プリンセス・プリンシパル 第5話小ネタ アンジェとちせのトランプ遊びについて。

 第5話は脚本から演出からコンテから動画から、もう片っ端から全部すごくて、はてさて何から感想を書き始めようか思案に暮れています。すごかったですよね。やー、すごかったですよね。(語彙貧困)

 そんなわけで、なんか今日中にまとまる気がしないので、とりあえず全体に影響しない些細な小ネタでお茶を濁しておこうかと思った次第です。
 ちょうどネットで話題に挙がっているネタもあることですし。

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前置き:謎のトランプシーン

 アンジェとちせが客車を渡りながら兵士たちのトランプにちょっかいを出すシーン。
 意味不明だということで色々と話題になっていますね。

 話の流れと無関係に唐突にちせがそこらの兵士の手札を抜き取り、アンジェがそのカードを別の兵士の手札に返す。それを何度か繰り返す。それだけ。

 うん、意味不明。普通こんなことをしたら怒られます。アンジェなんて今は女王付とはいえ一介のメイドでしかないわけですし。
 アンジェとちせの側にしても、任務に関する情報を不特定多数の前でべらべらしゃべるのには抵抗があるはずです。
 でも怒られません。周りを気にしません。謎。ありえない光景。

 ・・・ということは、このシーンは現実的に考えてはいけないということです。ここで描かれているのはあくまで象徴的な表現。
 カードを取った / 返したことを事実と捉えて登場人物たちにとってのその意義を考えるのではなく、制作者(監督? 演出? コンテ?)がどういうつもりでこの非現実的なシーンを挿入したかの意図を考えなければなりません。

 そういう制作者側の演出意図を想像しだすとキリがないので、普段はなるべく控えるようにしているんですけどね。そういうことばっかりしてると目の前の物語と脳内妄想の区別がつかなくなっちゃいますし。(ただし花言葉は例外。アレは外れてもいいや、くらいのつもりで割りきって遊んでいます)
 ただ、今回は「オラ、解釈してみせろよ」みたいな制作者側の挑発(というかゲームへのお誘い?)が感じられるので喜んでノっちゃいますね。
 どうせこのシーンはストーリー上あまり重要じゃないですし、そもそも肝心なところはアンジェとちせの会話だけで完結していますしね。もしハズしちゃっても痛い目(修正困難な誤解釈)には遭わないですみます。

 ・・・言い訳がましいな、この節。

状況観察:トランプのランクとスートと、兵士たちの表情

 とりあえず兵士たちが興じているゲームはポーカーと見ていいでしょう。
 ちせがカードを抜く前とアンジェが返した後、兵士たちの手札が常に5枚になっていますから。
 より具体的にはファイブカード・スタッドと呼ばれるルールですね。日本ではドラゴンクエストなどのおかげで一番広く知られているアレです。

 次にちせが抜いたカードを書き出してみます。時系列順に並べると以下の通り。

  1. 【ハートの2】
  2. 【スペードの6】【ダイヤのA】
  3. 【スペードの8】【ハートのA】
  4. 【不明】
  5. 【スペードのJ】【ハートのJ】
  6. 【不明】

 最初の【ハートの2】はほぼ最弱手です。
 2番目と3番目には【A】が混じっているので反対にそこそこ強い手。Aのスート(柄)ともう片方のランク(数字)の差で3番目の方がちょっとだけ上ですかね。
 5番目の【スペードのJ】【ハートのJ】はこの2枚だけで役(ワンペア)が成立しているという強力な手です。ランクもスートも申し分なし。これが手元にあるならちょっと強気に勝負に出てもいい感じ。

 それから、こうしてカードに注目していると、兵士たちの表情が細かく動いていることに気づきます。これも書き出してみましょう。

  1. 抜いたとき<平静>→返したとき<動揺>
  2. 抜いたとき<動揺>→返したとき<平静>
  3. 抜いたとき<動揺>→返したとき<平静>
  4. 抜いたとき<平静>→返したとき<動揺>
  5. 抜いたとき<動揺>→返したとき<平静>
  6. 抜いたとき<平静>→返したとき<動揺>

