キミとアイドルプリキュア 第37話感想 キミの心の闇を、私は闇だと言わせない。

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カイトさんがどう思ってるのかはわからない。でも、私は私の気持ちを信じる!

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「新たなチカラ! アイドルハートリボン!」

大きな出来事

メインキャラクター:うた

目標

 自分がカイトに対して抱いている気持ちの正体を理解する。

課題

 カイトはレジェンドアイドルだ。それに、どうやら自分には打ち明けてくれない深い悩みもあるようだ。自分なんかが特別な絆を繋いでいい人かどうかはわからない。
 それでも気持ちを正直に伝えてみたところ、カズマという古い親友を巡る心の古傷を教えてもらえた。しかし、結局うたでは何も言ってあげることができなかった。

解決

 カズマの正体は、現在プリキュアと敵対しているジョギだった。
 ジョギは光り輝くレジェンドアイドルであるべきカイトが心の闇を抱えていることをあざ笑うが、うたにはそれが悪いことだとは思えなかった。

 その心の闇は、カイトがカズマとの絆を今でも大切に思っている証だ。
 カイトに秘密を打ち明けてもらったときは何も言ってあげられなかったが、それでもやはり何かしてあげたいと思う。できればカイトとカズマの絆をもう一度繋ぎなおしてあげたいと思う。

 自分がカイトにそういう干渉をしていい立場かどうかは今でもわからない。でも、そうせずにいられないくらい、うたにとってカイトは特別な人だ。放っておけない。
 ジョギとの戦いを経て、うたはカイトが心から笑えるようにしてあげたいと改めて思った。

バトル

 カイトを素体としたスマートフォン型ダークランダー。

苦戦

 光り輝くレジェンドアイドルであることを象徴するように画面のフラッシュでプリキュアを牽制し、カズマとの絆の成れ果てであるかのようなロープでプリキュアを拘束してくる。いつものダークランダーより明らかに強力。

勝利

 「お前にカイトとどういう関係があるというのか」というジョギの揺さぶりに負けず一歩踏み出したうたの手に、新たなアイドルハートブローチが出現。アイドルハートリボンスタイルに変身する新たな力を手に入れ、新技「プリキュア・アイドルスマイリング・エコー」で浄化した。

ピックアップ

ライブ

 昨日、現実に開催されたライブイベント『You & I = We’re IDOLPRECURE』のこと。前話がこの準備に向けたエピソードでもあった。
 11月3日まで視聴可能だから、今から配信チケットを買うのでも全然問題ない。

 昼夜2回公演で、各2時間半程度と意外にボリューミー。過去作のカバーやこのライブで初披露の新曲まである豪華仕様。
 セットリストは昼と夜とで1曲くらいしか変わらなかったはずだから、子どもたちの反応を見たいか、オッサンオバサンたちのコーレスありで歌を聞きたいかで、どちらか片方だけ観るのでもいいと思う。(昼の部は大人が声を出してはいけないレギュレーションだった)

 私は正直、声優のアイドル活動に一切興味がないから、着ぐるみのダンスを満喫するために定点カメラ版があれば尚うれしかったかなという感じ。想像以上に声優をアップで映す割合が多かった。
 あと、子ども向けのステージとしてはMCの尺が長すぎたかな。映画の話題を含むとはいえ1回で10分超はさすがに。歌手陣と声優陣それぞれ1回ずつの幕間で全員まとめて喋る構成だったから仕方なかったのだけれど。
 とはいえ、アニメと同じくバトンをくるくる回す、着ぐるみたちのダンスパフォーマンスは本当に見応えがあったから、あれを観るためだけにチケットを買っても後悔しないんじゃなかろうか。

「マネージャーの田中さんですよね!? ファンだったらみんな知ってます」

 いや・・・。マネージャーにまで興味を持つのは相当極まったファンだと思うなあ。
 極まると裏方に興味を持つようになること自体、ファンとしては自然な流れだと言われたら、それはそうだけれど。

もちころりん

 初めて見たが、どうやらエイコー社が出している「もちころりん」というアイテムらしい。
 寝そべったキャラクターの姿を模した丸っこいフェルト人形で、1つあたり1000円程度と安価。これは普段グッズを買わない私でもちょっと欲しいかも。

