プリンセス・プリンシパル 第2話妄想 アンジェが「天使」ではなく「女神」という表現を選んだ理由。

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「どうして?」
「私たち、正反対だから」
「いいわ。私たち、お友達になりましょう」

――いつか遠い日の残照

 「どうせ縋るなら女神の方にしませんか?」
 このセリフ、ずっと違和感あるなあと思っていたんです。プリンセスの格好をしているとはいえ、いくらなんでも尊大すぎやしないかと。というか信用に値する(=嘘をつかない)という喩えとしては、ベアトリスが言うように(「天使は神の使いですから真実しか言いません」)、天使の方が明らかに適切ですしね。女神は信頼するものではなく畏敬するものです。

 というわけで前回の記事の気取った末文、実は何度か改訂しています。
 最初は「せいぜい嘘を重ねるがいいさ、悪魔の皮を被った女神」。ですがアンジェを女神と評するのはなんとなく据わりが悪い。
 次に「せいぜい嘘を重ねるがいいさ、悪魔の皮を被った天使(Ange)」。これはいくらなんでもカッコつけすぎかなー。というかこの子本当はアンジェじゃなくてシャーロットだしー。・・・というわけですぐ変えました。
 最終的には今の「せいぜい嘘を重ねるがいいさ、悪魔の皮を被った天使」に収まっています。
 うん、どうでもいい話ですな。

 でもそのくらい、とにかくアンジェに「女神」は似合わないんですよね。なんでこの子はあのときこんな表現を使ったんだろ?
 ・・・という疑問がこの記事を書くに至ったきっかけです。

※ 注意

 以下に書く内容は根拠薄弱です。9割以上私の妄想と考えてください。
 入れ替わりネタを扱うためキャラクターの呼称がやたらとややこしくなりますが、入れ替わる前の話であっても現在準拠でそれぞれ「アンジェ」「プリンセス」と呼ぶことにします。
 ↓の考察を前提にしますので、この妄想を読むつもりのある方は先にこちらをご参照ください。

アンジェとプリンセスの再会

 第2話、アンジェとプリンセスが舞踏会で出会ったとき、ふたりはこのような会話をしました。

A「こんにちは」
P「どこかでお会いしたかしら?」
A「初めてです。でもあなたのお顔はずっと知ってました」
P「お名前は?」
A「アンジェ。私と友達になってくれませんか?」
P「私はつまらない人間よ。お友達になっても楽しくないと思うわ」
A「ううん。楽しい」
P「どうして?」
A「私たち、正反対だから」
P「いいわ。私たち、お友達になりましょう」
A「よろしく、プリンセス!」

 ベアトリスが怪訝な顔をしてみせたように、今のふたりが交わすには色々と辻褄の合わない会話です。また、このときはまだアンジェの手紙がプリンセスに渡っておらず、事前の打ち合わせのない即興のやりとりと考えられます。

 プリンセスはアンジェに声をかけられたとき、まずは驚き、次いでイタズラっぽい笑みを浮かべて「どこかでお会いしたかしら?」と返しています。やがて「アンジェ。私と友達になってくれませんか?」との自己紹介を受けて、プリンセスは大きく口角を上げました。
 おそらくはこのときに目の前にいる少女が懐かしい友人だと確信したんでしょうね。

 たぶん、ふたりの出会いの再現だったのでしょう。当時のアンジェは「シャーロット」で、プリンセスは「アンジェ」と名乗っていたのですから、きっと昔とは立ち位置がひっくり返っているものだと思われます。にもかかわらずふたりともスラスラ想い出を演じきっているわけで、いかにお互いを大切に思っていたかが忍ばれるというものですね。
 「私は今でもあの日のことを覚えているわ」「ええ、もちろん私もよ」 言外にそんな意味を込めながら、ふたりはこの即興劇で旧交を温めあっていたのでしょう。小粋だなあ、オイ。

