キラキラプリキュアアラモード第45話感想 私を大好きなあなたが大好きな私が大好き。

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いちか。ちょっとギュッとしてもらっていいかしら。お願い。――ありがと。

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(主観的)あらすじ

 もうすぐ楽しいクリスマス! しかも、いつもは後ろでニコニコしているだけのゆかりが珍しくクリスマスパーティを提案してくれました。これは絶対楽しくなること間違いなし!
 でもやっぱりいつものゆかりらしくありません。飾りつけにも積極的に参加し、ずっとうまくできなかったマカロンも完璧につくってくれました。いつもと違う彼女の様子が、どうにもいつもの日々が続かないことを予感させてしまいます。
 みんなが集まってくれたパーティの席で、ゆかりは留学を決めたことを報告します。ずっと毎日が退屈だった彼女は、いちかたちと出会って自分の「大好き」を見つけ、成長したのでした。だからいつもの日々は続きません。ゆかりはみんなが見せてくれたものを胸に抱いて幸せに旅立ちます。

 おかしい。坪田脚本のゆかりなのにメンドクサくない。いえまあ彼女のアンニュイはとっくに解決しているので必然ではあるのですが。
 というわけでゆかりが描く最後の物語は、こんがらがった複雑な思いの停滞ではなく、ほぐれた素直な思いの向かう未来。彼女は成長しました。胸を張って自分でそうと言えるほどに。その自己愛が、私は何よりも嬉しい。
 あとゆかりのおかげで久しぶりにかわいいかわいいえみるちゃんの姿を見ることができました。こちらも超嬉しい。

悲しいお別れ

 「私たち、来年もこうしてパーティやったりできるのかな。だってさ、ひまりはやりたいこと見つかったし、あきらさんもそろそろ受験勉強でしょ。シエルにはそもそも自分のお店あるし、私もバンドの練習あるし。みんな、だんだんキラパティに通ってこられなくなる」

 プリキュアにとって、別離は戦うべき敵でした。
 ふたりはプリキュアMax Heartの九条ひかりが背負った運命。フレッシュプリキュア!の蒼乃美希が掴みかけた夢。スマイルプリキュア!の青木れいかに与えられた道。それから、魔法つかいプリキュア!でずっとみらいたちを脅かしつづけた悲しいお別れ。
 プリキュアにとって、別離とは日常を脅かす敵でした。なぜならプリキュアは当たり前の日常を守るヒーローだから。大好きな人とのお別れはいつもの日常を変えてしまいます。それは辛く、さびしいことです。だから、プリキュアはずっと別離と戦ってきました。

 その伝統に一石を投じたのが、ドキドキ!プリキュアの菱川六花でした。
 「離れていても、離れはしない」
 いずれ大好きな幼馴染みと別々の進路を歩むことになるであろう未来を思って、それでもなお途切れることのない心のつながりを信じる物語。

 さらに身をもって新しいあり方を示したのが、Go!プリンセスプリキュアの天ノ川きららでした。
 「どうか、夢を追いつづけて」
 自分がみんなの夢を守りたいと願うように、周りのみんなも自分の夢を応援してくれる。だからこそ自ら進んで別離を望むに至った物語。

 それらを継承したことで、魔法つかいプリキュア!の悲しいお別れとの戦いは従来のプリキュアの別離との接し方から大きく変質しました。
 「キュアップ・ラパパ! 私たちは必ず、絶対、また会える!」
 出会いをもたらしてくれた世界の祝福を信じ、心からまた会える日を望んでいるお互いのつながりを信じ、そうすることでみらいたちは不可避の別離から悲しみだけを取り除きました。いつか再会できるのなら、別離は“悲しいお別れ”なんかじゃない。

 「あなたはつくづく孤独がお好きなようだ」
 「わかってないのね。どんなに距離が離れようと、私たちはずっと、心は一緒にいるの」

 「大好き」で心をつなぐキラキラプリキュアアラモードももちろんその流れを継承しています。
 留学を決めたゆかりの心に悲しみの影はありません。
 それはゆかりが孤独だからではありません。孤独だった頃の彼女はむしろ自分から新しいことに手を伸ばすことができずにいました。ひたすら退屈を耐え忍んでいました。
 むしろみんなとつながっている実感を得たからこそ、ゆかりは初めて自らの望みに従って留学を、別離を志すことができるようになったんです。
 いちかたちも涙をこぼしながら、それでもゆかりの見つけた夢を心から祝福します。

 「大丈夫。私たちはずっと一緒よ」
 いつかみんながキラキラパティスリーに通えなくなるのは、今はちょっとさびしいかもしれませんが、それでも悲しいお別れなんかじゃありません。
 それはみんながそれぞれの「大好き」のために望んだことだからです。
 同時に、みんながお互いのことを「大好き」でいてくれることを信じているからです。
 「大好き」を大切にしてきたいちかたちだからこそ、いつでもどこにいても、彼女たちはお互いの「大好き」でつながりあっています。

