ゼノブレイド3 新たなる未来 第5章感想その1 感想というかもはや考察記事。

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メビウスとかアルファとか、呼びかたなんてどうでもいい。本当の敵はこの命を――、思いを、奪おうとするやつのことだ。

マシュー・ヴァンダム

このブログはあなたがプレイ済みであることを前提に、割と躊躇なくネタバレします。

ストーリーイベント

ナエルの想い

メインキャラクター:マシュー

目標

 ナエルに自分の間違いを気付かせる。

課題

 何ひとつ諦めないマシューの思想は歩みが遅々として鈍く、実行力に乏しい。ゴンドウの世代は何も変えられなかった。マシューとナエルの世代もほとんど何も変えられないだろう。
 ナエルは目の前で失われていく大切な人の命に心を痛め、だから早急に世界を変えられる力をに手を伸ばした。机上のキレイゴトだけではナエルは救えない。

解決

 世界を変えるためにナエルが切り捨てようとしたものもまた、命である。
 ケヴェスとアグヌスの兵士たちはナエルにとってしょせん他人であり、ときに憎しみあう関係ですらあるが、しかし同じ人間でもある。
 ナエルは命を慈しむ心優しい人間だ。兵士たちを保護するためにシティーの人間が割を食うという問題さえなければ、ナエルだって本当は彼らを切り捨てたくなかった。
 頭を悩ます問題はこれからも日々生まれてくるだろう。今回は兵士たちの命を諦めれば解決できたことかもしれない。しかし、次の問題のとき、自分は何を諦めることになるのだろうか。

 マシューがどうして全てを救おうという絵空事にこだわるのか、ナエルはようやく理解した。

メモ

地球種汎移民計画

 『ゼノブレイドクロス』のプレストーリー。
 この作品世界における地球は異星人同士の戦争に巻きこまれ、西暦2054年7月に滅亡している。これに先立ち、サマール星からのメッセンジャー・エルマから事前にもたらされていた情報によって危機を察知していた地球統合政府は、地球からの脱出を決定。この移民計画はそのためのものである。
 なお、実際に地球を脱出できた移民船はごくわずか。そのほとんどは地球の重力圏を脱出する前に異星人によって撃墜され、さらに太陽系を脱出できた少数の移民船にまで執拗に追撃が仕掛けられた。

 以上の経緯から、実際には地球は巻きこまれたのではなく、そもそもこの異星人同士の戦争自体が地球に存在する何かしらを争奪するためのものだったことが推察される。

 第3章その2の感想文でも書いたが、故郷を離れて新天地に入植するという活動はそれ自体必ずしも幸福なことではない。様々な理由により住み慣れた故郷を離れなければならなくなった者が、やむを得ずフロンティアを目指すのだ。
 まして地球種汎移民計画は移民とは名ばかりの、実質的には難民だ。こんなニュースを明るい話題として取り上げている時点でこの地球はナエルが思うような平和な世界ではない。末期症状だ。

サルワートル人権擁護法案

 『ゼノブレイド2』における前世界の記録として、サルワートルという言葉は「反政府軍」のルビに登場していた。このとき政府軍側の主力兵器・セイレーンは損耗率60%以上。全滅である。
 つまり少なくともサルワートルとは集団。なおかつ統合政府軍を宙間戦闘で圧倒できるほどの軍事力を有した勢力ということになる。

 そもそも人権擁護法とは、特定の被差別集団の自由と尊厳を守ることを目的に、その他大勢の自由権や社会権を一部制限するための法律である。
 一種の言論弾圧と言い換えることもできる。ただし、この手の法律に対する論説は言論の自由を制限されて一番困るメディアが自社都合からたいへん熱心に発信しているため、ほとんどの場合思想が偏っているので注意が必要。インターネットは自由であっても公平ではないし対等でもない。

 まあ何にせよ、人権擁護法は非常にセンシティブな問題を扱う法律なので、これが立案されていること自体、大きな社会問題が発生していることの証左でもある。昨今のLGBT問題同様、国民的・国際的議論が不可避になるはず。
 まして、サルワートルはそう遠くない未来に反政府軍として渡りあうほど力を持った集団だ。法律を用いた人権擁護の必要性自体がまず疑わしい。むしろキナ臭い。というかぶっちゃけた話、そいつら侵略に来た異星人の尖兵だろ。

ラダマンティス自治州と天を貫く巨大な塔

 ラダマンティス自治州とは『ゼノブレイド2』に登場するモルスの地のことであり、そこにそびえ立つ塔は同じくビーン・ストーク、すなわち世界樹の元の姿である。ラジオで報道されている「ラダマンティス第1宇宙港」というのもおそらくこの塔の附属施設。ビーン・ストークには軌道エレベータとしての機能もあった。

