キラキラプリキュアアラモード第41話感想 そして希望の翼は心の闇を突き破る。

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ふたりなら乗り越えられる。私たちふたりの力でキュアパルフェが生まれたみたいにね。

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(主観的)あらすじ

 リオ君がシエルのところに帰ってきました。ずっと待ち焦がれていた出来事にシエルは大興奮! これからずっとふたり一緒にいちご坂でパティシエの修行をする日々を夢見ます。
 ところが、街ではエリシオの生み出したリオくんのニセモノが暗躍。たちまちリオくんは街の人々の憎しみに晒されます。元々罪の意識を背負っていたこともあり、リオくんは身の潔白を主張することができず、ひとりでいちご坂から逃げだすことを考えます。
 けれどシエルが追いかけます。一度は悪態をつかれ手を振り払われても、その裏に彼が別の本心を隠していることを信じて、諦めずに追いすがります。
 かくして思いは伝わります。シエルの「大好き」の思いは頑ななリオくんの心を解きほぐし、リオくんの本心はずっとすれ違っていたシエルにまで届きます。つながったふたりの「大好き」はキュアパルフェとなって、エリシオの悪意をみごと打ち破るのでした。

 最後の個人回、先鋒はずっと預かり物を抱えつづけてきたシエル。人の内面に生まれる闇すら打ち払う破邪の力・ファンタスティック・アニマーレを得て、シエルの輝く指先はずっとわだかまっていたピカリオの心の闇をついに貫通します。姉弟はようやく「大好き」でつながりあうことができ、借り物の翼はようやく本当の意味でふたりの持ち物になりました。
 ・・・ところでものすごーくどうでもいい悩み。これまでいちかたちが戦ってきた闇は外部から忍び寄る存在だったので「悪意」と言い換えることができましたが、どうやら前回から戦う相手が内面に生まれる闇にシフトしたようで、さて私はコイツをいったいどう呼び表したらいいものか・・・。(「心の闇」でいいじゃん)

キュアパルフェの翼

 「その・・・。あのときは、ごめん」
 「何のこと?」

 プリキュアという物語は基本的に謝罪を良いものとして描きません。大人は、子どもたちが過去にうつむいて未来へ進む足を止めてしまうことを良しとしないからです。
 だから今回のリオくんの謝罪も軽く流されてしまいます。それはもう、1秒のタメすらなくサラリと。

 けれどまあ、これはこれで残酷なことなのかもしれませんね。謝罪を受け入れてもらえない以上、全ての過去は水に流すことを許されません。
 白い絵の具に黒い絵の具を一滴でも垂らすと、それはもう何をしたって元の白い色には戻りません。それをわかったうえで、それでもなお、私たちは子どもたちに白くあれ、と願います。
 「全部本当のことだ。罪は消せない」
 ええ。消せません。消させません。謝罪するヒマを与えるくらいなら、1分1秒でも長く、前を向いて歩いてほしいですから。それと同時に、過去に歩んできた道のりだって否定させません。その足跡がどれほど黒くても、捻れていても、歩みは歩み。あなたが1歩でも遠くの未来へと進めるように、私たちは謝罪ではなくもっと別の方法で、あなたが自分の過去を飲み下すことを期待します。

 たとえばプリキュアのひとり、キュアパルフェは絶望の泥のなかで生まれました。
 自らの手で大好きな弟を絶望に突き落とし、そしてそのことに気付きもしなかった。そんな途方もない罪を抱えて、いつかのあの日、シエルは自ら絶望のなかに沈みました。同じく絶望に沈んでしまった弟の前まで行って、そこで永遠に罪を償うために。
 「わたしはずっとここにいる。それがピカリオのためだもの」
 けれど当の弟はその償いを拒絶しました。自分はそんなことを望んで絶望に身を染めたのではないと。そもそも望みが絶えたからこその絶望なんですから、誰かが絶望することで別の誰かが絶望から救われるなんてことは絶対にありません。

 だから、彼は償いを拒絶する代わりに、姉に希望を託しました。
 「俺のために自分を捨てるというのか!? 俺はお前を越えたいがために闇にまで手を染めたのに。今のお前を越えたって意味がない!」
 自分の絶望の根底をさらけ出し、自分が絶望した理由を改めて突きつけ、そしてつまりは絶望に染まる前にあったはずの自分の希望を、あるがまま彼女に託しました。
 「本当にスイーツをつくれなくなるんだぞ。・・・泣くな」
 「俺に構うな。スイーツを完成させるんだ」

 キュアパルフェを絶望の泥から這い上がらせた虹色の翼は、ピカリオのつくってくれた灰色のワッフルでできています。

 「また腕上げたんだな」
 「ふふ、わかる? いちご坂に来てから、いちかたちと出会ったり、いろんなことがあったでしょ。それが全部、今の私のスイーツに生きてるの。だからもっともっといちご坂で修行を続けて、パティシエとして高みを目指す! 今の私の夢!」

 彼女は自分の罪を償ったわけではありません。それにも関わらず、今の彼女は、ほら、こんなにも眩しく輝いています。夢と希望を胸に抱いて、望む未来へとまっすぐ羽ばたいています。かつて絶望に染まった過去を苦ともせずに、力強く。
 「私は私を否定しない。夢と希望を捨てないし、自分の可能性を諦めない!」
 全てはあの日あのとき、あなたが償いを拒絶してくれたからこそ。
 今の彼女を突き動かすその夢は、その希望は、そう。そもそもあなたが貸してくれたものなんですよ。

