女将のおもてなしと同じ。何か、エミリーさんの好きなもの・・・。
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(主観的)あらすじ
ちゆが旅館のお手伝いをすることになりました。ちゆにとっては将来に向けての女将修行でもあります。
掃除に洗濯、上げ膳、下げ膳、お出迎え。旅館のお仕事はたくさんありますが、そこは元々器用なちゆ。どんなお仕事もテキパキこなします。
ところが、お婆ちゃんである女将はそんなちゆの働きぶりを見てもまだまだだと言い、お手本として自分の仕事の手本を見せてくれます。お手紙を書いたり、香炉を焚いたり、お花を飾ったり。お部屋ごとにそれぞれ違ったおもてなしを用意するのです。
不思議に思いましたが、理由はすぐにわかりました。お客様ひとりひとりの好みを察して、それに合わせているようなのです。
ちゆは外国人家族の観光案内を任されました。町の主要な観光スポットを案内すると夫と妻は大喜び。けれど、娘のエミリーだけは何が気に入らないのか、どこへ連れていってもつまらなそう顔をしています。時折感激しているような表情は見せてくれるのですが・・・。
両親は満足してくれましたが、エミリーのことが気になって、ちゆは充分な仕事ができた気がしません。どうすれば女将のようになれるんだろう。悩みます。
そんなちゆを見て、のどかが海を見に誘ってくれました。気分が落ち着いてきます。そしてまた、ふと、のどかの気づかいが女将のおもてなしの精神に重なって見えます。やるべきことがわかったように思えました。
ちゆは旅館に戻り、もう一度エミリーに声をかけました。隣に座って、彼女の好きなことを色々聞いてみました。
友達と遊ぶのが好き。公園が好き。だけど日本の公園は嫌い。だって友達がいないから。彼女が浮かない顔をしていた理由がやっとわかりました。ちゆは、明日一緒に公園で遊ぼう、とエミリーに約束します。
その公園にメガビョーゲン出現。エミリーが笑顔になってくれるかもしれない明日を守るため、ちゆはのどかたちと協力してメガビョーゲンをやっつけました。
翌日、ちゆはエミリーとのどかたちと一緒に公園へ遊びに出かけました。こちらには友達がいないことを嫌がっていたエミリーでしたが、日本にも母国と似た遊びがあることを知り、一緒に遊んでくれる友達とも出会えて、やっと笑顔を見せてくれたのでした。
路傍に咲いていたヒナゲシの花言葉は「いたわり」、「思いやり」、「優しい愛」など。ぶっちゃけた話ケシの仲間なので、その実(※ アヘン)には鎮静作用があり、昔のヨーロッパでは子どもを寝かしつけるための薬として広く使われていました。これら花言葉はここに由来しています。
他に、由来はちょっとわからないんですが「想像力」という花言葉も。(あ。ここまで書いて今やっと察しました)
ちゆは空気を読まない子として一部のプリキュアファン(※ 私含む)から変な人気があります。場の空気に負けない鋼のメンタルと得体のしれない行動力は、これまで幾度となくのどかたちを助け、そしてたびたび当惑させてきました。ゴーイングマイウェイ星人です。ひなたと違って昔から何でもできていたので、ちょうど正反対に周りの表情を窺う必要なく今日まですくすく育ってきたのでしょう。
そんなちゆの女将修行。そりゃあまあ、何が課題になるのかは観る前からわかってた。
「Wow! オオカミさん!」
ちなみに、エミリーが言っているのはWhat’s the time, Mr. Wolf?と呼ばれるアメリカの遊びですね。アメリカ以外にも広く英語圏で親しまれているようです。
基本ルールは日本のだるまさんが転んだとよく似ていますが、ターンごとの歩数を鬼が決められたり、鬼の任意のタイミングで鬼ごっこに移行できたりと、細かい差異があるみたいですね。その差異も含めて、エミリーは慣れない日本でも友達はつくれるんだという確信を得られる体験ができたのでしょう。
ところで私、だるまさんが転んだに“はじめの一歩”というルールがあるの初めて知ったんですが、これってどこかのローカルルールなんです?
