ヒーリングっどプリキュア 第13話感想 がんばった子にはごほうびをあげよう。

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意味なくなんか、ないんだよね!

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(主観的)あらすじ

 ひなたがプリキュアを辞めたいみたいなことを言いだしました。
 今すぐどうこうというはっきりした思いではないようですが、これまでたくさん苦労して、たくさん努力して、たくさん強敵を倒してきたのに、またすぐもっと強い敵が出てくる終わりの見えない日々に、気持ちが萎えてしまったようです。
 ひなたは昔からみそっかすな子でした。家族はみんな優秀なのに、ひなただけが不器用で何をやっても身につくことがありませんでした。だからこそ、ひなただけがもやもやとした不安を感じます。

 そうこうしているうちに今日もメガビョーゲン出現。ところがいくら気配を辿っても姿は見えず、しかもどうやら次々に場所を移動しているようです。
 ひなたの心にいっそうネガティブな思いが降り積もっていきます。もうがんばっても見つからないかもしれない。時間が経てばメガビョーゲンはもっと強くなる。そうしたらもっと見つからなくなるかもしれない。

 メガビョーゲンの被害が街中に広がっていきます。そのなかにはひなたのお姉さんも。もちろん助けたい気持ちはあります。でも・・・。
 そんなとき、ふと、のどかがひなたのつくってくれたジュースを褒めてくれました。お姉さんのつくるジュースの味とは少し違っていたけれど、それでもおいしかった、と。ひなたが努力した結果はちゃんと出ているんだよ、と。

 がんばろうとする気持ちを取り戻したひなたは、空を飛んで移動していたメガビョーゲンを見つけだし、手強い相手だったけれど諦めずに食い下がって、なんとか浄化することに成功しました。
 今日も苦しい戦いでした。きっとまたすぐ次のメガビョーゲンも現れるでしょう。ですが、ひなたの表情は晴れやかでした。
 お姉さんを助けられました。ひなたが今日がんばったことに、意味はありました。

 長い長いコロナ自粛期間を経て、実に2ヶ月ぶりのプリキュアです。みなさんお元気だったでしょうか?
 先日追加戦士の発表もありましたね。病弱だったのどかが地球をお手当てするプリキュアになった物語の文脈として、今度はお手当てされる地球自身が立ち上がるというのは実にふさわしい流れだと思いました。
 2ヶ月間、9話相当もの時間的損失は途方もなく大きいですが、さて、今年のプリキュアはこれからどのような物語を紡いで新戦士登場につなげていくんでしょうね。もっとも、イチ視聴者の身としては、結局のところどんなことがあったって楽しみに待つ気持ちしかないわけですが。

 うまくいかないことが続けば不安になるのは当然です。普通の人が普通に努力を重ねてやっと成功している姿を見ていると、イマイチうまくできずにいる時点で努力すること自体ムダだと冷たい計算をしたくなるのも自然な感情。
 誰だって失敗なんかしたくない。努力するからには報われてほしい。がんばったことをムダにしたくない。結果がほしい。
 だけど、だからといって何かを諦めてしまう気持ちは、何も生まないわけですよ。結局のところ何らかの実を結ぶ思いって、いつだってどんなときだって、何かのためにがんばろうとする前向きな意志なわけですよ。これだけは絶対に。

 子どもにはごほうびを受け取る権利があります。
 大人には子どもを褒める義務があります。
 小さな子どものお手伝いなんて、実際のところ親にとっては大して家事が楽になるわけでもない、正直なところほとんど助からない、はっきりいって無益な行為かもしれません。まして、テストで100点を取ったりかけっこで1等賞を取った程度のことなんて、いよいよ親にとっては関係ない。
 それでも、子どもにはごほうびを受け取る権利があり、大人には子どもを褒める義務があります。
 なぜならこれからもいっぱいがんばってほしいから。
 努力することの価値をこれからずっと信じていってほしいから。

 せめて大人が褒めてあげられるわずかな間だけでも、努力への信仰を心に育てていてほしい。

 現実には努力が必ず報われるとは限らないのだけれど、それでも努力は報われると信じるべきです。
 私たちを優しく育んでくれたこの世界は、社会は、人の善意は、全てどこかの誰かが努力して築いてくれたものなんですから。次は私たちがつくり、子どもたちにも引き継がせましょう。

ダメな子

 「私、ちっちゃい頃から水泳も体操もピアノもダンスも、お兄やお姉のマネしてがんばっても同じにできないの。何してもぜーんぶダメ。そういうのテンション下がるじゃん。だから続かなくなっちゃって」

 ひなたはとにかく自信が欠けている子です。たしかに粗忽者ではあるんですが、それ以上に、必要以上に他人への迷惑を気にしすぎるところが問題です。
 せっかく周りに親切にしようという善良な気持ちを持っているのに、みんなに“喜んでもらえたか”ではなく“迷惑をかけなかったか”ばかりをいつも気にしています。それじゃあ仮にどんなにうまくやれたとしても自己評価は上がりません。どんなにすばらしい行いだって、探そうとすればアラの2、3は見つかるものですしね。きりがありません。

