ヒーリングっどプリキュア 第12話感想 恐るべき異質を前に。

シクヨロ、プリキュア。そしてたぶんサヨナラ。だって自分、あんたらに負ける気がしないんで。

→ TVerアーカイブ配信(放送後1週間限定)

(主観的)あらすじ

 前回の苦戦を振りかえり、特訓の必要を感じたのどかたち。特にチームワークの増強が急務だとラビリンたちに言われたので、今日は採石場でコミュニケーションゲーム大会です! 名付けてプリキュア・チームビルディング大作戦!

 ジェスチャーゲームにポーズ合わせゲーム。意外と難しくてなかなか成功することができません。
 最初に特訓を提案したラビリンたち妖精は次第に焦りはじめます。この間みたいにのどかたちを危ない目にあわせたくないからこそ、強くなってほしいと思っているのに・・・。
 そんなラビリンたちの心配をよそに、のどかたちはゲームが成功しないまま、それはそれで楽しんでいるのでした。

 そこにビョーゲンズが出現。今日の幹部は初めて見る顔・バテテモーダ。先日戦った巨大メガビョーゲンから生まれた新しい幹部なんだそうです。
 バテテモーダはノリが軽くて、自信家で、そしてバトルマニア。メガビョーゲンを生みだしつつも自分も戦いに参加します。しかも、強い。1対1ではとても敵いそうにありません。のどかたちはチームワークによってなんとか勝利を収めるのですが・・・。

 問題はその後。
 バテテモーダはメガビョーゲンを浄化されてもヘラヘラ笑っていました。負けたのは自分じゃない。あくまでメガビョーゲンだ。そしてなにより、戦うことが心底楽しかった。また戦いたい。そう言って笑っていました。
 彼の気持ちがのどかたちにはまったく理解できません。
 これからも彼のような敵が増えるかもしれない。その事実は、なんともいえない恐ろしさがありました。

 バテテモーダの元になった動物はヌートリア。世界の侵略的外来種ワースト100、日本の侵略的外来種ワースト100どちらにも選出されている嫌われ者です。元は毛皮目的で飼育されていたのですが、毛皮価格の暴落に伴って世界各地で不法投棄、相次いで野生化しました。
 家畜種ゆえに繁殖力旺盛です。主に河川流域の生態系を破壊することを危惧されているのですが、日本ではまださほど大きな被害が出ていないこともあって、駆除が進んでいません。元が家畜なので警戒心が弱く、その気になれば罠で簡単に捕まることもできるらしいんですが、このあたりはマンパワーや自治体予算との兼ねあいもあってなかなか難しいところですね。
 なんというかまあ・・・、よくある話ですね。本当によくある話です。人間の愚かさを語るにはぴったりな題材。地球上にはそういうの向きなネタがゴロゴロ転がっています。まさにありふれた悲劇。捉えようによってはいっそ喜劇。

 第6話でのダルイゼンの対決でもそうでしたが、どうやらビョーゲンズはのどかにとって思想レベルで理解不能な敵として設定されているようです。
 共感不能。共存不能。優しくなんてしてあげられないし、してあげる理由もない。そういう絶対的な敵。
 じゃあ徹底的に殲滅すべき相手なのかといえば、それもまたちょっと違います。なにせのどかは心底優しい子で、好き好んで戦っているわけじゃありませんから。のどかの目的はあくまで地球のお手当て。誰かを滅ぼすだなんて乱暴なことは望んじゃいません。
 なのに、向こうは嬉々として襲いかかってくる。まるで我々を全滅するまでこの戦いは続くんだと、「戦いたくて戦っているんじゃない」なんて甘い考えは捨てるべきだと、そう主張しているかのように。

 そこにヌートリアとしての来歴を持つ新幹部・バテテモーダが追加参戦してくるわけですよ。「こうなったのはそもそもお前ら人間のせいだろ」とでも言いたげに。ひっどい構図だなあ、東堂いづみ! 毎年のことながらいったいどこまで中学生女子の心を追い詰めたら気が済むのか。オマケにまたムダにタイムリーだし。

 「謝るけど、パートナーはダメラビ。だって、危ないラビ」(第2話)
 「本当に助けようって思うなら、目の前のことだけじゃダメなんだよね・・・」(第10話)
 やりたいこととやるべきことの不一致。
 やりたいことのため、本当はやりたくないことまでやらされようとしている心の危機に、のどかたちはいつも晒されています。

 「プリキュアは諦めない」といいます。でもその「諦めない」って、ただ「辛いことを我慢する」って意味なんでしょうか?
 本当に?
 何のために?
 誰のために?
 それって、あなたにとってどうしても必要なこと?

