キラキラプリキュアアラモード第25話感想 羽ばたくためのプラクティス / 思いをかたちにすることの重要性。

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「大好き」。言葉にするとシンプルだけど、言われたら心がキラキラする、ステキな言葉じゃない?

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(主観的)あらすじ

 ゆかりが王子様に求愛されました。あきらがそれを止めようとすると、なぜか気分を損ねたゆかりが「王子が勝負に勝ったらコンフェイト公国についていく」と言いだします。
 色々とあって勝負は難航。「人の心を弄ぶのはよくない」とあきらが諭しますが、ゆかりは「そんなにまっすぐ私を見ないで」と逃げだしてしまいます。ずっと完璧というレッテルで見られてきたゆかりには、弱さを見せてしまう前に相手をからかってごまかそうとする悪癖があるのでした。
 けれどそんな弱さを見てなお堂々と「大好き」と言葉にしてみせたあきらを見て、ゆかりの心はほぐれます。ゆかりは王子様の求愛をはっきり断り、これからもキラキラパティスリーにいることにするのでした。

 ゆかりとあきらの百合回。プリキュアは百合好きなファンも多いシリーズですが、それにしてもここまで露骨に百合押ししてくるのは何気にかなり珍しかったような。ちょっと戸惑ってます。もちろん物語の本筋はそこじゃないですけどね。ゆかりの悪癖とあきらの悪癖、両方を同時に指摘しつつ成長まで描くための、あくまでロジカルに組み立てられた人物配置です。
 前回伝説のプリキュアから受け取った宝石?が、今回さっそくゆかりとあきらの2人分輝きました。ひょっとしてこれから6話+αも消費するのかなと思って前話記事タイトルからこっそりナンバリングを抜いたのですが、どうやらキュアパルフェ強化月間は例年通り1ヶ月そこそこで決着しそうですね。

メンドクサイお姫さま

 「いいわよ。王子があきらに勝てたら、私コンフェイト公国についていくわ」
 まーたゆかりさんってばどうしてこんなこと言いだしたんでしょうか。

 語りかけている視線の先はナタ王子ではなくあきら。つまりこれはナタ王子の求婚を断るための口実などではなく、あきらへの当てつけです。
 ナタ王子に連れて行かれようとする彼女の手をあきらが掴んだとき、ゆかりは嬉しそうな微笑を見せました。けれどその笑顔はすぐに消えてしまいます。
 「ゆかりには学校もキラパティもあるし、王子だって自分の国の・・・」
 あきらのこの言葉を聞いて、まるで失望したかのように。

 次回予告でゆかりは言っていましたっけ。
 「あなたも私に『私らしさ』を期待しているの? まったく、お優しいこと」
 今話の論点は2つあります。ゆかりの「自分らしさ」について、それからあきらの「優しさ」について。

 ゆかりの「自分らしさ」については第5話の初登場以来ずっと語られてきたことですね。
 ゆかりは今の自分が好きではありません。特に、何でも器用にできてしまう「完璧さ」が。そのせいで彼女はずっと退屈していました。「よく言われるわ」 誰もから向けられる賞賛の言葉に飽いていました。
 そんな彼女が「面白い」と思ったものが、いちかとスイーツづくりでした。いちかの言動はエキセントリックすぎてゆかりにすら予測不能。スイーツ(特にマカロン)づくりはとても難しくてゆかりですら失敗してしまう。そんな、自分の「完璧さ」を崩してくれるままならない日々が楽しくて、彼女は今日もキラキラパティスリーに通っています。
 最近では、昔から続けてきた茶道も「まだまだやな」と言われてしまう程度だと知って、少しずつ今までの自分も好きになりはじめているところですが、そのあたりの成長はまだ始まったばかり。依然、彼女は普段の自分が好きではありません。
 今の彼女にとっての「自分らしさ」とは、「完璧さ」という一言だけでそっくり説明しきれてしまえる概念です。そりゃあ確かにつまらない。薄っぺらく見えるもの。

