えみるちゃんはいつでも何かに必死です。
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(主観的)あらすじ
はぎゅ! はぎゅはぎゅ、はーぎゅー。というわけではなたちはハイキングにやって来ました。そこではなたちはとびきり心配性の女の子と出会います。はなの妹のクラスメイト・えみる。いつも突拍子もない未来予測をしては大声で友達に注意してまわる、ちょっぴり変な子です。
けれど彼女の様子を見守っているうちにはなにはだんだんわかってきます。この子はみんなが楽しく過ごせるように奮闘しているだけの、ヒーローなんだと。はなの粗忽に巻き込まれ、はぐたんを含めた3人で遭難してしまうこともありましたが、そこでもえみるはがんばります。はぐたんを元気にするために歌をうたい、おまけにその歌のおかげで探しに来てくれたみんなに居場所を教えることができたのでした。
えみるははなとの間に友情を育みます。今日はトラブル続きで大変でしたが、はながえみるをヒーローと呼んでくれたことで、えみるは今の自分のことが少し好きになれました。
キラキラプリキュアアラモード序盤のアイドル・えみるちゃん、まさかの再登板! あんなに純真だったカメラ少女がすっかりイロモノキャラになっちゃって! どっちにしろかわいい! ちなみに名字と声優は違います。
今話ははなの個人回になるかと思っていましたが、ノンノン、ちょっぴり回り道。前回提示されたはなの応援の問題は次回に持ち越しっぽい様子です。ですが、あの問題に対応する答えは今話でもしっかり描かれていましたね。
はなには特別な才能はありません。さあややほまれのようなスペシャリストならではの悩みを理解してあげることができません。けれど、それでも彼女の応援は誰もを勇気づけることができます。彼女は誰よりも明るい未来を信じていて、そんな未来に至るための現在の在り方を誰よりも真剣に考えているからです。
石橋を叩いて渡る(渡れなかった)
アザミの花言葉は「厳格」「独立」「人格の高潔さ」など。
アザミのトゲは他者を守るためにあります。
ときは14世紀、スコットランド独立戦争。夜襲を仕掛けようと身を潜めていたヴァイキング部隊の足をアザミのトゲが刺し、その痛みに声を上げさせたことで、スコットランド軍は窮地を脱することができました。
この鋭いトゲを持つ花は今でもスコットランドの国花として広く愛されています。
えみるは変な子です。
「あと一歩で石につまずいて転んで坂を転げ落ち、泥まみれになるところだったのです!」
「ハイキングに行きます。お弁当を食べます。そしたらデザートのミカンが転がって、追いかけてるうちに迷子になって、二度とおうちに帰れなくなる。そんな危険が待っている――なのです!」
「河童の呪いなのです! のびのびが原には河童の伝説があるのです! ――とにかく早く逃げるのです! 河童になりたいのですか!?」
「ストーップなのです! みんなで渡ったら重さに耐えきれず崩れ落ちてしまうのです! きちんと渡れるか確かめる必要があるのです!」
「う、歌わないのです! 歌うと河童が来るのです!」
「愛先えみるの人生は終了したのです・・・。ここで野宿することになって、冬眠から目覚めた腹ペコのクマさんのご飯になるのです」
何この迷言メーカー。今ドキになって謎語尾を多用する古式ゆかしいキャラなだけはある。
「目を配ってないと、何が起こるかわからないのです!」
こんなにあれこれ心配してばかりでハイキングが楽しめるのでしょうか?
