アクティヴレイド2nd第12話感想 今日も世界は終わらないので、続きはまた明日。

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朴念仁よお、お前のそういう不器用なところさあ・・・ま、いいや。

 アクティヴレイドはエンタメ志向の物語です。高尚なテーマ論とか、残されたいくつかの謎とか、そんな無粋なもんわざわざ最終回でやるわけがなかった。
 宇宙から舞い降りる世界の終わりは正義のヒーローにぶん殴られ、ゲスな悪魔は愛らしい乙女の怒りにぶちのめされます。ある意味とてもダイハチらしく、そしてまたある意味ではとてもダイハチらしくないフィナーレ。いいえ、フィナーレですらありません。彼らの素晴らしき日常はこれからも続くのですから。

「正義」の行方

 いやいやお前は今日の主役じゃないから、とでも言わんばかりに、法律の「正義」と個人の「正義」の葛藤はアバンであっさりと決着が付きました。

 「あんたの理想は東京を支配することだったのか? それとも理想の都市を創りたかっただけなのか?」 ルールをつくるのが政治家。かつてそんな思い上がったことを口にしていた独裁者に、黒騎は問いかけます。「悪をはたらいた動機は、かつて理不尽を味わわされた古いルールへの復讐か、それとも身勝手に新しいルールを創りたかっただけか」と。
 稲城は一言だけぽつりと答えます。「支配・・・そんなもの。私はただ、急ぎすぎた」 すなわち、「私欲ではなかったが、間違いを犯してしまった」
 それだけ聞ければ充分です。彼は今でも黒騎に道を示してくれた頃のままでした。大望のために戦っていたのでした。そして今、彼はダイハチを初めとした警察組織による法律の「正義」に屈し、八条という享楽主義者による個人の「正義」に裏切られ、その両方の限界を噛み締めています。
 ならばこそ、黒騎は証明しなければなりません。かつて彼に人生を救われた子どもとして。「俺はあんたが目指していた未来を守ってくるよ」 敬愛する恩人の目の前に、本当は限界なんて存在しないことを。

素晴らしき日常

 なーんて、正義のヒーローが格好つけて歩きはじめてみせたところで、彼らを取り巻く世界はちっとも変わりません。

 法律の「正義」の運用者たる政治家たちはあいかわらず後出しに次ぐ後出し、事なかれ主義を貫こうとしますし、法律の信奉者(と、稲城は見誤っていた)の皮を被った個人の「正義」の権化であるボスと愉快な仲間たちは、そんな政治家たちを脅しつけて成すべき仕事をもぎ取ります。すなわちいつものダイハチですね。
 宇宙へ飛び出す荒唐無稽なトンデモミッションですら、彼らにかかってはいつものお仕事の延長でしかありません。悲壮な使命感なんかポイッと捨てて、仕事しながら明日の飲み会の計画を立てます。すがすがしいほどに素晴らしき日常。いつもどおりの単なるお仕事。
 ぶっちゃけそれなりに使命感に燃えているのは黒騎だけです。(あるいは空気に飲まれやすい瀬名も酔っ払っていたかもしれませんが)

 「協会様に、宇宙に行くのは私か黒騎さんだって言われたとき、行きたくないって思って」 さすが、現時点で最も真っ当な正義観を持っているあさみちゃんです。彼女はダイハチの他の誰よりも一番マトモですね。
 法律の「正義」だの個人の「正義」だの、このブログでは散々ややこしいことを書いてきましたが、結局のところこれらはただ単に、私たちが幸せに生きるために自ら用意した手段でしかありません。これをスタンスと履き違えるからボスのように自己矛盾したり、稲城のように失脚したりするんです。本当はもっとテキトーに、都合よく使い分けていいはずのものなのに。(都合よく個人の「正義」ばかり振りかざして幸せになれるという話ではないので念のため)
 「私が正義よ!」 と豪語するあさみちゃんはその意味でマトモなんです。法律の都合にも自分の身勝手にも支配されず、ただ自分が正しいと信じる理想(幸せに生きること)を目指して行動しているのですから。
 だから自分が死ぬなんて論外です。死んだらそれ以上理想を追いかけることもできません。幸せになることもできません。他の人が死ぬのもそれはそれで嫌なものなので、自分が死なない範囲でなら最大限努力するのもアリですが、死ぬことだけは論外です。自分の死を天秤にかけられる使命感を持った黒騎がおかしいんです。

 「正義」が手段でしかないなら、自己犠牲は正義のヒーローにとって最悪の自己矛盾です。
 こういうの、たぶん昭和の仮面ライダーあたりではそこまで支配的ではなかった価値観ですね。プリキュアシリーズなどが代表する、比較的新しい価値観です。こういうのは時代の要請によって自然に醸成されるものなので、どちらが正しいとかそういうものではないのですが、現代に生きる私にとってはやはり自分を大切にするヒーローの方が好ましく思えますね。
 そんなわけで、最後の戦いに挑むのは「異常な」使命感を持った黒騎ひとりです。彼だけは自分の正義が稲城の限界を超えたことを証明しなければいけません。
 「こんな事態を招いたのはあいつの不始末が原因です。だからなんとしても俺が」 それは人生の恩人である稲城の絶望を取り払うためであり、他でもない稲城に一度崩された自分なりの正義を今度こそ盤石に立て直すためでもあります。稲城が絡んでいる以上は、彼の不始末であるこの舞台でしかそれを果たすことができず、だから命を懸けようが何をしようが、是が非でも達成しなければならない試練になってしまいました。お勤めご苦労様です。

 ただし、それはあくまで非日常です。崇高な使命感なんて、やむを得ない事情があったから仕方なく手を出すだけの厄介者です。黒騎が帰るべき本来の舞台は宇宙なんかではなく、東京です。
 どっかの朴念仁が「ふざけるな! 先日の飲み会のおつりはどうするんだ!」 などと、場をたいへんに盛り上げて、あたかもこの戦いこそが黒騎らしい、黒騎にふさわしい大舞台だとでもいうように演出してくれますが・・・なにを酔っ払ってるんでしょうね、この相棒。
 「朴念仁よお、お前のそういう不器用なところさあ・・・ま、いいや」 わざわざ仕事中に全部ツッコミいれてやる必要なんてありません。
 だって黒騎にふさわしいのは東京です。宇宙ではありません。日常です。非日常ではありません。舞台が日常であるからには、今日世界は終わらないし、また明日が来ます。わざわざ今日最後までツッコまなくたって、続きはまた明日改めて言ってやればいい。死んでまで二階級特進しなくたって、残りの人生かけて3つでも4つでも出世してやればいい。

 ああ、なんて素晴らしき日常!
 今日も明日も七面倒くさいお仕事が待っています。楽しい飲み会が待っています。正義は当たり前の日常の中に。私たちが私たちらしく、幸せに生きるため、私たちは日常の中でこそ正義を行使しましょう。

 ところでやっぱり残された謎は気になるし、気取って名付けたエイプって呼称がうっかり広まっちゃった林田さんの赤面が見たいし、物理的にぶちのめされただけで結局最後まで状況を楽しんでいた八条にはもうちょっと悔い改めてほしいし、黒騎やボスやあさみちゃんの正義はいつまでも応援していたいし、3期ずっと待ってますよ?

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