キラキラプリキュアアラモード第42話感想 “たかが”WILD AZURE。

消えない夢に向かう翼ひらけ、たくさん受け取ったエールを胸に。

キラキラ☆プリキュアアラモード! Blu-ray Vol.1

(主観的)あらすじ

 あおいのバンドのリーダーが引退することになりました。彼はあおいの声に惚れ込んでバンドに誘ってくれた恩人でした。あおいの夢はずっと彼とともに育ってきて、だから彼がいなくなることであおいは自分の夢まで無くなってしまう心地がしました。
 「大好きなものが無くなっちゃったらどうする?」 そんなあおいの迷いは、いちかの答えで霧散します。「つくる! 大好きな思いは消せないから」
 あおいは自分の夢を育てつづけることにしました。たとえリーダーがいなくなっても、仲間がいなくなっても、お客さんがいなくなっても、声がなくなっても、そんなの関係ありません。あおいはひとりでも歌いつづけます。あおいの夢はあおいのものなんですから。

 自分らしくあろうと抗うあおいの物語、最終章。私としては今年こそ家と夢を両立してくれるかと期待していたのですが、プリキュアはなかなかそういう方向に向かってくれません。ちょっと残念。(対象年齢考えろ) ですがあおいの物語としてはこのうえなくきれいに着地しましたね。
 あおいの歌は窮屈な日常に抗い、自由を渇望するところから始まりました。彼女が抗うべき理不尽は常に自分の外側にあって、だから今まではただ情熱を武器に叫んでいるだけで乗り越えられていました。けれど、違うんですよね。どうしてそういつも理不尽にばかり見舞われていたのかを考えると。理不尽を呼び込んでいたのはむしろ、彼女自身。

夢の終わり、ふたたび

 第27話、ロックフェスであおいの夢は一度終わりました。
 憧れの人と同じ舞台に立つ。当時胸に抱いていた、そんな夢を叶え尽くして。
 今度もまたあおいの夢は終わってしまいます。
 「悪い。俺、WILD AZURE抜けるわ」
 今までずっとあおいの夢を一緒に育ててくれていた仲間との別れによって。

 自由な歌を歌える場(バンド)を手に入れました。そのパワーのおかげで自分を束縛しようとする水嶌を説得でき、ついには焦がれていた自由の象徴・憧れの岬さんのところにまで手を届かせられました。今は自由を求めていた頃の夢を越えて、自分の「大好き」のために歌を歌っています。
 では、もしそれら全ての基盤、バンドそのものが失われてしまったら?
 「WILD AZUREは園部がつくったバンドなんです」

 あおいの夢は大きく育ちました。けれど、それはあおいひとりの力によるものではありません。あおいの夢はいつだってWILD AZUREの存在を前提にしてきました。
 もしWILD AZUREに誘われていなければ、あおいはひとり路上で歌うだけ、もしかしたら当初の夢を叶えることすらなく、ずっと燻っていたかもしれません。
 例えるなら借りたプランターで花を育てていたようなもので、ではプランターを返してほしいと言われたら、花はいったいどこで育てたらいいんでしょう?
 今まで当たり前にあったものが突然失われてしまう理不尽。
 それがたかがプランターひとつであっても、失われてしまえばそこに植わっていた花まで一緒に失われてしまう。たかが無名の野良バンドひとつであっても、WILD AZUREが無くなったらあおいの夢まで一緒に消えてしまう。

 「みんな今まで一緒にやってきたのに!」
 たかが。たかが。たかがひとつ。
 「メンバーがいなくなるのは辛いけど」
 たかがひとり。部外者の岬さんから見ればどこにでもあるありふれた出来事。
 「WILD AZUREは園部がいなきゃムリなんです」
 なのにあおいにしてみれば途方もない重大事。だってその“たかが”が、かけがえのない夢まで巻きぞえにしてしまうんですから。

 「まるで自分の夢が消えたみたいに言うのね」
 消えたんですよ! なんて理不尽!

花の所有者

 「対バン来なくてもいいわよ。あなたたちの解散コンサートやるわけじゃないもの」
 甘ったれんな。

 「もしさ、大好きなスイーツが無くなっちゃったらどうする?」
 「こ、困ります」
 「私だったら探しに行くわ」
 「無くなる前に私のをみくにあげる」
 「ふふ、秘密」
 「私ならつくる!」

 甘ったれんな。

 岬さんは助けてくれません。だってそんなの、“たかが”だから。
 いちかたちはあおいの前提に合わせてくれません。だってそんなの、“たかが”だから。
 甘ったれんな。
 「そうじゃなくて、『無くなったら』って」
 「材料はあるんでしょ? じゃあつくる!」
 「だからムリなんだってば」
 「どうして? スイーツが大好きって気持ち、消せないもん」