プリキュア・アイドルスマイリング・エコー

 アレンジ版はアイドルの華。ステージイベントが多いアイドルだと特に、定番曲を求められつつもマンネリは敬遠されるため、こういうマイナーチェンジは需要とマッチしている。

 それはそれとして浄化技としての演出が妙に簡素だから、たぶんもう1つ上位技があるのだろう。

プリルンの扱い

 完全に去年(『わんだふるぷりきゅあ!』)の犬飼こむぎと同じポジション。
 一応うたにとってカイトが特別な人だという理解はあるようだから、こむぎよりは理解が進んでいるようだが。

いったい何の権利があって

 「ねえ。なんでカイトのためにそこまでするの? キミ、カイトの何なの?」

 「カイトとの間に絆があるとでも思ってるの?」

 カイトとの間にただならぬ関係があるらしいジョギが言います。

 どうしてそこまでするのか?
 その質問はうた自身の個人的な感情を問うに留まらず、うたとカイトの関係をも射程に含め、はたしてカイトのプライベートな問題に口出しする権利を果たしてうたが持っているのか、という非難の色すら帯びています。

 それはそう。自分がカイトにとってただの知りあいでしかないというシンプルな事実は、うた自身が一番気にしていたことでした。

 「その・・・。また会えますか? また会いたいです!」
 「もちろん」(第35話)

 先日、カイトの本当の心に少しだけ触れる機会がありました。
 初めて知りました。レジェンドアイドルであるあの人は、本当は、心から笑っていなくてもいつもと同じ笑顔で笑っていられる人なんだってこと。

 ・・・ううん。そもそもが、あの人は普段からずっと、心から笑っている瞬間なんて全然なかったんじゃないかとすら思います。

 あの人は世界中どこにいたって、365日24時間、いつでも“響カイト”をしている人。
 その並々ならぬプロ意識と、大人びた精神性、おそらく心からファンのことを大切に思っている優しさで、あの人の心はいつも巧妙に迷彩されています。

 「みんな。わかったよ。カイトさんへの気持ち。私、カイトさんに笑っていてほしい!」(第35話)

 だからあの日、うたは思ったのです。

 カイトのいつもの笑顔を見ながら。
 ――この人に、笑っていてほしいって。

 でも、それはあくまでうたの気持ちです。うたの願望です。
 カイトに「そうしてもいい」って同意をもらえたわけではありません。

 「声かけなくていいのメロ?」
 「うたちゃん。ファイトだよ」
 「ふたりの恋の幕はとっくに上がっちゃってます!」

 だから、この気持ちはもしかしたらそういうことなのかもしれないけど、でも、そういうのとはちょっと違っているというか・・・。

 追いかけろと言われても、自分がそういうことをしていい立場なのかはちょっと怪しくて。
 いやまあ、「また会いに行ってもいい」という許可はもらいましたよ?
 でもそれはカイトにとってそういう意味じゃないというか、他のファンに対するファンサと何も変わらないというか、あの人は自分が辛いときでもファンを優先してくれるというか、それがわかっているなら自分はアレを言葉通りに受け取るべきじゃない気がするというか。
 いろいろ考えれば考えるほど、自分はそういうことをしていい立場じゃないとしか思えないのです。

 みんなに散々焚きつけてもらっておいてゴメンなんですが、珍しく悲しい気持ちを表情に出しているあの人の顔を見ると、どうしても声をかけることはできなかったのです。

レジェンドアイドルの心の闇

 「なあ。一緒にオーディション受けない? 有名なアイドルが何人もいる大きな事務所のオーディション。いけるんじゃね、俺たち2人なら。未来のレジェンドアイドルの俺が言うんだから間違いない!」

 「――だけど、オーディションに合格したのは俺だけだった。そのすぐあと、中学を卒業した俺はデビューするためにこの街を離れて、それ以来カズマには会っていない」

 「だから今も時々ここに来て、空に歌、聞かせてたんだ。あのとき、俺はカズマを追いかけられなかった。ずっと後悔してる」

 なお、うたはもう少し後になってから知るわけですが、実際カイトの悩みはごく個人的な、感傷と呼ぶしかないものでした。

 うーん、イヤらしい。
 どうせ逆恨みされているのを気にしている構図だろうなあとは思っていましたが、思っていた以上にストレートで、そして思っていた以上にエグいやつ。“レジェンドアイドル”の肩書きすらカズマが考えたものだったとは。
 カイトさあ、それはもはや自傷癖って言うんですよ。