 ビーン・ストークの頂上には統合政府宇宙軍の本部と兵営、居住区、トリニティプロセッサの研究施設などを備えた巨大な宇宙コロニーが接続されている。『ゼノブレイド2』でレックスが目指した楽園のことである。
 なお、ビーン・ストーク自体もそうだが、この世界の地球は21世紀半ばとは思えない異様に高度な科学技術を有している。政府宇宙軍主力兵器のセイレーンに至っては人型ロボットだ。
 もし『ゼノブレイドクロス』と同一世界だというのなら、この各種技術をもたらしたのはエルマだということになる。また、サルワートルとの戦闘時点で地上が荒廃しているということは、このときの戦闘こそが『ゼノブレイドクロス』における地球最後の日、異星人同士の戦争があったという西暦2054年7月と同じ時間軸だったのだろうと推察できる。
 だから戦場が宇宙だったのだ。サルワートル人権擁護法案などというものが持ち上がるくらい前々から地球に浸透してきていたはずなのに、地上ではなく宇宙。このとき宇宙には恒星間移民船団とトリニティプロセッサがあった。

トリニティプロセッサ

 サルワートルに軍事的に押し込まれ、日々刻々と焦土になっていく地上を宇宙から見下ろして、平和な世を希求する若き博士・クラウスはひとつの決断を下した。トリニティプロセッサを用いた相転移実験(“ゲート”起動実験)の独断決行である。
 実験は失敗。これにより地球は光となって消滅し、代わりに巨神界とアルストという2つの世界が誕生した。地球が消滅する様は『ゼノブレイド1』『ゼノブレイド2』だけでなく、『ゼノブレイドクロス』でも描かれている。

 トリニティプロセッサはマルチバース・ジョイントなのだという。ゼノブレイドシリーズの劇中ではそれ以上詳しく説明されていないが、要するに複数の宇宙を連結するための機械ということだ。
 世のSF小説において、地球が存在するこの3次元宇宙以外の他の宇宙のなかには、そもそも次元すら異なる宇宙があると予想されている。そして次元が異なるということは、より高次の世界であればあるほどその宇宙には大きなエネルギーが内在しているはずだとも。
 戦時下だというのにクラウスがあえて危険の大きいゲート起動実験を強行したのは、つまり、この巨大なエネルギーを手に入れてサルワートルを撃退したかったためだと推察される。使いきれないほどの潤沢なエネルギーさえあれば、人間同士の様々な諍いや社会問題すらも一挙に解決できたことだろう。地球を捨てる必要だってなくなったはずだ。

 なお、クラウスの口ぶりからするとトリニティプロセッサは地球人の発明品ではないようだ。さらには「ここをあいつらに明け渡すというのか」との発言も。
 ・・・異星人が地球で戦争を始めたのって、絶対トリニティプロセッサが目的だろ。

 ちなみに、トリニティプロセッサにウーシア(本質)、プネウマ(精神性)、ロゴス(論理性)という名前をつけて呼んだのは地球人らしい。
 だから彼らは、どんな辛い思いをしようとも人間に寄り添うことをやめないのかもしれない。

ディミトリ・ユーリエフ

 『ゼノサーガ』シリーズに登場する人物と同名らしいが、私は当時エピソード1の途中でぶん投げた勢なので詳しく知らない。
 あっちの世界は宇宙連邦を形成しているはずだから、仮に今作と同じ世界だとしても時代は大きく離れるはず。同じ人物が両時代に存在することはありえない・・・と、言いたいところだが。
 『ゼノブレイドクロス』の恒星間移民船には人間を生体そのものではなく電子情報として保存する技術が使われていたはずだ。(だから1隻に150万人とかいうバカげた人数を収容できる) ちょうど、今作のオリジンと同じように。

 そういう技術があるならば、遠い未来において1人の人間を記憶ごと復元することも不可能ではないだろう。

その後の物語

 どうやらアルファはオリジンを使い、ウーシアの記録にあった20XX年の地球を再生させるつもりだったらしい。
 なんでよりにもよってこんな不穏な時代を。
 案外、トリニティプロセッサが地球に飛来、あるいは目覚めたのがこの直前の時期だったのかもしれない。この時期しか平和な地球を知らなかったのかもしれない。

 アルファの目論見はマシューたちの活躍によって潰え、しかしノアたちが時間を進めたことにより、結局のところはせっかく再生された2つの世界もいつか地球へと回帰することになる。

 だが、一見して結果は同じようであっても過程が大きく異なる。
 アルファが目指したのは過去に人間たちが失敗したときそのままにやり直す世界。
 対して、マシューやノアが目指したのは異なる者同士が相争うことなく、お互いを犠牲にしていいと思わない先にある未来だ。