 ところでここで本題。
 つまり、アンジェにとって「Ange(←「angel」を由来とします)」とは、幼い頃に出会った大切な友人の名前だったというわけですね。自分が「天使」、つまり友人の名を名乗るのはおこがましいから、モーガン委員には自分を天使ではなく女神に喩えた?
 いや、それはおかしいでしょう。普段から「Ange」と名乗っているんですから。何かもっと別の理由があるはずです。

アンジェとプリンセスの出会い

P「ねえ、ベアト。もし天使と悪魔がいたら嘘をつくのはどっちだと思う?」
B「え、それは・・・悪魔じゃないですか? 天使は神の使いですから真実しか言いません」
P「だったら私は、悪魔と友達になりたいわ」

 これは先ほどの再会の後、プリンセスがベアトリスと交わした会話です。
 会話を切りだしたプリンセスの手元にはアンジェから渡された手紙があります。例の「My dear,Ange / Yours truly,Charlotte」ですね。

 この会話における「天使(Ange)」とは誰のことなんでしょう。
 現在その名を名乗っているアンジェ? ですが会話の中でプリンセスは天使ではなく悪魔と友達になることを望んでいます。プリンセスにとってアンジェが「天使」であるはずがありません。彼女にとって今のアンジェは、名前を偽る、嘘つきの「悪魔」です。
 ということは、この文脈での「天使」は「Ange」と名乗っていた昔の自分自身でしょうか? いやいや、それも理屈が通らない。だって幼い頃のアンジェ(シャーロット)はプリンセス(アンジェ)と友達でした。その友情を確かめたばかりのプリンセスが「友達にならなかったらよかった」なんて言うはずがありません。

 そもそもこのふたり、どうして出会えたのでしょう?
 「私たち、正反対だから」というからには、入れ替わる前のプリンセスは平民だったと推察できます。平民がどういう繋がりで王族と出会えたというのか。
 庶子? ないない。そうだったらなおさら引き離されて、自然に出会えるわけがありません。
 使用人? まさか。幼いプリンセスは「初めてです。でもあなたのお顔はずっと知ってました」と語っています。使用人なら「初めて」だなんて言うはずがありません。仮に向こうが顔を覚えていないとしても、こちらはいつも屋敷で働いているんですから。
 では影武者? それも考えにくい。もしアンジェの身内がプリンセスを影武者にするために雇い入れたなら、同じ顔のふたりが一緒にいるところを誰かに見られかねないリスクは極力避けようとするはずです。プリンセスにもそう躾けるはずです。
 では・・・。

 アンジェとプリンセスが入れ替わったのは10年前の革命当時。現在アンジェが共和国ではなく王国のノルマンディ公と敵対していることから、彼女の両親を暗殺したのはノルマンディ公である疑いが強い・・・というのは前回の考察で書いたとおり。
 プリンセスは、ノルマンディ公が用意したアンジェの替え玉なのではないでしょうか。
 どうせ家族ごと皆殺しにするので多少見られたところで問題ありません。ノルマンディ公はスパイの元締めなので、ある程度は漏れた情報も握りつぶせます。むしろプリンセスをアンジェに成り代わらせるため、近くでアンジェを観察し学習させることの方にこそ大きなメリットがあります。いざというとき殺される役目の影武者と違い、替え玉には長くアンジェの振りをする役目があるのですから。

(ここ余談)
 もしもアンジェの両親を殺したのがノルマンディ公だとしたら、彼はどうしてプリンセスなんて替え玉をわざわざ用意したんでしょう。同じ顔をした少女を見つけてくるなんて並大抵の手間じゃありませんよ。
 両親という最大の後ろ盾をなくした場合、王位継承権の序列は大きく下がります。国王というのは貴族を初めとした権力者たちの元締めであり、そのため血筋だけでなく政治力も求められるからです。仮に元々のアンジェが継承権第1位だったとしても、他に血筋を継げる候補がいるならば、後ろ盾をなくした時点でその序列は他の血族に移ります。そういうものです。
 家族写真から見て取れるノルマンディ公の姪の王位継承権は現在第1位。にもかかわらず彼がアンジェの家族を暗殺したとしたら、それはつまり、当時はアンジェの序列第1位だったということでしょうね。
 それにしたって、なんでわざわざ手間暇かけて替え玉を用意する必要があったんでしょう。単純に消えてもらった方がメリットは大きいでしょうに。
 ・・・ああ、アンジェが女王の寵愛を受けていたからか。アンジェが死んだとなると女王の悲しみはきわめて大きくなり、政治に無視できないほどの差し障りが生じる。王家との姻縁で政権の中枢に食い込んだノルマンディ公にとってそれはおいしくない。だから序列を下げつつも「シャーロット」には生存してもらい、なおかつ替え玉とすげ替えて復讐されるリスクも取り除く必要があったと。
(余談おわり)