おもてなしの心
「ねえ、お母さん。女将はお客様に合わせてお部屋の飾りを選んでいるの?」
「ええそうよ。常連のかたには好みのものを。新しいお客様には歓迎の手紙をいつも用意しているわ」
私のようなコミュ障の場合はそもそも一方的に気づかいを受けること自体がストレスなので、画一的な提供サービスに客側から合わせにいける安ホテルのほうがむしろくつろげたりするのですが、当然ながらそれは例外的な話。世間一般多くの人にとってはこの手の旅館が安らげるひとときとなるようです。
というわけで、今話はちゆの数少ない苦手分野、他人の気持ちを察することが中心テーマとなります。
「さすがお嬢さん。テキパキされて、すぐにでも女将になれそうだ」
「女将なんてまだまだ。旅館の仕事はここからが本番よ」
一通りの仕事がこなせるのは大前提。その先の、お客さんひとりひとりのため一歩踏み込んだサービスを提供できるかが旅館業の肝となります。
その意味では、ペギタン。その異様に先読みが利く嗅覚はちゆの弟ではなくお客さんに使うべき。
もっとも、ちゆは積極的に空気を読もうとしないだけであって、好奇心や観察眼に関しては人並み以上のものを持っている子です。第2話でのどかの運動音痴の原因を察してアドバイスしてみせたり、前話で老人たちの指に光る結婚指輪にいち早く気付いたり、そういう世間一般で気づかいと呼ばれるようなことは、意外と普通にできちゃいます。
女将がしてみせたように、実際にしていることの具体例を示しつつ、おもてなしの精神、その核心から手ほどきしていけばぐんぐん吸収してくれることでしょう。彼女の場合は“できない”のではなく、“やろうとしてこなかった”だけなんですから。
だから、今回はいきなり他の子たちよりも一歩高度な課題に挑戦してみましょう。
今、のどかたちはとても難しい問題を乗り越えるためのステップアップに取り組んでいる真っ最中です。
その難しい問題とは“理解不能な相手に向きあい、それでも仲よくなる方法”。
第13話。ひなたにとって理解不能な相手とは自分自身でした。なにせどんなに努力したところで何の成果にも結びつかないみそっかす。努力はムダにならないという常識が通用しない相手でした。けれど、のどかが自分の努力にも実を結びつつあるところがあると発見してくれたおかげで、もう一度自分を信じてみようと思い直すことができました。
第15話。のどかにとって理解不能な相手とはケンカ中の友達でした。なにせのどかは友達とケンカすること自体が初体験。理解不能な言い分で自分を避けつづけるラビリンに苛立ちの感情さえ湧きあがりましたが、それでもラテの仲裁を受けて語りあう機会を得、彼女の本当の思いを聞き出して関係を再構築することができました。
その流れを汲んでの今話。
「いらっしゃいませ」
「・・・ふん」
今回ちゆが向きあう理解不能な相手は、まったくの赤の他人。それも向こうは心を開こうとせず、あげくただでさえ文化やら何やら色々違っていそうな外国人です。ちゆはそんな、取っかかりの一切無い子と心を通わせあい、仲よくならなければなりません。
なお、幸いにして最も難しい部分だけはフォローを受けることができました。
“そもそもどうしてそんな相手と仲よくしなくちゃいけないのか?”