特訓の意味

 「ラビリン。これで本当にいいペエ?」
 「たしかに。ひなたたち疲れてたよなあ」
 「こんなこと続けてて、逆に3人の気持ちがバラバラになっちゃったら――」

 まったくもってそのとおりで、チームビルディングのためにゲームを取り入れる一番の目的は、チームで成功体験を共有することにこそあります。もちろんゲーム内容自体にもちゃんと意味があるんですけどね。でも、まずは仲間と協力しあうなかで「うまくいった!」という達成感を味わわせてあげること。それを身をもって実感することでチームは結束します。
 つまり、ゲームの選定以前に難易度設定がマズい。ゲームは成功することに最大の価値がある。ウサギだのペンギンだのでジェスチャーを一致できないのどかたちもだいぶアレですが、それならそれでラビリンたちがもっとお題の難易度を下げるべきでした。マジメに取り組めば8割成功するくらいに調整してあげましょう。

 それはさておき。

 「わかってるラビ! ラビリンだって、のどかたちに申し訳ないって思ってるラビ。本当はプリキュアの手を借りずに、ラビリンたちだけで地球のお手当てができればそれが一番ラビ。だけど――」
 「うん。俺たちだけじゃビョーゲンズを浄化できない・・・」
 違う。そうじゃない。
 「それに、この前の強くなったメガビョーゲンと戦ったとき・・・。3人ともボロボロで、苦しそうで。あんな辛そうな目にもうあわせたくないラビ」
 何を外野目線から語っているのか。
 ラビリンたちはのどかたちのパートナーです。あのときものどかたちと一緒にメガビョーゲンと戦っていました。ほぼぷにシールド専門みたいなもので、活躍としては地味ではあるけれども。それでも、自分たちものどかたちと同じ場に居合わせて、同じように辛い思いをしていたはずです。
 だというのに、ラビリンたちはいかにも申し訳なさそうに、まるで自分たちがのどかたちに一方的に依存しているかのように、まるで自分たちが普段は何もしていないかのように、己の無力さを嘆きます。

 「――だから、プリキュアになれて嬉しかった! ラビリンが私を選んでくれて嬉しかったの! 絶対応えたいって思った。ひとりじゃできなくても、ラビリンと一緒ならできるって思って」(第2話)
 自分たちがいかにのどかたちにとって大きな存在になれたのか、もう忘れてしまったんでしょうか?
 「ラビリンがのどかに助けてもらったみたいに、のどかに難しいことはラビリンが助けるラビ」(第2話)
 あんなに頼もしいことを言っておいて、本当は戦いをのどかたちに丸投げして自分はサボるつもりでいたんでしょうか?

 もちろんそんなことはありません。ラビリンたちはこれまでものどかたちと力を合わせて戦ってきました。だからこそ、のどかたちはラビリンたちのことをパートナーとして今も信頼しています。
 「ラビリン。また私が間違えそうになったら、そのときはまたちゃんと言ってね」(第10話)

 「地球をお手当てするのは本来ヒーリングアニマルの役目」 未だにその認識でいることをのどかたちに知られたらガッカリされるでしょうね。そもそものどかたちは別にラビリンたちのためだけに戦っているわけじゃないのに。それぞれ自分のやりたいことのため、ラビリンたちの助けを借りるためにプリキュアになったはずなのに。

 「アハハハハ! 今の『ホーホケキョ』だって絶対思った!」
 「違う、違う! だから『北極』だって!」
 「『ホーホケキョ』と『北極』。・・・プッ」
 「惜しかったね」
 「惜しくない、惜しくない」
 ゲームは全然うまくいっていないにもかかわらず、和気藹々としているのどかたち。
 それは緊張感が足りないからではありません。ただ、ゲームを行う前からとっくにチームとしての連帯感を醸成できていただけです。ゲームに失敗しても自分たちの連帯感を疑うという発想につながらないからこそ、のんびり笑っていられるんです。
 新しい浄化技・プリキュア・ヒーリングオアシスを習得できたこと自体が連帯感の証拠。のどかたちは自分のやりたいことを為すために自分の力が足りないことを自覚していて、そのためにお互いの手を取りあいました。強大な怪物が相手でも地球のお手当に成功できたということは、ちゃんとチームワークが取れている何よりの証拠です。