 「いちか。ちょっとギュッとしてもらっていいかしら。お願い。――ありがと」

曇り空をさまよう少女

 ゆかりの物語には曇り空が似合っていました。
 第5話のクレーンゲーム。第29話のあきらとの語らい。その後の雨。(・・・ええと、意外と他には無かったか。ニチアサだしね)
 重たい雲に隠されて、彼女はずっと自分の姿が見えていませんでした。

 「よく言われるわ」
 彼女の自己認識は周囲の評価によって形づくられていました。
 完璧だ。
 完璧だ。
 完璧だ。
 すなわち、ただ完璧なだけの、つまらない人間。

 けれどひとつの出会いがその自己認識を更新しました。
 「うん。おいしくない」
 いちかがもたらした、マカロンとの出会いです。
 ゆかりの才能をもってしても思うようにならない難物。「完璧」という自己認識を初めて砕いてくれた、「面白い」に満ちた好敵手。

 もしかすると自分は完璧ではないのかもしれない。
 試しに疑いの目で自分の半生をふり返ってみれば、さっそく他にも完璧ではないものが見つかりました。
 「まだまだやな」
 今までなんとなく気に入って続けていただけの茶道が、この瞬間「大好き」に変わりました。
 「私の性格は誰のせいでもない、私が自分で選んでこうなったの。寂しさも憤りも、誰のせいにするつもりもないわ」
 「だって『まだまだ』ということは、『まだまだ』もっと楽しめるということだもの」

 彼女は自分の不完全さを受け入れ、少しだけ自分を好きになれるようになりました。

 ところが、ゆかりという人物はきわめてメンドクサイ人間です。せっかく面白いと思えるようになった自分の不完全さを、いつしかネガティブにも捉えるようになってしまいました。
 「あなたも私に私らしさを期待しているの? まったく、お優しいこと」
 「みんな、私を完璧だと思って近づいてくるの。でも私は全然完璧なんかじゃない」

 周りの人たちは実は私のことをちゃんと見てなかったんじゃないか。
 じゃあどうしてちゃんと見てくれなかったの? それはきっと、私がつまらない人間だからだ。
 堂々巡り。振り出しに戻る。
 「それでは完璧とは・・・」
 せっかく「面白い」と思っていたはずのマカロンすらも、このときばかりは自分の完璧じゃないところを突きつけるだけの存在に。
 結局ゆかりの自己認識は周囲の評価に依存するあり方に立ち返り、「ただ完璧と誤解されているだけの、つまらない人間」と規定してしまいます。

 「私、いつもひとりなの」
 「どうして? あなたの周りには大勢の人がいるじゃない」
 「誰も友達じゃないわ。きれいだとか、何でもできるとか、誰も本当の私をわかってくれない。誰も私の心に興味がない」

 彼女の心はいつも曇り空に覆われていて、自分からも、他人からも見えず、だからいつもひとりぼっち。
 周囲にはいちかのように明るく面白い子たちが集まってくれていますが、その子たちの頭上に広がる青空はその子たちだけのもの。ゆかりに似合うのはあくまで曇り空。

 ああ、改めてふり返ってみても本当にメンドクサイ子だなあ! 大好き!

 けれど、そんなシチメンドクサイ紆余曲折を経て、ゆかりはちゃんと気づきました。
 「私の周りにはカラフルな世界が広がっている!」
 私が曇り空だとしても、周りに集まってくれたいちかたちが青空をつくってくれている。
 私はその青空を美しいと思えている。
 「私はあの子たちと一緒にいると楽しいの。色々と面白いことが増えたの」
 「前より世界が鮮やかに見えるのよ」

 それは、ゆかりがゆかりだったから。
 ここにいたのがゆかりだったからこそいちかたちが集まってきてくれて、ここにいたのがゆかりだったからこそ今は彼女たちの青空を美しいと思えるわけです。

 「心の闇は消えない! 明るいところにいたら寂しい気持ちがもっと目立っちゃうんだから!」
 「あなたは私。あなた、好きよ」

 こうしてゆかりは自分の心を支配する曇り空ごと、今の自分をつくってくれたこれまでの自分全部を肯定するようになったのでした。

 ・・・ええと、なんで私ここまで字数を費やして過去のエピソードをふり返っているんでしょう。
 うん、まあ、ゆかりが好きだからだな!

