HUGっと!プリキュア 第21話感想 レスキューハート、ひとりじゃない。

ギターは心を表すんです。

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(主観的)あらすじ

 ついに憧れのプリキュアになれました! なれたからにはプリキュアらしくがんばれなければなりません。えみるは大はりきりです。・・・けれど、実際の自分の姿といえば。誰かのピンチを見つけたと思ったら勘違い。助けようにもルールーの方がずっと上手。プリキュアになってもえみるは元のまま何もできないままでした。
 一方でルールーはそんなえみるに怒りを覚えていました。えみるのことが大好きで、心配して、いつも一緒にいるのに・・・、えみるときたら勝手にひとりで悩んで、勝手にひとりでいなくなるんですから。
 ふたりはそれぞれプリキュアになれたときの気持ちを思い返します。ルールーひとりではなくふたり一緒に変身できたから嬉しかった。ずっとえみるのことばかり考えていた。ふたりはお互いのことが必要で、お互いのためにも自分のためにも、ふたりでいることこそが大切でした。
 ふたりの絆を象徴していたえみるのギターが壊されて、それに替わるものとしてプリキュアの新しいアイテムがほしくなりました。はぐたんがそのリクエストに応えてくれます。――なんで!? 遠い世界から別のプリキュアを呼んじゃいました!

 次回予告で当話の余韻を吹っ飛ばすパターンがすっかり定着したプリキュアシリーズに、新たな潮流がやって来ました。なんだよその引き。なんだよその脈絡のなさ。次回ついに話題のえみるバズーカ登場&パップル退場だというのに全然それどころじゃないじゃん。次回予告が頭に入ってこないんだけど。イエーイ!

赤いアスター

 『HUGっと!プリキュア』の変身バンクでは背景に各人を象徴する花があしらわれます。
 たとえばキュアエールはマーガレット。キュアアンジュはユリ。キュアエトワールはマリーゴールド。
 そしてキュアマシェリとキュアアムールは、アスター。
 変身バンク内では図案化がキツくて断定できなかったのですが、えみるとルールーが担当した今話の導入部で改めてポンポン咲きのアスターが描かれました。これで確定ですね。

 アスターは多様な花色がある花でして、色ごとに様々な花言葉を持っています。
 キュアマシェリのパーソナルカラーである赤のアスターの花言葉は、「変化を好む」。

 「改めまして、キュアマシェリになりました愛崎えみるなのです! まだまだプリキュアとして至らないこともあるのですが、先輩のみなさま、ご指導よろしくお願いいたしします!」
 プリキュアになったからといってわざわざシャチホコばった挨拶をしたプリキュアはかつていませんでした。
 えみるにとって“プリキュアになる”ということはそれだけ重大な出来事だったということです。いわば七五三、入学式、成人式、結婚式みたいな。冠婚葬祭に並ぶ人生の節目なのです。記念のためぜひともセレモニーしなきゃなのです。

 「プリキュア、カッコいいのです。・・・ヒーロー」(第9話)
 えみるは初登場のときプリキュアに憧れるようになりました。
 「事故が起こる前に! みんなを守る! キュアえみ~る!」(第15話)
 その気持ちが高じて、インディーズのプリキュア活動をはじめるほどでした。

 というのも、彼女にとってプリキュアとは“なりたい自分”そのものだったからです。
 「頭の中でハイキングのシミュレーションをすると、次から次へと危険が襲いかかってくるのです。クラスみんなのハイキングを最高の想い出にしたくて。みんなを守りたかったのです」(第9話)
 えみるは極端な心配性でした。その気持ちは大好きなみんなを守りたくて沸きあがってくるものなのですが、いかんせんやることなすことアレすぎて、空回りしてばかりいました。
 「やっぱり来なければよかった。みんなに迷惑かけてしまったのです。私はダメダメ人間なのです」(第9話)
 そんなカッコ悪い自分が好きじゃありませんでした。
 「カッコいいね。えみるは隠れてみんなを守るヒーローなんだね!」(第9話)
 けれど、偶然知り合ったはながそんなえみるをカッコいいと言ってくれました。やることなすことダメダメな現在の姿ではなく、みんなを守りたいという未来に向けた志しを褒めてくれました。
 えみるがプリキュア(ヒーロー)に憧れるようになったのはそれがきっかけでした。ついでにいうと、はなを「先輩」と呼んで敬うようになったのも、はながどうやらヒーローの気持ちを知っているらしい様子だったからでしたね。