 どうしてこのタイミングでまず補強すべきところがチームワークだと考えてしまったんでしょうか。
 ラビリンたちだってのどかたちと同じ、プリキュアチームの一員のはずなのに。誰よりも近くで視点を共有してきたはずなのに。
 どうしてのどかたちがしてきたことの成果を、つまりは自分自身がしてきたことの成果を、信じてあげられなかったんでしょうか。

強敵

 新たな敵・バテテモーダは恐ろしい相手でした。

 「シクヨロ、プリキュア。そしてたぶんサヨナラ。だって自分、あんたらに負ける気がしないんで」
 なにせ1対1じゃ敵わないくらい強いんです。――とはいえ、勝てましたが。
 「だーってさあ、見てるだけなんてツマンナイっしょ! やっぱ自分から盛り上げていかないと!」
 なにせこれまでの幹部と違って戦闘に参加してくるんです。――とはいえ、勝てましたが。
 「思った以上にパワーあるっスね。でも効かない。何故って? 自分のほうが強いから!」
 なにせ底知れない余裕があるんです。――とはいえ、勝てましたが。

 ええ。勝てました。
 これまでの敵と同じように。
 ひとりじゃ敵わない、なんていつものメガビョーゲンと条件は同じ。前からいる幹部のダルイゼンも戦ってみれば強敵でした。(※ シンドイーネなら別の意味でひと味違うかもしれませんが) それでも、これまでのどかたちはどんな強敵にも勝てていました。
 今回もいつものようにみんなで力を合わせたら、いつものように勝つことができました。特段偶然の要素が絡むこともなく、普通に実力で相手を下すことができました。

 それにも関わらず、バテテモーダはのどかたちの目に、これまでと違う、とてつもなく恐ろしい敵として映ります。
 「いいじゃん! いいじゃん! 強いじゃん! やられちゃったぜメガビョーゲンちゃん」
 負けたにも関わらず平然としていたからです。
 「それにしても・・・。戦うのって超楽しいっスわ」
 のどかたちには理解不能な価値観を持っていたからです。
 「勝ったと思って油断しないほうがいいっスよ。注目若手新人、自分で終わりじゃないかもよ」
 おまけに似たような敵が今後また増えるかもしれないからです。

 おそらく、今後この3つの恐怖がのどかたちそれぞれにより深く刺さっていくんでしょうね。

 みんなに優しくしてあげたいのどかには、今の自分では優しくしてあげられない、共存できそうにない敵がいること。
 実現不可能な夢のため不断の努力を重ねているちゆには、何度倒しても敵が増えつづける不毛な戦いを強いられること。
 そして失敗ばかりで自信を持てないひなたには、負けても平然としていられる異様な自信家が存在するということ。

 今後、のどかたちはバテテモーダのような存在がいる現実をそれぞれの方法で打ち破っていく必要があります。
 バテテモーダが突きつけてきた恐怖を克服しないかぎり、のどかは誰にでも優しくありたい気持ちを諦めるしかなくなり、ちゆはこれまでの努力が無意味であることを認めるしかなくなり、ひなたは情けない自分のままこれからも自信を持てないんだと絶望するしかなくなります。

 それではプリキュアになった意味がありません。
 のどかたちは今の自分から変わりたいからこそ、プリキュアに変身する道を選んだんです。
 プリキュアは諦めない。
 諦めたくないからこそプリキュア。
 辛い現実を耐え忍ぶためにプリキュアやってるんじゃない。

 すでに成果は出ています。
 プリキュアになって、のどかたちは変わりました。
 できなかったことがいくつもできるようになりました。
 ずっとやりたかったことにそれぞれ最初の一歩を踏み出しました。
 バテテモーダはいかにも恐ろしい敵のように見えるでしょうが、こいつにすらすでに一度勝っています。
 その事実を、自らが為してきた成果を、彼女たちはもっと素直に認めていい。
 自分を信じてあげていい。