 プリンセスはアンジェに成り代わるためノルマンディ公が用意した替え玉だった。その企みは事実成功し、アンジェは王家から排斥されてプリンセスが彼女の席に座っている。
 ですがひとつだけ誤算があったということですね。プリンセスがアンジェと仲よくなってしまった。プリンセスはノルマンディ公の意志に背いてアンジェを逃がし、内心でいつか友人に本来の地位を譲り返そうと画策している。いよいよ無根拠なただの妄想でしかありませんが、たぶん、きっと、そういうことじゃないかな。

アンジェとプリンセスの「天使」

 ノルマンディ公の画策でアンジェに接触したということは、幼い日のプリンセスはスパイの手ほどきを受けていたんでしょうね。この頃のプリンセスは「Ange」を名乗っていたのですから、なるほど、皮肉が効いています。スパイは嘘をつく生き物。

P「私はつまらない人間よ。お友達になっても楽しくないと思うわ」
A「ううん。楽しい」
P「どうして?」
A「私たち、正反対だから」
P「いいわ。私たち、お友達になりましょう」

 けれど幼い日のアンジェは、そんな嘘つきのプリンセスと友情を育んでくれました。「正反対」であることを喜んでくれました。どういうわけか、正直者の自分にコンプレックスを抱いていた様子で。
 「だったら私は、悪魔と友達になりたいわ」
 「悪魔」と友達になってくれたのは、在りし日のアンジェだったんですね。「Ange」とは名ばかりの、嘘つきの悪魔なのに。
 だから立ち位置の入れ替わった現在、今度はプリンセスの方から「Ange」と友達になることを願います。

 天使と悪魔、どちらが嘘つき? ――悪魔? ・・・なら、「Ange」はやっぱり天使じゃなくて悪魔だ。私は「Ange」と名乗る悪魔を友達として選ぼう。いつか彼女がそうしてくれたように。

 シャーロットという本名を捨てて大切な友人の名を借りているアンジェは、今でもこの名を誇りに思っています。
 「嘘をつくのはスパイだから?」
 「本当のことは面白くないもの」

 スパイだから嘘をつくんじゃない。嘘つきが好きだから嘘をつくんだ。
 彼女にとって嘘つき「Ange」は大切なお友達。
 アンジェにとって「天使」は正直者の象徴じゃない。「Ange」は大好きな嘘つきさん。

 きっと、それが彼女が正直者の喩えとして「天使」ではなく「女神」を選んだ理由でしょうね。
 プリンセス・プリンシパル第2話は篤い友情の物語です。

蛇足の余談:ABCDC

Ange
Beatrice
Chise
Dorothy
Princess(Charlotte)

 プリンセスと呼んでいるうちはいいんですけどね。もしシャーロットの方で呼ぶとCがふたりダブってしまいます。
 このアニメ、頭文字をそのままコードネームに使っていたり(そういえば定番のアルファとかブラボーじゃないんですよね)、ミスリードのつもりか第1話のゲストキャラに「Eric」と名付けていたりと、どうにも頭文字にこだわっているきらいがあるんですよね。

 考えすぎならいいんですけど、ねえ?

 ・・・いや、ムダに含みを持たせてみましたが、割と本気でそっち方面の不穏さは期待してないっス。

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