 なんでもできる、なんでもなれる。
 さて、夢は叶いました。
 ホンモノのプリキュアになることができました。
 なったのですから、なんでもできる、なんでもなれる。

 えみるが憧れていたプリキュアとは、みんなを守ることのできるヒーローです。
 プリキュアになれた今の私だったら今度こそ・・・!
 「私は何か異常はないかと・・・」「こーら。何さっきからガン飛ばしてんねん」
 「さあ来なさい! 怪しいカバン!」「カバンのなかに入れたはずの財布がなくって・・・」
 「お婆ちゃん、危ない!」「えみる! ――赤です」
 「オシマイダーです、ルールー!」「おしまいだー! 本日限りの大安売り、もうおしまいだー!」
 ・・・あれ?

 「私の夢はプリキュアになることでした。だから夢を叶えた私が、夢に向かってがんばっている先輩たちの分までプリキュアとしてがんばろうって思ったんです」
 愛崎えみるは変化を好みます。
 今の自分が好きじゃなかったから。ヒーローみたいにできるようになりたかったから。
 けれど、プリキュアになれたというのに、えみるは相変わらず何もできないままでした。
 変化なんてしていませんでした。

紫のアスター

 キュアアムールのパーソナルカラーである紫色となると、アスターの花言葉は赤のものとは全然違ったものになります。
 紫のアスターの花言葉は「恋の勝利」。花占いによく用いられることから由来していると思われます。他にも「私の愛はあなたの愛より深い」などという濃ゆい花言葉まで託されていたり。

 ルールーはえみるのことが大好きです。
 「プリキュアの可能性87.56% / けっこうプリキュア」(第15話)
 えみるはルールーにはないものを持っていました。キュアえみ~るの頃から結構プリキュアの資質(=心の力)を持っていた彼女は、愛する音楽の力によって、まだクライアス社のアンドロイドでしかなかった頃のルールーの心すら揺さぶってみせました。
 「ルールーには心があるのです! 心があるから悩んでいるのです! 心があるから音楽をステキだと言ってくださいました! 心があるから、私たちは親友なのです!」(第18話)
 えみるはルールーが信じられなかった、ルールーにもある心の存在を信じてくれました。初対面のときからなぜか懐かれて、付きまとわれていましたが、その理由を彼女は“心”があるからだと言ってくれました。

 えみるにとっての“なりたい自分”がプリキュアなら、ルールーにとっての“なりたい自分”はえみるです。
 だからいつでも彼女を見ていたいと思います。彼女を傷つけたくないと思います。
 「えみる。私も一緒に行きます」
 いつでも彼女に付いてまわって、彼女が何かしようとしていたら手伝って、彼女が危ない目に遭いそうだったら守って。
 たくさん、たくさん尽くします。自分にできることなら何でもしてあげたい。してあげられるようにがんばりたい。

 なのに、そのえみるときたら。
 「今日のギターはずいぶんと暗いですね」
 「ギターの音色は心を表すのです」

 ルールーがいくらがんばっても勝手にひとりで落ち込むんです。
 「来ないでください!」
 しかも、肝心なときに限ってルールーに助けさせてくれないんです。

 「私は混乱して、悲しくて、えみるに少し怒りを覚えました」
 ルールー・アムールはえみるのことが大好きです。
 だからこそ、その大好きな気持ちを報わせてくれないえみるに対して、ちょっとだけ腹も立ちます。

サクランボ

 キュアマシェリとキュアアムールの変身バンクには、もうひとつ背景に描かれている植物があります。
 サクランボ。
 果実がレース編みのダイヤになっていたり、ツルの部分がリボンになっていたりと、アスター以上に図案化が激しいのですが、サクランボほどキャラクターの強いモチーフだとさすがにすぐわかりますね。えみるの部屋にもイヤというほど置いてありましたし。