 そういう流れで、次話さっそく試練に立ち向かうことになるのはそれこそ自分を信じてあげられない子。平光ひなた。

 まあね。
 自分だけ全然実力が足りてない、早くみんなに追いつきたいと思っているところに「みんな優秀だから特訓要らなかったね」とか言われちゃうの、キツいよね。

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『ヒーリングっどプリキュア 第12話感想 恐るべき異質を前に。』へのコメント

  1. 名前:東堂伊豆守 投稿日:2020/04/24(金) 18:41:12 ID:527b0634a 返信

    キングビョーゲン曰く、「プリキュアが現れたということは、ビョーゲンズに単独で対抗出来るヒーリングアニマルがいないということだ」。
    もしラビリン達が”見習い”などではなく一人前のヒーリングアニマルであったならば、人間をプリキュアに仕立て上げて戦場に駆り出す必要はなかった(むしろ人間はアニマルによって守られるべき存在であった)。……そりゃ(のどか達の方でどう考えるかに関わらず)ラビリンが負い目を感じるのは当然でしょうよ。
    それだけにとどまらず、更に厄介なことに、プリキュア有資格者は「心の肉球がキュンとした人間」つまり「アニマルにとって絶対に傷つけたくない、喪いたくない最愛の人間」だという。そんな相手を戦場に駆り出すことを見習いアニマルは要求されているわけで……。
    正直、今作の”pre-cure”システムを考案したヒーリングガーデン技術スタッフの鬼畜ぶりに慄然とさせられるんですが、なんでそんな非人道的なシステムにしたのか……。
    見習いアニマルが敵前逃亡なんぞしないよう、「絶対に見捨てたくない」相手としか組めないようにした?
    ひょっとすると、「パートナーの殉職」が”見習い卒業”の条件になっていて、最愛の人を喪った悲しみを乗り越えることで「自己犠牲を厭わない」汎用アニマル型決戦兵”器”に進化するカリキュラムになっている……とか?!
    なにぶん、女王テアティーヌ様の「娘・ラテを”メガビョーゲン探知カナリア”として躊躇なく戦場に送り出す」態度とか、彼女の側に建っている女性の像が如何にも「殉職したテアティーヌの元パートナー」といった風情であることとかを考えると、私の邪推もあながち的外れではないように思えてしまうんですけど……。
    そういえば、今回のアバンはのどか達プリキュア三人衆だけで、アニマル三人衆が登場していないんですが、これがプリキュア達とアニマル達の立場・認識・背負っている使命(宿命)の違いからくる断絶の始まりを暗示しているのかもしれずーーーーーー「地球のお手当ての為に白血球の如く自分を犠牲にする”器”械」ヒーリングガーデンの理不尽さへの挑戦が、のどか達に課せられる最終ミッションになるーーーーーーのかもしれないなぁ、とか。

    • 名前:疲ぃ 投稿日:2020/04/25(土) 22:01:04 ID:483e53a3b 返信

       自分がパートナーを失う経験をしたうえで、あえてラビリンたちに自分と同じ道を辿らせるテアティーヌ様はよほど絆の力を信仰しているのでしょうね。お別れが辛いものだと知ったうえで、なおかつ出会えたこと自体は悪いことじゃなかったと確信できる人生観。例年プリキュアたちはいつか確実に訪れる悲しいお別れを「離れていても、離れはしない」の精神で乗り越えてきましたが、あの穏やかな人(犬)もきっと同じような結論に至ったのでしょうね。
       お別れは辛いもの。そして不可避のもの。だからこそ、願わくば出会うべき運命のパートナーを心から好きになれますように。出会えたことの喜びが、お別れの悲しみに勝りますように。

       これまでのプリキュアは大切な人や日常を守るために戦ってきましたが、その一方で、それこそかけがえのない存在であるはずの友達をプリキュア仲間として戦いに巻き込むことを許容してきました。
       それを「矛盾している」と糾弾するのはあんまりにも残酷な言い分かもしれませんが、実際のどかたちやラビリンたちが置かれている関係性はそういう二律背反を正面から突きつけられているようなものです。大好きな人と一緒に戦うことの意味、彼女たちには是非その答えを自分なりに探してみていただきたいものですね。