 「ゆかりには学校もキラパティもあるし、王子だって自分の国の・・・」
 あきらのこの言葉はゆかりの逆鱗だったんですね。ゆかりは今の自分が好きじゃないので、自分のいつもの日常だけは理由にしてほしくなかったんです。
 まさか本気で王子様と結婚したいとは思っていなかったでしょうが、それにしたって引きあいに出されたのがよりにもよって「自分らしさ」だったのは求婚以上に気に入らない、と。
 この子メンドクサイ! 超メンドクサイ! 大好き!!

 あきらの「優しさ」については第8話以来ことあるごとにゆかりが皮肉ってきたことですね。
 「みんなの意見じゃなくて、あなたの意見は?」
 「無責任な優しさほど罪なものはないわ」

 あきらの「優しさ」はひたすら誰かの都合を優先させるもので、彼女はなかなか自分らしさを見せようとしません。むしろ彼女自身、「優しさ」とは誰かのために尽くすこと、とすら思っているきらいがあります。皮肉を言いつつもゆかりが彼女を信頼しているとおり、それはそれで間違いなく美徳です。けれど、一歩踏み間違えると自己犠牲と化してしまいかねない危うさもあります。
 そんなあきらにも、例えば妹のみくちゃんのように、彼女が大好きで、彼女のために精一杯尽くしてあげたいと考える人がいます。将来彼女を悲しませないためにも、もう少し自己犠牲臭さのない「優しさ」にシフトしてほしいところ。プリキュアにそんな「優しさ」は似合わない。
 ですが、それはまだまだこれからの話です。

 「あきらがいつまでも女の子たちの相手をしてあげるから」
 今のあきらは相も変わらず「優しい」まま。
 「ゆかりには学校もキラパティもあるし、王子だって自分の国の・・・」
 いつも通り他人の事情を慮ってばかりで、自分の気持ちを見せようとしやしない。ゆかりにはそれも気に入りません。
 一応これはあきらを心配しているゆかりのゆかりなりの思いやりのはずですが・・・ゆかりさん拗くれすぎててわかりにくいよ! 超メンドクサイ! 大好き!!

「完璧」なゆかり

 「なんかすっごいキレイに焼けてない?」
 「チョコマカロンは元々ブラウン。焼き色を気にしなくていいだけ簡単なの」
 「でも、それでは完璧とは・・・」

 そこを気にしますか、ゆかりさん。

 「みんな、私を『完璧』だと思って近づいてくるの。でも私は全然『完璧』なんかじゃない」
 ゆかりは今の自分が好きではありません。「完璧」だから。「完璧さ」ばかりを期待されてしまう薄っぺらい人間だから。けれどその「完璧さ」すら虚構だと、彼女だけは自覚しています。もし「完璧」なだけの自分から虚構が剥がれ落ちてしまったら、あとにはいったい何が残るのでしょう。
 だから彼女は「完璧」な琴爪ゆかりを演じ続けます。つまらないと感じながら、けれどこの虚構の裏にどれだけのものが残っているのかを知るのが怖いから。
 「私は自分の心が傷つく前に彼を傷つけて自分を守ったの」
 けれどその演技はときに余計なものまで傷つけてしまいます。例えばジュリオ、例えばナタ王子、例えばあきらのように。それがまたゆかりに自分自身を嫌わせてしまう。ハリネズミのジレンマですね。
 「そんなまっすぐ私を見ないで」
 「完璧」な虚構の私ですらない、私の嫌いな本当の私を見ないで。

 紫色のユリ(一般には赤とかピンクとかと呼ばれますが)の花言葉は「虚栄心」。あきらがゆかりのために折ってくれた折り紙は、皮肉にも彼女の心の弱いところを言い当ててしまいます。