ハイキングの間中、えみるはずっとしかめっ面です。はなや、はなの妹のことりは彼女を心配してあれこれ声をかけますが、それでも彼女が態度を改めることはありません。ずっと何かを警戒していて、ずっと周りのみんなばかり見ていて、ずっと緊張しっぱなし。
えみるは声の大きな子です。彼女に大声で怒鳴られるとみんな困惑して、笑顔をなくしてしまいます。
青いパンジーの花言葉は「思慮深い」。けれどえみるの場合はそれがちょっと行きすぎている感じです。せっかくのハイキングなんだからもっとのびのび楽しめばいいのにね。
・・・なんて。
そんな困ったえみるですが、彼女もなんだかんだでたまーに笑顔を覗かせています。
たとえば危険な石橋を叩き割ることができたとき。
たとえば安全なルートでお花畑にたどり着けたとき。
たとえばはながサルを怒らせることないまま無事でいてくれたとき。
彼女はひとりほっとした笑顔を浮かべます。
「頭の中でハイキングのシミュレーションをすると、次から次へと危険が襲いかかってくるのです。クラスみんなのハイキングを最高の想い出にしたくて。みんなを守りたかったのです」
この子はみんなの楽しみを自分の喜びにできる、ステキな子です。
「笑いたければ笑えばいいのです!」
みんなの思い出になる今このときを守る。そんな理想を実現できていないことをえみるは自覚しています。自分の心配がいつも空回りしていて、逆にみんなから笑顔を奪ってしまっていること。その不甲斐なさが彼女自身からも笑顔を奪ってしまっています。
友達みんな、えみるのいないところでだけ笑顔。えみるはみんなの無事を確認できたときだけやっと笑顔。
えみるにはなりたい愛崎えみるがあります。
けれど、それは今じゃない。今はちっともできていない。できていないから、笑顔じゃない。
彼女は幼いころの相田マナですね。
ドキドキ!プリキュアの主人公である彼女は、昔、人助けをしようとするあまりにイジワルな子たちを傷つけ、そういう子たちからはかえって嫌われてしまっていました。復讐の悪意をぶつけられてしまうことすらありました。本当は誰にも等しく愛を振りまきたいと思っていたはずなのに。
彼女が本当になりたい自分になれたのは中学生になってからです。乱暴者と戦うのではなく、仲裁する。厄介な子と出会ったなら傍にいて、辛抱強く愛情を注ぎつづける。そこまでできてなお彼女の理想が完全に実現できたわけではなく、それから1年以上の長きにわたってプリキュアとして愛を振りまいていくことになるんですけどね。
丘を越え行こうよ
要するにえみるは未来志向なんです。はなとはちょっと違った感じの。
なりたい理想があって、その実現のために一生懸命で、だけどなれなくて、未来に囚われるあまりに現在の自分と周りを不幸せにしてしまう。
魔法つかいプリキュア!の十六夜リコなんかもそういう考え方のせいで長く苦しんでいましたね。
小高い丘を越えれば目の前いっぱいに澄んだ青空が広がることでしょう。ハイキングの醍醐味のひとつはきっとそういう景色を見に行くところにあります。ですが、もし丘を越えることができなければ・・・。
「えみるちゃんはいつでも何かに必死です」
「そういう一生懸命なところ、なんだかはなに似てるね」
かつて夢に挫折したさあやとほまれは、はなのそういう一生懸命さに心を救われました。“イケてる大人のお姉さん”とかいうよくわからないふわっとした夢のためにがんばっているはなの姿を見て、自分もまた立ち上がろうと思うことができました。
私としてはえみるははなよりもむしろさあやとほまれに似ているんじゃないかなと思います。子役俳優やスケート選手として挫折を経験したころの彼女たちに。
ただ、えみるの場合はそこで諦めずに空回りでも努力を続けていて、さあやたちはそこにはなと同じ好ましさを見出すのでしょうけれど。
「やっぱり来なければよかった。みんなに迷惑かけてしまったのです。私はダメダメ人間なのです」
本当のえみるはとっくに挫折を自覚しています。今のままではみんなの想い出になる今日を守ることはできないと。今の自分ではかえってみんなの楽しみを損なってしまうと。挫折したままもがき苦しんでいます。
彼女が自分を責める気持ちはただ唯一、みんなに迷惑をかけてしまったこと一点にだけ掛かります。
なんでもできる、なんでもなれる。けれどそれは今じゃない。今じゃないなら、もうどうしたらいいのかわからない。私はダメダメ人間だ。
はなとえみるはこの点が違います。
今のはなは決して“イケてる大人のお姉さん”ではありません。はなもそれを自覚しています。
なのに、彼女はいつも元気いっぱい笑顔です。
どうしたら理想の自分になれるのかわからないまま、それでも毎日を明るくがんばっています。自分にフレフレしながら。みんなにフレフレしながら。そうしていると、彼女も周りのみんなも笑顔になります。
同じく未来に理想を夢見て、同じくいつも一生懸命がんばっているのに、はなとえみるの現在の姿は全然違っています。
「カッコいいね」
だから、“ダメダメ人間”な現在のえみるを元気にしてあげる方法はひとつです。
はなとえみるが決定的に違うところ。
「えみるは隠れてみんなを守るヒーローなんだね!」
理想の未来につながる現在の自分を信じてあげるんです。
「丘を越え行こうよ。口笛吹きつつ」
なれるかどうかではありません。なりたいかどうかです。
丘を見て自分では登りきれないかもしれないと恐る恐る登るのではなく、丘を見てその向こうの青空にワクワクしながら楽しく登りはじめるんです。