 ポーカーのルールを知っている方なら兵士たちが何に動揺しているのか、もうわかりますよね。

 2つを重ねてみましょう。

  1. 【ハートの2】:<平静>→<動揺>
  2. 【スペードの6】【ダイヤのA】:<動揺>→<平静>
  3. 【スペードの8】【ハートのA】:<動揺>→<平静>
  4. 【不明】:<平静>→<動揺>
  5. 【スペードのJ】【ハートのJ】<動揺>→<平静>
  6. 【不明】:<平静>→<動揺>

 単に強い手を取られたから / 弱い手が来たから、動揺しているだけですね。
 ファイブカード・スタッドでは各プレイヤーに1度だけ任意の手札を交換する機会が与えられます。
 この場合ちせとアンジェはさしずめディーラー役ということになるでしょうか。もっとも、普通のディーラーはプレイヤーが捨てるカードを勝手に選んだりはしませんけどね。
 女の子というのはときに横暴なものなんです。

 さて、ここまででどんな象徴的な意図が読み取れるかといえば・・・何にもないですね! これじゃホントにただポーカーで遊んでるだけだ!
 書いている方としても、たぶん読んでいる方としてもカッタルい節ですが、我慢してもうちょっと突っ込むことにしましょう。

 そもそもこのシーンで一番重要なのは本来トランプなんかではなく、アンジェとちせの会話です。これも書き出してみましょう。

A「5両目と最後尾には鉄道警備小隊50名が乗ってる。生半可な襲撃では堀河公は殺せないわ」
C「十兵衛の攻撃は生半可なものではないがな」
A「十兵衛と戦ったことがあるの?」
C「何度も」
A「戦った理由は? 主義主張? それとも仕える主の問題かしら?」
C「これは尋問か?」
A「バディなら互いを知る必要があるでしょう」
C「佐賀藩出身。士族。16歳。好きなものは漬物。貴公は?」
A「・・・。アンジェ。17歳。出身は黒蜥蜴星」
C「なるほど、それであの体術か!」
A「っ!?」
C「かぐや姫も月から来た女であった。なるほど」
A「日本には月から来た人間がいるの?」
C「星人どころか神も身近に暮らしておる」
A「神が身近?」
C「山に、川に、厠にまでおるからな」
A「えぇ・・・」

 まあ、情報交換に見せかけた腹の探り合いですよね。尋問というのもそう間違ってはいません。緊迫したBGMのとおり、お互い神経を尖らせて慎重に言葉を選んでいるのがわかります。
 最後にはちせたんの天然ぶりが大爆発して混ぜっ返されちゃうんですけどね。

 さて、以上で揃えるべき情報は全て出揃いました。
 あー疲れた。考察に移りましょう。

考察:さて、トランプは何を表しているのか

 ムダに推理小説風味な文章構成しといて何ですが、さっそく結論からいっちゃいましょう。
 トランプのランクとスート、兵士たちの表情、アンジェとちせの会話。これ全部時系列順に混ぜちゃってください。それで全部わかります。
 注目すべきはトランプに触れた前後、アンジェとちせが何を話しているかです。

A「5両目と最後尾には鉄道警備小隊50名が乗ってる。生半可な襲撃では堀河公は殺せないわ」
C「十兵衛の攻撃は生半可なものではないがな」

【ハートの2】:<平静>→<動揺>
A「十兵衛と戦ったことがあるの?」
C「何度も」

A「戦った理由は? 主義主張? それとも仕える主の問題かしら?」
【スペードの6】【ダイヤのA】:<動揺>→<平静>
C「これは尋問か?」

A「バディなら互いを知る必要があるでしょう」
C「佐賀藩出身。士族。16歳。好きなものは漬物。貴公は?」
【スペードの8】【ハートのA】:<動揺>→<平静>
【不明】:<平静>→<動揺>
A「・・・。アンジェ。17歳」

