことができる、そんな素晴らしいイベントなので。また落ち着いたらみんなで開催したいですね」
 私も楽しみに待っています。

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