 けれどね、ゆかりさん。あなたが「完璧さ」を演じているのは、あなた自身がそうなりたくて始めたことではなかったんでしょう? 周りが勝手に「完璧」だと思い込むものだから、そのせいでやむなく演じてきたんでしょう?
 それは愛情です。周りのみんなに対する、あなたの「大好き」な気持ちの表明です。だってガッカリさせたくなかったんでしょう? みんなに残念な気持ちを抱かせるのが嫌だったんでしょう? あなたは優しいんですよ。愛情深いんですよ。だから動物たち(ペコリン含む)に好かれるんです。いちかやあきらたちにも懐かれるんです。
 彼女たちはみんなまっすぐな目を持っています。確かに、あなたの言うとおりに。彼女たちはとっくに虚構の裏側の“本当のあなた”を見通しています。それでも彼女たちはあなたが大好きなんですよ。その意味に、どうか気づいてください。

 「好きだから。大好きだから。それ以外に理由なんて、理由なんてない!」
 キュアショコラに変身したあきらの高らかな告白がゆかりの心を震わせます。
 「泣かせてごめん」
 「泣いてなんか・・・」

 涙の浮かんでいない瞼をあきらが撫でると、そこには彼女の言ったとおりに涙が湧き上がってきます。
 彼女たちは確かにあなたの本質を見抜いています。そこにある愛情を。「大好き」を贈れば「大好き」で返してくれる、そのステキな心を。

 色を問わないユリ全般の花言葉は「純粋」。たとえあなたが「虚栄心」の仮面を被っていても、純粋な目を持つ人が見ればその本質がわかってしまいます。あなたも「純粋」なのだと。

 これまでスイーツを通して描かれてきたように、「大好き」な思いは双方向性です。つくる人が「大好き」を込めたら、食べた人も「大好き」を返してくれる。「大好き」な思いとはそういうものです。
 であるならば、本当のゆかりの姿はそんな恐れるようなヒドいものではありません。だってあきらやいちか、あるいは動物たちが、みんな彼女に「大好き」をくれているわけですから。その「大好き」は、ゆかりが知らず知らずのうちに贈った「大好き」のお返しです。

 みんながあなたを愛するのは、あなたがみんなを愛している証。
 忘れないで。「大好き」は双方向性です。

「優しい」あきら

 「ゆうべのゆかり、ワガママよ。そのことをきちんと伝えた方がいいわ」
 それを認めてなお「繊細な人だから」と避けてしまうのがあきらの「優しさ」。
 それはそれで悪いものではないため、これまでずっと保留されてきました。けれど新しく仲間に加わったシエルは知っています。そういう当たり障りのない接し方がときに悲劇を生むことを。

 「ちゃんと言ってくれないとわかんないよ」
 ハートキャッチプリキュア、来海えりかの口癖です。普段の雑な言動ばかり悪目立ちしてしまう子ではありましたが、同時に彼女はこういうもどかしいディスコミュニケーションに関して人一倍クレバーな子でもありました。
 何かかたちにしなければ伝わらないことというのはどうしても存在します。必ずしも相手がニブいからというわけでなく。
 ピカリオが絶望したあの日、まさかシエルは彼を傷つけるつもりであんな言葉を言ったわけではなかったでしょう。ピカリオだって、もちろんシエルが自分を見放しただなんて思っていなかったはずです。それでも彼は絶望しました。いったいどうして?