 アイオニオンが無くなった時点ですら諍いはまだ完全には解消されていない。これからも新しく生まれつづけるだろう。だからこそ2つの世界は一時離れなければならなかった。今のまま合わさっては、また憎みあってしまうから。
 それが解決して初めて、2つの世界はオリジンで衝突を回避しつづけることを辞め、自ら望んで1つの地球に帰還することになる。

 だから、マシューやノアたちが進んだ先にあるものは、ウーシアですら知らない全く新しい未来だ。

大切な人を守れ

 「あいつらお互いに殺しあってるじゃない。生きるため? それが何!? メビウスの守ろうとするものなんて、要らない!」
 「ものじゃない。命だ」
 「・・・!」
 「たしかにメビウスは許せねえ。平気な顔して命を刈り取る。だけど、刈り取られる側になんの罪がある? 何をした? 何ひとつ選べないなかで今を必死に生きようとしているだけじゃないか」

 長年こういう作品に触れていると、命のかけがえなさを振りかざして説き伏せようとするシーンがひどく陳腐に感じられます。
 またそれかよ。いい加減飽きたよ。はいはい、素晴らしいキレイゴトですね。そういうふうに言いたくもなります。

 ナエルは、だから優しい少女として設定されたのでしょう。

 「頭、お花畑かよ・・・。なんで全部見たそうとするの!? そんなの無理に決まってるじゃない!」
 「諦めたらそこで終わりだって、爺ちゃんも言ってたじゃないか」
 「なら見せてよ。あいつら全部一緒に暮らせる世界、つくってみなよ! できるんだよね!? 余裕あるもんね、マシューは! 私には余裕なんかない。ないんだよ・・・!」
(第3章)

 正直、私のマシューに対する印象はナエルと同じでした。
 ただの夢想家。考えなし。現実を見ようともしていない。そういう愚昧な人物。

 本編においてノアが示したものを見ていなければ、私はむしろナエルの側に同調していたことでしょう。
 人の生き死になんて正直私はそこまで興味ありません。今後誰がいなくなるのか、これから誰と笑いあえて、誰と会えなくなるのか。そういう視点のほうがよっぽど身に迫って感じられます。
 他人の命なんてどうでもいい。大切な人の命に比べたら、そもそも命の価値なんてものには明らかな優劣がある。私はそう思う。だから、マシューよりもナエルの気持ちのほうがよっぽどよくわかります。

 でも。

 「これは彼女の問題だ。言葉をいくら並べても伝わらないこともある」
 「んなわけあるか」
 「いつも君が言っていることだぞ」
 「言ってねえよ」
 「言ったよ。昨日だって『口で言ってもわかんねーか』と。同じだ」
(第2章)

 これは本当にそのとおりで。

 「本気、なんだよな・・・?」
 「当然でしょ!? 私たちが得られなかったものがここにある!」
 「ねえよ!! そんなもんは! ・・・一緒なんだよ、どこも。見捨てたら同じになるんだよ」

 「そのためにみんな死んだ! マシューはそれでいいの!?」
 「――いいわけねえだろ! けどな、ナエルのやろうとしていることはメビウスと同じだ。同じなんだよ。そんなんで新しい世界を築いたって結果は変わらねえ。こうなる。これが! お前の望んだ世界だ!」

 マシューの思いの本質はこっちです。

 諦めるべきじゃない。一度諦めたら、そのままずるずると全てを失ってしまう。
 本当に何かに手を届かせたいと願うのなら、諦めて、自分の弱さに甘えて、ほどほどに妥協するのではなく、ただ強くなるしかない。

 200時間以上ノアを見てきたから、私は早くからマシューの言わんとしていることが理解できました。けれどナエルはそうじゃありません。
 彼女には取っかかりが必要でした。マシューの思いが自分に真に迫ってくると感じられるような、そんな、自分の心にとって一番大事な鍵。
 それが、たまたまナエルにとっては“命”だったのでした。

 私にしてみれば陳腐にもほどがある概念。
 だけど、だからこそ私と違って優しい子になら、これでちゃんと伝わるんだろうなという説得力。

 20XX年の地球の惨状と合わせて見て、今、ようやくナエルにも伝わりました。

 ナエルだって本当は諦めたくありませんでした。
 ひとつの命を守るために別の命を犠牲にするなんて、そんな冷たい考え、したくありませんでした。

 優しいナエルにそんな残酷な選択を迫ってきたのが、このアイオニオンの大地であり、そこにいるアルファです。

 倒さなければなりません。
 たとえ歩みは緩慢で、これから先何百何千年とかかってしまうとしても、敵を見誤ることだけは絶対にせず、正確に歩を進め、いつか、どこかの誰かの手で、正確に打ち貫いてやらなければなりません。

 敵はアルファ。そしてアイオニオン。どちらもです。

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