 プランターが無くなったって、花はあなたのものでしょうが。
 WILD AZULEが無くなったって、歌はあなたのものでしょうが。
 なのにどうして失われてしまうみたいに言うのか。

 今回のお話は要するにあおいの甘えでしかありません。
 花を育てたけりゃ園芸土と一緒にカップ麺の容器にでも移しとけ。歌が歌いたけりゃギター担いでまた路上にでも立っとけ。それで済む話。容れ物と中身は確かに無関係ではありませんが、同一体でもないんですから。

 これまであおいはずっと理不尽に抗ってきました。
 不自由を強いる家。突然叶えられてしまった夢。お嬢様という色眼鏡で値踏みする大人たち。
 どうしてあなたがそんなものと戦わなければいけなかったのでしょうか。
 ――それを望んだのがあなただからです。
 家の流儀に染まりたくなくて、押しつけられた夢に満足したくなくて、外野のタワゴトに「大好き」を邪魔されたくなくて、ただ、ただ、自分らしくありたいがために、あなたは周りのあらゆるものにケンカを仕掛けました。
 次から次へと理不尽な目に遭って当然です。あなたの方に、それらと迎合する気がないんですから。

 たかが“家”。たかが“夢”。たかが“色眼鏡”。
 そんなもの、人によってはどうでもいい、場合によっては障害ですらない、くだらないものです。
 自由を諦めれば、現状に満足すれば、「大好き」にこだわらなければ、むしろそいつらはあなたの味方にすらなりえたでしょう。
 けれどあなたはそうしなかった。抗った。自分らしくあろうとした。
 だったら今回も抗うべきです。

 「私さ、園部が抜けたらバンド続けていけないかもって、夢が消えちゃうんじゃないかって」
 リーダーのいたWILD AZUREは無くなります。それはどうしようもないことです。
 けれど、それはイコールあおいの夢まで消えてしまうという意味ではありません。
 「でも私、夢見ることをやめない。園部が、みんながもっと大好きにさせてくれた音楽を続けていきたいんだ」
 歌いたければ路上に立てばいい。それで満足できないなら、リーダーが抜けても存続できる新しいWILD AZUREを自分でつくればいい。
 「私にとってWILD AZUREはかけがえのないものだから」
 たかが“WILD AZURE”なんかにあなたらしさを邪魔されたくないのならば。

 こんなもの、「理不尽」なんかじゃありません。
 これは「自由」です。
 あなたがあなたらしくいられるように、あなたにあなたらしい決断を許す、この世界の優しさです。


 “たかが”WILD AZURE。今のあおいはそんなものの都合で夢を無くしたりしません。
 けれど同時に、今のあおいがそれほどの強さを得たのはそのWILD AZUREがあったからこそでもあります。

 「ともに進んできた証を音に乗せて響かせよう。ひとつひとつ大切なものつくりあげてきたんだよ」
 Yell。
 これまであおいが夢に向かって歩んできた道は、あおいとリーダーとWILD AZUREが一緒になってつくりあげてきたものです。
 道というものは誰かの足跡が元になってつくられます。誰かが踏み固めた足跡を、また他の誰かが踏み固め、また誰かまた誰かが同じ足跡を通って少しずつ広げていき、そうしてやがて「道」となります。
 今までともに歩んできてくれた、一緒に道をつくってくれたあなたの応援に感謝を。
 「どんなに遠くに離れてしまっていても歌でつながってる」
 私たちはいつだって「大好き」でつながっています。もちろん、これから別々の道を開拓していくことになるあなたとも。私からもあなたに声援を。

 「消えない夢に向かう翼ひらけ、たくさん受け取ったエールを胸に」
 Aile。
 シエルにとってのピカリオがそうであったように、これまであおいの夢はリーダーやWILD AZUREの応援によって支えられてきました。けれどその応援の力はやがてあおい自身の強さとなり、今、あおいはひとりでも新しい道を開拓できるほどに成長しました。
 「そうだろ。確かな思いの強さは自由に生きてく道になる」
 これからあおいは自分で決めた道を開拓していくことになります。それは誰の都合にも依らない自由な道ですが、忘れてはいけません。彼女がそういう強さを得ることができたのは、同じ「大好き」を共有する仲間がいたからなんです。

 「何があっても私は歌が大好き。何があっても私の夢は絶対消えたりしないんだ」
 抗うべきは自分の外にある理不尽じゃありません。自分の内にこそある弱い心、心の闇です。
 それを打ち破るためならば、私たちはいくらでもあなたに力を貸しましょう。あなたの「大好き」を通じて。
 あなたがあなたらしくあろうとすることを、私は応援します。

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