ここをクリアできるようになったとき、のどかたちはビョーゲンズとすら友達になることができるでしょう。とはいえさすがにそこまでの話は今回おあずけ。もう少し先まで楽しみに取っておきましょう。
ちゆにとって、エミリーはおもてなしするべきお客様。仲よくしなければならない理由だけは事前に与えてもらえました。その部分だけは今回考える必要がありません。
ただし、それ以外は一切サポートなし。ちゆができる子だからって何もかもぶん投げです。いつも空気を読まない子に相手の気持ちを察するところからはじめろとかずいぶんムチャをおっしゃる。東堂いづみの児童虐待スレスレなスパルタぶりが唸ります。
思いだけでは届かない距離
エミリーと仲よくしたい気持ちはあります。
なにせお客様ですし。ゆくゆくは旅館を継いで女将になりたいと思っているわけですし。
「どうですか?」
「っ! ・・・クッキーのほうが好きだわ」
「そう・・・。クッキーも美味しいものね」
「公園、気になるのかしら」
「Wow!」
「ステキなとこだね、エミリー」
「・・・No! ちっともステキじゃない」
ちゆにとってエミリーは難しい子でした。ただでさえ仏頂面のうえ、ときどき興味の片鱗っぽいものを浮かばせるくせに、どういうつもりかそれをあえて隠そうとするのですから。
ちゆは好奇心と観察眼なら人よりも優れています。だから相手が自分に何か伝えたいと思っている人であれば、それに目ざとく気づいて口を開くきっかけをつくってあげることもできるのですが、今回エミリーは心を閉ざしています。自分の気持ちを語れずにいるのではなく、むしろ語りたくないんです。
だからどこに案内しても、多少声をかけてみても、彼女は素っ気ないそぶりしか見せてくれません。いつものちゆのやりかたでは彼女に働きかけることができません。
「――そっか。その子、全然楽しくなさそうなんだ」
「ええ。でも、どうやって女将みたいにおもてなしをしたらいいかわからなくて」
女将はいったいどうしてあんなにもお客さんの好みに合ったおもてなしができるんだろう?
ちゆは女将がそもそもどうやってお客さんの好みを知ることができたのかまではまだ見ていないので、一番肝心なところを実践できません。
知ろうとする意欲はあります。
観察から読み解ける感性も持っています。
だけど、それだけでは相手が見せたくないと思っている部分までは知ることができません。
知ることができなければ相手に喜んでもらえるおもてなしもできません。
“理解不能な相手に向きあい、それでも仲よくなる”ことの難しさのひとつがここにあります。コミュニケーションというのは相互的なもの。相手に拒否されているかぎり、深められる関係性には自ずと限界があります。
手を繋ぐときは、お互いに手を差しのべあわなければ繋ぐことができない。
そのはずなのに、それができている人がいる。
はじめのいーっぽ!
話したくないと思っている人の口を開かせることはできません。
そして、話してくれない以上はその人の思いも、その人のために何かしてあげられる可能性も、見つけることはできません。
「・・・ちゆちー?」
「――ううん。なんでもないわ」
「ね。ちゆちゃん。まだちょっとだけ時間あるかな」
どんなにその人のことを知りたいと思う好奇心があったとしても。
どんなにその人のことを理解してあげられる観察眼があったとしても。
そもそもその人自身が心を開いてくれなければ。
「エミリーちゃんを、笑顔にしたーいっ!!」
「どうしたペエ?」
「・・・実はね」
ウソです。
だって、少なくとも女将は現にそれができているわけですから。旅館を訪れただけの赤の他人にすぎないお客さんたちに対して。どういう方法かはまだ知らないけれど。
「ここに来て叫んだら、ちょっとスッキリしたわ」
「おおー。のどかっちの言うとおりじゃん。ちゆちー、海見たらきっと元気になるって」
「えへへ。ちゆちゃん、海好きだもんね」
口を開かせられないことなんてない。
何もしてあげられないなんてことはない。
だって、現に自分は打ち明けるつもりのなかった悩みをこうして話すことができたんだから。
その不可能を可能にする魔法を、お節介といいます。
