では、ふたりを迎えた我が戦う写真部の前途を祝して、乾杯!
(主観的)あらすじ
テレサの初登校日。テレサとアレクは楽しい日本の学校生活を送るため、多田と同じ写真部に参加することにしました。多田や伊集院の他、アイドルオタクのピン部長や真面目なHINA子、多田によく懐いている山下犬。戦う写真部のメンバーは誰もが個性的で面白い人ばかりでした。
新メンバーを歓迎して執り行われたチーム対抗の撮影バトルもとても楽しいもので、テレサやアレクも含めた全員が遺憾なく個性を発揮していました。
優勝に選ばれたのは、仲睦まじく笑いあう多田とテレサをひとつのフレームに収めたアレクの写真。テレサの日本で過ごした日々の楽しい想い出がまた1ページ増えました。
さて恋をしよう! ・・・なんて、思い立ったが吉日習慣、いきなり恋愛をはじめられる人なんてそうそういないわけでして。そもそも脳内春爛漫にサカったソイツは何のために恋愛するんだよウェーイ。
まずは地ならしからはじめましょう。むしろ地ならしこそヌルめラブコメの真骨頂。ギャルゲーだって乙女ゲーだって共通パートが一番面白いものじゃないですか。ねえ? ていうか最近のその手のゲームって共通パートじっくりで個別ルートは妙にあっさりなのが多かったりもしますし。さすがツボを心得ていらっしゃる。
特に我らが愛すべき主人公は心の芯から朴念仁くさい多田ですからね。彼に恋愛させたいのならなおさら、ぬぼーっとした多田くんシンキンを恋するハートに引きずり込むため、きちっと導線を引いてやらにゃなりません。こいつ放っといたら一生恋愛しなさそうだもん。
そういうわけで、第2話はヒロインであるテレサに日常の楽しさを満喫してもらう物語となりました。ここまで割と勢い任せで書いているので話がつながってないっぽくみえるのは平にご容赦。辻褄はあとでつくかもしれない。
何事にも前のめりな彼女は、たぶん、環境に縛られでもしないかぎりはごく自然に恋愛できる子だと思うんですよね。それこそ、もしかしたら相手が多田じゃなかったとしても。
たぶんね、彼女は多田にとっての着火剤です。
テレサのような人は多田がいなくても恋愛できるのかもしれませんが、多田はおそらくテレサと出会わなければ恋愛できません。だって、自分にとっての恋心の価値をまだ認識していないから。
感情表現の薄い多田のこと、きっと恋を知ったら今よりもっともっとステキな表情を見せてくれると思うんですけどね。外野の私が思うことと当人の認識は必ずしも一致しないわけですよ。ああ、恋に焦がれる多田のヤキモキを早く見たい!
だからこそ、テレサにはまず、今この瞬間の日常を楽しんでもらわなければなりません。
多田の傍にいる日常がとても楽しいものだと、まずは好奇心あふれる彼女が知らなければなりません。
きっと誰とでも恋愛できてしまう彼女が、それでもたったひとりの多田と縁をつなげるように。
きっとどこででも恋愛できてしまう彼女が、それでも忘れることのできない運命的な恋をするために。
テレサにはまず、多田が存在する今この瞬間の日常を、世界ごと全部愛してもらわなければなりません。
すべては、まあ、テレサには申し訳ないけれど――いかにもオクテそうな多田に恋を知ってもらうために。
不公平にもほどがあるポジショニングですけどね。
それほどの負債に見合った豊潤な恋の実りを彼女に返せるかどうかは、多田の甲斐性にかかっているわけで。
まあ大丈夫でしょ。多田は朴念仁なりに紳士で、なおかつ真摯で、それなりに愛嬌もある男の子です。私もまだテレサと同じくらいにしか彼のことを知らないんですけどね。対岸のラブコメを他人事としてしか眺められない無責任者なりに、それでも彼には結構な好印象を抱いています。
きっとテレサにとってもこの恋は実り多きものになるんじゃないかな、と思う程度には。
そしてそうなることを祈っています。
対岸の他人事ではあるけれど、だからこそ心から。
バカみたいに賑やかな“戦う写真部”。
ベッタベタにわかりやすく片想いしあっているピン部長とHINA委員長。
山下ポチ先輩相手にやたらかわいい片想いをしている多田妹。
ニャンコビッグ相手にやたらかわいい片想いをしている山下ポチ。(違う)
“モブにはモテる”など、ラブコメ蚊帳の外フラグを着々と積み重ねている伊集院。
恋に恋するグレートアングロサクソンニンジャのアレク。
この楽しい日常はいつも当たり前のように多田の傍にあって、そして今日、それら全部にテレサが出会いました。
桜咲き誇る憧れの日本。
楽しい日常を分かちあえる人との出会い。
テレサが“多田のいる世界”に恋をするためのエピソードは少しずつ貼り重ねられていきます。
あなたはどうして恋をするのでしょう?