「みんなのためにがんばってたじゃん」
「友達のためにがんばれるえみるはすごいよ」
今のえみるの起こした結果がどんなにダメダメかは関係ありません。はなはえみるの現在の姿に、彼女の夢見る未来を見ます。
現在と未来は連続しています。
確かに現在のえみるのしていることは、彼女の理想とするものとは全然違っています。みんなの想い出になる今日このときを守りたいのに、今のえみるはがんばればがんばるほどみんなの笑顔を奪ってばかり。このままではなりたい自分になれないと絶望する気持ちもよくわかります。
けれど、それでも現在のえみるがしようとしていることは高潔なんです。まるで理想の未来をなぞったように、不器用ながらも現在のえみるの言動にはなりたい自分の片鱗が重なって見えています。はなには、私たちには、えみるのカッコよさがはっきりと見えています。
だったら、現在のえみるの努力の果てに、輝く未来は必ずあります。だって現在と未来は連続しているんですから。
なんでもできる、なんでもなれる。いつかはね。
だから現在がどんなにダメダメに見えたって、そう悲観するようなものじゃありません。あなたが輝く未来を信じて、努力を諦めない限りは。フレフレ。
私は別の理由でヒーローが大嫌いなのですが、ヒーローというものが子どもにとっていかに大切なものかは知っています。
「プリキュア、カッコいいのです。・・・ヒーロー」
人知れずみんなを守るプリキュアの勇姿は、きっと彼女の未来を一層明るく輝かせることでしょう。そしてその輝きはきっと現在にも届くはず。
仲よく揺れる二輪の花
はぐたんが興味を持ち、そして3人で謎の穴にはまってしまう事態を引き起こした花。あの白くてかわいらしい花をニリンソウといいます。ひとつの株から(おおむね)二輪の花が咲くことからこの名で呼ばれるようになりました。
ニリンソウの花言葉は「友情」「協力」など。由来は言わずもがな。
「応援って誰でもできる、か」
「はなちゃんにははなちゃんにしかできないことがーー」(第8話)
前話、アンリに手厳しく指摘されてしまったはなは、どうやら自分だけが持つ特別なものに意識が向くようになったようです。
残念ながらはなは特別な才能を持つ子ではありません。だからさあややほまれのような、スペシャルであるがゆえの悩みというものを理解できたことがありません。
けれど、それでもはなの応援は彼女たちの心に響きました。住む世界が違う彼女たちと友達になることができました。
はなにはいつも、はなにできることがあったからです。
えみるにしてあげたように。はなは当人にすら信じられない輝く未来の存在を、誰に対してでも信じてあげることができました。
はなにはさあややほまれにできることができません。たぶん、えみるほど周りの友達をよく観察して危険予測してあげることもできないでしょう。けれど、はなの方にだって、みんなにはできず、はなにならできることが確かにありました。
未来を信じることくらい、はな以外にもできる人はいっぱいいるでしょう。その意味で彼女にできることは特別なことではありません。
それでも、はなにはいつも、はなにならできることがありました。さあややほまれ、えみるがそれを必要としていたときに、たまたま傍にいてあげられたのは、はなでした。
事実として彼女の応援はみんなの心に響きました。事実として彼女はみんなと友達になることができました。
それが、野乃はなです。
「ああ、もうすぐミルクの時間! ヤバい! ミルク今ない!」
はなにできることはそう多くありません。文字通り八方塞がりの穴のなかではぐたんがグズりだすこのピンチ、切り抜けられたのははなではなくえみるのおかげでした。
「ストーップなのです! 私たちが慌てるとはぐたんも不安になるのです」
(しょうもない展開含め)いつも頭の中で様々なシミュレーションを繰り返してきたえみるの方が、とっさのときに対応できるアイディアは豊かなんでしょうね。いやそれにしてもきれいな歌声です。こんな透度の高いビブラートを使いこなせる小学生がいるか。
ですが、このときえみるががんばることができたのは、一緒に落ちたのがはなだったからです。はなが勇気づけてくれたからです。穴のなかに落ちた時点のえみるはとても落ち込んでいて、こういう前向きな行動を取ることは難しかったでしょう。
はながヒーローと呼んでくれたから、えみるはこんなときでもヒーローらしい行動を取ることができました。
「私にできないことがあなたにはできます。あなたにできないことが私にはできます。力を合わせれば、素晴らしいことが、きっとできるでしょう」(第2話)
二輪の花は協力しあってかわいらしく咲き誇ります。
それは確かに特別な才能ではないかもしれません。あなたにしかできないことではないのかもしれません。
ですが、そのときその人の前でそれができたのは、あなただけなんです。そしてその人と力を合わせてもっと素晴らしいことをすることができるのも、やはりあなただけなんです。
あなたに特別な才能がなかったとしても、あなたにしかできない特別なことはいくつもあるんです。
そういう、はなにとってすごく大切っぽい事柄を描きつつ、さて次回。
なにやらはなさん、変身することすらできずにキュアアンジュとキュアエトワールを応援しているようですが・・・。どうか野乃はなの輝く未来を信じつづけることができますように。
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