 やっと返せる日がやってきました。

確実必勝の物量戦

 「ピカリオ。手伝ってよ。今のピカリオはあのときと違うんだもの。やってみなくちゃわかんないよ」
 過去は消せません。一度黒く染めた手はもう二度と純白には戻れません。
 けれど、シエルは知っています。ピカリオが絶望のなかでつくった灰色のワッフルが、それでも虹色のキラキラルで輝いていたことを。
 「そうか、そんな簡単なことだったのか・・・」
 あのときあなたはコツを掴んだはずじゃないですか。大好きな人のためにスイーツに「大好き」の思いを込める、その方法。
 あの日長い眠りにつく直前、あなたはもうとっくに絶望から回復していたはずなんです。

 だというのに、心の闇がその気付きを阻害します。
 「もういいよ。俺はキラキラルを奪ったし、ノワールのしもべだった。全部本当のことだ。罪は消せない。今さらいちご坂で楽しく暮らすなんて周りが許さない」
 エリシオに操られた街の人はともかくとしても、シエルやいちかたちが味方してくれているというのに耳を貸そうともしません。別の考え方を検討しようともせずに、リオくんはひとりで自己完結的に全ての可能性を諦めてしまいます。
 この諦めの早さは今回に限らず、彼がジュリオだった頃からたびたび見せていたものですね。

 闇はディアブルのように必ずしも外から忍び寄ってくるものとは限らず、私たちの心にも知らず知らずのうちに生まれ宿るものです。
 これまでいちかたちはそれに対抗する術を持たず、彼を救えないまま長いこと待たせてしまっていました。
 けれど今は違います。やっと彼を救える日がやってきたんです。

 プリキュア・ファンタスティック・アニマーレ。
 前話で得たその力の本質は、バカみたいに愚直な力技です。
 「ワッフルつくるの?」
 「食べてくれるかわかんないけどね」
 「でも、どうしても伝えたくて」

 できることを何でもやる。できるまで何度でもやる。個性の輝きがみんなバラバラなのをいいことに、手を変え品を変えあの手この手で効くまでひたすら諦めないだけの物量戦。
 実際、ここでつくったワッフルは意味を成しません。なんとなーくうやむやのままに、結局リオくんの口に入ることすらありませんでした。彼の心の闇を払ったのはシエルの説得です。なんだそれ。
 ちなみにエリシオ戦でいい感じに演出されたいちかたちの連係攻撃もまるで通用していなかったあたり、たぶんこれ脚本の不出来とかじゃなくて狙ってやってます。なんだそれ。

 重要なのは「食べてくれるかわかんない」としてもとりあえず行動すること。ウジウジ「どうしたらいいの」とか悩んだりせずに、とにかくひたすらひたすらひたすらひたすらひたすら前向きに。押せ押せ。
 「諦めない、負けない」こそがプリキュアの真骨頂。

希望の翼の里帰り

 とんでもない力技でリオくんの心の闇は払われます。

 まあ、アレだ。闇のくせに隙を見せたのが悪い。
 「何言ってんだ。お前の夢はいちご坂でパティシエの修業を続けることだろ」
 「勘弁してくれよ。俺はお前といると辛いんだ。目の前ですごいスイーツつくりまくって、また俺を闇に染める気かよ」

 ディアブルに象徴される悪意の闇も人の心の隙に的確に滑り込んできましたが、光だって同じことはできるわけで。
 こんなあからさまに相手を思いやっている悪態なんて、遠慮なく美味しくいただきます。
 「また逃げるの? 私から逃げて、スイーツから逃げて、ピカリオに何が残るの?」
 「罪も私も今は関係ない!」
 「あなたはひとりじゃない。罪なら私も一緒に背負う」

 以前も大好きなお姉ちゃんに気持ちが伝わらなかったことを理由に絶望していた重度のシスコン、ついに泣き所がバレる。

 そもそもが今シエルが胸に抱いている希望自体、本来はピカリオのものだったわけで。
 「これがあなたの答えなんでしょ。美味しかったよ。これが本当の答えなんでしょ。本当はスイーツが大好きだって。みんなに食べてもらいたいって」
 「そうだよ。つくりたいよ! ずっと小さい頃から夢見てたんだ、お前と一緒にすごいパティシエになること」

 シエルが考えることはリオくんも考えること。リオくんが考えることはシエルも考えること。
 適性がちょっぴり違っていたせいで長いことすれ違ってきましたが、結局この双子は似たもの同士なんです。だから、
 「ピカリオ。一緒にお店やろう。一緒にいちご坂でパティシエ修業しよう。ウィ。それがいいわ」
 ふたりで夢を共有できる提案こそが何よりも一番よく効く。

 「ふたりなら乗り越えられる。私たちふたりの力でキュアパルフェが生まれたみたいにね」
 かくしてキュアパルフェの翼はリオくんに返却されました。そして改めてふたりで共有することになりました。
 「私たちの夢は無限大。ふたりでどこまでも羽ばたいてみせる!」
 シエルとリオくん。どちらも同じ夢を抱き、どちらも同じく挫折し、絶望し、罪を犯し、そしてどちらもそんな自分の過去を否定することなく、ふたりで支えあって再起しました。
 ふたりはこれから同じ未来に向かって羽ばたいていきます。一対の翼をふたり仲よく共有して。
 ・・・なんか結婚式のスピーチみたいだな。

 「本当にごめんなさいね」
 「謝っても謝りたりないよ」
 「ノン。皆さんのせいじゃないわ。私とリオにも至らないところがあったのよ」

 プリキュアという物語は基本的に謝罪を良いものとして描きません。謝罪を素直に受け入れません。謝罪のために歩みを止めるよりも、前向きに未来を良くしていこうという夢と希望の方がずっと大切だからです。
 「おお、美味しい」
 「とても繊細で優しい味だ」

 だから、そんなどうでもいいことよりも、今こうしてスイーツを食べてもらえることの方がずっとうれしい。

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