ゼノブレイド3 新たなる未来 第4章感想 船頭多くして、しかし。

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俺たちだけじゃねえ。てめえのことだって全部ひっくるめて、爺ちゃんは・・・! それが届かねえってんならてめえは大バカ野郎だ!

ゴンドウの孫 マシュー

このブログはあなたがプレイ済みであることを前提に、割と躊躇なくネタバレします。

ストーリーイベント

出立前夜

メインキャラクター:シュルク,レックス

目標

 キズナを守る。

課題

 アルファは強大な敵である。持てる力全てを使い最善を尽くしてもなお、守りたいもの全てを守りきれるとは限らない。
 また、シュルクとレックスが守ろうとしているものは命である。全ての命には自由意志があり、たとえ味方であってもシュルクたちの希望どおり動いてくれるとは限らない。

解決

 守るべき命のなかでもシュルクとレックスが特に慈しんでいるのが、ニコルとカギロイであった。それゆえシュルクたちは彼らがアルファとの決戦に参戦することを拒んだが、ニコルたちは残り少ない寿命を世界を守る戦いに役立てたいと強く望み、実力でもってシュルクたちに決定を撤回させた。
 守りたい者たちが自分の制御下から外れてしまうことを、しかし、シュルクたちはなおさら愛おしく思う。彼らは善く育つだろう。シュルクたちもそれぞれ尊敬する人から思いを受け継ぎ、自ら望んで実践していったように。
 ニコルたちに限らず、今、コロニー9には自分にできることを探し、悩み、行動しはじめる人たちが集まっている。気付けば全ての人が誰かのために自分に何ができるか考えている。

 これがキズナである。
 シュルクとレックスは命に替えてでもこれを守るだろう。

ゴンドウの往く道

メインキャラクター:ゴンドウ

目標

 今、目の前で実父と孫娘が殺しあっている。ゴンドウはどちらを守るか選択しなければならない。

課題

 実父のエヌは妄執に囚われてメビウスとなり、今この時間にある全てを守るべく未来に連なる者全てを殺そうとしている。
 孫娘のナエルは失望と嘆きの果てにアルファと同調して、大切な人の未来を守るため古き命全てを抹殺しようとしている。
 ゴンドウにはどちらも受け入れがたいことだったが、手をこまねいていては、次の瞬間にでもどちらかの命が失われてしまうだろう。

解決

 ゴンドウは自らの肉と骨でエヌの刃を受け止め、ナエルには持てるかぎりのウロボロスパワーを注ぎ込んだ。
 ゴンドウにできたことはそれだけで、彼はどちらを選ぶことも、何かを変えることもできずに死んだ。代わりに、マシューにどちらでもない新たな道を託して。

 第4章はゲーム的な楽しさと設定開示のオンパレード。
 開拓できるマップ面積はこれまでの2倍以上。収集要素もクエストもほとんど全てが一挙に解禁され、プレイ時間も(第5章がちょっと覗いた感じラスボス戦だけっぽいので)『新たなる未来』全体の5割を軽く超えます。私の場合は第4章だけで15時間。
 設定面も、エヌがどうしてコロニーを襲ったのかとか、ゴンドウがどうしてメビウス・エスのコアを破壊できたのかとか、リクの師匠は結局誰だったのかとか、本編で語られなかったあれやこれやの秘密がまとめて明らかになりました。・・・とはいえ、別に本編の見かたが変わるような重大情報があるわけでなし、ネタバレの無粋さを差し引いてまであえて感想として語りたくなる要素は無かった印象。へー、面白ーい的な。あくまでファンサービスって感じですね。外伝としての領分をきっちり線引きしているというか。

 本編ではコロニーごとに発生するクエストに特徴があって、各コロニーごとに固有のテーマ性を持っていたんですが、その傾向はDLCでも継続していました。
 コロニー9のクエストって、とにかく各住民が始める活動のスタートアップを支援しよう、みたいなやつばかりなんですよね。ケヴェスやアグヌス出身者なら自由を得たばかりなので必然的にそういう文脈になるというのもわかるんですが、自由の何たるかを知っているはずのシティー出身者やリベレイターですら、コロニー9ではそういった依頼ばかりしてくるんですよ。
 つまり、意図的というか、ちゃんと最初からそういうテーマに沿ったサブイベントづくりがされているんだろうな、と私は推察するんです。

 私の第4章の感想文はそういう前提から語ります。

ままならないもの

 「お礼。言ってなかったから。助けてくれたお礼」
 「礼? ――ああ、なんだそんなことか。成りゆきだからな、責めてくれたっていい」
 「ふざけんなって、最初は思ってたけど。今はこっちのがいい。自分で決められるから」

