映画 HUGっと!プリキュア ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ 感想 想い出は消せない。

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キラキラ大切な想い出が、みんなが、私を支えてくれてる!

このブログはあなたが視聴済みであることを前提に、割と躊躇なくネタバレします。
例外的にネタバレ抜き(当ブログ基準)の記事もあるのでよろしければどうぞ。

前フリその1:想い出

 「元々持ってない想い出なんて絶対にあなたのものにはならないんだから!」
 すべての想い出はひとりひとり違うみんな、それぞれが自分の手で積み重ねてきた持ち物です。

 「野乃さんは自由な発想があって、なりたい自分の未来があって、私よりずっとすごいよ。・・・私には何もないから」(第2話)
 だから、他人にあって自分にないものを見つけてしまったとき、どうしようもない無力感に襲われます。

 「・・・ムリ。私、・・・跳べない」(第4話)
 だから、大きな挫折にぶつかってしまったとき、積み上げてきた自分の全部を失ってしまった心地がします。

 「やっぱり来なければよかった。みんなに迷惑かけてしまったのです。私はダメダメ人間なのです」(第9話)
 だから、何度がんばってもうまくできないときは、自分そのものを丸ごと嫌いになってしまいます。

 「私はクライアス社製のアンドロイド、RUR-9500 / ルールー・アムール! あなたたちの未来を奪いに来た! 邪魔なプリキュアの力を調べるためにあなたの母にニセモノの記憶を植え付けて潜入した! 嘘をついてあなたに近づいた! 私はあなたの家族を、学校のみんなを、街の人々を、みんな! 騙した!」(第17話)
 だから、積み上げてきたものに後悔したときは、これからどうしたらいいのかわからなくなってしまいます。

 それはいつだって自分自身の持ち物だから。
 だからこそ、誰かのものを奪って補完するなんてできないし、全部無かったことにして最初から積み直すなんてこともできません。

 「私、約束は絶対絶対ぜーったいに守るよ!」
 「うん」
 「はならしいね」
 「えへへ。・・・それが、ちっちゃいころ約束を破っちゃったことがあってね。結局『ごめんね』も言えないままそれっきりになっちゃった。きっとあの子はとっても傷ついたと思う。――だから、約束は絶対に守るって決めたんだ」
(『プリキュアスーパースターズ!』)
 だからこそ、他人の想い出なんてものは、その人以外にはどうしても預かり知れないところがあります。

 嬉しいことも、悲しいことも、今のあなたをつくりあげてきたあらゆる想い出は、いつだってあなた自身の持ち物です。

 だとしたら。
 「空っぽのまま一生を終えたボクの絶望、お前らにわかるまい!」
 やっぱり、他人の気持ちなんてものは誰にも理解してあげられないのでしょうか?

前フリその2:フレフレ

 「フレフレ私! フレフレみんな!」
 輝く未来に手を伸ばす少女・はなが口癖のようにいつも唱えます。
 強い輝きを放つこの言葉。彼女の友達みんなこの言葉に励まされて、みんなこの言葉が好きになりました。

 特に「フレフレ私!」、まず自分を励ますところがステキ。
 みんな目指すところは自分の未来です。過去から現在に至るまで積み重ねてきた生き様の先に未来があります。だから輝く未来を望むのなら、まずは自分が一生懸命がんばらなきゃどうにもなりません。
 考えてみれば当たり前のことではあるのですが、不思議といつも忘れがちです。
 その当たり前のことを思いださせてくれるこの言葉は、だからステキ。

 では、「フレフレみんな!」って?
 私が目指すところは私の未来です。私が未来に向かって積み重ねていくのは私の想い出です。他の誰のためでもなく、他の誰のものでもありません。どうして自分以外のみんなのことまで応援しなきゃいけないんでしょうか。
 ともすれば陳腐な、本当にありふれた言葉なので、逆になかなか問い直す機会がありません。けれど考えてみれば不思議なんです。
 「プリキュアっていったって、ただの中学生だよ」
 自分のことだけでも精一杯なのに、自分を応援しているだけじゃダメなんでしょうか?

想い出とはどこにあるのか

 ミデンという怪物がプリキュアたちの想い出を次々に奪ってまわります。
 想い出を奪われたプリキュアは子どもの姿になるだけではなく、これまでみんなと過ごしてきた記憶まで全部忘れてしまいます。

 さあや、ほまれ、えみる、ルールーも子どもの姿になって、ひとり残されたはなは大家族のお母さんみたいにてんてこまい。けれど一番辛いのはみんなが好き勝手ワガママをいうことではなく、記憶をなくしたみんなに拒絶されてしまったことでした。
 「その子も帰りたいんだよ」
 「だって怖いもん。オバケも、お姉ちゃんも」

 これまでの想い出が全部無くなってしまった心地がしました。
 自分が大切に思っているものを、誰も大切にしてくれない。
 はながこれまで大切に積み重ねてきた想い出を、みんなが寄ってたかって崩そうとします。
 はなの想い出ははなひとりだけのものではありませんでした。みんなと一緒につくってきたものでした。はなの想い出はみんなとの絆の間にありました。
 そんな当たり前のことを、これでもかと痛切に突きつけられます。

 「フレフレみんな!」は、では間違いだったのでしょうか。
 もしはながみんなを応援せず、誰とも友達にならずにいたら、今回の事件はこんなにも悲しくならなかったでしょう。
 少なくとも自分がミデンに敗北しないかぎりは想い出をひとつも失わずに済んだことでしょう。
 なのに、いったい何のために。