あなたは何に恋をするのでしょう?
そこがわからないまま恋愛するのはなかなかに難しいことです。恋愛に限らずあらゆる物事にいえることですが、人間というものは動機なしにはそうそう自分から行動できないものだからです。
だから、多田はまだ恋を知りません。恋をする理由がありません。
同様にテレサもまだ恋を知りませんが、彼女は幸運なことに多田よりは恋に近しい素質を持っています。好奇心旺盛な彼女は多田のいる日常を好ましく思える感性を持っていて、それはやがて多田個人への興味にも発展しうる可能性ともなるでしょう。テレサには恋をする理由があります。
もしも彼女が多田に恋をしたのなら、さて、それでも多田が恋をする理由にはならないでしょうか?
ついでに:それぞれの写真の印象
写真の世界にはとんとウトく、絵画を見るノリで評していくので、もしかしたら見当違いかもしれませんが。(そしてエラそうに語る割に絵画の知識すら無い)
劇中に出てきた写真部4人の作品の印象について軽くメモしておきます。
・・・ところで山下ポチ後輩の作品はどこいった。
伊集院
ザ・自撮り。言わずもがな自撮り。ただ、小癪なことにコヤツ背景とか構図にはマジメにこだわりやがっていますね。悔しいけれどちゃんとカッコいい。おちゃらけた普段の言動を知らなければ普通にカッコいい。
というかこの人、その普段の言動からしてある程度意図的に道化を演じているきらいがありますからね。自分のキャラクターと周りの空気を常に意識している彼だからこそ、自撮りでもちゃんと映えるような写真を撮れるのでしょう。
ピン部長
さすが部長なだけはあるというか、4人のなかでは一番面白い作品群だと思います。本来賑やかであるべき駅や学校、児童公園などが無人になっている1コマ。プールサイドに掛けられた白いタオル。向こうの扉に続く華やかな階段。ぱっと見はただの風景写真ですが、どれも写真の向こうの物語に想像をかき立てられてワクワクします。
ヌードモデルだのグラビアアイドルだの、ろくでもないことに情熱を燃やす言動ばかり目立つ人ですが、実際何事に対しても情の濃い人なんでしょうね。とにかく人間としてユニーク。委員長が惚れるのもわかります。
HINA委員長
これはアートというより日記ですね。インスタでよく見かけるタイプの写真というか。動物のかわいさに花のかわいらしさ、日常の何気ない感動を素直に切り取った写真群。良い写真ではありますが、撮影のテクニックを上達させようという意志は感じられません。
他の3人とは写真に対する姿勢が明らかに違います。まあ幼馴染みとしての付き合いで入部したわけですしね。撮るより撮られる側の人間ですしね。こういうのも写真の楽しみ方のひとつですしね。
多田
いかにもプロ志望。たまに写真展を見に行くとこういう作品をやたらと見かけますよね。
“こういう”っていうのは要するに、写真を純粋な芸術作品として見たときの色彩の華やかさ、構図の面白さに重きを置いているところです。赤い提灯。黒い夜空。青い空。紅葉と寺社のコントラスト。どれも美しい写真ですよね。
ただ、風景的な美しさは素晴らしいのですが、反面絵画的なテーマ性が感じられません。多田が何に感動して写真を撮ったのかが見えてこないというか。もし生で見たとしても心を揺さぶられるような感動は無いんじゃないかなと思います。
たぶん、そのあたりが物語上でも多田の欠点として描かれていくんじゃないかと思います。無感動なところ。カタチありきで意志が稀薄なところ。いつか恋を知って変わっていってくれるとステキなのですが。
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