雨の恵み

 というわけでやっと今話の話に戻ります。

 長くゆかりの心を覆っていた曇り空は涙の雨となって彼女の心に染み込み、今の彼女はとても晴れ晴れとしています。
 雨は大地を固め、星を探す者のために豊かな実りをもたらすもの。
 嫌いだった自分を受け入れて、彼女は変わりました。

 “完璧じゃないゆかり”の象徴だったマカロンを、今になって完璧に仕上げてみせます。
 同じく“まだまだ”だった茶道を、師範たるお婆さんに感心されるほどに仕上げてみせます。

 周囲に言われるまま自分を「完璧」と規定していた以前のゆかりなら、わざわざさらなる完璧を求める必要はなかったでしょう。
 自分が完璧じゃなかったことを喜んでいた少し後のゆかりなら、むしろ完璧に到達することをつまらないと思ったことでしょう。
 けれど、今のゆかりにとって完璧を目指すことはとてもステキなことです。

 だって、今のゆかりが美しいと思う青空は、いちかをはじめ周りの人たちが運んできてくれたものなのだから。
 それを自覚するゆかりは、だからこそ、みんなを完璧にもてなすことに全力を注ぎます。
 「心だけではダメなの。茶道と一緒。繰り返し作法を学び、お茶を点て、花を生ける技術を学ぶ。そのうえに心が乗って初めて、みんなを喜ばせるおもてなしができるのだと思うの」
 今のゆかりにとって「完璧」とは、自己を規定する要素ではありません。自分のために完璧を求めるのではありません。
 ゆかりは、みんなに完璧なおもてなしを提供してあげたいんです。みんなが自分のなかに思い描く「完璧」をそのまま演じきって。みんなが一番喜ぶ「完璧」な自分として。
 心に美しい青空を抱くたくさんの人たちを自分の周りに呼び込んで、もっともっと自分の世界をカラフルに、美しく彩るために。そのためにみんなに心づくしのおもてなしをしてあげたいんです。
 「完璧」が自分らしいとかそうじゃないとか、そういうくだらない迷いのために力を出し惜しみする日々は終わりました。「完璧」はみんなのために。
 だって、ゆかりは美しいものが好きだから。
 ひねくれ者の自分ひとりでは美しいものをつくれないと知っているから。

 だから、ゆかりは周りの人に頼ります。
 美しい空を探すことはみんなに任せて、自分は空を見るために最高に居心地のいい観測所をつくることに心血を注ぎます。
 「大好き」を巡る戦いは大いなる物量戦です。自分にできないことを周りのみんなに頼ったっていい。
 ゆかりはようやく自分の「大好き」を見つけました。

 「いちか。ちょっとギュッとしてもらっていいかしら。お願い。――ありがと」

 ゆかりはみんなと一緒にいるのが「大好き」。
 みんなの期待に応えることが「大好き」。

 ・・・と、この流れでおもてなしを極めるためにあえて留学するというのがゆかりらしいというかなんというか。ああ、今話も結局メンドクサイな、この子。いくら「離れていても、離れはしない」の精神だとはいえ、だからといっていきなり距離を離さんでも。

 「私はずっと毎日が退屈だと思っていました。楽しいことなんてひとつもないって」
 「そんな私にキラパティが、仲間が、そしてお客様が、トキメキを教えてくれた。スイーツを通じて私は成長できました。だからコンフェイト公国に行って、スイーツの勉強をもっとしたい。そして『大好き』な茶道と『大好き』なスイーツの相性の良さをもっと広めたい」
 「そう、自分で考えて決めました」

 すったもんだの七曲がりのあげく、ゆかりが最後にたどり着いたところはまたスタート地点です。
 周りの人たちの評価に振り回されて自分を見失った少女は、自分の本当の姿を見つけて、結局また周りの人たちに喜ばれる人になりたいと願うようになりました。
 違いはたったひとつ。そこに「大好き」があるかどうか。
 「看脚下」 アシモトヲミヨ。あなたの「大好き」は、結局のところあなたのすぐそばにあるのかもしれません。

今週のアニマルスイーツ

 しろくまブッシュドノエル。難易度星3つ。
 お久しぶりのアニマルスイーツですね。でも確認してみたら意外とまだ5週間ぶり。そんなものだったっけ?

 手間こそめっちゃかかりますが、しょせんはロールケーキ。つくろうと思えば意外と失敗は少なかったりします。デコレーションもクリーム塗ったくってフォークで引っかくだけですしね。ついでにいうとリカバリも容易。見栄えがゴージャスな割には、実は小さいお子さんと一緒につくるのに向いています。
 お手軽につくりたかったらスイスロールでどうぞ。デコレーションとして濃厚なチョコレートクリームがたっぷり載りますから、あのパッサパサなスイスロールですら意外とリッチにいただけますよ。・・・甘ったるいのはさすがにどうしようもありませんが。

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