いつか必ず、反撃の時は来る。そのときはお前のもとに駆けつけると、このガイアの剣に誓おう。
サマンオサの勇者 サイモン
冒険の書15
戦士シュアン記す。
文字を書くことにもだいぶ慣れてきた。ソーリョクの手習い教室にカナリアも参加するようになったが、なんだったら俺からも教えられそうなことがあるほどだ。
まあ、よしておいたほうがいいのだろうが。
我々はサマンオサの偽王に投獄されたという勇者サイモンの消息を求め、オリビアの岬を抜けて孤島の牢獄を探した。
サイモンはオルテガと同じく、十数年前、魔王討伐のためにサマンオサ国で見出された勇者だ。オルテガとは旅先で知りあい、意気投合した仲だという。
あいつは強い戦士が好きだった。強者を見つけるとスポーツ感覚で手合わせしたがった。サイモンという男もさぞ優れた使い手だったのだろう。
オルテガはオーブ探索の最中に力尽きた可能性がある。やつの友人であり、同じく魔王討伐を志していた勇者ならば、オーブについて何か情報を持っているかもしれない。
件の孤島は無人だった。そもそもが労役や給食を行うための設備どころか、看守の部屋すらもない。
地下壕には鉄格子で区切っただけの簡素な独房がいくつかあり、その全てに白骨が転がっていた。なかには鼠のかじり跡があるものまで。この施設がいかに残忍な目的のもとでつくられたものかが察せられるというものだ。サイモンがここに収監されたというのなら、残念ながら彼が今も生きている可能性は無いだろう。
奥の独房で、比較的新しい白骨死体が小ぶりな宝剣を抱いて横たわっているのを見つけた。
念のため持ち帰り、サマンオサで知り合ったサイモンの息子に見せてみると、これこそがサイモンの愛剣、ガイアの剣だという。
奇妙な話だ。見たところ、宝飾品としてはさておき、武具としてはさほど出来のいい拵えではない。刃渡りも短すぎる。オルテガが気に入るような武人の得物とは思えない。
訝しんでいると、サイモンの息子が思いだして言った。偽王に捕らえられる直前、サイモンは火山に行くと言って旅支度をしていたのだという。
行き詰まり感から街づくりをしているマソホの様子を見に行くと、謎はすぐに解けた。ちょうど旅人からシルバーオーブに関する噂を仕入れたところで、どうやって俺たちに伝えたものか悩んでいたのだという。
シルバーオーブはネクロゴンド山脈最奥の神殿に収められているらしい。しかし、神殿へ至る道は知られていない。伝説では火山に宝具を投げ入れることで道が開かれるのだとか。
なるほど。その宝具というのが、このガイアの剣か。
船でネクロゴンドに向かってみると、すぐにそれらしい活火山が見つかった。大昔には何らかの儀式が行われていたのだろう。人工物の痕跡がそこかしこに残されていた。
火口には魔物が待ち構えていた。人の言葉を話す、明らかに高位の魔物だった。
ずいぶんと軽口を好む魔物らしく、聞いてもいないことを自慢げに次々まくし立てた。
要は、自分こそが勇者オルテガを討ち取ったのだと言いたいらしい。この手でオルテガをマグマに突き落としてやったのだと。オルテガの仇を討とうと俺たちの頭に血が上るのを期待しているのか、それとも、あのオルテガでも負けたなら勝ち目がないと絶望させたいのか。
無意味だな。
念のため横目で見てみたが、ヒイロの技に乱れはない。
オルテガは死んだのだ。俺やヒイロがその仇を討ったとてやつが蘇るわけではない。
第一、我々の旅の目的は魔王討伐だ。魔物の王だ。目の前の魔物がどんなに強かろうと、こいつを倒せないようでは俺たちの剣が魔王バラモスに届くことはない。我々には元よりこの魔物を避けて通る理由はない。
ヒイロは自分が間違いなく死ぬとなったとしても、最後の瞬間まで魔王討伐の使命から逃げることはないだろう。あいつはアリアハン最強で、最年少の戦士だ。アリアハンにヒイロを越える勇者はもう現れない。
そして俺はヒイロを死なせるつもりがない。必ず生きて帰す。あの才気あふれる若者はアリアハンの希望だ。魔王の侵略が始まることよりあいつを失うことのほうが大きな損失だと、俺は思う。