 サクランボの花言葉は「小さな恋人」「幼い心」、それから「あなたに真実の心を捧げる」。

 えみると同じで、変わることのできない自分に悩んだプリキュアがいます。
 「どっちが嬉しかった? 自分がプリキュアになれたことと、ルールーとふたり一緒にプリキュアになれたこと」
 ほまれです。
 彼女は最初、跳べなくなった今の自分がイヤで、そこから抜け出すために“絶対に諦めない”プリキュアの強さを欲しました。
 けれど、ダメでした。ミライクリスタルは彼女にまず自分の力で跳ぶことを求めました。プリキュアとは目の前の現実から目をそむけるためのものではありませんでした。

 えみるはプリキュアに憧れました。ほまれと同じで、今の自分を変えるために。
 けれど、実際にえみるがプリキュアになれたとき、彼女の心にあったものはそういうものではありませんでした。
 「がんばれ! がんばれ!」(第20話)
 それは、ひとりでがんばるはなを応援したい気持ちでした。
 「私もルールーと一緒にプリキュアになりたい!」(第20話)
 それは、ルールーと一緒にいたいという思いでした。
 「あなたを愛し、私を愛する」(第20話)
 それは、今の自分をも確かに愛する心でした。

 なんでもできる、なんでもなれる。
 それは降って湧いた幸運によって偶然に達成される夢ではありません。
 不断の努力で現在の自分を理想の未来に近づけていく、自分自身の意志の力によってはじめて達成されるべきものです。
 プリキュアとは、“変身”とは、そんな理想の前借りです。夢見る心をより強固に固めるための偶像です。
 だから、まずは現在の自分を未来の理想と連続させなければプリキュアにはなれません。ただ自分を変えたいだけでは足りません。今の自分が何をすれば理想に近づけるのか、まずはそれを考えないと。少なくとも『HUGっと!プリキュア』においてはプリキュアにはなれません。

 えみるはそれがすでにできています。だからプリキュアに変身することができました。えみるは本当はとっくに変化しているんです。ただ、道半ばだから“なんでもできる”が今じゃないというだけであって。
 「どっちが嬉しかった? 自分がプリキュアになれたことと、ルールーとふたり一緒にプリキュアになれたこと」
 さて、あなたがそうなれたきっかけは何でしたか?

 ルールーと同じで、自分の気持ちに整理がつかないプリキュアがいます。
 「その怒りは、ルールーのえみるちゃんへの心があふれ出ている証拠だよ」
 さあやです。
 彼女は最初、自分が優しいだけで他に何も持っていないと思い込んでいました。けれど、はなが見つけて、ほまれが見つけて、様々な体験を通してたくさん見つけて、今まさに夢を模索している最中です。
 彼女が初めて変身したのは、自分に「なんでもできる、なんでもなれる」と言ってくれたはなを信じたことがきっかけでした。

 ルールーはえみるのことが好きになりました。けれど、それはただ彼女を慈しみたいというだけの気持ちではありませんでした。それだけだったなら彼女は変身しなくてもよかったはずです。
 「フレフレ! エール!」(第20話)
 それは、ひとりでがんばるはなを応援したい気持ちでした。
 「私はえみると一緒にプリキュアになりたい!」(第20話)
 それは、えみると一緒にいたいという思いでした。
 「あなたを愛し、私を愛する」(第20話)
 それは、今の自分をも確かに愛する心でした。

 ルールーはプリキュアになることを望み、そしてプリキュアに変身できました。彼女はプリキュアになる条件を満たしていました。
 「その怒りは、ルールーのえみるちゃんへの心があふれ出ている証拠だよ」
 さて、あなたをそんなふうに変えてくれた理想とはどんなものでしたか?

 「届けたいことあるんだ。君のこと好きなんだ」
 「ふたりのハート、リボンで結ぶ」
 「友達になろうよ」

 あどけない心のためにお互いを必要とする小さな恋人。
 お互いの一番大切な思いを預けあい、ふたりで力を合わせて理想を紡いでいく子どもたち。
 えみるとルールーはひとりではプリキュアになれません。ひとりでは“なんでもできる、なんでもなれる”自分を信じることができません。
 ふたりは、ふたりでプリキュアです。

 「あれがキュアマシェリとキュアアムール」
 「私たちも負けてられないね」
 「行くよ!」

 いいえ。みんなでプリキュアです。

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