 「♪ カイトさんなら笑顔に 絶対できるよ 絶対! アイドル! ステキな人だから!」(第35話)

 あのうたという子は、こんな自分を無邪気に信じてくれました。

 今はまだ自分の家の喫茶店で歌っているだけの子ですが、あの子はすごい子です。
 才能だけでいうなら響カイトなんかよりはるかに才気煥発。
 なにせ、心の底から自分のファンと笑いあえているんです。

 自分だって、ファンのことは心から大切に思っています。
 いつも応援してくれてありがたいなと思います。
 彼らのためにできることなら何だってしてあげたいと思います。

 でも、ダメなんです。彼らはよく「笑って!」とかって応援うちわに書くけれど、笑えないんです。
 笑っているように見せかけることならできます。
 他でもないファンのためだから、彼らに喜んでもらえる笑顔なら、いくらでもつくってあげることができます。
 世間一般で言うなら、それだって立派な笑顔ではあるはずです。

 「♪ あっぷっぷ! かわいい赤ちゃん お顔を見せてね あっぷ ぷっぷ いい子 いい子」(第4話)

 ・・・でも、それはあの子の笑顔とは違う。

 自分の笑顔はあそこまで魅力的にはなりえません。
 自分自身も心から楽しんでいる本物の笑顔には、敵いっこありません。

 だって、自分はレジェンドアイドルであることを楽しんではいけない人間なんですから。
 “レジェンドアイドル”は、カズマから奪ってしまったものなんですから。
 カズマとの永遠の絆。それを土に塗れさせた代償として得た、世界で一番空虚な肩書きなんですから。

 こんな思いをするためにアイドルになったわけではありませんでした。
 こんな思いをしてまでアイドルになりたかったわけではありませんでした。

 でも、今の自分にはファンがいるのです。
 自分が持ちえるあらゆる何もかもよりはるかに大切な、大切なファンがいるのです。
 彼らの生き甲斐を守るためにこそ、“レジェンドアイドル”響カイトは今日も活動しています。
 世界中どこにいても、365日24時間、カイトは“響カイト”でありつづけたいと思います。

 それだけが唯一、自分の存在価値なのだから。

 「♪ きっと大事な友達 いつかまた会える 絶対 だって こんなにも思ってる――。私、カイトさんには笑っててほしいです!」
 「・・・ありがとう。やっぱりうたちゃんの歌は元気が出るね」

 本当にいい歌。

 同じくファンを楽しませるために心を込めて歌っている歌でありながら、――“響カイト”にこれは絶対に歌えない。

それで、結局自分はどうしたいのかって

 ――自分ひとりでいくら悩んでいても答えが出るわけがない悩みで頭をいっぱいにしていたら、ポンコツロボット掃除機みたいに延々壁に激突していました。

 またこころたちに心配されてしまいました。いやはや、申し訳ない。

 きっと私は、結局のところどこまでも、響カイトみたいにはなれないのです。
 あんなふうに、誰も彼をも、例外なく、分け隔てなく、元気づけられる特別な存在になんて。

 あの人はすごい人です。
 本当の意味で、自分のファンみんなをキラッキランランにしてあげています。
 あんなにたくさんのファンがいるのに、それでいてひとりひとりのファンのことにも気を配っていて、仕事のときもプライベートのときすらもファンのことを最優先にしていて、どうすれば喜んでもらえるのかいつも考えていて、いつも実践していて――。だから、憧れています。

 いつか自分もあんな人になれたらいいなあって。
 同じアイドルとして、あの人がいるはるか高みに、少しでも近づけたらいいなあって。

 憧れ。そう、憧れです。うたは響カイトに憧れています。
 その憧れの人が、自分のファンみんなを等しく大切にしている人なのに、自分自身だけあんまり大切にしていないように見えて、この間からずっとそれが気になっているんです。

 うたは歌うことが好きです。
 歌うとみんなキラッキランランになってくれるから。
 みんながキラッキランランだと、うた自身もキラッキランランになれるから。
 だから好きです。

 きっとカイトも同じなんだと思います。
 みんなをキラッキランランにするのが好きで好きでたまらなくて――、なのに、あの人はなぜか、自分自身はキラッキランランじゃないみたいなんです。