ヒイロは逃げることなく、俺はヒイロを死なせない。だったら、俺たちは常に勝つつもりで戦うしかないではないか。
我々は魔物をガイアの剣とともに火口へ突き落とし、ネクロゴンド山脈へ続く道を斬り開いた。
街づくりの書1
商人マソホ記す。
新しい街をつくるにあたって最初にすべきだったのは市場を建てることだった。
この開拓村はいろいろと条件がよくて、食料生産や労働力についての不安がない。商売の基本、必要なものが必要なところに届く物流システムを整えるだけで当面の生活が成り立つ。
また、市場の存在は近隣の村々にとってもメリットが大きい。開拓村を地域一帯の物資集積拠点として、今は善意だけで食品や働き手を貸してくれている村人たちに、物資の交換という新しい価値を提供できるなら、今後とも長く友好的な関係を保てるはずだ。
次が今回の計画の肝。
余裕が増えた労働力を使って、私は港の整備に着手した。大きな帆船でも入れるくらい大きな港にする。
同時に、南の海賊から船を借りてポルトガ王に謁見。バハラタと結ぶ西回り航路開拓の可能性を売り込んで融資してもらった。
ポルトガが東回り航路の確立に手間取っているのは、南大陸が過酷すぎるからだろう。テドン村が滅ぼされたみたいに、あの大陸は魔物の被害が多すぎて人間の住んでいる地域がほとんど残っていない。航海中の補給が見込めないのだ。
その点、こちらの新大陸の人々はおおむね平和に暮らせている。航路は多少長くなってしまうけど、いくつかの漁村に投資して港を整備すれば新しい補給拠点にできる可能性がある。私たちの村も、大洋を渡ってきた商船が最初に骨休めする重要な港になれるはずだ。
そういえばヒイロたちがサマンオサ国を魔物の支配から解放したそうだ。今後はそちらとの交易も見込めるかもしれない。
融資された資金は、主に海賊たちが持てあましている盗品を買い取るために使った。港が完成すればポルトガから商人が来るようになるから、そのときのための商材としてちょうどいい。海賊たちに恩も売れる。
私は海賊たちと情報共有して周辺海域の海図をつくり、定期的にポルトガ王に献上した。
この海図の範囲が西のムオル村まで及ぶようになれば、あとはポルトガ国のほうでバハラタ行きの航路を完成してくれるはずだ。
私たちの村はいつの間にかマソホバークと呼ばれるようになっていた。
むず痒くてやめさせたいけど、誰が言いだしたのかもわからないから止めようがない。困った。
港が開けるようになると、どんどんお金が入ってくるようになってきた。
外国からも建築家を招いて、村の姿は日々刻々と変貌していく。宿場街を整備して、市場も前よりずっと大きくして、それでもお金が余るから劇場を建ててみることにした。
私は最終的に、ここを探検家たちが集まる街にしたいと思っている。
新大陸は広い。現住部族の村は点々と散らばっているけど、まだまだ手つかずの土地がたくさん残っている。未開の地の情報には今後高値が付けられるようになるはずだ。
そんな一攫千金の冒険ロマンを求める人たちを、この街に集めたい。そういう人たちなら娯楽の需要はきっと高いはずだ。お金があるかぎりたくさん増やしていきたい。
もちろん、オーブの情報を集めるためだ。
私はそのためにここにいる。そのためだけに、ヒイロたちの旅から離脱した。全てはヒイロの役に立つために。
先日、シルバーオーブの情報を知っているという旅人がいたから、ヒイロに引き会わせた。
私が聞いても何の手がかりになるのかよくわからない話だったけど、ヒイロたちにはちょうど欲しかった情報だったみたいだ。ちょっとさびしい。
そうだ。オーブの情報に賞金を出すことにしよう。
万が一現物が見つかったときのためにお金も貯めておかなければ。
私がヒイロのためにできることって、もう、そのくらいだから。
レヴナントとかいうネタ枠ボス。
1ターンに3回も呪文を唱えてくるので、どうせこいつアレだろうなあ・・・と思っていたら、やっぱりアレでした。
MPが枯渇するタイプのボス。
開幕からアストロンを15回ほど唱えてやるだけで(ほぼ)勝ち確定です。
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