 「ねえ、そのジュースどう?」
 「おいしいよ」
 「ええ。いつもの味とは少し違う気がしたけど」
 「ほら! ほらね! お姉の味には届かないんだよ、私がつくると!」

 今回ものどかとちゆの「おいしい」という感想の肝心なところが届きません。この子はいつもこんな感じです。

 そうなってしまった理由が、これ。
 昔から全然成功体験を積み重ねられずに来てしまった。
 ひなたは努力は報われるということを知っています。家族のみんな、そうやって結果を出してきたんですから疑いようがありません。
 ですが、ひなた自身のことに限っては努力が報われないとも確信しています。なにせこれまで14年間、その現実を突きつけられながら生きてきたんですから。

 努力が報われるだなんて夢物語。現実はそんなハッピーじゃない。唯一、自分自身に限っては。
 周りのみんなのマネして夢見てみたって、私の現実は変えられない。

 「なあ、ひなた。俺と一緒にプリキュアにならないか。あの怪物。ビョーゲンズから地球を守るんだ。お前のなかの好きなものや大切なものを、お前の手で、守るんだよ。ひなた。お前ならできる」(第4話)
 プリキュアにしてもらえたあの日、ニャトランはひなたに幸せな夢を見せてくれました。
 もしかしたら夢じゃなくて現実のつもりだったのかもしれません。ニャトランにとっては。
 「バテテモーダ――。強かった。すごく」(第12話)
 でも、ひなたにとっては、違う。

 「あーんなめちゃめちゃ苦労して、めっちゃめーっちゃがんばって、やーっと強いメガビョーゲン浄化して、やったー!って思ったのに・・・。もっと強いの増えちゃうなんてさ」
 ひなたは知っています。どうせ努力は報われないって。

 「大丈夫だよ。みんなで力を合わせれば大丈夫」
 「ええ。今日だって力を合わせてメガビョーゲンを浄化できたもの」
 「そうだな。みんなぴったり息が合ってた」
 「特訓なんてしなくても大丈夫だったペエ」
 「ラビリンは最初からそう思ってたラビ」
(第12話)
 他のみんなは楽観しています。みんなは、努力すれば最後には報われる人たちだから。

 ひなたはそうじゃない。
 ひなただけはみんなと違う。これまでは珍しく、たまたまうまくいってただけ。みんなに助けられていただけ。きっとそう。絶対にそう。
 どうせいつか、ダメになる。

「でも」

 ひなたのお姉さんはすごい人です。
 お父さんの動物病院でトリマーの仕事をしながら、ワゴンでジューススタンドも経営しています。
 今日もメガビョーゲンのせいでワゴンに閉じこめられてなお、冷静に、楽観的に事態を捉えています。

 「触っちゃダメ! 危ないから!」
 「しばらくしたら静電気もおさまるよ」
 「ま、ダメならパパとお兄ちゃんも呼んで、みんなでワゴンのドアぶっ壊してよ」
 「はいはい。危ないからみんなは離れてなさい。ほら、行って行って」

 きっと、それが正しいんでしょう。
 なにせお姉さんが言うんですから。ひなたとは違う、努力すれば最後には必ず報われる人の判断です。きっと間違いありません。
 少なくとも、ひなたなんかが考えることよりはずっと間違いないはず。

 「でも・・・」

 言い縋りましたね。
 ひなた。すごい人のお姉さんが楽観しているはずなのに、それに比べたら自分の考えなんてちっとも信じられないくせしているのに、それでも今、お姉さんの言うことに抵抗しようとしましたね。どうして?
 この瞬間、やりとりを見ていたのどかが驚いたように目を見開いて、ひなたに声をかけに行きます。

 「諦めずにメガビョーゲンを探そう。めいさんを助けるんだよ」
 いつかニャトランが言ってくれた夢みたいなお話と同じ言葉を、どういうわけかこの瞬間、のどかも同じように言ってきます。

 ひなたにはできないのに。
 ひなたに限ってはそんなの夢物語でしかないのに。
 できないって、さっきからもう何度も言っているのに。
 諦めたいって言っているのに。

 それでものどかは言います。
 だって、ひなたは「でも」って言ったから。
 本当は自分の気持ちを叶えたいんだって、自分でお姉さんを助けたいんだって、ひなたの本当の思いがさっき漏れ出ていたから。

 「なんか、がんばる意味あるのかなー、とか思っちゃって」

 「聞いても意味なくない? 行っても見えないし、どうせまた逃げられるし」

 違う。
 ひなたと違って、のどかやちゆは努力することにちゃんと意味があることを知っています。
 ――いいえ。
 ひなたにだって、努力する意味はあると、ちゃんと報われることもあるんだと、のどかとちゆは知っています。
 だって、言ったじゃないですか。

 「結果が伴わないと自分のやってることに迷いが生まれる。そういうの、ちょっとわかるわ」

 気持ちがわかるって。
 自分とひなたは、同じなんだって。

 ずいぶん意外そうに聞いていましたね。
 第8話、あのちゆですらときにはスランプに陥ることがあるんだってこと、ひなたもすぐ間近で見ていたはずなのに。
 あれを見てまだ、自分だけが特別なんだと思っていましたか?