 そういうストイックで利他的なところがますますプロっぽくて、カッコいいとも思うわけですが――。
 それはそれとして、うたは個人的に、できればカイトにもキラッキランランであってほしいと願います。
 うたはみんながキラッキランランになったところを見るのが、結局のところ一番好きだから。

 「うたちゃん。カイトさんと話せた?」
 「あー・・・、声かけられなかったんだ。さびしそうな顔してたから話しかけられなくて。カイトさん、何か悩んでるみたいだった」

 バレてしまったから仕方なく打ち明けましたが、こういうの、あんまり友達には話したくないものです。
 心の曇り空はあっという間に伝染していってしまって、せっかくみんなキラッキランランだった気持ちが、なんだか引っ込んでしまう気がするから。

 「レジェンドアイドルのカイトさんにも悩みが」
 「レジェンドアイドルだからこそ、自分の悩みを人には話せないのかな?」

 ほら、こんなふうに。

 みんなうたの自慢の友達です。
 それぞれ誰にもマネできないすごい特技を持っていて、それでいてみんなに優しい気づかい上手。
 アイドルプリキュアのリーダーを決めたときも、本当は誰がリーダーになったっておかしくなかったはずなのに、みんなうたがリーダーであるべきだって言ってくれて。
 自分なんて何の特技もなくて、将来の夢をどうしたらいいのかなあって何日も悩んじゃったくらいなのに――。

 「私にはお姉様やみんながいてくれるけど、彼にはそういう人がいないのかも」

 そういえばあの日、カイトは言っていました。

 「いい友達だね」
 「はい! すっごく大好き! 一緒にいると毎日キラッキランラーン!!」
 「それってさ――、そこにあるかもよ。君の夢。夢はひとりで追うものとは限らない」(第11話)

 愛おしそうに。まるでまぶしいものでも見ているように。

 あのときのカイトの言葉があって、うたはますます友達のことが大好きになったものでした。

 憧れのレジェンドアイドル。
 あの人には本当に多くのことを教えてもらっています。

 ――はっと気がつきます。

 「ごめん! ちょっと行ってくる!」

 ずっと、あの人のことは尊敬するばかりでいました。
 何もかも完璧で、自分なんか比較にならないくらいのレジェンドアイドルで、いつも教えられてばかりで。

 でも。

 「今までカイトさんにはいっぱい助けてもらった。私に何ができるかわからないけど、今度は私が、カイトさんをキラッキランランにしたい!」

 それがどうした。

 私には、私自身がやりたいことがあるんだ!

 あの人の心の奥深くにまで踏み込んでいい権利を持っているのが誰なのかは知りません。
 でも、たとえどんな事情があったとしても、・・・私が。私自身が、あの人を放っておきたくないって、そう思っているんです。

 だから、今必要なのは――、一歩踏み出す、勇気。

助けてほしいと言ってくれない人のために

 いつの時代も、プリキュアが一番苦労するのはカイトみたいな人を助けるときです。
 『ハピネスチャージプリキュア』でつむぎちゃんという女の子を救おうとして以来、その問題はいっそう顕在化して、毎年のようにプリキュアたちの前に立ち塞がっています。

 彼らは助けを求めません。
 ずっとひとりで苦しんで、ずっとひとりで我慢しています。
 きっと死ぬまでひとりでいる覚悟なのでしょう。

 プリキュアになるような子はみんなお人よしです。
 たとえ赤の他人であったとしても、目の前で苦しんでいる人を見かけたら、どうにかして助けてあげたいと思います。

 でも、彼らは助けさせてくれないのです。
 差し伸べた手を、けっして握り返してはくれないのです。

 いったい何の権利があって自分はこの人を助けたいと思っているのか。

 大義ではなく、正義でもなく、いつも自分たちの日常にある小さな幸せを守るために戦っているプリキュアだからこそ、この問題は難敵として立ち塞がります。

 「ねえ。なんでカイトのためにそこまでするの? キミ、カイトの何なの?」

 問われます。

 だったら、答えます。

 「私にとってカイトさんは――。カイトさんは、大切なことをたくさん教えてくれた。歌を褒めてくれた。いつも優しかった。私に力をくれた。カイトさんといると、キラッキランランな気持ちになれた。カイトさんは私の特別な人!」