 ヒカリ成分多めのツンデレ体質なのでしょうがないところもありますが、お互いようやく通じあえました。

 「仲間のところに戻りたかったのか? 俺たちを犠牲にしてでも。知らなかった、とか言うなよ。結果を想像できてたはずだ。お前はただ見ないふりをしただけだ」
 「お前、言うな――。敵にお前呼ばわりされる筋合いはない! こんなの誰も頼んでない! あと少しで成人だったの! 仲間と一緒にここまで来たのに・・・! 必死で戦ってきたのに・・・」
 「2つ言っておく。1つ目、お前の敵はあいつだ。2つ目、お前に仲間はもういない」
(第3章)

 「自分で決められるから」。それこそまさにレックスがカギロイに伝えたかった一番のことでした。
 自分の生きかたは自分で考えろ。他人に委ねるな。他人のせいにするな。これからはそうしてもらう。――たったそれだけ伝えたかっただけなのに、どうしてあそこまで苛烈な言いかたになってしまったんでしょうね。改めて見返してみても「あれはない」。あれだけレックスを慕っているリンカが面と向かって批難しただけのことはあります。
 もっとも、あの時点のカギロイに言葉としてそのまま伝えるだけじゃ“自分で決めることの何がそんなに素晴らしいのか”っていう一番肝心のところを理解してもらえないでしょうから、具体的にどう語ればよかったのかといわれると私も思いつかないんですけれども。

 ともかく、やっと伝わりました。
 嬉しいでしょうね、レックス。おめでとう。

 「――そいつはつまり、お前たちもオリジンに行くって意味か?」
 「うん。たしかにマシューのおかげでもう戦う必要はなくなったけど、でも、僕とカギロイの命は――、残された時間は限られてる。その時間をマシューたちのために使いたいんだ」
 「その。アルファ、だっけ? そいつを倒さないと世界そのものが危ういんでしょ。それが本当なら私たちも他人事じゃ済まないし、だったら――」

 伝えたかった思いがやっと伝わった一方で、受け入れがたい思いもあります。

 ニコルは自分が命の奪いあいに向いていないことを自覚して戦争を倦んでいましたし、カギロイも戦友を失う経験を重ねて人が死ぬことの重さをよく理解しています。なにしろ生まれて以来10年も戦いつづけてきた歴戦兵です。彼らが戦うというのなら、その決意は凄惨なほどに尊いものでしょう。

 それでも、シュルクやレックスは彼らの志願を拒絶します。彼らの決意を軽んじているわけではなく、きわめて素朴な話、親として。
 死んでほしくありませんでした。幸せに生きてほしいと切に願いました。たとえ彼らの尊い思いを踏みにじってでも、どんなに恨まれようとも、親としてのこの素朴な願いだけはねじ込んでしまいたいと望むのでした。

 「お前にしては大胆な賭けに出たな、シュルク」
 「これがお互いに納得できる最善かと思ってね」
 「まあいいさ。どのみち、ここで終わるようじゃアルファとの戦いなんざ夢のまた夢だ」

 圧倒的な戦力差があるとわかっていて、ふたつの世界の英雄たちが少年兵の前に立ち塞がります。
 卑怯で、ワガママで、そして頑とした意志。
 事前の取り決めでは勝ち負けはさほど重要ではないという話だったのがまず卑怯。
 勝ちでもしなければ認めてやるつもりはありませんでした。地に膝つけた時点で心も折るくらいのつもりでいました。ニコルたちにチャンスをやったのではありません。まったくもって逆です。諦めさせるために、大人げない実力行使に出たのでした。ちなみに私はここで2回全滅しました。

 なのに。実際はニコルたちが勝ってしまうわけです。か細い可能性を引き出して、望み薄とみられていた奇跡を呼び起こして。

 「僕もレックスも手を抜いたつもりはなかった。あれは紛れもなくふたりの力だ。前言撤回するよ。今の君たちならアルファとも充分戦えるはずだ」
 「あ、ありがとうございます・・・!」
 「――で、そっちは?」
 「言っただろう。勝ったら好きにしてくれて構わないと」
 「じゃあ、認めてくれるのね? 私たちのこと」
 「ああ。本当に――、よくやったよ」
 「あ、・・・うん」

 認めるしかありませんでした。
 むしろ痛快な気分ですらありました。
 我が子が死地へ赴こうというのに、心に湧きあがるものは子の成長を喜ぶ歓喜の念ばかり。こうなってはもう我ながらどうしようもありません。ふたりの英雄は結局のところ、人の親でした。
 まったく。ままならないものです。

