
君が僕と一緒にいてくれたように、今度は僕が一緒にいるよ。

ウソツキ
優しかった少年・クローバーは怪物・ウソバーッカになりました。
はなが約束を守らなかったせいです。
扉が見つからなかった以上、幼いはなにはどうしようもないことではありましたが、結果としてクローバーは約束を守ってもらえなかったことに深く傷つきました。
「はなちゃんがやりたいことは?」
さて、どうしましょう。
プリキュアという物語は基本的に謝罪を重く扱いません。謝罪が物語上重要な意味を持つものとして描かれることはめったにありません。
だって、子どものための物語を描く大人としては、子どもたちが謝罪のために歩みを止めるよりも、未来を良くするために前向きになることの方がずっと嬉しいじゃないですか。
はなはクローバーに謝りたいと考えました。
過去に戻るという奇跡を頼って、ウソバーッカになる前のクローバーに再会して、実際に謝りました。心の底から後悔して、傷ついたクローバーのことを思いやって、言葉を尽くして謝りました。
けれど、それだけではクローバーがウソバーッカになるという結果は覆りませんでした。
まだ足りません。
謝罪だけでは輝く未来にはたどり着けません。
さて、どうしましょう。
そんなわけで、今作ははなの物語となりました。
いつもどおりですね。プリキュア大集合の華やかなクロスオーバーでありながら、同時に当年のプリキュアらしいテーマを存分に描ききる派生作でもある。
けれど、はて?
「輝く未来を抱きしめて!」
可能性豊かな未来像を志向するHUGっと!プリキュアと、
「ねえ、はな。約束を破ったらウソツキになっちゃうよ」
「約束」をテーマに掲げる今作・プリキュアスーパースターズ!、いったいどんなつながりがあるんでしょう。
クローバーははなと約束を結んだ結果、世界中を色のない石に変えてしまう怪物になってしまいました。こんな世界でははなたちもクローバー自身も幸せになることなんてできません。こんな世界に明るい未来はありません。
「約束」。クローバーの花言葉。
その一方でクローバーにはもうひとつ、別の花言葉もありました。
「復讐」。
過去に心を囚われた、とても後ろ向きな考え方です。
約束なんかしなければこんなことにはならなかったのに。
ウソツキになんてならずに済んだのに。
どうしてはなは守れもしない約束を結んでしてしまったのでしょう。
約束
ウソバーッカが現れることになるこの日、はなはまた約束を結んでいました。
楽しいはぐたんのお花畑デビューのためにみんなで集まろう。
クローバーとの約束を守れなかったことは今も胸の内にしこりとして残っているのに、懲りもせずさあやとほまれと約束を交わしていました。
そして、今度ははなが裏切られました。
約束の時間になってもふたりは現れませんでした。
はなはじっとひとりで待ちぼうける他なく、ついには冷たい雨にまで降られました。今日という日を楽しみにしていた気持ちはしょんぼりとしぼみ、はなははぐたんを抱えたままひとりうつむきます。
やはり、約束は守られなかったとき、明るい未来を損なってしまうものです。
・・・なんて。
やがてはなの笑顔は取り戻されました。
さあやとほまれが懸命に約束を守ってくれたからです。運休になってしまった電車から急遽乗り換え、遅刻しながらも、それでも諦めずに花畑まで来てくれたからです。
楽しみだったはぐたんのお花畑デビューは為されることになりました。
「約束」、「復讐」と並んで、クローバーの花言葉3つ目。
「幸せ」。
確かに約束は守られなければ復讐の思いを生み出すきっかけにもなりますが、守られたなら心に幸せを生むんです。
どうしてはなは約束を結ぶんでしょう。
簡単なことです。はなは自分とみんなの未来を幸せなものにするために、みんなと約束を結ぶんです。
「私がいろんな世界に連れてってあげる!」
幼いはなはクローバーと約束を結びました。
色のない世界に閉じ込められた少年がひどく悲しそうな顔をしているのを見て、放っておけなかったからです。
はなはクローバーの未来を幸せなものにするために、彼と約束を結んだんです。
クローバーに「約束」の花言葉が託されている由来をご存じでしょうか。
一見ひとつひとつバラバラの小さな葉っぱの集まりに見えるクローバー。けれどこの植物は実はみんな根っこでひとつながりにつながっているんです。その結びつきを絆に喩えて、だから花言葉が「約束」。
このクローバー、抜こうとするとすごく厄介なんですよね。根っこが長ーく広がっているのでちょっとやそっとじゃ抜けません。見た目は小さくて柔らかくてか弱そうに見えますが、見た目とウラハラ、本当はすごく強い植物なんです。
みんなとつながりあえば強くなれる。魔法つかいプリキュア!でもキラキラプリキュアアラモードでも繰り返し繰り返し語られてきた、プリキュアシリーズ共通テーマのひとつですね。
同様にHUGっと!プリキュアでもすでに語られてきました。
「私にできないことがあなたにはできます。あなたにできないことが私にはできます。力を合わせれば、素晴らしいことが、きっとできるでしょう」
はなたちは自分ひとりでがんばるよりもっとステキな未来をつかみとるために、3人でプリキュアを始めました。
ひとりぼっちで悲しそうな顔をしているクローバーを放っておくことなんてできませんとも。
幼いはなはクローバーを外に出してあげられる手段を持っていませんでしたが、それでもクローバーをひとりにしておくよりは、ふたりで一緒に悩んだ方がきっとより良い未来につながるはずでした。まさか再会自体が叶わないとは思ってもいませんでしたが。
「はなちゃんがやりたいことは?」
あの日約束を果たせなかったはなが、今クローバーのためにしてあげたいこと。
そんなの決まっています。
今度こそふたりで一緒に外に出るんです。
今度こそあのときの約束を果たすんです。
未来は無限大!