 ・・・。

 「カイトとの間に絆があるとでも思ってるの?」

 再び問われます。

 ならば答えましょう。

 「カイトさんがどう思ってるのかはわからない。でも、私は私の気持ちを信じる! カイトさんとの絆、絶対離さない!」

 いったいうたは何を言っているのでしょうか?
 まったく答えになっていません。

 うたは、カイトが自分のことをどう思っているのか全く知りません。
 わからなくたっていいと思っています。

 この気持ちは、もしかしたらいわゆる恋ってやつなのかもしれません。でも、仮にこれが恋だというならば、成就しなくたって一向に構いません。
 カイトはレジェンドアイドルです。自分なんかよりはるか高みにいる人。世界中無数にいるファンたちを、ひとりひとり、分け隔てなく愛せる特別な人。その大きな愛が自分ひとりに向けられるだなんて、そんなの想像することもできません。

 カイトの心の闇から生み出されたダークランダーはいつになく強敵でした。
 アイドルオーディションに誘ってくれたカズマとの想い出が今もしこりになっていることを感じさせる、スマートフォン型のダークランダー。
 いかにもレジェンドアイドルらしい輝きにあふれたフラッシュ攻撃。
 大切な人との絆が具現化したような、充電ケーブルによる捕縛攻撃。

 どこまでもカイトらしい人柄がにじみ出ていて、それでいて今は光ではなく闇。そんなダークランダーの滑稽さを、ジョギはあざ笑います。

 でも、うたにはその姿が無様であるようには、どうしても見えませんでした。

 「闇・・・? 闇なんかじゃない! それはカイトさんが大切にしてきたものだよ。カイトさんはあなたを追いかけなかったことを今も後悔してる。カイトさんはあなたとの絆をとても大事に思ってる!」

 現にこれが闇に堕ちた姿であることを、うたは認めません。
 ジョギが、カズマが、あるいはカイト自身が、彼や彼に近しい人が「これは闇だ」と認めているものを、しかし、ただの知り合いでしかないうただけは否定し、譲りません。

 関係ないのです。

 これはあくまで、うたの戦いです。

 カイトのことを尊敬していて、カイトのことが好きな、うた自身の気持ちを貫きとおすための戦いです。
 カイトが今、自分自身のことをどう思っているか、うたは知りません。
 あの人は作り笑顔で何でも上手に隠してしまえる人だから、知りようがありません。
 だけど、これはうたがそう思っているんです。

 だから助けます。カイトのことを。

 だから笑ってほしいと思います。カイトに、心から。

 だから失われることはないと信じます。カイトに教わった、友達との大事な絆を。

 うたがそうあってほしいと願うから。
 うたが、カイトがキラッキランランになってくれたら自分もキラッキランランになれると信じているから。

 だから、助けるんです。

 「・・・キュアアイドル? どうして君がここに」
 「え。えーと、そのー・・・。カイトさん。カイトさんと大切な人の絆、なくなってなんかいないと思います! ――私、カイトさんには笑っていてほしいです!」

 かくして、至極自分勝手な理由で救われたカイト。

 目の前にはなぜかキュアアイドル。
 いつだったか、ファンへの接しかたについてカイトが目を見張るような急成長を遂げた、期待の超新星。
 不思議なことに、彼女が街角の喫茶店の天才アイドルと一言一句同じことを言ってきます。

 ああ、なるほど――。

 カイトがどこまで気付いたのかは次話以降で語られるのでしょうが、少なくとも、彼は自分がキュアアイドルから目を離せずにいる理由に合点がいったようです。

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    コメント

    1. ピンク より:

      「所詮その程度の縁だったんじゃ?」と、一瞬考えてしまいました……我ながら超ドライ。

      そもそもアイドルのオーディションとは、合格したら絶対デビューしなきゃなんでしょうか。
      まあ蹴ったら蹴ったで、どのみちカズマさんに嫌な顔されたとは思います。並々ならぬ熱意があったのは事実ですからね。

      • 疲ぃ より:

         芸事の世界はドライに語ったら際限ない砂漠でござる。

         カイトとしては・・・、たとえ数年出遅れたとしても追いついてきてほしかったんでしょうね。カズマがいなかったらアイドルを始める意味ほとんどないですし。
         自分がレジェンドアイドルになりたかったカズマにとってはそれすらも屈辱だったでしょうけど。

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