 打ちひしがれたはなの隣で、同じく友達の想い出を奪われたなぎさが叫びます。
 「私、ほのかがいないとダメだから!」
 「返して! 私の一番大事な人を返して!」

 はなと同様、なぎさの想い出もほのかとの絆の間にありました。
 そう。絆の間に。
 なぎさの大切な想い出は、なぎさひとりではつくれないものでした。
 ほのかがいてくれなければ、そもそもなぎさは今のなぎさになれなかったことでしょう。
 ならば。
 たとえほのかが記憶をなくしても、なぎさは変わらずここにいます。
 ならば、なぎさがほのかと一緒に積み重ねてきた想い出は、今も変わらずここにあります。

 あらゆる想い出はいつだってあなた自身の持ち物です。
 たとえ友達が忘れてしまっても、あなたが友達と想い出を積み重ねてきた過去は変わりません。
 想い出は友達との絆の間にあって、そしてあなたがいるかぎり想い出は消えないのですから、むしろその絆は永遠です。
 「私はひとりじゃないのに、これしきのことで心が折れるなんて、私がなりたい野乃はなじゃない!!」

 「フレフレ私!」
 どんな言葉よりもはならしい咆哮が、みんなに絆の存在を思いださせます。
 「がんばって!」「がんばれ、エール!」「エール、負けるな!」
 過去にはなが友達へ贈ったフレフレが、はなのところに返ってきます。
 「フレフレみんな!」は「フレフレ私!」と呼応して、あなたをひとりでいるより何倍も強くしてくれます。
 想い出は自分ひとりでつくるより、みんなと一緒に積み重ねていった方がずっと強くなるんです。たとえひとりが奪われたとしてもみんなが奪われるまでは失われないほどに。

 だから。
 「フレフレ私! フレフレみんな!」
 輝く未来に手を伸ばす少女・はなは、みんなと一緒に未来へ挑みます。

遙か遠くにいる誰かへ

 「空っぽのまま一生を終えたボクの絶望、お前らにわかるまい!」
 実のところわかりません。
 「何もないって、どんな気持ち・・・?」
 はなに一切の想い出を失った経験なんてなくて、ミデンと全く同じ境遇になった過去なんてなくて、だから、残念ですが彼の絶望を理解してあげることなんてできません。
 こればかりはどうしようもないことです。この世にあなたと全く同じ人間なんてひとりとして存在しないんですから。あなたの気持ちを正しく理解出来る人なんて、あなた以外には存在しえません。

 「未来から来た俺たちにはこいつらを元に戻せるほどの想い出があらへん・・・」
 なぎさとほのか、はなとさあやたちは、それぞれ深く結ばれていた絆を通じて想い出を蘇らせることができました。
 ですが、他人は。
 絆と呼べるほどのものを結んでいない、一緒に積み重ねてきた想い出を持たない他人同士では、何もしてやれることはないのでしょうか?

 ミデンに至ってはそもそも想い出をひとつも持っていないそうです。
 だとすれば、やっぱり誰にも彼を救うことはできないのでしょうか?

 そんなさびしい結論は、まあ、イヤですよね。
 「ふれふれえーる。ふれふれあんじゅ。ふれふれえとわーる。ふれふれましぇり。ふれふれあむーる。・・・あるよ! ふれふれ、あるよ!」
 八方塞がりのなか自分にできる精一杯のフレフレをしながら、はぐたんはひとつの発見をします。
 自分がはなたちと想い出を重ねてきたように、キュアホイップたち歴代のプリキュアとたくさんの想い出を積み重ねてきた人たちなら他にもいるじゃないか。自分はその人たちと絆を結んだことがあるじゃないか!
 そういうわけで、彼女は第四の壁を越えて映画館にいる私たちに助けを求めてきます。
 たしかに。私たちははぐたんとも、歴代プリキュアとも、両方ともと想い出をつくっていました。私たちならはぐたんの頼みを受けて、彼女たちを助けられます。

 去年、『キラキラプリキュアアラモード』のいちかたちがノワールたちの闇に対抗するために使った戦法ですね。
 みんなそれぞれ違うバラバラの個性を持っているんだから、みんなで力を合わせたらどんな敵相手だって、誰かが戦う手段を見つけられるだろう。寄ってたかって悪を討つ。オールスターズシリーズの伝統でもある大いなる物量戦です。

 想い出を一切持たないという、あまりにも取っかかりのないミデンに対してもこの戦法が功を奏しました。

 はなはミデンの気持ちを完全には理解出来ませんが、一部分なら共感することができました。
 同様に、歴代プリキュアたちもそれぞれ少しずつ、少しずつ。
 「私は知ってる。何も持ってない私だって、なにかになれる!」
 「私たちの思い出。失敗ばっかりで、何度も諦めようと思った」

 ・・・などなど。
 55人総出で、この気持ちなら私がわかる、そっちなら私が励ませる、といった具合で四方八方からちょっとずつミデンの絶望を解きほぐしていきます。プリキュア・レリーフ・シャイニングメモリー。想い出を人と人との絆の間に重ねられるのなら、たくさんの想い出を持ち寄れば、ミデンとの間にだって絆を紡いでいける。それこそ、ステンドグラスをつくるようにして。

 気持ちを理解してやれないからって、何もできないわけではありません。
 はなたちはこれまでもそういう赤の他人を何人も救ってきました。
 細かい事情はわからなくても、とりあえず私はあなたが好きだからと。友達になりたいからと。あるいは自分では好きになってやることすらできなくても、それでも誰かがあなたを好きになってくれると。あなたには未来があると。
 ひとりで絶望することさえやめたら、あとは誰かとつくっていく想い出たちが輝く未来へ導いてくれると信じて。

 「フレフレ私! フレフレみんな!」
 どうかあなたが幸せになる努力を諦めませんように。
 きっとどこかであなたともつながる絆の連絡を信じて、あなたと会ったこともない私があなたの未来の輝かしいことを信じます。

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