「約束」、「復讐」、「幸せ」。
約束は守られなければ復讐を呼び、反対に守られたなら幸せを育みます。約束は未来を幸せにも不幸せにも、どちらにも変えうるものです。
では、そのふたつを分かつものとはいったい何でしょうか。
「フレフレ、私! がんばれがんばれ、私!」
意志の力です。
はなはめげそうなとき、へこたれそうなとき、いつだって自分を励ましてがんばってきました。その結果としてさあややほまれ、はぐたんたちに愛される今の彼女があります。
未来は無限大。なんでもできる、なんでもなれる。
その無限の可能性のなかから輝く未来に至る道を選び取ってこれたのは、彼女が理想を思い描く強い意志の持ち主だからです。そう、未来は意志の力で選び取れるんです。
電車が運休になってしまったこの日、さあやとほまれは諦めずに別の交通手段を模索して、どうにか花畑にたどり着くことができました。そのおかげで3人ははぐたんのお花畑デビューを一緒に楽しむことができました。
もしふたりが早々に諦めてしまっていたなら、はなの今日はちっとも楽しくない、悲しいものになっていたでしょう。そんな未来をふたりの意志が変えたんです。突然のトラブルにも負けずに。
「はなちゃんがやりたいことは?」
だからこそ、この映画でははなの意志が繰り返し問われます。
幼い日に守れなかったクローバーとの約束を、今どうしたいのか。
「約束」の結果が「復讐」になってしまったことを受け入れるのか、そうではなく「幸せ」に変えたいと願うのか。
その未来を決するのははなの意思だからです。
約束を守れなかった過去は変えられません。
奇跡の力で過去に戻ってもなお、クローバーがウソバーッカになってしまった現在は変えられません。
けれど、あなたの意思次第で未来は変えられます。
だって未来は無限大なんですから。約束の先の未来が復讐だったり幸せだったり、可能性はいつだって無限に存在しているんですから。
だから、あなたはただ望むものを選べばいい。
どんなことがあっても挫けず諦めず、自分を励ましながら、これと思った未来を守りつづければいい。
輝く未来を抱きしめればいい。
そうすれば、あなたはきっといつか、なんでもできる、なんでもなれる。
「僕は消えなかったよ」
たったそれだけで未来は変えられます。
たとえ過去と現在がどんなものであったとしても、そんなの言い訳になりません。だって過去と現在と未来は連続しているんですから。あなたが明るい未来を夢見ることができるのなら、あなたの現在はあなたの意思次第で少しずつ明るいものへと変えていけるはずです。
「君が僕と一緒にいてくれたように、今度は僕が一緒にいるよ」
同様に、すべての黒幕であった闇のオニビがどんな存在であったとしても関係ありません。クローバーが彼との関係に少しでも幸せなものを見出して、そして改めて約束を結ぶというのなら、彼には明るい未来に臨む可能性が与えられることになります。
だって、約束というのは自分と相手の未来の幸せを育むために結ぶものなんですから。
クローバーがオニビとの約束を守りつづけるならば、彼らふたりはきっと輝く未来へとたどり着けるでしょう。
「フレフレ、闇のオニビさん」
こうしてプリキュアスーパースターズ!のテーマである「約束」は、HUGっと!プリキュアの主人公である野乃はなと、彼女を支えるたくさんのプリキュアの力によって、みんなを輝く未来へつなぐステキなものとして定義されました。
この物語はここでひとまず終わりです。約束が復讐を呼ぶか、それとも幸せを育むかは、あとは私たちそれぞれの意志が決めることです。
輝く未来へ臨む物語はこれからも続いていきます。「約束」にステキな意義を提示してくれたはなの強い意志がこれからさらにどんな物語を描いていくか、楽しみに応援していきましょう。
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