A「――出身は黒蜥蜴星」
【スペードのJ】【ハートのJ】<動揺>→<平静>
【不明】:<平静>→<動揺>
C「なるほど、それであの体術か!」
A「っ!?」
C「かぐや姫も月から来た女であった。なるほど」
・・・

 トランプはアンジェとちせの駆け引きについて、そのどちらが優勢かを表しています。

 最初は弱手の【ハートの2】。アンジェからカードを返された兵士が動揺しています。
 「十兵衛と戦ったことがあるの?」
 これは十兵衛と自分が親子であることを隠しているちせにとって急所となる質問です。しかもちせは彼と深い関わりを持つことまではすでに明らかにしてしまっており、嘘をつくことができません。
 「何度も」
 できることといえばせいぜい窮地を脱するための罠を仕掛けることくらいです。

 2巡目は【スペードの6】【ダイヤのA】。今度はちせにカードを取られた兵士が動揺しています。
 「戦った理由は? 主義主張? それとも仕える主の問題かしら?」
 アンジェの追撃は的外れでした。ちせが十兵衛と剣を交えたと言っているのは、関係が良好だった修業時代の話です。「何度も」に食いついて、戦う以外の関係性を想像できなかったアンジェの負け。
 平静を取り戻したちせに「これは尋問か?」と、イヤミを返されてしまいます。

 3巡目は【スペードの8】【ハートのA】。ちせ優位。
 素性を偽っているアンジェにとって、自己紹介を求められるのはあまり都合がよくありません。
 「これは尋問か?」と問われて「バディなら互いを知る必要があるでしょう」と返したのは悪手でした。
 ですがスパイであるアンジェにとってこの程度はホントのところ大した苦境でもありません。即座にカードを引き直し(仕切り直し)ます。
 4巡目、【不明】。アンジェ優位。
 ここでアンジェは被り慣れた嘘の仮面を被ることにします。カードのランクとスートを伏せて、なおかつちゃっかり優位に立ちます。
 カバーストーリーには慣れています。これなら強引に優位性をひっくり返すこともできるはず。

 5巡目のちせ優位な手札に被せて、またもや伏せた【不明】カードの引き直し。嘘のパワーで一気に勝負に出ます。
 嘘つきアンジェの持ちネタ得意技、「出身は黒蜥蜴星」。効果:相手は困惑する。
 天才スパイに対してこの程度の揺さぶりが効くとでもとでも思ったか!

 ――ところが。
 5巡目のカードは【スペードのJ】【ハートのJ】だったんです。極めつけの強手。ちょっとやそっとの有利じゃとてもひっくり返せません。
 「なるほど、それであの体術か!」
 ちせたんの天然ぶりが大爆発します! アンジェもまさか素で持ちネタを信じてしまう子がいるとは思っていなかったようです。
 「かぐや姫も月から来た女であった。なるほど」
 「えぇ・・・」

 なんかね、もうね、腹の探り合いをするような空気じゃなくなっちゃったよね。

 この勝負、天然ちせたんの勝ちです。

 ・・・とまあ、長々と書きましたが、このシーンにトランプを配置した象徴的意図なんてこんな(割としょうもない)ものですよ。たぶんね。
 要はポーカーという心理戦ゲームを通して、アンジェとちせの間にある緊張感を強調していたにすぎません。

 こういう象徴的な表現は、なんとなーく、無意識ーに視聴者を誘導するために使うものであって、こういうわかりにくいところに重要げなメッセージを仕込むのってそもそもあんまりよくないんです。なにせわかりやすいセリフやアクションと違って、全ての視聴者が自発的に解釈してくれるようなものじゃないですからね。
 だから、ここではアンジェたちの会話の添え物に徹する程度が適切。本当に重要な内容はあくまで全部会話の中にあります。

 偉そうに語っていますが、私にゃこんな小技の効いた、しかもさじ加減が適切な表現なんてとてもとてもつくり出せません。後付けだから何とでも語れるんです。
 プリンセス・プリンシパルの制作陣はやっぱりすごいなあ。ベテランさん揃いだもんなあ。・・・というのがまあ、この記事の結論ですね。

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