 「なんでそこまでするの? 人助け。全然関係ないのに、体まで傷つけて。世界を守ろうと戦って」
 「笑顔、かな。俺が戦うことで誰かが笑ってくれるなら、そんな世界をつくることができたら。それにな、『関係ない』なんてことないんだぜ。生きる以上は誰かと繋がっている。俺たちはそれをキズナって呼んでいる。お前と出会ったのは偶然だ。偶然、俺とお前はキズナで結ばれた。――なら、守らねえとな。世界を守るってのは、そういうことだ」

 子が親の所有物ではないように、世界の命運もまた英雄の所有物ではありません。
 それぞれ世界を救ったとき実感したはずでしたが、英雄たちは改めて思います。

 たまたま自分が先端にいただけにすぎませんでした。
 元来特別な力などなく、特別な生まれだったわけでもなく、たまたま自分が世界の危機に立ち向かわなければならなかっただけで、たまたま自分がたくさんの人の助けを得られただけで。
 真の意味で世界を守ったのは人の意志でした。
 たくさんの人が、何世代も何世代も、ありとあらゆる場所で願いつづけ、牛歩のごとき歩みの果てに夢がやっと叶ったその瞬間。夢半ばで散ったおびただしい数の死体の山の最先端で、たまたま夢が叶う瞬間を目撃したのがシュルクであり、レックスだというだけでした。

 世界を守るというのはそういうことです。
 誰もが自分の場所で、自分にできることを自分で成し遂げてきた、長い長い積み重ねの果て。英雄ですらそのキズナの一部分でしかありません。

繋がり、受け継がれていく

 「たかがメビウス。でも、この力は・・・!」
 「お前には理解できまい。これは選択だ!」
 「今を選んだというの? 私たちを捨てて!」
 「捨て去ろうとしているのはお前だ!」

 いや、どっちも同じだよ。本当に。

 アイオニオンは先行き不透明な未来に対する人々の恐怖の感情によって生まれました。
 2つの世界が衝突する。消滅してしまう。再生する可能性はあるが、それはあくまで可能性でしかない。その恐怖が、2世界の融合した瞬間に時間を制止させました。
 首魁はゼットと名乗っています。ただし、彼は個ではありません。シュルクが人のモナドを束ねて神を打ち破ったように、レックスが人とブレイドの総意でもって世界を変革したように、アイオニオンをつくった彼は、人の集合意志そのものでした。

 遠い未来、ゼットはノアの手によって討ち果たされることになります。
 必然です。理由がどうあれ、永遠に恐怖しつづけることを積極的に望む人などいませんから。
 享楽家のメビウスを集めて人為的な戦争を引き起こし、恐怖感情の再生産を画策しましたが焼け石に水。本質的に誰もが嫌悪する感情に根ざしている以上、ゼットとアイオニオンに永遠などありえませんでした。

 アルファもこの世界の仕組みをよく研究していて、シティーに生まれた多くの人の共有感情を束ねて自らの力にしようと考えたようですが、しょせんはゼットの二番煎じ。あるいは“たかが機械”というべきか。全く同じドツボにハマっています。

 「きっと・・・。きっと行けと言うんだろうな、母さんは。だけど――、選べないよ。その道は

 「あの目。執政官ってもっと楽しそうにキラキラしてるのに、全然光がない・・・。嫌だよ、あんなの」

 大抵の人は嫌なのよ、「仕方ないんだ」と何かを諦める選択。

 だからゴンドウは死にました。エヌと同じ道もナエルと同じ道も選ぶことができず、どちらも捨てることができず、何ひとつ諦めず、どっちつかずで、結局何もできないままに。
 そして、ゴンドウが生きている間は何も成し遂げられなかった代わりに、彼はその意志を次の代に託しました。

 「僕が行くのはこの道だ。マシュー。ナエルを、未来を、頼む。――頼んだぞ、マシュー!」

 なお、そのマシューですら全てを成し遂げられたわけではありません。
 2人の女王を解放し、エヌを改心させ、ゼットを滅ぼして未来へ進むことができたのは、もっとずっと先の未来の出来事。ノアが成したことです。

 何ひとつ諦めない道は牛歩の歩み。
 エヌとナエルが見限った道。
 そのエヌとナエルの命すら取りこぼしたくない優柔不断たちが選ぶ道。

 それでも、何百何千年と人々の間で継承されていったのはこの道だったのでした。

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