「隣、いいかしら」
「ねえ、エミリーさんいつもどんな遊びをしているの?」
「じゃあきっと公園が好きなのね」
「よかったら明日、私と一緒に近くの公園に行ってみない?」
「一緒に遊びましょう! ブランコとか、滑り台とか、それにね、シーソーとか、あとは――」
「じゃあ、約束ね!」
赤の他人とすらも仲よくできる方法。
沢泉ちゆは賢い子ですが、なぜかやたらに力押しが大好きなパワー系です。脳みそが筋肉でできてる系美少女です。強引gマイウェイ。
仲よくなりたいなら、仲よくなれるまで話しかければいい。
絶対、女将が普段しているおもてなしのやりかたとは違うと思いますが、ちゆなりに考えて、ちゆなりに出した答えはこうなりました。さすがは喋る動物への興味だけで転校生を延々ストーキングしつづけた女。好奇心の権化。
でも、正解だと思います。こういうのがあるから私は旅館に行かない。別に距離を詰められて不快ってこともないんですが、だって気恥ずかしいもの。気持ちが全然安まらない。落ち着かない。そんな私ですが、結局のところ聞かれたら素直に答えちゃうわけで。だから正解。正直勘弁してほしい。
手を繋ぎたくて、なのに相手が手を差し出してくれないなら、自分が一歩踏み込んで手を握ってしまえばそれで成る。
今回、エミリーと仲よくなりたいと思ったのはちゆです。エミリーは別にちゆと仲よくなりたいだなんて思っていませんでした。だから心を開いてくれませんでした。心を開く理由もありませんでした。
だったら、仲よくなるために努力するべきなのもやっぱりちゆなのでしょう。もちろん、本気で嫌がるようなら論外です。ですが、誰かと仲よくなることを、自分を知ってもらうことを、あるいは相手を知ることを、本当に不愉快だと感じる人ってあんまりいないと思います。
『スタートゥインクルプリキュア』において、星奈ひかるの好奇心がノットレイダーの心を救ったように。
『HUGっと!プリキュア』において、野乃はなの応援がたくさんの人の心を奮い立たせていたように。
まったくもってお節介です。一方的な好意。一方的な善意。
だけど、それで心通わせられる誰かはいる。
「ここは大切な公園なの!」
「大切? こんな地味な公園のどこが?」
「この公園であの子が笑ってくれるかもしれない。だから!」
自己中心的な考えかた。
別にエミリーが笑いたいんだと言ったわけじゃない。笑ってほしいと、ちゆが勝手に思っただけ。
それでも、勝手にエミリーの幸せを願ったその一方的な思いは、結局のところエミリーを喜ばせることになるでしょう。
だって、人は、自分のためになるあらゆる願いを全て表に出して生きているわけじゃないんですから。
のどかや、ちゆや、ひなたがプリキュアになりたいと思った理由自体、今の自分では絶対に叶えられない願いをパートナーと一緒に叶えるためだったわけで。
自分ひとりじゃ叶えられない願い。自分ひとりだとちょっと大変な願い。色々あって、なんとなく諦めてしまっていることがたくさんあるものだと思います。それを誰かがお節介を焼いて、ちょっとしたことだけでも叶えてくれるのって、やっぱり嬉しいものなんじゃないですかね?
私なら嬉しい。
メンドクサイんでやめてほしいけれど。
「旅館の仕事ってやっぱり大変。でも私、この沢泉が好きだわ。いつかここでたくさんのお客さんを笑顔にしたい。改めてそう思ったの」
当初、私のなかでちゆという子は好奇心の塊みたいな印象で、そんな子が将来小さな旅館の女将に収まるというのはどうもチグハグな気がしていました。
今話でやっと得心しました。この子、自分の好奇心を全力でお客さんにぶつけるつもりでいるんですね。
好奇心を起点に気が済むまでお節介を焼きまくって、いろんな人と出会って、いろんな人と仲よくなって。やがては青い海より青い空より広い世界を、人と人との繋がりのなかに描いていこうとしているんですね。
沢泉旅館に行くと女将になったちゆさんが私の心のなかを泳ぎに来るのか・・・。いやあ、ご容赦願いたい。
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