 「『大好き』。言葉にするとシンプルだけど、言われたら心がキラキラする、ステキな言葉じゃない?」
 あの日ピカリオは絶望しました。苦しい日々の中で救いを求めていた彼に対して、シエルがかたちある救いを与えてやれなかったからです。「大好き」なのはわかっていました。シエルがピカリオのことをずっと「大好き」でいてくれていることくらいは。
 それでもピカリオはそれをかたちにしてほしかった。大好きな姉に「おいしい!」と喜んでほしかった。それが叶わなかった。だから絶望してしまった。
 かたちにしなければ伝えられないことというのはどうしても存在します。それはいったい何か。・・・言語化できません。これが言語化できるものなら言葉もスイーツも必要ありませんよ。
 「大好き」。そのシンプルな言葉自体がステキなんじゃありません。「大好き」な思いを伝えてもらえるその行為、その好意こそが、なんだか心がキラキラするような、元気になれるパワー(キラキラル)となるんです。
 あの日ピカリオは絶望しました。黙っていてもわかってもらえるとばかり思いこんで、肝心の「大好き」に込められたパワーを、シエルが彼に贈ってあげられなかったから。

 あきらの優しさは、だから問題だというわけですね。いくら献身的でも、自分の「大好き」をかたちにできていないから。スイーツづくりと同じです。製法の完成度とキラキラルの量はさほど関係ない。献身の度合いと助けてもらえたうれしさはさほど関係ない。
 なるほど、そう来たか。正直この論理は予想していませんでした。プリキュアはいつだって私の上を行ってくれます。

 「人の気持ちで遊ぶのはよくない」
 場合によってはそういう助言として適切な言葉よりももっと大切なものがあります。
 「・・・それから? 見せてよ。ゆかりの気持ち、全部受けとめるから。隠さないで」
 「好きだから。大好きだから。それ以外に理由なんて、理由なんてない!」

 それが、「大好き」な気持ちをかたちにすること。「大好き」な思いそのものを相手に贈り届けることです。
 「大好き」な思いは双方向性。贈れば贈っただけ相手は元気になれるし、相手も同じだけ元気を返してくれます。なんて幸せな円環。

 「ゆかりが行きたいなら行かせてあげればいいのに。だって、大切なのはゆかりの気持ちよ」
 それがどんなに分かりきった気持ちだって、かたちにしなければ本当に大切なことはひとつも伝わりません。ゆかりの気持ちも、あきらの気持ちも。今話は隠してきた気持ちやあえて言葉にはしてこなかった気持ちを、きちんとかたちにして示すことにフォーカスが当てられました。

 言葉にして、あるいはスイーツを通して、絶えず「大好き」な思いを贈りあいましょう。
 私とあなたの間にあるその円環は、きっと絶対の絶対に、とってもステキなものなんですから。

今週のアニマルスイーツ

 ・・・は、またお休みです。スイーツが中盤に登場する構成上、例えばイヌとネコが仲よく並んでいるようなデコレーションをしたら展開がおかしくなるからでしょうか。

コンフェイト公国とナタ王子について

 というわけで今週のおまけはこっちでいきましょう。
 ちなみに新聞記事にはこう書かれていました。

王子来日
△ どのような出会いが待っているか、非常に楽しみだと語るナタ王子
今月の○日、コンフェイト皇国の第一王子。ナタが来日した。△△地域にあり、スイーツの聖地ともされている当国は小さな規模ながらも、日本との交流も多い。今回の来日の目的は、嫁探しと交換留学生の査察であり我が国のスイーツ作りの技術を学ぶと共に、さらに新興を深める目論見だ
(以上、原文ママ)

 「皇国」は「新興」と同じくたぶん誤字ですね。今どき公国(首長が貴族)もたいがい珍しいですが、皇国(首長が皇帝)なんてひとつも現存しません。強いていうなら日本国くらいなものです。
 プリキュアはこういう誰もチェックしないような文字ネタに関してはやたらとテキトーな傾向があります。

 ちなみに「コンフェイト」は金平糖のこと、「ナタ」はクリームのことです。どちらもポルトガル語。
 何百年も昔にポルトガル王国から領地を拝領した、みたいなことが建国のきっかけだったのかもしれませんね。

 もうひとつちなみに、ナタ王子がスイーツに添え、怪物化もされた真っ白なユリはカサブランカといいます。花言葉は「お祝い」。結婚式なんかでおなじみの花ですね。気が早すぎです、王子。

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