 周りのみんなのマネして夢見てみたって、私の現実は変えられない。

 いいえ。
 違う。
 そうじゃない。

 だって、そんなにたくさん失敗してきたのに、あなたはまだ自分の気持ちを叶えたいんだって願えているじゃないですか。諦めきれていないじゃないですか。
 みんなと同じように。

 「意味、なくなんてないよ」
 「助けたいなら今はとにかく動いてみてもいいんじゃない?」

まだ、できない

 「ひなたちゃんのジュース、おいしかったよ。めいさんのお店のジュースとは違ったかもしれないけど、おいしかったよ。ひなたちゃんがつくってくれたって聞いて、私、嬉しかった!」

 のどかのこのセリフ、私は意外に感じました。
 最近のプリキュアの傾向だと、ここは「こっちもこっちでおいしい」みたいな言葉が入るものだと思っていましたから。違うことをポジティブに強調して、お姉さんとはまた違う、ひなただけの個性を褒めることで立ち直らせるシーンだろうなと思っていましたから。
 でも、よくよくかんがえるとここはそういうシーンじゃないんですよね。

 だって、ひなたはお姉さんみたいになりたいんですもんね。
 ひなたはお姉さんみたいなジュースをつくろうとしたんですもんね。
 自分は不出来なみそっかすで、お姉さんは何でもできるすごい人。純粋な優劣での比較。
 だから、ここでのひなたはお姉さんと違う誰かになるんではなくて、まさにお姉さんその人を目指さなければいけないんです。

 なるほど。

 ひなたのつくったジュースはお姉さんのものとは違う味です。
 おいしいけれど、まだ完成には至っていません。
 “まだ”です。
 “まだ”だからこそ良い。“まだ”だからこそ、ひなたの救いになりうる。

 だってそれは、ひなたの努力が報われつつあるってことだから。
 なりたいものになれるんだって、目指す味に近づけているんだって。ひなたはまだ気付いていないかもしれないけれど、のどかから見たら“まだ”できていないということそのものが、ひなたの努力もちゃんと報われているという証明。未完成で進行形。

 「結果が伴わないと自分のやってることに迷いが生まれる」
 ひなたの結果はここにあった。

 だからこそ断言します。

 「意味、なくなんてないよ」

 うまくいかないことが続けば不安になるのは当然です。普通の人が普通に努力を重ねてやっと成功している姿を見ていると、イマイチうまくできずにいる時点で努力すること自体ムダだと冷たい計算をしたくなるのも自然な感情。
 誰だって失敗なんかしたくない。努力するからには報われてほしい。がんばったことをムダにしたくない。結果がほしい。

 それはひなたに限ったことじゃありません。きっと誰だって経験するはずです。
 だからこそ、ひなただけがどんな努力にも結果を出せない、なんてこともない。

 「遅かったじゃないか。今からメガビョーゲンを浄化できるのか?」
 「するよ。絶対」

 それができる裏付けなんてありません。

 「雷みたいな動きニャ」
 「雷が何? 私、こう見えて雷こわかったことなんてないんだから!」

 そのヘリクツに道理なんてありません。

 「貴様らがこれ以上がんばっても無意味だ。諦めろ」
 「・・・意味ないかもしれない。でも、あいつだけは!」

 その努力が報われる保障なんてどこにもありません。

 それでも、できるんだって、勝てるんだって、報われるんだって、信じます。
 まずはがんばらなきゃどうにもならないから。
 がんばらなきゃ絶対に叶えられない結果を求めているから。

 もしかしたらまた失敗して意味なくなっちゃうかもしれないけれど、もしかしたら今度こそ意味なくないかもしれない。
 諦めていたらゼロだった可能性、もしかしたら1%でも、もしかしたら0.1%でも、もしかしたら100%でも、叶えられる確率が生まれるかもしれない。
 だから諦めない。負けない。
 甘ったるい夢物語が冷たい現実のありようを覆してみせる、その日まで。

 今日、ひなたの努力がひとつ報われました。
 ニャトランと一緒にプリキュアを始めて。ビョーゲンズから自分の好きなもの、大切なものを、自分自身の手で守ることができました。ひなたはできる子でした。努力に意味なくなんてありませんでした。
 みんなと同じように。

 「お姉! よかった、ちゃんと出れたんだ」
 「言ったでしょ。時間経てば大丈夫だって。でも心配してくれてありがとね。みんなも。――待ってて。今ジュースごちそうするから」

 プリキュアとしての活動が街の人に知られることは大抵の場合、無いけれど。
 それでも、がんばった子にはごほうびを。

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